漆黒の竜人と魔法世界   作:ゼクス

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傲慢の天使

 とある管理世界の深い森の中に作られた違法研究所。

 その違法研究所を見通せる位置に在る小高い丘の上で、『首都防衛ゼスト隊』の隊員達が違法研究所を見張っていた。

 隊のリーダーであるゼストは険しい視線を違法研究所に向けながら、グローブ型のデバイス-『アスクレピオス』-を構えて足元に紫色の魔法陣を発生させて索敵を行なっている二十歳過ぎぐらいの紫色の長髪の髪の女性-『メガーヌ・アルピーノ』に質問する。

 

「どうだ? メガーヌ」

 

「・・・すいません、隊長・・・研究所を索敵しようにも、何かに阻害されているようで内部まで索敵は無理です」

 

 そのメガーヌの報告にゼストは、丘から見える違法研究所の内部には何者かが潜んでいる可能性が高い事を察する。

 今までも数多くの違法研究所を摘発して来た経験から、破棄された研究所は大抵メガーヌの索敵で何かしらの情報が掴めた。補助型として優秀な魔導師であるメガーヌの実力はゼスト隊の中でも上位。そのメガーヌの索敵で何も判別出来なかったとすれば、少なくとも誰かが研究所の中に居る可能性が高いと言う事に他ならない。

 それを察した話を聞いていた他の隊員達も警戒心と戦意を強めながら、違法研究所の見張りに集中していると、メガーヌと同い年ぐらいの両手に機械的な拳型のデバイス-『リボルバーナックル』-と、両足にローラー型のデバイス-『ロングブーツ』-を装着してバリアジャケットを纏った蒼い髪の女性-『クイント・ナカジマ』が気になった事をメガーヌに質問する。

 

「メガーヌ? つまり、索敵が出来ないのは研究所の中だけで外は出来るのよね?」

 

「えぇ・・少なくともそうよ、クイント」

 

「・・・防衛システムで妨害しているとしたら、かなり高性能ね・・・メガーヌの索敵能力は地上でも一、二を争うのに」

 

「・・・ナカジマの言うとおりだ。今回の任務は今まで以上に危険を伴うだろう・・各自、自分のデバイスの調整は万全にしておけ!」

 

『了解!!』

 

 ゼストの指示に他の隊員達は即座に了承し、クイントもメガーヌも自分のデバイスの調整を始める。

 今回の任務の重要性は隊の誰もが理解していた。もしも旨くいけば違法研究所を行なっている犯罪者の逮捕が出来るばかりか、管理局の闇を更に減退させる事が出来る。

 既にゼスト隊の隊員はレジアスの許可も出たので、管理局と『戦闘機人』及び『人造魔導師』に関する真実を知っている。最初聞かされた誰もが呆然として言葉を失ったが、彼らは管理局を辞めずに留まってくれた。信じられる隊長であるゼストから管理局の浄化に関する案件を聞かされた事も在ったが、隊の誰もが地上の人々の平穏を望んだからだった。

 そんな部下達をゼストは誇りに思っていた。特に『戦闘機人』関係で見逃す事が出来ない事情を持っているクイントのやる気は隊の中でも一番高かった。何としても今回の任務を完遂しなければとゼストが決意していると、隊員達の背後に転送用の魔法陣が出現する。

 

ーーーブォン!!

 

「来たか」

 

ーーーシュゥン!!

 

 ゼストが転送用の魔法陣を見つめながら声を出すと、転送用の陣の消失と共にバリアジャケットを纏い、それぞれデバイスを持った武装局員二十名と、そのリーダーで執務官服を模したバリアジャケットを纏い、『S2U』を手に持ったクロノが前に足を踏み出す。

 クロノはゆっくりとゼスト隊の面々を見回すと、隊長であるゼストに近寄って敬礼を行ないながら挨拶を行なう。

 

「・・少し遅れて申し訳ありませんでした・・・ミゼット統幕議長付きの執務官クロノ・ハラオウン・・並びに本局武装隊員二十名合流しました」

 

「地上本部首都防衛隊所属、ゼスト隊隊長のゼスト・グランガイツだ・・・・君の事は噂で知っている・・今回の任務では宜しく頼む」

 

「此方こそ」

 

 クロノとゼストは互いに挨拶を行ないながら握手を交し合った。

 今回の違法研究所の摘発は今までよりもかなり危険が在ると判断したレジアスは、改めてミゼット達と相談してクロノを含めた選りすぐりの局員達を派遣して貰った。二年前では考えれない状況だが、最近では徐々に『陸』と『海』の犬猿の仲も多少は緩和されていた。だからこそ出来る合同任務であり、これからの管理局内の関係に影響を及ぼす任務でも在る。

 それを理解しているミゼットは信頼が於けるクロノを含め、レジアスが納得するベテランの武装局員二十名を今回の任務に参加させたのだ。

 

