神武、頑張ります!~ちょっと歴史が違う世界の艦これの艦娘になりました~   作:雪たまご

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甘いのが見たいというリクエストがあったもので。


デート。

「ごきげんよう。わたくしが重巡熊野ですわ。あら・・・青葉?」

 

「あは、あはははは・・・。」

 

@@@@@@

 

 熊野・・・古鷹と同じく青葉被害者、というわけではないが尖閣諸島沖からの撤退の際に、青葉から「ワレ曳航能力ナシ オ先ニ失礼」と言われていることで有名。しかし熊野が損傷し沖縄へ帰ることになったのは、古鷹(この時沈んだ)と共に青葉(ワレアオバはあまりにも有名)を逃すためだったと考えれば、やっぱり青葉のせい?最上型の四番艦。元々は軽巡という名目で造られた。

 

 

@@@@@@

 

「それでは裁判を始めます!検察の能代さん、どうぞ。」

 

「はい。えーそこの被告人ですが、探信儀が不調であるにも関わらず索敵を怠り敵艦に対し『ワレアオバ』と繰り返し打電、探照灯を照らすなどしました。結果、中国軍から被告人をかばったために古鷹が沈みました。また、同事件で熊野が大破し沖縄に戻ることとなったのですが『ワレ曳航能力ナシ オ先ニ失礼』との言葉を被告人から受けています。」

 

「異議あり!でたらめですぅ!」

 

「被告人は黙ってください。検察側は以上ですか?」

 

「はい。」

 

「それでは弁護人の古鷹さん、どうぞ。」

 

「はい。えーっと確かに私は沈みましたが、その、青葉ちゃんも頑張ってましたし・・・あ、後混乱していました!以上です!」

 

「なるほど・・・」

 

@@@@@@

 

「いやー大変だねぇ、青葉も。崇神も同じ方面にいたんでしょ?」

 

「・・・私はおもに大陸沿岸部の制圧で、彼女達は諸島警備だったから・・・。・・・でも青葉がやらかしたという話は聞いた。」

 

「へぇー。・・・おっ決着したみたいだね。」

 

『被告人・青葉が出てきました!・・・おっとぉ!?青葉暴れています!しかし憲兵が』

 

『被告は暴れているようですね。しかし軽空母の村を襲うオークすらも瞬殺する憲兵です。心配はないでしょう。それでは来週のお天気です・・・』

 

######

 

 プリンス・オブ・ウェールズ・・・英国海軍キング・ジョージ5世級戦艦二番艦。1941年3月竣工。完成直後、北海で独逸戦艦ビスマルクと交戦し被弾。修理を終え11月、巡洋戦艦レパルスとともに英国東洋艦隊に編入。まもなく日本艦隊を追ってシンガポールを出港し、12月10日、日本海軍機の攻撃を受けてマレー半島クアンタン沖でレパルスとともに沈没した。

 

「日本怖い独逸怖い・・・」

 

@@@@@@

 

 「我が東洋艦隊の役目は周辺一帯の深海棲艦を掃討し、各国の首脳を無事に日本に送り届けさせ、そして日独の護衛艦隊に活躍させないことだ!」

 

 プリンス・オブ・ウェールズは思う。

 

(無い胸張って威厳出そうとしているロリっ娘提督マジかわprprはぁはぁはぁはぁ・・・)

 

 おっと間違えた。レパルスの思考を読んでしまったようだ。今度こそ・・・

 

(すべての人間は生まれながらにして自由でありかつ尊厳と権利とについて平等であるとあるが本当にそうだろうか尊厳など生まれた地域環境で異なるものであるし権利も生まれた国によって異なるではないかいやこれは実は目標としているだけで現実とは違うということか今は無理でもそんな世界にしたいそういうことかどこかの日本艦だって沈んだ敵も助けてあげたいのですできればとかいっていたしやはり自分達にできることから少しずつやれはということかあれ私は何を考えているんだわからなくなってきたぞというか今は提督がその小さなおくちを頑張ってしゃべっているんじゃないか変なことは考えちゃ駄目だ話を聞かなければしかし変なこととは何だこの思考の渦こそが哲学といえるのではないのか哲学の役割は人々が当たり前とみなしていることについて根本にさかのぼり全体的な視野から見つめなおすことにあるのだし今ここで私が哲学をするのは逆にこの艦隊の問題点を探り出すことにつながるのではないだろうかいやしかし・・・)

 

 キング・ジョージ5世の思考を読んでしまったようだ。だがこの場にいる艦娘は三人であるからもうプリンス・オブ・ウェールズの思考にたどり着けるはずだ。

 

(おしごとおわったらーおかしがいーっぱいたべたいなーていとくさんやるのもたいへんだよー)

 

 え?

 

 

「・・・私が簡単に思考を読ませるとでも?」

 

 っ!?ナレーション逃げます!

 

「うふふふふ、逃しません。」

 

######

 

 デート・・・日付。時日。

       日時や場所を定めて異性と会うこと。あいびき。「彼女とーする」(広辞苑第六版)

 

@@@@@@

 

「翔鶴ぅ・・・」

 

「はいはい。こことかどうかしら?」

 

「おー、ここをこうするのは?」

 

「それはやめておいた方が・・・だって今はあれがあるから・・・。」

 

「あ、そっか。やっぱ翔鶴に聞いてよかった。」

 

 苦節48年・・・とうとうこの日が来たのですね・・・

 

「翔鶴?何してるの?」

 

 神武が提督とデートしたい、だなんて!

