漆黒の竜人と魔法世界   作:ゼクス

23 / 49
今回はちょっと短めです。


波紋

 重傷を負って帰還したブラックとルインの治療を終えた後、二人をフリートとガブモンに任せたリンディは、すぐさまオファニモン達に事の次第についての報告を行なっていた。

 

『オォォォッ・・・・』

 

『・・・・間違いなく・・・・ルーチェモンだ』

 

『やはり既に覚醒を果たしていた・・・・予想していた事とは言え・・・間違いである事を願っていましたが』

 

 リンディから送られて来たルーチェモンの姿が映った映像に、ケルビモン、セラフィモン、オファニモンは動揺を隠し切れない様子で映像を見つめる。

 一年前のディアボロモンが引き起こした事件の裏に、ルーチェモンらしき影が存在していたとは言え、『三大天使』としては外れて欲しかった予感だった。それほどまでにルーチェモンの覚醒を『三大天使』は、いや、デジタルワールドの護りを担う全てのデジモンが恐れていた。

 

「ルーチェモンは彼『X進化』の形態を知っていました・・・彼がデジタルワールド以外で『X進化』を使ったのは一年前のディアボロモンとの戦いだけの筈。つまり、推測していた通りあの事件の裏には」

 

『・・・ルーチェモンの介入が在ったと見て間違い在るまい』

 

『だとすれば、やはり同時期に起きた各デジタルワールドでの幼年期デジモン及びデジタマの大量失踪の犯人もルーチェモンとその配下と見るべきか』

 

『私もセラフィモンの考えに同感です・・・・ケルビモン、貴方は?』

 

『我も同じだ。だが、予想していたよりもルーチェモンの覚醒が早過ぎる!』

 

 苛立たしげにケルビモンはテーブルに手を叩きつけた。

 それと言うのも本来ならば『七大魔王』に属するデジモンの覚醒には時間が掛かる。しかも、膨大なエネルギーが必要なのだ。加えて言えばルーチェモンが封印されていたデジタマには『三大天使』が施していた強力な封印が掛かっていた。だからこそ、一年前のディアボロモンの件と幼年期デジモン及びデジタマの失踪事件の犯人がルーチェモンだと確証出来なかった。

 だが、こうしてルーチェモンが目覚めている姿を捉え、しかもルーチェモン自身が一年前の件に関わっていた事を臭わせる言葉を告げている。

 それら全てを理解しているリンディは、ゆっくりと空間ディスプレイに映っているオファニモン達に自らの推測を話す。

 

「・・・・考えられるとすれば、管理局が保管している『ロストロギア』をルーチェモン覚醒に用いたのかもしれません」

 

『・・・『ロストロギア』・・・確か各世界の遺失文明が残した遺産の名称だったか?』

 

「はい。『ロストロギア』の中には『次元震』と呼ばれる世界を揺るがすどころか崩壊に導くほどの災害を巻き起こす物も在ります。私自身も管理局に属していた時に、その類の『ロストロギア』を回収しました」

 

『では、『倉田明弘』は『ロストロギア』を用いて私達が掛けた封印を破り、ルーチェモンを覚醒させたと考えている訳ですね?』

 

「オファニモンさんの考えのとおりです・・・確かにお三方が掛けた封印となれば、並大抵の事では破れないでしょう。ですが、管理局は創立以来からずっと『ロストロギア』を収集しています。その数は膨大です。それらの強力なエネルギー関係を使えば…』

 

『我らの封印とて破れると言う事か』

 

『いや、僅かな綻びだけでもルーチェモンならば内側から破れるだろう。嘗て『デジタルワールド』の全てを使って封印していた時でさえも、奴は長い年月を掛けて封印を破ったのだから』

 