「・・クロノ執務官?・・やはり、今回の任務には君の補佐を行なっている少女は参加しないのだな?」

 

「はい・・・テスタロッサ補佐官は別の任務についています。これはミゼット統幕議長からの指示でもあります」

 

「・・・話には聞いている・・・・例の『高町なのは』と言う少女についてだな」

 

「・・えぇ・・・その件でフェイトはかなり精神が揺らいでいますし、更にレジアス中将の情報から今回の研究所の主は彼女と関係が在る意味では深い相手です・・・冷静に職務を行なえない可能性も在りますから、なのはの護衛の為にも参加メンバーからは除外しました」

 

「賢明な判断だ・・・君は大丈夫か? 親しい者を利用されたが」

 

「公私の区別はついています・・・今回の任務の重要性は理解していますので、安心して下さい」

 

「そうか・・・期待させて貰う・・・・だが、嫌なものだな・・・子供が権力争いの犠牲になると言うのは・・・レジアスから聞いたが・・事件の現場には彼女を狙っていた不審な機械兵器の残骸が在ったそうだな?」

 

「はい・・・・技術部の話ではかなり高性能の機動兵器らしく・・・残骸の数から考えて既に量産されている可能性は極めて高いらしいです」

 

「同感だな・・・さて、そろそろ時間だ・・・クロノ執務官・・・其方の武装局員を数名を俺の方に貸してくれ。代わりに此方は索敵が得意な魔導師と接近戦が強い魔導師を出す」

 

「分かりました・・それじゃ僕らは裏手側から攻めて、ゼスト隊長達は」

 

「前からだな・・・前後を挟み撃ちにして逃げ場を少しでも減らすのが良いだろう・・・突入の合図は其方に任せる」

 

「了解です・・・それじゃ行きましょう!」

 

「うむ」

 

 クロノの言葉にゼストは頷き、クロノが連れて来た武装局員数名と自分の部下達を連れて違法研究所に向かい出す。

 それを確認したクロノもクイントとメガーヌの二人を加えた自分の部下達と共に研究所を回りこむように、移動して裏手に回った。ゆっくりと入れそうな場所は無いのかと探すが、それらしい場所は発見出来ず、クロノはメガーヌに質問する。

 

「アルピーノさん・・・何処か侵入出来る場所は在りませんか?」

 

「・・・いえ・・・どうも裏手には入り口らしきモノは無いみたいです、ハラオウン執務官・・・隠されている可能性も在るでしょうけど・・・残念ながらソレらしいモノは探知出来ませんでした」

 

「・・なら、作るしかないわね・・・ハラオウン執務官」

 

「それしかないか・・・・(ゼスト隊長・・・今から壁を破って突入します。一分後に突入をお願いします!)」

 

(了解した!!)

 

 念話で突入のタイミングをゼストに伝えたクロノは、ゆっくりとクイントに顔を向けて無言で頷く。

 クイントはそれに対して頷き返すと、右手に装着しているリボルバーナックルを目の前に在る壁に向かって構え、カートリッジを一発使用すると高速回転し始めたリボルバーナックルを壁に向かって叩き込む。

 

ーーーギュルルルルルルルッ!!!

 

「ハアァァァァァァァァァァァーーーーーーーー!!!!!」

 

ーーードゴオオオォォォン!!!

 

 クイントの渾身の一撃を受けた壁は人が通れるほどの大きさぐらいに粉砕し、即座に二名の武装局員が入り込んで辺りを警戒する。

 入り込んだ二名の局員は大丈夫だと言うように手で促し、警戒しながらクロノ達が内部に足を踏み入れると、其処は偶然にも通路だったらしく、左右に道が伸びていた。

 

「・・・・二手に分かれるのは危険かもしれない。全員前後を警戒しながら、右の方に進もう。僕らが入った位置からだと、右側の方が広い筈だ」

 

『了解』

 

 クロノの指示に静かに他の面々は頷き、警戒しながらゆっくりと通路を進んで行く。

 既にゼスト達も侵入している筈だが、戦闘音のようなモノは聞こえず、念話でも何の連絡が届いていない。余りの静けさにクロノ達は不審を抱きながら、前へと進む。

 

「・・・静かですね」

 

「あぁ・・・・こう言う場合、既にこの研究所は破棄された場所か・・・・或いは・・・」

 

ーーーウイィィィーーーン!!

 

『ッ!!』

 

 突如として通路の奥側から何かが起動するような音が鳴り響き、クロノ達がデバイスをそれぞれ構えた瞬間、前方から楕円形の機械的な目を二つ持った機械兵器-『ガジェットⅠ型』が十機近く宙に浮かびながらやって来た。

 

「撃て!!!」

 

ーーードドドドドドドドドドドドドドドッ!!

 

 クロノの指示にデバイスを構えていた武装局員数名がデバイスの先から魔力弾をガジェットに向かって放った。

 ただの機械兵器ならばこれで大丈夫だとクロノは判断するが、その判断は間違っていると言うように数機のガジェットの前方に何らかのフィールドが発生し、ガジェットに直進していた魔力弾は全て消滅する。

 

ーーーバシュゥン!!

