のんのんでいず   作:カレー大好き

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今回は駄菓子屋の恋を進展させてみました。
まぁ、ほんの少しですけど。



第7話 「夕食がカレーになった」

夏休みも終わったばかりでまだ気だるさが身体に残る9月初旬、大河はこなみを連れて越谷家にお邪魔していた。

前に海川家に行ったことのある夏海から、大河の部屋でエレキギターを見たと聞いた卓が、自分も嗜んでいるのでぜひ一緒に演奏しましょうと願い出たのである。

大河としても断る理由は無いので、せっかくだからとみんなを誘ってのミニ演奏会が開かれることとなった。

のどかな田舎の昼下がりに全く合わない重厚なギターサウンドが鳴り響く。

 

 

「ふぅ……」

「わぁ~、すごくかっこ良かったですっ!」

「はいっ、私も見惚れちゃいました!」

「うちは最初の『ギュイーン』に感動したのん!」

「そこかよ!」

「曲始まる前じゃん!」

「はっはっは、冒頭のギュイーンこそエレキギターの醍醐味。そこに気づくとは、良い感性を持っているな、れんげ!」

「本人も気に入ってたんかい!」

 

 

卓との初セッションはかなり上手くいったようで、みんなから好感触な感想が飛び出る。

兄の卓が結構な腕前である事は小鞠たちも知っていたが、大河も負けず劣らず上手だったので正直驚いていた。

 

 

「大河先輩、ギター上手いんですね!」

「まぁ、アマチュア以上といった程度だがな。【けいON!】というアニメにはまった友人に付き合わされているうちに弾けるようになっていたんだ」

「相変わらず順応性が高いね……」

 

 

苦笑いしながらも、優しげにつぶやくこのみ。

正直に言えば器用な彼のことを羨ましく思うものの、嫉妬などの嫌な気持ちを全く抱かないのは、普段努力している姿をちゃんと見ているからだ。

まぁ、惚れた弱みだろうとも言えるけど。

 

 

「お兄ちゃん、もう一曲演奏して~」

「そうだな。じゃあ、次は何にする?」

「はいは~い、うちからリクエストがありますの~ん!」

「なんだ?」

「うちは、ハードでロックな【チャルメラ】が聞きたいのん!」

「私も聞きたい~」

「ふむ、チャルメラか……いいだろう。 とびっきりハードな奴を聞かせてやろう!」

「「わ~い!」」

 

 

れんげから子供らしいリクエストを受けた大河は、彼女の期待に答えるべくエフェクターをバリバリに効かせたハードロックなチャルメラを披露した。

もはやオリジナルの音源が持っている情緒や雰囲気は微塵も感じないシロモノとなっているが、聞きたがっていたれんげやこなみは喜んでいるので良いだろう。

しかし、彼女たち以外の面子にとってはそうでもないようで……。

 

 

「カッコイイね~! 何だかヒャッハーって叫びたくなるよ~」

「そうなんな~! モヒカン頭のお兄さんが「雑菌は消毒だ~」とか言いながらラーメン作ってる感じでカッコイイのん!」

「そんな世紀末過ぎるラーメン屋台嫌だよ!」

「そうですね、ちょっとイメージが変かな」

「はは~。やっぱりれんちょんたちは、うちらと感性が違うみたいだね~」

「むむむ~……またそんなこと言うん! なっつんたちの方がおかしいのん!」

 

 

夏海の発言に、普段は大人しいれんげが激しく反応する。

実は、前日の学校でも同じようなことがあり、それが原因で妙な疎外感を受けてしまったのである。

とはいえ、今日は味方となりうる大河がいる。

彼に昨日と同じ事をすれば、夏海たちとは違う反応が返ってくるに違いない。

そう判断したれんげは、すぐさま行動を開始した。

 

 

「こまちゃん、毛糸持ってくるのん!」

「えっ? う、うん……」

 

 

れんげは必要な物を手に入れるため唐突に小鞠へと命令を下し、有無を言わせぬ雰囲気に飲まれた彼女も素直に聞き入れて取りに行く。

そうして手に入れた毛糸を輪っか状に結んで、昨日やってみせたようにあやとりを始めた。

器用に指を動かして、夏海に見せたあの作品を見事に再現してみせると、期待を込めて大河に見せてみる。

 

 

「これは見ての通り~、みなさんご存じの~、宇宙でした~!」

「ほう、もしかするとそれは、超ひも理論を用いて宇宙を再現しているということか! 量子力学の発展にも関与する最先端科学なのだが、よもや君のような年齢でそれを理解しているとは!」

「ふふ~ん、この良さが分かるとは、流石、タイガー!」

「いやいや、そこまで理解してる訳ないでしょ!?」

 

 

思わず夏海がつっこむものの、ノリの良い大河の反応に気を良くしたれんげは、特に気にすることなくさらに続ける。

今度は小鞠ではなく夏海に命令を下して、とあるものを用意させる。

 

 

