漆黒の竜人と魔法世界   作:ゼクス

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外伝 『ディアボロモンの逆襲』 後編

 東京湾内。

 多くの人々が集まり、オメガモンとアーマゲモンが激闘を繰り広げていた地。

 しかし、今その場所では、互いに漆黒の体を持った二体のデジモンが睨み合いを続けていた。

 片方の漆黒の竜人-『ブラック』は強敵と戦える歓喜に満ち溢れ、もう片方の五十メートル以上の大きさを持ったクモのような形をしたデジモン-『アーマゲモン』は、自身の計画を悉く邪魔するブラックに憎しみに染まった視線を向けていた。

 互いに形は違えど世界に否定されているデジモン達。しかし、二体ともその胸の内に分かり合うと言う感情は存在せず、どうやって相手と戦うべきなのかと考えていた。

 一応アーマゲモンは既に海中にブラックに対する秘策を潜ませているが、それでも、もう一体の標的であると同時に強敵のオメガモンが存在している。ブラックだけには集中して戦えない上に、オメガモンに対しても集中して戦う訳にはいかない。

 その事を考えたアーマゲモンは秘策を使う瞬間を見極めなければいけないと、ブラックに顔を向けながら考える。そしてブラックもアーマゲモンに対する戦い方を考えていた。

 

(人目があり過ぎるな。これではルインとのユニゾンが使えん。ルインの存在はこの世界の連中に知られる訳にはいかん・・・・かと言って、通常状態で何処までやれるかも分からんし、何とかルインとのユニゾンは見られんように行わなければ)

 

 ブラックは既に通常状態ではアーマゲモンに自身の力が及ばない事を分かっていた。

 相手はオメガモンでさえも苦戦していた強敵。ブラックとしては悔しいが、その相手に今の状態で勝てる確率は限りなく低い。切り札は存在しているが、その切り札の使用の為にはルインの力が必要であり、尚且つ“短時間”で勝負を決めなければならない。

 何よりも別世界の魔導技術の存在を知られるのだけは避けなければならない。その事は事前にオファニモン達に釘を刺されている。最もその代わりにネット空間に入り込める能力と一回だけ自身の体をオメガモンクラスにまで巨大化させる事が出来る能力をオファニモン達から貰っていたのだが、正直に言えばその力を持ってしてもアーマゲモンに勝てる可能性は限りなく低いとブラックは理解していた。

 だが、その程度の事でブラックはアーマゲモンとの戦いから退くつもりは全く無い。寧ろウォーグレイモンの時やデーモンの時のように、自身の実力を遥かに超える敵との戦いに強い高揚感を覚え、アーマゲモンとの戦いに闘志が高まっていた。

 そして二体の高まり続ける闘志に戦いを見ていた誰もが言葉を出す事が出来ずに、二体を注視する。

 先ほどまでアーマゲモンと戦っていたオメガモンも、二体の睨み合いには介入する事が出来なかった。形は違えどブラックとアーマゲモンは互いに敵視し合っている。しかもブラックは一対一の戦いに、余程の理由が存在しない限り、他者の介入を嫌っている。その中に割り込むのは幾らオメガモンでも出来なかったのだ。

 それはエンジェウーモンも同じなのか自身ではこれからの戦いに介入出来ないと即座に判断すると、太一とヤマトが戦いを見ている場所に降り立ち、テイルモンに退化してパートナーのヒカリと共に戦いを見守る。

 そして二体の闘志によって何の現象も発生する事無く、二体の中心の部分に存在している海が揺らめいた瞬間。

 

ーーービュン!!

 

「オオォォォォォォォーーーー!!!!」

 

「ギギャァァァァァァァァーーーーー!!!」

 

 ブラックが咆哮を上げながらアーマゲモンに向かって飛び出し、アーマゲモンも咆哮を上げながら自身の巨大な口にエネルギーを瞬時に集め終えると、アルティメットフレアを突進して来るブラックに向かって撃ち出す。

 

「アルティメットフレアッ!!!」

 

ーーードゴオオン!!

 

「フッ!!」

 

ーーービュン!!

 

 アーマゲモンがアルティメットフレアを撃ち出すと同時に、ブラックは自身に迫って来ているアルティメットフレアの照準から離脱し、アーマゲモンの頭上に移動した。

 それと同時にブラックは空中で先ほどオメガモンが行なったように体を反転させながら両手の間に大気中に存在している負の力を集中させ、巨大な赤いエネルギー球を両手に間に作り上げ、アーマゲモンの背に向かって投擲する。

 

「ガイアフォーーース!!!」

 

「ブラックレイン!!」

 

ーーードドドドドドドドドドドドドドドゴオン!!

 

ーーーバッシュン!!

 

「何だと!?」

 

 ブラックがガイアフォースを放つと同時に、アーマゲモンも自身の背中から追尾能力を持っているエネルギー弾-ブラックレイン-を連続で撃ち出し、ガイアフォースを消滅させた。

 その上、ブラックレインはガイアフォースを消滅させただけでは留まらずに、空中に浮かんでいるブラックに向かって威力が衰える事無く次々進んで行く。

 

ーーービュン!ビュン!!

 

「チィッ!!」

 

 ブラックは自身に向かって来るブラックレインを高速で避け続けるが、追尾能力を持っているブラックレインは避けてもブラックを追い回し続け、ブラックの右手に装備していたドラモンキラーを掠っただけで撃ち砕く。

 

ーーーバキン!!

 

「おのれ!!」

 

ーーービュン!!