 リンディが告げた推測にケルビモン、セラフィモンは苦々しい声を出しながら納得した。

 だが、その推測は更に不味い事態が迫っている事を告げる情報だった。ルーチェモン以外の『七大魔王』のデジタマにも全て強力な封印が施されている。だが、既に『倉田』は封印を破り、早い段階で『七大魔王』を覚醒へと至る為の手段を手にしてしまった。もしも残る六つの『七大魔王』のデジタマが奪われれば、『七大魔王』デジモンの早期覚醒が行なわれる可能性は充分に考えられる。

 状況は自分達が予測していた以上に最悪な方向へと突き進んでいる事実に、オファニモン達は顔を暗くする。

 

『・・・・・やはり例の件に関しては・・・・早期に実行すべきようですね』

 

「例の件?・・・・と言いますと?」

 

『うむ・・・・実は我らは兼ねてより各デジタルワールドの守護者達と話し合う場を設けようと考えていたのだ』

 

『先日貴殿らの報告を受けてから、各デジタルワールドのデジモンが此方側に存在している事を見過ごせないと、他のデジタルワールドの守護者達から打診が届いて来ている。私達としても他のデジタルワールドの守護者達と一度顔を合わせて話し合うべきだと考えていた』

 

『今回の『ルーチェモン』の存在は隠す事は出来ない事実です・・・・故に近々話し合いを行ないます』

 

「分かりました・・・確かに必要な事ですから・・・それで私達は今後はどう行動すべきなのでしょうか?」

 

『・・・・ブラックウォーグレイモンが重傷で動けないとなれば、貴女とガブモンだけで『倉田』と『ルーチェモン』を追うのは危険過ぎます。暫らくはイガモン達と共に各世界に居るデジモン達の帰還作業を主として動いて下さい。無論情報収集は怠らずにお願いします』

 

「・・・了解しました」

 

 オファニモン達の告げた方針は適切だとリンディは判断し、映像の先に居るオファニモン達にお辞儀する。

 同時にオファニモン達も頷き返すと共に、ディスプレイが消失し通信が終わる。リンディはゆっくりと顔を上げると共に背後に置かれている椅子へと座る。

 

(フゥ~・・・・・『七大魔王』デジモン・・・彼の知識と話で知ってはいたけれど、知っているだけだと思い知ったわ・・・・正直正面から向かい合うなんて出来ないと見ただけで理解させられた)

 

 戦いが始まる前にルーチェモンの姿をリンディも確認して、クロノ達の避難を行なった。

 だが、それが出来たのはブラックが前に立っていたおかげだった。ルーチェモンが放っていた威圧感に対して、リンディもまた萎縮してしまっていたのだ。ブラックが居たおかげで威圧感に飲まれずに済んだが、正直自分の死しかリンディはルーチェモンを見てイメージ出来なかった。

 戦うと言う意志さえも失わせて、敗北のイメージしか与えない存在こそが『七大魔王』デジモン。その力をリンディは味わった。我知らずに震える体をリンディが抱き締めていると、部屋の扉が開きガブモンが入って来る。

 

ーーーブゥン

 

「失礼します、リンディさん」

 

「ッ! ・・・・・・あぁ、ガブモン君。治療の方は終わったの?」

 

「はい、ルインさんの容態も安定しましたし、ブラックさんも自己治癒の最中で、後リンディさんが転送させた例の人(・・・)も取り合えず命の心配は無いそうです」

 

「そう・・・・(あの状態の彼女(・・)の命を救うなんて・・・・・流石はフリートさんと言うべきかしら)」

 

 リンディがフリートに治療が頼んだ相手は、それこそ一刻を争うどころか生きているのが不思議な状態だった。

 内臓の殆どが破裂。骨格は全身罅だらけ、両手足に関しても辛うじて右足が繋がっている状態でリンディとブラックの目の前に壁を突き破りながら現れたのだ。もしもリンディが慌てて受け止めていなければ、そのまま壁を突き破って外どころか研究所から遠く離れた場所で発見されていただろう。無残に変わり果てた肉片として。