「なっつん、マンガ持ってくるのん!」

「うぇ? お、おう……」

 

 

夏海もまた、れんげに言われるがままに卓の部屋にあった少年漫画雑誌を手に取って持ってきた。

前に学校で見ていたものとは違うが、まあいいだろうと話を進める。

 

 

「ぷぷ~い! これ面白いのん! このページと次のページとそのまた次のページの畳かけが!」

「はは、確かに。オサレな死神が「なん……だと……」と言いながら、十数年も海賊王を目指してるゴム少年に殴られて、何故かギャングの娘と偽コイする超展開となっているな!」

「明らかにページ飛ばしすぎでしょ! でも、ちょっぴり面白そうだなそれ!」

 

 

ページを飛ばすことで見事なクロス作品を作り出したれんげを絶賛する大河。

もう何だか元の目的から外れてきてしまったが、れんげは予想以上の成果に大満足となった。

期待以上の素晴らしい返答ばかりだったので、大河への好感度が一気にアップしたのである。

その嬉しさのあまりボルテージが上げ上げとなったれんげは、思わず大河に抱きついてしまう。

 

 

「うわ~い!!」

「おっと、どうしたれんげ?」

「タイガー、今度はあっちの部屋でゲームするのん!」

「ん? ああ、別に構わないぞ」

「じゃあ、早く行くのん!」

「はは、そんなに引っ張らなくてもちゃんと行くよ。というわけで、済まんな卓。続きはまた後でするとしよう」

「(コクリ)……」

 

 

急に甘えだしたれんげにせがまれてゲームをすることにした大河は、一先ずギターを置いて卓の部屋から居間へと移動していく。

当然ながらこなみも着いていき、取り残される格好となった他のみんなも慌てて後を追う。

 

 

「あ~、待ってよ!」

「私たちも行こうか」

「はい」

 

 

小鞠、このみ、蛍が続けて出て行き、部屋には卓と夏海だけとなった。

不思議なことに、普段だったら真っ先に追いかけているはずの夏海が、何かを警戒してその場から離れられない状況となっているのである。

彼女が今気になっていることは、不穏な空気を漂わせている卓の動きだ。

長年の付き合い……というか、隠れお兄ちゃん子である夏海だからこそ、彼の変化に気づけたのだ。

 

 

「兄ちゃん、何か企んでるよね?」

「……」

「ふっ。だんまりですかい。でもね、うちにはまるっとお見通しなのさ!」

 

 

そう言って、ビシッと人差し指を突きつける。

どうやら、何かを目撃していたらしい。

 

 

「さっきこっそりと手に取ったブツを見せてもらいましょ~か、兄ちゃん?」

「!?……」

 

 

夏海の指摘に観念したのか、卓は後ろ手に隠し持っていたモノを見せた。

それは……バニーガールの格好をしたキンパツ美少女のセクスィーなフィギュアだった。

しかも、市販品ではなく彼が自作したものである。

 

 

「んなもんどうする気なのさ?」

「……」

「はっ! もしかして、兄ちゃんも昨日のこと気にしてるんじゃ?」

「(プイ)」

「やっぱりかい! れんちょんみたいに大河兄ぃから褒めてもらおうと思ったんだな!」

 

 

実は卓も、れんげと同様に前日の学校で悲しい思いをしていたのである。

それは、ねんど遊びをしていた夏海から猫を作って欲しいと頼まれたので【猫のコスプレをした美少女】を作った所、れんげには見せられんと無残に破壊された事だ。

ねんど遊びだったとはいえ、せっかくの力作が目の前で壊されたショックはかなりのものだったらしい。

そのせいか、先ほどれんげがとった行動を見て、自分の可愛い作品も大河に見てもらいたいという衝動で一杯となってしまった。

個性的過ぎるれんげの感性すら受け入れられる包容力を持った大河だったら、この子にも正当な評価を付けてくれるに違いない。

しかし、彼の野望はまたしても夏海によって阻まれることになる。

 

 

「させるか! 子供たちが見ているんだぞ!」

「(コクリ)」

「なぬ!? チャンスは最大限に生かす、それが俺の主義だって!? エゴだよそれは!」

「(フルフル)」

「ダメだっつ~の! モラルが持たん時が来ているのだ!」

「(行)」

「それでも行くだと!? やらせはせん! このうちがいる限り、やらせはせんぞーっ!」

 

 

強引に居間へ行こうとする卓に抱きついて、彼の凶行(?)を阻止しようとする夏海。

一応ケンカの部類に入るのかもしれないが……まぁ、2人とも何となく楽しそうなので放っておいてもいいだろう。

一方、そのような戦いが卓の部屋で繰り広げられている事など知らずに居間へと移動したれんげたちは、かなり昔のゲームで盛り上がっていた。

物持ちの良い小鞠たちの父親が子供の頃に遊んでいたレトロな代物だ。

そのためか、れんげやこなみにとっては難易度の高いものが多く、エンディングを見てみたいと思った彼女たちは大河にクリアして欲しいとせがんだ。

 