 

@@@@@@

 

 早朝、日が出る前におっさんの部屋に行く。

 

 ガチャガチャガチャガチャ…バキッ!

 

「あ、壊れた。古かったんだね。」

 

 部屋の中に息を止めて入り、窓をあける。おっさんはまだ寝てる。

 

「さっすが対猛獣用麻酔ガスを5本使っただけの威力はあるねー」

 

 寝ているおっさんを担いで、海に向かう。途中で寝ぼけた金剛さんに遭遇した。

 

「Good morning,ZINMU.You got up early…」

 

「おはようございます、今からおっさんと出かけてくるから!」

 

「Hum….Have a nice day….」

 

@@@@@@

 

 港につくとそのまま海面を滑って湾外に出て、本体を召喚する。

 

 ザッパッーンッッ!!!

 

 今日は海中から出現した。出すとこを間違えたみたい。

 

 そのまま自分に乗ると甲板の上にゆっくりおっさんを寝かせる。その時ふと翔鶴の言葉を思い出す。

 

『疲れて眠そうだったら膝枕をしてあげなさい。』

 

 なるほど、膝枕してあげればいいのか・・・。

 

 おっさんの頭を正座した私の太股の上に乗せる。

 

『日差しには気をつけるのよ?提督は人間なのだから。』

 

 いけないいけない。サッと手を振ってパラソルを私達の頭が日陰になるように展開する。

 

 今日の目的地はトゥバタハ岩礁海中公園。伊号潜水艦達が綺麗なところだと前から言っていたので、翔鶴に相談。すると艦載機を飛ばして様子を見てくれたのだけど、水上からでも十分楽しめそうと教えてくれた。この公園で遊んで、私が作ってきたお弁当を食べて、夕日を眺めてから帰る予定だ。

 

@@@@@@

 

 ちょっと強めの風の中、八時間。正午になってそろそろ着くというときにおっさんが動いた。そしてスカートをめくると頭を中に突っ込んだ。

 

「ひゃぁ!?」

 

「・・・へ?」

 

 目が覚めたみたいですぐに頭を出したおっさんと目が合う。

 

「「・・・・・・。」」

 

 な、なんか気まずい。

 

「その・・・だな。おはよう。」

 

「・・・うん。おはよう。」

 

@@@@@@

 

 目が覚めるとスカートの中でした。やばい・・・こんなところ見られたらいくら相手が神武でも憲兵呼ばれる・・・!!そろそろあの憲兵さんとも顔見知りになってきたしな・・・。

 

 ん?

 

 んんん?

 

 ここ。どこだ!?

 

 上にはパラソルと神武の顔にパラソルの端から見える青空。右を向くと神武のパンツ。・・・白の紐か。左を見ると・・・見覚えのある砲塔。

 

「何で私は甲板にいるんだ・・・?」

 

「おっさん。」

 

 なぜか神武の甲板にいることに気付いた私に、神武が真剣な瞳で見つめてくる。

 

「今日はデートをします。」

 

 は?

 

@@@@@@

 

 お、固まった。

 

 おっさんが再起動するまで、ボートの準備をする。もう目的地には近づいているのでそろそろ座礁する危険があるのだ。ということでボートに乗ります。

 

『いい?ボートを引っ張っていこうなんて考えないのよ?オールを準備して、提督にちゃんと漕いでもらうのよ。』

 

 そうだった。オールも用意しないと。

 

「・・・それで、今どこなんだ?というか仕事・・・。」

 

「今ね、トゥバタハ岩礁海中公園の近く。」

 

「へ?」

 

「ちなみに仕事は代わりにやっといたよ?大淀を叩き起こして全部終わらせたもの。」

 

@@@@@@

 

「眠い・・・。」

 

@@@@@@

 

「じゃじゃーん!!」

 

「おお、うまそうだな。お前が作ったのか?」

 

「うん!!」

 

 何か諦めたような表情をしたかと思えばすぐに笑顔になったので、とりあえずお弁当を広げる。ボートの上で食べるのもありかな・・・と思ったけど、ちょっと危ないのでやめた。

 

「「ごちそうさまでした!」」

 

 さて、お昼の後は散策タイム。ボートを下ろしておっさんを乗せてから、本体をしまう。そしてボートに乗り込むとおっさんがオールで漕ぎ始めた。

 

 辺りは海が澄んでいてサンゴ礁が見えるので本当に綺麗。もともとここは保護区域で綺麗なところだったのだけど、深海棲艦が出現したことでさらに人間が来なくなって自然のありのままらしい。

 

「綺麗だね・・・。」

 

「そうだな・・・。」

 

@@@@@@

 

 二人でのんびりしていると、あっという間に時間は過ぎて。夕日が水平線に落ちている。いつだって見た光景なのに今日のは何かが違った気がした。

 

「・・・帰ろうか。」

 

 その言葉と共に私の手を握る。

 

「うん。」

 

 握ったおっさんの手は少し汗ばんでいた。

 

 




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