 

「ッ!? 今のはまさか!?」

 

「AMFだと!? 高位の魔法を機械が発生させたと言うのか!?」

 

 目の前で起きた現象に武装局員二名はそれぞれ驚愕と困惑に満ちた声を上げ、クロノ達も思わずガジェットを凝視してしまう。

 ただの機動兵器が高ランクの魔法を使用している。その事実にクロノ達は驚愕するが、すぐさま冷静さを取り戻してそれぞれ身構える。

 

「気をつけるんだ!! 近寄られたら、バリアジャケットの強度も下がって強化魔法も解かれる!! ナカジマさん!! 奴らが来る前にまた壁を破壊して下さい!!」

 

「分かったわ!!! ハアァァァァァァァァァーーーーー!!!!!」

 

ーーードゴオオォォン!!

 

 クロノの指示にクイントは再びリボルバーナックルを振り抜いて、横壁を粉砕した。

 それと共に粉砕した壁の瓦礫の中で大きめ物を、二名の武装局員がバインドを利用して持ち上げ、そのまま勢いよく迫って来ているガジェットに向かって投擲する。

 

ーーードガッ!!ドガッ!!

 

《ビッ!!》

 

 物理的な衝撃を食らったガジェット数機の動きが鈍る。

 その隙を逃さずに一名の武装局員がデバイスの先をガジェットに向けて、魔力弾をフィールドで覆いガジェット達に向かって撃ち出す。

 

「シューート!!!」

 

ーーードォン!!

 

 放たれた魔力弾はガジェット達へと直進し、その周りに発生しているAMFに触れるが、先ほどと違って無効化されること無く次々とガジェット達を撃ち抜いていく。

 

「『多重弾殻射撃』・・・AAランクのスキルね。流石は本局勤務の魔導師って所かしら?」

 

「合同任務にして正解だったわね・・内の隊だけだったら、今の機動兵器でやられていたかもしれないわ・・・まさか、『AMF』を発生させる兵器が在るなんて思ってみなかったから」

 

「同感です・・・・それにしてもこの機動兵器?」

 

「どうしたの? クロノ執務官」

 

 破壊した『ガジェットⅠ型』の残骸を険しい瞳で見つめるクロノの様子に気になったメガーヌが質問した。

 

「・・・・似ているんですよ・・・・僕がなのはが襲われた世界で発見した機動兵器の残骸と」

 

「ッ!? それじゃまさか!?」

 

「クロノ執務官! この機動兵器に使われている素材は、例の機動兵器の残骸と一致します!」

 

 クロノが見つめる機動兵器の残骸とは別の残骸を調べていた一人の局員が叫び、クロノはやはりと思いながら『S2U』を強く握り締める。

 

(やっぱりなのは達は管理局と繋がっているこの研究所の主に襲われたのか!)

 

 目の前にある機動兵器の残骸こそが何よりの証拠。

 『AMF』と言う魔導師にとって天敵の力を宿している機動兵器に多数で襲い掛かれば、ヴィータを護りながらのなのはでは確かに荷が重い。

 これでなのはが怪我を負った原因の一つが判明したと思いながら、クロノは残骸から目をそらす。

 

「もしもこんな兵器が次元世界中に広まったら、大変な事態になっていたかもしれない・・アルピーノさん、ゼスト隊長達と連絡は取れますか?」

 

「少し待って下さい・・・・・・・隊長達の方にも同じ兵器が現れたそうです。でも、もう撃退したようです」

 

「そうですか・・・・こんな機動兵器が在るとは予想外でしたけれど、任務の継続は可能そうだ・・このまま先に進みます」

 

 クロノのその発言にクイント、メガーヌ、武装局員達は頷き、警戒を強めながら通路を進んで行くのだった。

 

 

 

 

 

「やはりやるようだ。ドクターが作った試作品の兵器とは言え、データ上ではAランクの魔導師では勝つ事は不可能だと出ていたのに、こうもあっさりと破壊されるとは・・・・分かっていた事だが今の状況では護り切れんか」

 

 研究所の奥深くで、監視システムから送られて来るクロノ達とゼスト達のガジェットとの戦いぶりを見ていた小柄でコートのような物を羽織り、戦闘スーツに身を包んでいる銀色の髪の少女-『チンク』-は感心するように呟いた。

 その隣で空間ディスプレイを展開して何かの作業を行なっているウーノも、チンクの言葉に同意するように頷く。

 

「相手は本局と地上のベテランの魔導師達の集団。当然強力な集団よ、チンク。試作品のガジェットじゃ相手は難しい・・・しかも前回の任務で最小限のガジェットしか研究所には配備されてない。オリジナルも一応配備されているけど・・・・僅か数機だけしか無いから護り切れないわね」

 

「戦えるのはガジェットを除いて私とウーノだけ・・・だが、ウーノはデータ消去で忙しく戦えないから、実質私だけか」

 

「ドクターは既に別の研究所でトーレとクアットロの治療で忙しいからいない」

 

(残ると駄々を捏ねていたドクターを背後から殴って気絶させ、転移装置に放り込んだのは・・・・ウーノお前では無かったか?)