 

「おお~、タイガーはムチ使いが上手いのんな~」

「無論だ! このゲームのメーカーはこなみと名前が似ているからな、通常の3倍は力が出せるぞ!」

「やっぱり、そんなこと言うんじゃないかと思ってたよ」

 

 

妙に張り切ってゲームをプレイしている大河につっこみを入れながら、彼とれんげに視線を送るこのみ。

彼女は、大河の足に座ってべったり引っ付いているれんげのことがちょっぴり羨ましいと感じていたのである。

子供ならではの無邪気な大胆さなのだが、自分もあのくらいくっついてみたいし、やってみてもいいんじゃないかなとも考え始めていた。

だったらやってみようか

強引で押しが強いことに定評のあるこのみは、あっさりと結論をだすと早速行動に移った。

 

 

「大河君、これが終わったら次はこのパズルゲーム一緒にやろうよ!」

「ふむ?」

 

 

さりげない様子を装いながら、大河の左腕に胸を押し付けるように近づくこのみ。

流石に恥ずかしい気持ちもあるが、嬉しい気持ちの方が強くてだんだん楽しくなってきた。

だから、自然と良い笑顔になる。

 

 

「ふふっ」

「「!?」」

 

 

そんなこのみの乙女な様子を見て、小鞠と蛍も反応する。

自分たちも同じ事をやってみたいと。

こうなったら遅れを挽回せねば!

 

 

「た、大河先輩っ! 私も一緒にやりたいですっ!」

「わ、私もお願いしますっ!」

 

 

そう言いながら小鞠は右腕に抱きつき、蛍は肩に手を置いて背中に胸を押し付けるような格好になる。

「人は流れに乗れば良い」とどっかの誰かが言っていたが、勢いに流されてしまった彼女たちはとても大胆になり過ぎたようだ。

しかも、先に大河の所にいたれんげをギュウギュウと圧迫したため、とうとう彼女の怒りが爆発してしまう。

 

 

「うが~~~~!! みんな離れるのん!」

「ん? どしたの、れんげちゃん?」

「ここはうちの特等席なん! みんなはアッチにいくのん!」

「なんだよそれ~、そんなのずっこいぞ~!」

「そ、そうだよ~! みんなで仲良くすればいいんじゃないかな?」

 

 

最初に獲得した占有権を主張するれんげに対して、譲歩を訴える3人。

思わぬことが発端となって、大河をめぐる女の戦いが勃発してしまった。

みんな一歩も引こうとしないので、このままでは収拾が付かない……そう思われたその時、今まで静かに様子を見ていたこなみが一つの提案をする。

 

 

「みんな~、話し合いで決着がつかないなら、ゲームで勝負をつけたらどうかな~?」

「うん、それ良いね」

「ふふん、ここにあるゲームなら私にも自信があるよ!」

「私も良いと思うけど、れんちゃんはどうかな?」

「うちもおっけ~! その勝負、受けて立つのん!」

 

 

こうして、ゲームの勝利者が大河の足に座る権利を得られるということになり、4人は勢い込んでゲームをやりだす。

あっさりとこなみの意見を受け入れたみんなは、純粋で素直な良い子だった。

そして、いらぬ争いを止めたこなみもまた、みんなと同じように純粋で素直な良い子であった。

しかし……彼女はそれ以上にお兄ちゃん子でもあった。

自分の策略によってゲームに誘い出されたれんげたちを尻目に、空席となった大河のあぐらにちゃっかりと座りこむ。

 

 

「ふっふっふ~、お兄ちゃんよ! 私は帰ってきた~!」

「なるほど、このような展開を狙っていたのか。こなみは賢いな」

「戦いは非情なんだよ、お兄ちゃん……」

 

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 

とある日の放課後、本日の飼育当番であるれんげと蛍は、2人に付いて来たこなみと一緒に飼育小屋へと向かっていた。

大好きなウサギに会えるという事でテンションあげあげになったれんげとこなみは、バケツに入れていた野菜を手に取ってはしゃぎ始める。

 

 

「ぎゅお~ん、モロコシミサイルー!」

「行っけぇ、ニンジンファンネルー!」

「ぼっか~ん!」

「ビュン、ビュン!」

「(何か女の子っぽくない遊びだけど、もしかして大河先輩の影響かな?)」

 

 

妙な所で大河の気配を感じて蛍は苦笑する。

まぁ、テンションあげ過ぎて歌を歌いながら地面にダイブしてしまうよりはよっぽど安全だろう。

無邪気に遊ぶれんげたちを見ながらそんな事を思っていると、元気にはしゃいでいたこなみが突然モジモジとしだした。

 

 

「あう~、何だか急におトイレ行きたくなってきちゃった~」

「あら、大変!」

「えっ、それじゃ早く校舎に行かなきゃ!」

「う、うん……行ってくる~!」

 

 