 そんな状態の人物の命を取り留めたばかりか、再起可能にまで出来るのだからアルハザードには『死者蘇生』の秘術が在ると思われても可笑しくないと思いながらリンディは椅子から立ち上がる。

 

「さて、それじゃフリートさんにお礼を言わないとね。私の我が侭を聞いてくれたんだし」

 

 そう呟くと共にリンディはガブモンと共にフリートが居る治療室へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

「・・・・此処は?」

 

 クロノは目覚めると共に辺りを見回す。居る場所は如何やら何処かの病室らしく、自身が着ている服も病院着に成っている事に気がつく。

 一体自分は何故此処に居るのかと体を起こしながら、意識を失う前の出来事を思い出そうとする。しかし、クロノの思考を遮るように病室の扉が開き、エイミィが病室に入って来て目を見開く。

 

ーーーブゥン!

 

「ッ! ・・・・クロノ君?」

 

「・・・エイミィか? 此処は一体ど…」

 

「クロノ君!!」

 

 言葉を遮るようにエイミィは走り、クロノを抱き締める。

 突然のエイミィの行動にクロノは驚きながら目を瞬かせるが、エイミィは構わずにクロノを抱き締め続ける。

 

「・・・本当に・・・本当に心配したんだよ・・・急に連絡が途切れたし・・・そ、それに現場があんな事になったから・・・」

 

「あんな事? ・・・・・・ッ!? そうだ!」

 

 エイミィの発言に鈍っていた思考が漸くハッキリしたクロノは気絶する前に起きた出来事を全て思い出す。

 圧倒的な威圧感を発して立ちはだかったルーチェモン。そのルーチェモンの前に現れたブラック。そして動けずにいた自分達を逃がしてくれただろうリンディの事も全てハッキリ思い出した。即座にクロノは抱きついているエイミィの肩に手を置いて引き剥がし、真剣な眼差しで見つめる。

 

「僕らが向かった現場はどうなった!? それに他の局員達は!?」

 

「・・・・クロノ君以外の潜入した局員の殆どがこの病院で入院しているよ・・・ただ五人の局員が死亡を確認されて・・・それで三名の局員が行方不明なの」

 

「ッ!?」

 

 顔を暗くしながらエイミィが告げた事実に、クロノはルーチェモンに殺された局員達の事を思い出す。

 殴られて壁の向こう側に消え去ったクイントも数に含めれば、クロノが知っている数と合っている。呆然として居るクロノにエイミィはゆっくりと事情を説明し出す。

 突然に違法研究所に潜入した筈のクロノ達が、現場から遠く離れた都市の大病院の前に転移して来た事。すぐさまエイミィ達の下にその報告が届いて病院に訪れた事。

 自分がこの場に居る理由が分かったクロノは納得したように頷く。その様子を確認したエイミィは、部屋に備え付けられているテレビのスイッチに手を伸ばす。

 

「それと・・・・現場の事だけど・・・・これを見た方が早いよ。今はどのチャンネルでもやってるから」

 

ーーーポチッ

 

「ッ!?」

 

 エイミィがテレビのスイッチを押すと共に映り出した画面に、クロノは驚愕した。

 画面に映っている光景は、まるで『天変地異』が起きたとしか思えない光景だった。強烈な雨と全てを吹き飛ばすほどに吹き荒れる風が巻き起こる空。そして地上は風によって一切の木々が薙ぎ倒され、更には地面に亀裂が幾重にも広がっていた。

 その光景にクロノが言葉を失っていると、レポーターと思わしき人物が現場の説明を行い出す。

 

『御覧の通り、突然に起きた現象によって現場は酷い状況です。現在私達の世界に常駐している管理局員が総動員してこの現場近くで襲い掛かった地震に寄る人々の救助を行なうと共に、亀裂からのマグマの流出の警戒に当たっています。付近の皆様は管理局の指示に従って行動して下さい』

 