 

 自らがした事を完全に無視している一番上の姉の行動を思い出しながら、チンクは冷や汗を流してウーノを見つめるが、とうのウーノは気にせずに作業を進行して行く。

 『バイオ・デジモン』の技術で一番影響を受けているのはウーノだと思いながら、チンクはディスプレイに目を戻そうとする。しかし、戻す直前に二人の背後の扉が開き、同時にウーノとチンクは自らに重圧が掛かったような圧迫感を感じる。

 

ーーードックン!

 

『ッ!?』

 

「アレ?・・・・スカリエッティは居ないのかい? せっかく頼まれて援軍として僕が来たのに」

 

 チンクとウーノが突然に感じた圧迫感に息も絶え絶えになる中、圧迫感の主は目的の人物が居ない事を訝しみながら室内に入って来る。

 自分達に圧迫感の主が近づいて来る度にチンクとウーノの息は更に苦しくなって行く。我知らずに二人は平伏するように座り込みながら、息絶え絶えになりながらウーノが告げる。

 

「ハァ、ハァ、ド、ドクターは・・・ぜ、前回の・・ハァ・・・任務で傷を負った・・・し、姉妹達の治療の為に・・・ハァ、ハァ、べ、別の研究所で動いています」

 

「フゥ~ン・・・・そう言えばそんな話をしていたね。どうでも良いから忘れてたよ」

 

(トーレとクアットロの怪我がどうでも良いだと!?)

 

 同盟相手であり、今回の依頼の理由だと言うのに忘れていたと言う圧迫感の主の言葉にチンクは平伏しながら怒りを覚えるが、反論する言葉は出せなかった。

 自らに宿ったデジモンとして本能が告げている。“目の前に居る相手には、逆らう事は愚か反論するような言葉さえも出せないほど圧倒的な力の差が在る事を”。事実圧迫感の主はチンクとウーノを威圧している訳ではなく、ただその場に立っているだけ。

 絶対的な実力の差にウーノとチンクは息を吸うのも苦しくなって行く。二人がそうなっているにも関わらず圧迫感の主は、ディスプレイに映っているゼスト達とクロノ達の様子を眺める。

 

「へぇ~、確かに人間にしてはやるね・・・決めた。僕は後方から来る連中を潰して来るから、君達は前の奴らを頼むよ。機動兵器の方は全部君達の方に回して構わないよ。さて、少しは運動になってくれると良いんだけど」

 

 そう呟くと共に圧迫感の主は部屋から出て行った。

 同時に襲い掛かっていた圧迫感から解放され、チンクとウーノは汗だくになりながら大きく息を吐き出す。

 

『プハァ・・・・・ば、化け物』

 

 安堵したように息を吐き出すと共に、チンクとウーノは揃って同じ言葉を体を震わせながら呟いた。

 

「ハァ、ハァ・・・ウーノ・・お前がドクターを研究所から無理やり避難させたのはこの為だな?」

 

「ハァ、ハァ、ハァ・・・えぇ・・・私達と違ってドクターはまだ『バイオ・デジモン』の処理を行なっていない。前に会った時は倉田が共に居たから圧迫感を抑えていたんでしょうけど・・・今回は隠す気もないようね」

 

「とんでもない援軍が来た者だ・・・・(我知らずに平伏してしまった・・・この前にブラックウォーグレイモンと出会った時でさえも此処までの疲弊は無かった・・・・奴こそが倉田の切り札・・・『七大魔王』の一角を担っている存在!)」

 

「・・・・・とにかくチンク・・・早急に事を終わらせて此処から避難するわよ・・・あんな化け物とこれ以上同じ場所に居たくないわ」

 

「同感だ」

 

 ウーノとチンクは同意し合うと共にそれぞれ動き出す。

 チンクは足早に部屋から出て行き、残されたウーノはディスプレイを展開してガジェットを操作し、前方から入り込んだゼスト達を特別訓練室へと誘導し、後方から入り込んだクロノ達に送り込んでいたガジェット達全てをゼスト達に方に向かうように指示を出す。

 同時にこれからクロノ達に降り掛かる出来事を余す事無く記録出来るように、研究所内の監視装置を動かすのだった。

 

 

 

 

 

 研究所内部通路。

 最初のガジェットを破壊した後も、先に進むクロノ達に次々とガジェットとの戦闘を繰り広げていた。破壊しても破壊しても奥から現れるガジェットに、クロノ達は僅かながらも疲労を覚え始める。

 もしも今回の任務が一部隊だけで行なわれていたら、既に死者が出ていただろう。合同任務にしたのは正解だったと誰もが思いながらクロノ達はガジェットを破壊して行く。

 

「この!!」

 

ーーードゴォン!!