ウサギに会える嬉しさで一時的に尿意が薄れていたらしいこなみは、気づいてしまった途端に我慢できなくなって急いで校舎へと戻っていく。

余程慌てていたのか、手に持ったニンジンを置いていかずにそのまま行ってしまった。

おしっこを我慢しながら飛び跳ねるように走っていくこなみを見送ったれんげと蛍は、素直に思ったことを口に出す。

 

 

「こなみんは、アリスの白ウサギみたいにウッカリさんなんな~」

「ふふ、そうだね~」

「ニンジン持ってピョンピョンしてたの、ウサギさんぽくて可愛いかったのん」

「うんうん! ウサギっぽいこなみちゃん、可愛いかったよね~♪」

 

 

2人が可愛いと感じているポイントは微妙に違ったが、幸いながらどちらもそこに気づくことはなかった。

なにはともあれ、その後は特に問題も起こらず無事に目的地へと到着する。

この分校の飼育小屋は、緑の金網に覆われたオーソドックスな作りで、中にはウサギと鶏が飼育されていた。

 

 

「おお~、ウサギさんたちはいつ見てもラブリーなのん! こなみんがおしっこしたいの忘れちゃうのも当然なのん!」

「れんちゃん、そんなにウサギ好きなの?」

「当然ですが! 週末はウサギ小屋に行くのがうちの趣味です! 夏休みの間も時々来て、ウサギ小屋の世話してました!」

「うん、その気持ち分かるなぁ。前の学校じゃインコしか世話したことなかったけど、やっぱり一番世話したいのは……」

 

 

ウサギについてれんげと話をしながら鍵を開けようとする蛍。

その時、不意に気配を感じたので右に顔を向けると……ウサギがいた。

明らかに小屋の外にいるので、ようするに……。

 

 

「ウサギが逃げてる!?」

「あら、ほんと!」

 

 

良く見ると飼育小屋の入り口に近い地面に穴が開いているので、どうやらそこから脱走したらしい。

思いもしていなかったアクシデントに蛍はパニクるが、意外に冷静なれんげはすばやく捕獲作戦を立案した。

 

 

「ど、どうしよう!?」

「ウサギを普通に捕まえようとしても時間かかるだけなのん。そんな時はこれ、ザ・モロコシ釣り~!」

 

 

その内容は、トウモロコシを小屋に誘導するように置いていき、ウサギが近づいて来たらトウモロコシより好物のニンジンで釣って、小屋に入った瞬間戸を閉めるというものだ。

 

 

「う、うん、分かったよ。じゃ、私は戸を閉めるね」

「うちは怖がらせないよう優しく声かけてみるのん」

 

 

相談しているうちにもトウモロコシを食べながら徐々に近づいてくるウサギ。

2人は急いで小屋の中に入ると、早速作戦を開始する。

 

 

「おいで~。おいで~。こっちに来ればニンジンも一杯食えるの~ん。こっちにおいで~」

 

 

れんげが優しく誘いをかけると、入り口の目の前までやって来たウサギが彼女を見上げた。

ここまでは順調だが……いや、違う、ヤツが見ているのは、れんげより左にある小屋の鍵だ。

その瞬間、ウサギがニヤリと笑ったように見えた。

そして、故意か偶然か戸に体当たりをかまして上手いこと鍵をかけてしまう。

戸を止めるための金具が上に跳ね上げるタイプだったことが災いし、体当たりの弾みで金具が降りてしまったのだ。

つまり、れんげと蛍の方が飼育小屋に閉じ込められてしまったのである。

 

 

「う~ん。ウサギにニンジン一杯食わせるどころか、ウサギに一杯食わされてしまいました」

「あっ、上手い! …………………………………………そんなぁ~~~~~~~~~~!?」

 

 

若干の間を空けた後、自身に起こった非常事態に気づいて絶叫する蛍。

その同時刻、校舎に戻ってきていたこなみは、ほっとした表情でトイレから出てきた。

そこで、見知った人物の気配をキュピ~ンと感じ取る。

 

 

「ん~? 今、蛍お姉ちゃんの声が聞こえたような?」

 

 

何となく蛍の切羽詰ったような叫び声が聞こえた気がしたが、今はもう何も聞こえないので、とりあえず飼育小屋に行こうと思い直す。

彼女はそこにいるはずだから、行けば分かるだろう。

 

 

「待っててね~、ウサギさん!」

 

 

ただ単にウサギと遊びたいだけのような気もするが、まぁ問題ないだろう。

右手にニンジンを持ってのんきに鼻歌を歌いながら飼育小屋に行こうとすると、焼却炉でゴミを焼いている一穂と出会う。

彼女とは校舎に向かう時にも話をしたので、こなみがここにいる事情は既に知っている。

 

 

「こなみん、トイレ間に合ったかい?」

「うん、ギリギリセーフだったよ~」

「ふんふん、そりゃあよかったね~……おや?」

「どしたの、先生~?」

「いや~、向こうの道に何か落ちてるみたいなんだけど……なんだろね?」

 