「・・・マグマの・・・流出だって?」

 

「そうだよ・・・・現場がこんな事に成ってから、ずっと警戒に当たっているの。それに余震も続いていて、もしもマグマの流出が起きたら亀裂の数から考えて付近に酷い被害が起きるから、今本局からも増援が次々とこの世界に向かってる。その中には広域魔法を使えるはやてちゃんとリインフォースも居るの」

 

「・・・・そうか」

 

 搾り出すような声で相槌を返すのがクロノには精一杯だった。

 気絶する直前まで居た現場で起きている災害の原因は、先ず間違いなくブラックとルーチェモンの激突の結果。ブラックの非常識さは知っていたが、それに匹敵するような存在が現れた。

 

(・・・ブラックウォーグレイモンはルーチェモンの事を知っているみたいだった・・・・それにルーチェモンも・・・・一体何が起きているんだ?)

 

ーーーガチャッ!

 

「失礼するぞ」

 

 クロノの思考を遮るように病室の扉が開き、病院着を着たゼストが入って来る。

 ゼストの来訪にクロノが顔を上げると共に、ゆっくりとゼストはクロノに視線を向けながら声を掛ける。

 

「・・・起きたようだな、クロノ執務官」

 

「はい・・・・・グランガイツ隊長も無事で何よりです」

 

「何とかな・・・・聞きたい事があって来た」

 

「・・・分かってます」

 

 ゼストがやって来た意味が分かっているクロノは頷き返し、エイミィはゼストが座れるように椅子を用意する。

 用意された椅子にゼストは座りながら、ゆっくりとクロノに顔を向ける。

 

「・・・・粗方の事情は先に目覚めたメガーヌから聞いている・・・・ルーチェモンと言う奴にナカジマを含めた者達はやられたそうだな?」

 

「・・・・ナカジマさんを含めたお借りした部下の方々の何名かを死なせてしまった事は・・・・・謝って済む事では無いですが、申し訳ありません」

 

「いや・・・・・話を聞くだけでも、あのブラックウォーグレイモンに匹敵する相手だったのは理解している。それにあいつらも覚悟は出来ていた。管理局と言う仕事についているのだから、覚悟は俺も常にしている・・・・問題はこれからだ」

 

「・・・・はい」

 

 ゼストの言いたい事を理解しているクロノは同意を示した。

 今回の失敗は多大な失点になるのは目に見ている。任務の失敗だけではなく、管理世界の一つに被害を及ぼしてしまった。ブラックが関わっているからと説明したとしても、単体で『天変地異』を及ぼすほどの被害を引き起こせると一般の人々が信じる訳が無い。これで自分達と敵対していた派閥が本格的に再起に乗り出して来る未来が予想出来るクロノとゼストは、悔しそうに顔を歪めるのだった。

 

 

 

 

 

 『天変地異』が起きた世界とは別世界に在るスカリエッティの研究所。

 その研究所に帰還したウーノは、即座に先に気絶させて転移させたスカリエッティを叩き起こし、負傷を負ったチンクの治療を頼んだ。最初は自分が気絶している間に全てが終わってしまった事実に不満と怒りを覚えたスカリエッティだったが、ウーノが脱出する直前に確保していた監視システムのデータを渡すと、打って変わって上機嫌になり、今はチンクの治療に勤しんでいた。

 

「やれやれ、君までも負傷するとはね、チンク」

 

『・・・・申し訳ありません、ドクター』

 

 治療カプセルの中に入っているチンクは、申し訳なさそうにスカリエッティに返事を返した。

 

「別に責めている気は無いのだがね・・・・しかし、本当に右目は直さなく良いのかい? 『戦闘機人』である君ならば直せるのだけど?」

 

『・・・この右目は躊躇したせいで出来た傷・・・・戒めの為にも直す気は無いです』

 