 

「ブレイクインパルス!!」

 

「シュート!!」

 

ーーードドドドドドドドドドゴォン!!

 

 通路の奥から現れるガジェット達を次々とそれぞれのやり方でクロノ達は破壊して行く。

 少しでも疲弊を抑えようと後方でメガーヌは補助魔法で使用し、途切れ途切れでは在るがゼストの方に居る局員からの念話を受け取る。

 

「ッ!! クロノ執務官!! 今、ゼスト隊長側の局員から連絡が届きました!!」

 

「内容は!?」

 

「『戦闘機人』と思わしき少女と出会い、交戦になったようです!?」

 

「『戦闘機人』ですって!?」

 

 メガーヌの報告を横で聞いていたクイントは驚きの声を上げ、クロノも僅かに顔を顰める。

 『戦闘機人』とは人の身体と機械を融合させ、常人を超える能力を得た人造生命体。嘗て管理局最高評議会が進めていた技術の一つで、論理的な面から禁止させながらも進めていた技術。

 やはりこの研究所に居る人物は最高評議会と密接な関係が在った可能性が強まった事に、クロノが顔を更に険しくした瞬間、今まで苛烈なまでに襲い掛かって来た『ガジェットⅠ型』が突如として攻撃を止め、反転すると共に奥のへと消えて行く。

 

《ピピッ!》

 

ーーービュン!!

 

「・・・・・ど、どう言う事だ?」

 

 突然の『ガジェットⅠ型』の動きに一人の局員が疑問の声を上げた。

 他のメンバーやクイント、メガーヌ、そしてクロノも『ガジェットⅠ型』の動きに訝しむ。普通ならばこのまま『ガジェットⅠ型』は攻撃を行なってクロノ達を少しでも疲弊させようとする筈。例え援軍が来るにしても、魔導師にとって天敵と呼べる『AMF』を発生させる『ガジェットⅠ型』を引き上げさせるのは不可解。

 

「(何だ? このまるで必要ないと言いたげな敵の動きは? ・・・とにかく、此処は)・・・メガーヌさん。ゼスト隊長にもしかしたら機動兵器が更に現れるかもしれないと伝えて下さい」

 

「分かりました」

 

「それではクロノ執務官。我々はこのまま先に向かう事で良いんですね?」

 

「あぁ、機動兵器が引き上げたのは不可解だが、此処は更に先に進んで首謀者を捕らえ…」

 

ーーーコツ!

 

『ッ!?』

 

 『ガジェットⅠ型』が消え去った通路の奥から、僅かに聞こえて来た足音にクロノ達は身構える。

 恐らくは敵が来るだろうと誰もが確信するが、クロノ達の確信を裏切るように通路の奥から現れたのは十歳にも満たないほどに幼い金髪の少年だった。

 整った顔立ちをし、何処と無く神秘的な雰囲気を発する少年。着ている服は普通の子供が着るようなズボンにシャツと言う何処にでも在るような服。

 

「・・・・子供よね?」

 

「えぇ・・・・そうにしか見えないわ」

 

 クイントとメガーヌは顔を見合わせながらそう呟きあい、クロノも含めた局員達も拍子抜けしたような顔をする。

 てっきり武装した敵が来ると思っていたが、通路の奥から現れたのは全く魔力が感じられない子供。整った顔立ちのせいで神秘的な雰囲気を感じるが、ただの子供にしか見えない。もしかしたらクロノ達の襲撃で研究所の首謀者から逃げ出した民間人かもしれないと思いながら、一人の男性局員が警戒しながらも近づく。

 

「君・・どうしてこんなところに居るんだい? 私達は管理局の者だ。出来れば事情を聞かせて貰いたいのだが?」

 

 ゆっくりと男性局員は優しげに声を掛けながら少年に手を伸ばす。

 何も少年がする様子が無いとクロノ達が判断し、デバイスを僅かに下げた瞬間、少年に向かって手を伸ばしていた局員の腕が音も無く消失する(・・・・)

 

ーーーシュン!

 

『えっ?』

 

 誰もが見ている前で少年に伸ばしていた局員の腕は、肘から先が消失した。

 呆然とクロノ達は目を見開き、手を伸ばした局員が自らの腕が肘から先を失っている事を認識した瞬間、血が噴き出す。

 

ーーーブシャァァァァァァァァァァァァァッ!!!

 

「ウワァァァァァァァァァァァァァァッ!!」

 

 血が噴き出すと共に激痛を感じた局員は叫びながら傷口を別の手で押さえ、床に膝をついてしまう。

 突然の出来事に呆然としていたクロノ達だが、すぐさま我に返って局員を治療する為に駆け寄ろうとする。だが、駆け寄る前に局員の前に立っていた少年が、飛び散る血と局員の叫びに不愉快そうに眉を顰め、局員の口を自らの右手で掴んで叫びを封じる。

 

ーーーガシッ!