 

こなみに歩み寄りながら話をしていた一穂は、飼育小屋へ行くための小道に何かが落ちていると気づいた。

よく見てみると、それは地面に置かれたトウモロコシだった。

 

 

「何故あんな所にモロコシが?」

 

 

疑問に思った一穂とこなみは、その場所へ一緒に行ってみることにした。

近くに寄ってみるとやはりトウモロコシで、原因が何なのか辺りを調べてみたら複数のトウモロコシが小屋の方へ向かって等間隔に置かれている事に気づいた。

それを見て一体どういうことかと思っていると、今度は近くの茂みからウサギが飛び出してきてこなみに近づいてきた。

何を隠そう、こいつは先ほどれんげたちを飼育小屋に閉じ込めた脱走ウサギである。

初めから逃げる気が無かったのかどうか分からないが、脱走したクセにこなみの持っているニンジンに惹かれてきたようだ。

 

 

「あれ~、何で君はこんな所にいるの?」

 

 

そう言いながら、ニンジンに夢中になっているウサギを抱っこするこなみ。

偶然にも、れんげたちを手玉に取った大物脱走犯を難無く確保することとなった。

本人は事情が良く分かっていないものの、とにかく飼育小屋に行こうとトウモロコシを拾い集める一穂と一緒に向かう。

そこで2人は、飼育小屋に閉じ込められているれんげと蛍に気づく。

 

 

「「……」」

「んにゃ? 2人とも、どうかしたの?」

「何でウサギみたいに真っ赤な目をしてるのかな~?」

 

 

まさに天の助け。

ウサギを釣るために置いたトウモロコシで自分の姉が釣れてしまった事には微妙な気持ちになったれんげだが、そんなものはこなみの抱いているウサギを見て速攻で吹っ飛んだ。

自分たちを危機に陥れた恐るべきあんちくしょうをいともあっさりと捕まえてしまうとは!

 

 

「「流石、アニマルマスター!!」」

「ふぇっ!?」

 

 

こうして、こなみの二つ名は本人のあずかり知らない所でどんどんと箔が付いていくのであった。

 

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 

気だるい空気が漂う午後3時頃、駄菓子屋で店番をしている楓が退屈そうに頬杖を付きながらぼやいていた。

 

 

「はぁ……今日も全然客来ね~な~」

 

 

それは当然だろう。

10代以下の子供が10人もいないような土地で駄菓子屋が繁盛できるわけも無く、毎日が絶賛開店休業状態である。

一応、日用雑貨などの副業的な売り上げはそこそこあるが、彼女のため息を止めるほどではなかった。

 

 

「こうも人来ないとオマンマの食い上げだな~」

 

 

普段はぶっきら棒で物怖じしないような楓も、お金が無ければどうしようもない。

こりゃ駄菓子屋以外でどうにかしないといけないかな~、などと考え込んでしまう。

思い切って転職でもしてみるか、捨て身のギャンブルで一攫千金を狙うか、それとも……無難に結婚して主婦になるか。

なんて事を思ったその時、楓の脳裏に大河の顔が浮かんでくる。

アイツと2人で食卓を囲んで、幸せそうにカレーを食べている姿が……あはは、あはは、あはははは!

 

 

「んなっ!? 待て待て私っ! アイツは年下だし、そもそも学生じゃね~か! っていうか、そんな目で見てね~しっ!」

「では、どんな目で見ているんだ?」

「きゃっ!!?」

 

 

あまりにも自然に思い浮かんでしまった妄想に悶えていると、タイミング良く(?)その当事者が現れた。

制服姿なので、学校の帰りがけに寄ってみたといった所らしい。

 

 

「今の驚いた声は少女のように可愛らしかったな」

「なっ!? なんだよ……どうせ似合わね~とか思ってるんだろ!」

「いや、君の存在に心奪われた男の本音だ」

「~~~~!!?」

 

 

あまりに真っ直ぐ過ぎる好意を向けられた楓は、先ほどまでの妄想と相まって余計に恥ずかしくなった。

これまでの付き合いから、この男の言動に嘘偽りが無いと分かっているので尚更である。

しかも、最近はこのようなやり取りが楽しくなってしまっているから性質が悪かった。

とはいえ、大河の言動全てを受け入れているわけではない。

 

 

「たく、そうやってすぐ口説き文句が出てくるけどよ、このみや小鞠にも同じようなこと言ってるだろ?」

「ああ。君たち全員に心惹かれているのは事実だからな。嘘をつく事など出来ないし、その必要も無い」

「んなこと言って、2人から告白されたらどうすんだよ」

「その時が来たら俺もしっかりと答えを出すさ」

「はっ、随分といい御身分だな」

「それは違うぞ。俺が君たちに好意を抱く事も、君たちが俺に好意を寄せる事も、お互いの意思を尊重した上での結果であって、そこに差などは存在しない」

「うん、まぁな……あいつらの意思で決めたことだから、私が文句言うのは筋違いなんだけどよ」

「本来、恋とは自由な物だからな。俺も遠慮はしないし、君たちも遠慮することはないんだ」

「いや、遠慮するなって言われても、私は別に……」

「そうかな、先ほどの君は恋する乙女のようだったが?」

「うぐっ!!?」

「はっはっは、そう照れることは無いさ。駄菓子屋から始まる恋というのもいいじゃないか!」

「B級映画みたいなノリで言うんじゃね~!」

 