 チンクは直せる右目を直す気が無かった。

 ゼストに負わされた傷の原因は、先ず間違いなく自分が自らのISである『ランブルデトネイター』の使用を一瞬躊躇してしまったせい。もしも躊躇せずに使用していれば、ダメージは受けたとしても右目を失う事どころか、ゼストを倒せていた。二度と同じ過ちを繰り返さない為に、チンクは直せる右目を直す気が無かった。

 その意志の強さを感じたのか、スカリエッティは笑みを口元に浮かべながらコンソールを操作しているとウーノが部屋の中に入って来る。

 

「ドクター、クアットロの治療が完了しました。ですが、トーレの方は今暫らく時間が掛かりそうです」

 

「そうかい、ウーノ・・・・それで、倉田が居ない時のルーチェモンと対峙した感想はどうなのかね、二人とも?」

 

『ッ!?』

 

 スカリエッティの発言にチンクとウーノは驚くが、スカリエッティは笑みを深める。

 

「ウーノ。君が私を気絶させた理由は、私とルーチェモンが倉田の居ない時に会う危険性を予測していたからだろう?」

 

「・・・・はい、ドクター・・・・気づいていたのですか?」

 

「もちろんさ。正直に言えば、私はソレを体感したいと思っていたのだよ。何れは敵対する相手なのだからね」

 

「・・・・・勝てるとお思いなのですか?」

 

「ん?」

 

 恐怖を隠し切れない声で質問したウーノに、スカリエッティは目を向ける。

 ウーノは両手で自らの体を抱き締め、ルーチェモンから感じた恐怖から来る震えを押さえようとしていたが、押さえ切れずに体を震わせていた。それは治療カプセルの中に居るチンクも同じなのか、ルーチェモンと会った時の事を思い出して体が震えていた。

 

「・・・・正直言って、私はルーチェモンに勝てる予想図は見えませんでした。宿ったデジモンの本能が逆らうなと告げています」

 

『・・・私も同じです、ドクター』

 

「・・・・フム、流石だね。一応同盟関係とは言え、釘刺しは行なっている。フフッ、恐ろしいね。流石は『七大魔王』と言う称号が与えられる存在だ」

 

 スカリエッティはウーノとチンクの様子から、ルーチェモンがあえて自らの無意識の威圧感を抑えていなかったのを悟った。

 倉田達とスカリエッティ達の同盟はあくまで互いの利益の為の関係。同じ目的を持っている訳でも、ましてや仲間でさえも無い。何時相手側に牙を向けても可笑しくない関係が倉田達とスカリエッティ達なのだ。だからこそ、ルーチェモンは釘指しを行なった。今はまだ同盟関係を維持する必要性が在った。

 何せスカリエッティは、“ルーチェモン達が欲している物を探索する力を持っている”。それは管理局さえも今は持っていない。欲している物を効率良く手に入れる為には、スカリエッティとの同盟を維持していなければならないのだ。

 

「君達二人は釘刺しに利用されたのだよ。逆らう気が失せれば、それだけ欲している物が手に入り易くなるからね」

 

『・・・・・・』

 

「言葉も無いようだね。しかし、やはりそろそろ私達も独自の動きを行なう時が来たようだ」

 

「と言いますと?」

 

「・・・・フフッ! 喜びたまえ、ウーノ、チンク! 遂に! 遂に! 発見したのだよ!! 管理世界が認知している『地球』とは別の『デジタルワールド』が存在している『地球』を!!」

 

『ッ!?』

 

 喜びに満ち溢れたスカリエッティの発言にウーノとチンクが目を見開く。

 その様子を楽しげに眺めながら、スカリエッティはコンソールを操作して別の地球が映っている空間ディスプレイを展開する。

 

ーーーブゥン!