 

「ッ!?」

 

「・・・汚い手で僕に触れようとしたばかりか、耳障りな声を出すなんて・・・・万死に値するよ・・・消えちゃえ」

 

 その言葉と共にクロノ達の目の前で少年に掴まれていた局員は消失した。

 比喩でも何でもなく、クロノ達の視界から局員の姿は影も形も無く消え去った。後に残されたのは、床に局員が残した血の跡と、少年が着ていた服に僅かに飛び散った血だけ。

 まるで汚らわしい者に触れたと言うように右手を少年は振るい、自らの服に付いている血に眉を不愉快そうに顰める。

 

「ああぁ・・・服に血が付いちゃったよ。こんな事だったら最初から消しておけば良かった。後でこの服は処分だね」

 

「貴様!!」

 

 余りの暴言に同僚だった局員の一人が怒りに満ちた叫びを上げながらデバイスを少年に向かって構える。

 何をしたかは分からないが、明らかに同僚が消失したのは目の前に居る少年のせい。それを理解した局員達は次々に少年に向かってデバイスを構え、クイント、メガーヌ、クロノも身構える。

 しかし、デバイスを向けられた少年は表情を変える事無く、傲慢に満ち溢れた声で宣言する。

 

「フフッ、良いよ。特別サービスだ。君達に最初に攻撃する権利を与えて上げるよ。僕の運動不足を解消させてくれる事を願っているからね」

 

「この! スティンガーブレイド・エクスキューーションシフトッ!!!」

 

「ロードカートリッジ!!! リボルバーーーシュート!!」

 

『シューート!!!』

 

ーーードドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!

 

 次々と射撃魔法が少年に向かって撃ち出され、少年へと直撃した。

 直撃の影響で爆煙が発生し、通路を埋め尽くすがクロノ達は油断せずにデバイスを構える。一応非殺傷設定では在るが、十数名の局員にクロノの高位の魔法、そしてクイントのカートリッジロードして威力が上がっていた射撃魔法を無防備に食らったのだからダメージは通った筈だと誰もが確信する。

 しかし、そんな確信は突然に煙を晴らすかのように吹く風によって裏切られる。

 

「へぇ~、君達には驚いたよ。まさか、せっかくの最初の攻撃のチャンスを僕が処分しようと思った服を処分してくれる事に使ってくれるなんてね」

 

『ッ!?』

 

 煙が晴れると共に聞こえて来た声にクロノ達が目を見開いていると、煙が完全に消え去り、上半身が裸になった少年が嬉しそうにしながら姿を見せた。

 その肌には傷らしい傷も無く、まともに射撃魔法を食らったにも関わらずダメージらしいダメージも受けている様子は無かった。ただ左半身に不可思議な文様の刺青が腕にも刻まれ、先ほどまで確認出来なかった黄金の腕輪が両腕に嵌められていた。ゆっくりと少年は自らの左頬に触れ、其処にも刺青が現れる。

 

「フフフッ、処分の手間を省いてくれたお礼に僕の名前を教えて上げるよ。僕はルーチェ。『ルーチェモン』」

 

「・・・ルー・・チェ・・・モン?」

 

「そう。あの世への土産にしては豪勢かも知れないけれど、最後まで覚えておいてね」

 

 少年-『ルーチェモン』-は自らの名を宣言すると共に、ゆっくりと右手を上げて指先にそれぞれ光球が作り出される。

 攻撃が来ると認識した瞬間、在る者は防御魔法を発動させ、在る者は回避する為に体を動かす。魔力は全く感じられないが既に一人の局員が消滅しているのだ。油断する訳には行かないと誰もが思いながら動き出す。だが、そんな彼らの行動も。

 

『えっ?』

 

 ルーチェモンの攻撃の前では無駄だった。

 無造作にルーチェモンが腕を振るうと共に放たれた光球は真っ直ぐに防御魔法を発動させていた局員達の胴体を貫いた。

 まるで防御魔法など無駄だと言うように光球は文字通り光の速さで防御魔法を貫いたばかりか、身に纏っていたバリアジャケットさえも無駄だった。貫かれた局員達は床に倒れ伏し、痙攣が止まると共に床が血に染まって行く。回避した者達は一瞬にして五名の局員の命が失われた事に言葉を失うが、ルーチェモンは構わずに別の局員に近寄る。

 

ーーートン!