 

どこまでもマイペースな大河の前では、楓の口撃も形無しだ。

確かに、彼は自分の気持ちを素直に言っているだけで不誠実な付き合いをしている訳ではないから、絶対に非難されるような事はやっていない。

ただ、彼の恋愛観は、こなみという見守るべき存在がいる影響から受け身の姿勢となってしまっているので、自分から告白する可能性が低いという難点があった。

自分の欲望を優先して妹を蔑ろにしてしまうような人間になる訳にはいかないという、根っからのシスコン魂が原因である。

普段の言動はやたらと積極的なクセに肝心な所は消極的なので、恋する乙女にとっては非常に厄介な男だ……。

 

 

「ところで、他にも気がかりな事があるように見えるのだが、どうかしたのか?」

「えっ? ああ……今日は儲けが少ね~な~って思ってな」

「なるほど、そういうことか。だったら俺が売り上げに貢献してやろう」

「そりゃありがたいね。で、どれを買うんだ?」

「そうだな……ここは定番のモロッコヨーグルを戴こう。しかも、大枚をはたいて箱買いだ!」

「大枚って言っても1260円だけどな」

 

 

まったく、駄菓子ってヤツはリーズナブルな値段である。

学業の合間を縫ってバイトに勤しんでいる大河にとってはさらに安い買い物なので、全く躊躇することなく財布からお金を取り出し楓に差し出す。

 

 

「釣りはいらない」

「1260円ピッタリじゃね~か!」

 

 

お約束のギャグをかましつつ、駄菓子1箱を購入する。

大河からお金を受け取った楓は、久しぶりに収入が入った嬉しさでちょっぴり笑みを浮かべてしまう。

すると、彼女の笑みに釣られて商売運も上がったのか、ここで新たなお客さんが現れた。

 

 

「あ~、お兄ちゃんだ~!」

「にゃんぱす~」

「ん? お前たちか」

 

 

声に反応して視線を向けると、駄菓子屋の入り口にれんげとこなみが立っていた。

ランドセルを背負ったままなので、飼育当番を終わらせてからその足でここに来たのだと分かる。

因みに、飼育小屋に閉じ込められたショックでテンションが下がってしまった蛍は、「シチュー! シチュー!」と言いながら真っ直ぐ帰宅している。

 

 

「なんだ、寄り道してきたのかお前ら」

「ちっちっちっ~、寄り道とは失敬なのん。うちらはお客のいない駄菓子屋を賑やかしに来てやったのん」

「お前の方こそ失敬だろ!」

「ぷぷっ! れんげちゃんのジョークは面白いね~」

「ほとんどジョークじゃないのが悲しいけどな!」

 

 

出会って早々に楓を翻弄する2人。

しかも、からかった直後に外へ出て行ってしまう。

何だろうと思った楓たちも一緒に外へ出てみると、れんげたちはガチャガチャの前にいた。

 

 

「ガチャやんの? 100円すんぞ?」

「お小遣いあるのん」

「れんげちゃん、コレ欲しいの?」

「うん」

「お、それはスゴイヤツだ。腕時計出る」

 

 

れんげたちが見ていたガチャガチャは、【ピコピコウォッチ】なるものが入っているようだ。

子供用の安っぽい腕時計ではあるが、これが一発で出ればかなり安い買い物となる。

しかし、この手のものは大抵【ハズレ】も入っていて、既に何度も悲しい経験をしているれんげは思いっきり警戒した。

 

 

「ぐぬぬ。うち知ってるん。こういうのは腕時計出ると思わせて変なの出るん! な!」

「えっ、そんなのやってみなきゃわかんねえじゃん」

「カプセル黒くて中身が見えないのが証拠なのん」

「あ~、ほんとだ~」

「これはあくどいな!」

「って、お前もそっちにつくのかよ!」

「「じ~」」

「い、いや違うぞ? それはそういうもんなだけで……」

「嘘だと思うならやってみればいいん。一回も出てきたことないのん」

「ん~、じゃあやってやるよ。見てろ?」

 

 

みんなからの非難(?)に負けて、楓は自腹でガチャガチャをやるハメになった。

何でこうなったと納得しかねる表情でハンドルを回す。

そうして出てきたものは……つくしんぼ君(絶叫ver)というしょぼいフィギュアだった。

 

 

「……すまん」

「うちは騙されないのん!」

「なんだよ、絶叫バージョンって……」

 

 