 

「時間は掛かったが、漸くルーチェモンが使っている空間移動がある程度解析出来てね。解析出来た情報から座標を予測し、探査用の機器を動員した結果、発見出来た。先ず間違いなく、この地球には『デジタルワールド』が存在しているのだよ」

 

「・・い、何時の間にそのような事を?」

 

「何最初にルーチェモンが私達の前にデジモンを連れて来た時さ。あの時から独自に動けるように準備は行なっていたのだよ。まだ、ルーチェモンも此方側の技術を甘く見ていたようでね。まさか、解析していたとは考えても居なかっただろうさ」

 

 スカリエッティは既にルーチェモン達が自分達の事を不要になった切り捨てる事を予測していた。

 だからこそ秘密裏に、側近であるウーノにさえも内緒にして行動していた。その結果、時間は掛かったが認知されていない世界を発見したのだ。世紀の大発見なのだが、スカリエッティはそんな事をおくびにも出さずに楽しげに固まっているウーノとチンクにこれからの方針を告げる。

 

「チンク。君はトーレが回復し次第すぐに、新しく目覚める姉妹と一緒にこの世界の『デジタルワールド』に向かってくれたまえ。そして調べるのだ」

 

「他の『七大魔王』に関してですか?」

 

「いや・・・其方はルーチェモン達が狙っている以上危険だからね。他のデジモン・・特に『守護者』に関係するデジモンを調べてくれたまえ。無論、今のところは所在地だけで構わない」

 

『・・・・分かりました、ドクター』

 

 与えられた任務にチンクは了承の返事を返した。

 その様子に満足げな笑みをスカリエッティが浮かべていると、空間ディスプレイに連絡が届いている事に気がつく。即座に確認し、内容を読み進めて呆れたように目を細める。

 

「やれやれ」

 

「どうかしましたか、ドクター」

 

「何スポンサーからさ。今こそ自分達が権威を盛り返す時だから、邪魔者を排除しろと言う指示さ。無論ばれないようにだがね」

 

「邪魔者? ・・・・・・あぁ、例の少女ですか」

 

「そう、彼女さ。まぁ、私達としても姿を目撃されているからね。余計な情報を吐かれるのは確かに困るのは事実だよ。さて、どうやら倉田の方にも指示を出しているようだから、此処は共同して動くとしよう。私達の方から出すのは…」

 

「その任務、私が受けますわ、ドクター」

 

 スカリエッティの言葉を遮るように新たな声が響いた。

 その声の主にスカリエッティ、ウーノ、チンクが目を向けてみると、戦闘スーツにケープを首に掛けたクアットロが立っていた。その右頬には薄っすらとでは傷跡が残されている。

 

「ドクター、その任務には私が行きます」

 

「フム・・・・まぁ、構わないよ」

 

「ありがとうございますわ。では、準備をして来ます」

 

 クアットロはスカリエッティに礼を告げると共に、踵を返して部屋から出て行った。

 

「・・・ウーノ。クアットロの頬の傷跡は治らなかったかい?」

 

「はい。今回判明した事なので報告が遅れましたが、どうやらバイオ・デジモンに進化している間に負った負傷は深いモノの場合は傷跡が元の姿に戻っても残るようです。また、試しに進化もして見ましたが、進化後も傷跡は残っていました。データが不足しているので詳細は不明ですが」

 

「なるほど・・・もしかしたらバイオ・デジモンとしての弊害なのかも知れないね・・・後で時間が出来次第に治療法を考えて見るべきか」

 

「はい。今回のクアットロの傷は別だとしても、今後の戦いを考えれば治療法は必要ですから」

 

「そうだね。さて、先ずは倉田達への連絡だ。チンクの治療の方は頼んだよ、ウーノ」

 

「畏まりました」

 

 そうスカリエッティとウーノは言い合うと、それぞれ自分達が行なうべき事を実行するのだった。




次回は漸くマッドの手によって生まれ変わったアレが登場します。

なろう時代の時よりも遥かに強力になっています。
何せAI部分以外の全てがマッド謹製の品なので、確実に管理局に発見されたら『ロストロギア』認定間違い成しの品になっています。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。