 

「ヒッ!」

 

「フフッ、バイバイ」

 

 その言葉と共に最初に消された局員同様に消失した。

 圧倒的と言う言葉すら生温い光景に生き残っている者達は言葉を完全に失うが、そんな中メガーヌの支援を受けたクイントがルーチェモンに殴り掛かる。

 

「ハアァァァァァァァァァァッ!!」

 

「おっと」

 

 クイントの拳をルーチェモンは僅かに体を仰け反らせる事で躱した。

 しかし、クイントは其処から両拳、蹴りを連続で放ちルーチェモンに攻撃を繰り出す。その攻撃をルーチェモンは最小限の動きで回避して行く。更にクイントに続いて接近戦が得意な局員も魔力刃を発生させてルーチェモンに攻撃するが、ルーチェモンは余裕さに満ち溢れた顔をして簡単に躱して行く。

 

「アハハハハハ! 運動不足の解消に丁度良いや。ほらほら、もっと攻撃して来なよ!」

 

「ッ!! この!!」

 

 余裕さに満ち溢れて楽しげに動き回るルーチェモンの姿に、クイントは怒りに満ち溢れた叫びを上げながら拳を振り抜く。

 その一撃もルーチェモンは簡単に躱し、別方向から攻撃して来た局員の攻撃も最小限の動きで回避する。必死なクイント達の連携攻撃もルーチェモンにとっては運動不足を解消する為の遊び程度に過ぎない。その事実は人生の大半をシューティングアーツや魔法に費やして来たクイントや局員達のプライドを侮辱するのに十分だった。まるで自分達の頑張りなどルーチェモンにとっては無意味でしかないと知らしめているかのようだった。

 絶え間なくクイント達は攻撃を繰り出すが、回避している筈のルーチェモンではなく、クイント達の方が息を荒げて体力を消耗して行く。

 

『ハァ、ハァ、ハァ』

 

「あれ? まさか、もう終わりなの・・・・困ったな。まだ全然運動不足が解消出来ていないんだけど・・・ねぇ、もっと頑張ってよ」

 

 息を荒げるクイント達に余裕さに満ちた声でルーチェモンは首を傾げながら告げた。

 その言葉にクイント達の顔は怒りに染まり、再びデバイスを構え直す。

 

「そうそう、頑張ってくれないと…」

 

ーーーガシィィィィン!

 

「ん?」

 

 言葉の途中でルーチェモンの足元に発生した魔法陣から魔力の縄が飛び出し、ルーチェモンを拘束した。

 自らを拘束している魔力の縄に首をかしげながらルーチェモンは周りを見渡すと、メガーヌの横で『S2U』の矛先を向けているクロノに気がつく。

 

「『ストラグルバインド』・・・魔力による強化を無効にし、拘束に秀でたバインドだ。油断したようだな」

 

「へぇ~、なるほど。ただ闇雲に僕に攻撃していた訳じゃなく、この魔法の発動時間を稼ぐ為だったんだ」

 

「そう言う事だ。君のその異常な力には驚くが、これで君は何も出来ない。素直に投降して貰おうか?」

 

「・・・・・・・嫌だって言ったら?」

 

「こうするのよ!! リボルバーナックル!! カートリッジロード!!」

 

ーーーガッシャン!!

 

 最初からルーチェモンが素直に従うと思ってなかったクイントは、右腕に装着しているリボルバーナックルから薬莢を排出すると共にルーチェモンに向かって飛び掛かった。

 同時にクロノも『S2U』の矛先をルーチェモンに突き出すようにしながら駆け出し、支援を行なっているメガーヌを除いた他の局員達は自らが放てる最大の魔法を放つ為の準備に取り掛かる。既に何名もの局員を殺害しているルーチェモンに遠慮と言う言葉は無い。この絶好の機会を逃さないと言うように全員が決死の思いで挑む。

 そしてクイントとクロノの一撃がルーチェモンに届こうとした瞬間、ルーチェモンの体が光り輝き、衝撃波が通路内部で発生する。

 

ーーードゴオォォォォォォォ!!

 

『キャアァァァァァァァァァァァァッ!!!』

 

『ウワァァァァァァァァァァァァァッ!!!』

 

 発生した衝撃波によってクロノ達は全員吹き飛ばされ、全員が通路の壁に凄い勢いで激突した。

 バリアジャケットの防御機能さえも無意味にしてしまうほどの衝撃にクロノ達は呻きながら、衝撃波を発生させたルーチェモンに目をむけ、言葉を失った。

 

「フフッ、本当に君達は頑張ったよ。僕の本性を出させたんだから誇って良いよ」

 

 そう楽しげに告げるルーチェモンの姿は変わっていた。

 背中から伸びる純白の十二枚の翼だけではなく耳の辺りからも翼のような生え、履いていたズボンの変わりに白い布のような物を体に纏っていた。神々しいまでの威容を発し、その姿は幻想的と呼べる領域に至っている。

 

「・・・て、天使?」

 

「そう呼ぶ者も居るね」

 

ーーードックン!