思っていた以上に酷い商売をしていた事に気づいた楓は地味に落ち込む。

まぁ、子供のうちから社会の厳しさを学べると思えば安いものかもしれない。

しかし、パンドラの箱には希望が入っているということも教えてあげなければいけない。

 

 

「よし、次は俺が挑戦してみよう」

「いや、私が言うのも何だけど、止めといたほうがいいぞ?」

「なに、今朝見た占いで、乙女座の者はツキがあると言っていたから、案外当たりが出るかもしれないぞ」

「がんばれ~お兄ちゃん!」

 

 

楓の助言をやんわりと拒否した大河は、こなみの応援を受けながらガチャガチャをやり、出てきた黒いカプセルを手に取る。

みんなの注目を集める中、それを開けてみると……なんと、希望どおりのピコピコウォッチが入っていた。

まさか本物が入っているとは思っていなかったれんげは興奮する。

 

 

「うおお~!? すごいのん! モノホンのホンモノなのん!」

「はぁ、ちゃんと当たりが入っててよかった……」

「これはれんげにあげよう」

「いいのん!?」

「ああ、存分に使うといい」

「うわ~い、ありがとなの~ん!」

「よかったね~、れんげちゃん!」

 

 

どうやら、乙女座の男によってれんげのピュアハートは守られたようだ。

楓としては美味しいところを持っていかれた感じで釈然としなかったものの、れんげが喜んでいるならまぁいいかと思い直す。

そんな風に優しく見守られている当のれんげは、早速腕に着けたピコピコウォッチをピコピコさせながら、こなみと一緒に店の中へと入っていく。

今度はお菓子を買うつもりらしい。

 

 

「ふ~ん……は! ヌンシャ~イ! 駄菓子屋~! コレ幾らなのん?」

「ああん? ちゃんと名前で呼べ。私には加賀山 楓って名前があるんだ」

「なっつんは、駄菓子屋って言ってるん」

「アイツのマネするとアホんなんぞ~……どれ?」

「コレなのん」

 

 

れんげが手にしているものは、これまた定番のさくらんぼ餅だ。

 

 

「ああ、それか~。それは高いぞ~……一個30万円だな」

「高い! うち、もっと安いと思ってたん……」

「この店は良い物しか仕入れないしな~」

「はぅ……」

 

 

楓の発言は駄菓子屋あるあるとして有名な物で明らかに嘘なのだが、まだ純粋なれんげは疑うことなく真に受けてしまった。

しょんぼりとするれんげを見てニヤリと微笑む楓。

その様子を見て何か思う所があったのか、大河はれんげの肩に手を置いてこう言った。

 

 

「心配はいらんぞ、れんげ。30万円くらい俺が出してやろう!」

「なにぃ!?」

「ほ、ほんとなん!?」

「ああ……ほら、楓」

「って、ただの30円じゃね~か」

「なに、嘘も方便だ。それに、優しい君を悪者にはしたくない」

「……あ~もう悪かったよ、ったく!」

「ほら、こなみにも同じものを買ってあげよう」

「わぁ、ありがと~」

「タイガーはお金持ちなんな~! 駄菓子屋とはえらい違いなのん」

「そんな悲しいオチつけんな!」

 

 

大河の機転で悪者にならずに済んだ楓であったが、その代わり精神的なダメージを受けることとなった。

踏んだり蹴ったりな感じで何となく疲れてしまい、思わずため息をつく。

その時、壁にかかった時計を見たれんげが唐突に叫んだ。

 

 

「いつの間にかもう4時なのん!」

「帰る時間か?」

「グレートマン始まるん!」

「何だそれ? テレビ番組?」

「ふむ、グレートマンか。懐かしいな」

「お前知ってんの?」

「ああ。乙女座にあるM87という楕円銀河からやって来た日本語の上手い宇宙人の話だ。俺も乙女座だけに親近感を覚えずにはいられない」

「あ~さいですか……」

 

 

自分から聞いたクセに大河の説明を聞き流す楓。

そうしているうちにもグレートマンを見たいれんげはそわそわとして、会計用の台に置いてある小さいテレビに気を取られていた。

 

 

「そこのテレビ見ていいん?」

「そこ狭いぞ。見るなら奥の居間で見るか?」

「見るん、見るん! ほら、こなみんとタイガーも遠慮しないで上がるのん!」

「お前は少し遠慮しろ」

「あはは~」

 

 

勝手知ったる他人の家とばかりにこなみたちを案内するれんげ。

海川兄妹は初めてなので、珍しそうに辺りを見回す。

その様子を見ていた楓は、大河に対して急に気恥ずかしさを感じてしまう。

 

 

「お前はあんま見るな!」

「おお、そうだな。若い女性が暮らしている部屋をじろじろと見回すのは失礼だった。済まない」

「ん~……まぁ、分かればいいんだよ……」

「だが、これだけ綺麗にしているなら恥じることは無い」

「そ、そうか?」

「ああ、女性らしくて好意を抱くよ。興味以上の対象だということさ」

「……(赤)」

 

 

このみや小鞠がいたら思いっきり警戒するほど良い雰囲気を発する2人。

しかし、幸いなことにこの場にはれんげとこなみしかおらず、そのお子様たちはテレビに夢中となっていた。

 

 

「グレートマン、グレートマンなのん!」

「でっかくてかっこいいね~!」

「ふぅん、最近の子供はこんなのを見るのかぁ」

 

 

若干顔を赤らめながらちゃぶ台に座った楓は、恥ずかしさを紛らわすように置いてあった煎餅を食べる。

バリッというおいしそうな音が思いのほか部屋に響く。

すると、テレビを見ていたはずのれんげとこなみが、物欲しそうに楓を見つめ始めた。

 

 

「「じ~」」

「わぁ~ったよ! 食わせてやるからそんな目で見んな!」

「ははっ、だったら俺もモロッコヨーグルを出そう」

「うわぁ、1箱もあるよ~」

「ご~せいなのん!」

 

 

場の流れに乗って大河もお菓子を出してきたので、いつの間にか遅めのオヤツパーティが始まってしまう。

その結果、楓は自分用の煎餅を全部食べられてしまったが、子供らしくはしゃぐれんげたちを見て優しい気持ちになり自然と微笑みを浮かべた。

 

 

「幼き子供たちを見守るその優しい眼差し……やはり、君は俺と同類だな!」

「誤解を受けるような言い方すんな!!」

 

 

そのように賑やかに過ごしているうちにグレートマンも終わり、外もすっかり夕暮れとなったのでれんげたちは帰ることにした。

楓はれんげを乗せたスクーターを手押しで進ませ、大河はこなみを肩車して軽快に歩く。

遠目から見ればまるで親子のように見える光景だ。

 

 

「勇者合体、グレートコナミン!」

「おお~、かっこいい~! うちもやってみたいのん!」

「ああいいぞ、いくらでもやってやるさ。ついでに楓もどうだ?」

「やらんわっ!」

 

 

帰りの道中も非常に賑やかだった。

代わりばんこで子供たちを肩車しながら楽しげに歩みを進め、日が沈みかけた頃にれんげの家へと到着する。

大河たちは家の前でれんげと別れ、玄関まで彼女を送っていった楓を待つことにした。

そして数分後、一穂に挨拶してから戻ってきた彼女にねぎらいの言葉をかける。

 

 

「ご苦労さん」

「ああ……今日はそれなりに売り上げあってよかったけど、何か疲れたよ」

「それは大変だったな!」

「ほとんどお前のせいだったんだけどな!」

 

 

疲れたとか言ってるクセに、大河と一緒にいるといつもどおりのやり取りをしてしまう楓。

何だかんだと言って気に入っている証拠かもしれない。

 

 

「駄菓子屋~!」

「あれ、れんげちゃんだ~」

「これ持ってくん」         

「カレ-か」

「ねえねえに入れてもらったん! 今度、みんなでグレートマンごっこするのんな!」

「気が向けばな」

「はっ! じゃあ、駄菓子屋は行きつけのバーのママ役させてあげるん!」

「前言撤回だ、こんにゃろう!」 

「だったら、グレートマンに絡んでくる不良さん役は?」

「それだ! イメージぴったりなのん!」

「ぴったりじゃねぇよ! キンパツだけでイメージすんな!」

 

 

この世界でも地毛の色で苦労している者がいたようだ。

確かに、彼女は友達が少ないし……。

 

 

「まぁいいや……じゃあな!」

「怪人役でもいいの~ん!」

 

 

やたらとグレートマンごっこに固執するれんげに見送られながら3人は帰途につく。

店を開けたまま来た楓は、途中まで大河たちと同行してからすぐに帰るつもりだ。

しかし、分かれ道に着く前に大河から新たなイベントを持ち込まれてしまう。

 

 

「そうだ。よかったら、家で夕食を取っていかないか?」

「えっ、いいのか?」

「もちろん。君の事を母さんにも紹介したかったし、丁度良いさ」

「なっ!? お、親に紹介って、何か変なこと言いだすんじゃね~だろうな!?」

「そうだな、俺の大切な人ですとでも言えばいかな?」

「んなこと言ったら勘違いされんだろ~が!」

「はっはっは! 別に嘘はついていないぞ!」

「くぅ~! こいつは、いつもいつも~!」

「えへへ~、2人とも仲良しさんだね~」

 

 

反論しつつもどこか嬉しそうな楓は、結局誘いを断りきれずに海川家で楽しく(?)夕食を取るのだった。

ただ、海川家の夕食もカレーだったことはちょっぴり誤算だったかもしれないが。

 

 

「(明日もカレーになるけど……まぁ、いいか)」




だんだんアイデアが行き詰まってゆく……これが連載の恐ろしさか!
次は小鞠がメインになりそうだけど、ど~しよっかな~。

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