 

『ッ!?』

 

 ルーチェモンが言葉を発すると共にクロノ達に圧倒的な圧迫感が襲い掛かった。

 それは今までルーチェモンが意図的に抑えていた自らが無意識の内に発してしまう威圧感。ただ其処に居るだけでルーチェモンは自らの周りに居る者達を威圧してしまう。

 クロノ達の実力ではそのルーチェモンが発する威圧感に抵抗する事さえも出来ない。故にルーチェモンは自らの本性を隠し、実力も一割も出さなかった。しかし、ルーチェモンが本性を現した今、クロノ達は立つ事すらも出来なくなり呼吸困難にさえも追い込まれる。

 

『ハァ、ハァ、ハァ、ハァ』

 

「あぁ、やっぱりこうなっちゃったか。つまんないな。まぁ、少しは解消出来たし、もう終わらせようかな」

 

「・・・グゥッ! ・・・・まだよ」

 

「ん?」

 

 苦しみながらも聞こえて来た声にルーチェモンが振り抜いてみると、互いに支え合うように立つクイントとメガーヌの姿が在った。

 絶え間なく襲い掛かって来る圧迫感に苦しみながらも、二人は支えあうようにして確かに立っていた。同時にクイント達以外にも自らのデバイスを支えにして何名かの局員が立ち上がる。その中にはクロノの姿も在った。

 

「ハァ、ハァ・・・まだ、私達は終わっていないわよ」

 

「ハァ・・当てが・・・ハァ・・・外れたわね」

 

「・・・・・フフフッ、流石は選りすぐりの局員達だね。僕が発する威圧感に抵抗出来るなんて・・・・・意志力だけは賞賛して上げるよ・・・・褒美だ。僕の手で君達は殺して上げるよ(・・・・・・・・・・・・・・)

 

「ッ!? クッ!!」

 

ーーードン!!

 

「クイ…」

 

 ルーチェモンの宣言と共にクイントは自らが支えていたメガーヌを突き飛ばした。

 その意図を悟ったメガーヌはクイントに手を伸ばそうとするが、その前にクイントがルーチェモンの右手によってその体を刺し貫かれているのを目にする。

 一瞬。正しく一瞬だった。ほんの瞬きの間にクイントはルーチェモンの右手によって、その体を刺し貫かれていた。刺し貫かれた本人であるクイントでさえも認識が追いついていなかったが、それでも目の前にルーチェモンが現れた事実だけは認識し、左腕に残された力を全て込めて殴り掛かる。しかし、クイントの死力を尽くした攻撃もルーチェモンは左手の指一本で受け止めてしまう。

 己の死力を尽くした一撃でも届かなかった事実にクイントは悔しげに顔を歪め、大粒の涙を両目から流すが、ルーチェモンは愉快そうに顔に笑みを浮かべて左手を動かし、クイントの左腕を千切り飛ばすと共に左手を拳の形に変えてクイントの胴体に叩き込む。

 

ーーーズドン!!

 

 明らかに子供の腕が激突したと思えない音と共にクイントは吹き飛び、その先に在った壁を突き破ってクイントの姿はメガーヌ達の前から消え去った。

 ルーチェモンは自らが殴り飛ばしたクイントが消えた壁の方を見つめ、クイントの血が付いた右手を振るって血を飛ばす。

 

「先ずは一人」

 

「・・クイ・・ント」

 

 呆然とメガーヌは自分の前から消えた親友の名前を呟き、床に落ちているクイントの左腕を見つめる。

 クロノ達も一瞬にして消えたクイントに呆然とするが、すぐさまルーチェモンに向かって攻撃しようとする。このままではクイントが自らの身を犠牲にしてまで必死になって護ったメガーヌまでもがルーチェモンの手に掛かってしまう。

 それだけは何としても防がねばならないとクロノ達は動くが、ルーチェモンの右手は呆然としてメガーヌに向けられる。

 

「二人目」

 

「止めろ!!」

 

 無駄だと思いながらもクロノは叫んだ。

 しかし、無常にもルーチェモンの右手から攻撃が-放たれなかった。

 

「ッ!? クッ!!」

 

ーーードゴォン!!

 

『えっ?』

 

 ルーチェモンの右手から攻撃が放たれる直前、クイントが消え去った壁の穴の方から赤いエネルギー球が高速で接近し、慌ててルーチェモンは右手で防御した。

 それはクロノ達が始めて見るルーチェモンの防御姿勢。一体誰がルーチェモンに攻撃したのかと壁に開いている穴の方に全員の目が向くと共に声が穴の向こう側から響く。

 

「まさか、情報ではなく本人が居るとは思っても見なかったぞ」

 

(この声は!?)

 

 壁の向こう側から響いた忘れる筈も無い声。そのクロノの考えが正しいと言うように穴から声の主は姿を見せる。

 

「やはり、既に生まれていたか・・・ルーチェモン」

 

 何時に無く険しい声を出しながら穴の向こう側から驚愕で固まっているクロノ達の前に姿を見せたブラックは、全身から戦意を発して興味深そうに自分を眺めているルーチェモンを睨みつけるのだった。




今回の戦いでルーチェモンにダメージを与えられる者が一人居ました。

あの魔法だけは決まりさえすればダメージは回避出来ません。
最も当てるのだけでも死力を振り絞らないと無理ですが。

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