 

 自身の武器の一つが失われた事にブラックは僅かに苛立ちの声を上げながらも、自身を追尾して来るブラックレインを避ける為に、海面の方に向かって飛び、ブラックレインに追尾されながらもアーマゲモンに向かって突進する。

 その事に気がついたアーマゲモンは自身のギリギリの所で浮かび上がり、追尾して来ているブラックレインを自身にぶつけようとしているとブラックの策を考え、即座に再び口にエネルギーを集め、アルティメットフレアを突進して来ているブラックに向かって撃ち出す。

 

「アルティメットフレア!!」

 

ーーードゴオォン!!

 

「それを待っていたぞ!!」

 

ーーービュン!!

 

「ッ!!」

 

ーーードゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!

 

 アーマゲモンがアルティメットフレアを撃ち出すと同時に、ブラックは距離がまだ離れていながらも急上昇を行い、それと共にブラックを追尾していたブラックレインも上昇するが、その途中で正面から真っ直ぐ向かって来ていたアルティメットフレアとブラックレインは衝突し合い、大爆発が起こった。

 その様子にアーマゲモンはまんまと自身がブラックの策に乗ってしまった事に気がつき、顔を悔しげに歪める。

 ブラックは最初から自身を追尾して来ているブラックレインにアルティメットフレアを激突させるつもりだったのだ。

 その激突によって必ず発生するであろう周りが見えないほどの煙こそ、ブラックが本当に望んでいた隠れ蓑。ブラックは既にインフェルモン達との戦いで、インフェルモンやアーマゲモンが気配を読み取れない事を知っていた。

 アーマゲモンは目で敵の居場所を判断する。その事が分かっていたブラックは、相手の攻撃を逆手に取り、周りが見えなくなるほどの煙を発生させたのだ。

 そして気配が読み取れないアーマゲモンは慌ててブラックを発見しようと辺りを見回すが、その前に顎の下からブラックの叫びが響く。

 

「ドラモンキラーーー!!」

 

ーーードッゴオォッ!!

 

「ガハッ!!」

 

 突然の無防備だった顎の下からのブラックの奇襲に、アーマゲモンはダメージよりも驚愕によって呻き声を上げてしまう。

 しかし、ブラックは巡って来た千載一遇の好機を逃さないと言うように、突然の奇襲に動きが止まってしまっているアーマゲモンの顔に踵落としを振り下ろす。

 

「ムン!!」

 

ーーードゴオオオオン!!

 

「ガアッ!!」

 

 ブラックの踵落としをモロに食らったアーマゲモンは、今度こそ苦痛の声を上げてしまう。

 そのブラックとアーマゲモンの戦いぶりを見ていたオメガモンはある事実に気がつき、次々とダメージから回復していないアーマゲモンの頭部に右拳や左腕に残ったドラモンキラー、または蹴りなどを繰り出し続けているブラックを見つめる。

 

(まさか!?アーマゲモンは接近戦に弱いのか!?・・・そう言えば、こっちが接近しようとした時にアーマゲモンはブラックレインを放って牽制していた・・・アレは自分が接近戦に弱い事を隠す為だったのか!?)

 

 オメガモンはアーマゲモンの決定的な弱点に漸く気がついた。

 確かに強力な砲撃を撃ち込んでもアーマゲモンは微動だにしなかった。だが、よくよく考えてみればアーマゲモンは自身に敵が接近しないように動いていた。アーマゲモンの大きさはオメガモンや今のブラックを遥かに越えている大きさだ。大きさとは確かに敵との距離が離れていれば強力な武器になる。

 しかし、一度懐に入られてしまえば、逆にその大きさが弱点に変わってしまう。ましてアーマゲモンには接近戦の技が無い。長い手足を使って相手を振り払うと言う方法も存在しているが、既にブラックは顔の部分に張り付いている上に、アーマゲモンが口からアルティメットフレアを放てないように口を無理やり閉じさせる攻撃を繰り出し続けている。

 それでは幾ら強力な力を持っているアーマゲモンでも、ブラックに対して有効打は放てないだろう。

 最も自力の差ではアーマゲモンに圧倒的に分がある為に、ブラックの繰り出し続けている攻撃では有効打にはならないだろうが、それでもアーマゲモンに僅かながらもダメージを与え続けるには充分だった。

 

「オオォォォォォォォォォォーーーーーー!!!!!」

 

ーーードゴン!!ドォン!!ズダン!!ズガアン!!

 

「ガアァァァァァァァーーー!!!」

 

「・・・・凄い」

 

 次々とオメガモンでさえも僅かにダメージを与える事しか出来なかったアーマゲモンに、僅かながらもダメージを与え続けて行くブラックの姿に、戦いの場で、或いはアーマゲモンが世界中に配信している映像を見ていた誰もが圧倒されていた。

 ブラックの戦いには諦めや絶望感、そして悲壮感など無い。逆にアーマゲモンの強さに押されるように、ブラックは戦いの中で成長していく。

 嘗て戦いの中で成長していったブラックを知っているオメガモンは、あの時と同じ事が今のブラックの中で起きている事を感じていた。

 だが、逆にアーマゲモンの中では憎しみと怒りが倍増して来ていた。自身の目的を阻み続け、更に僅かながらもダメージを与え続けるブラック。口からアルティメットフレアを放ってブラックを滅ぼそうとしても、エネルギーがチャージされる瞬間がブラックには分かるのか、口にエネルギーを集めると同時に口を無理やり閉じさせて攻撃を中断させる。

 その姿にアーマゲモンは憎しみと怒りが最高潮に高まり、対ブラック用に用意していた秘策を発動させる。

 

「ギギャァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーー!!!!!」

 

ーーーーバッシャン!!ギュルルルルルルルーーーーーー!!!!

 

「何!?」

 

『なっ!?』

 

 アーマゲモンが今までの咆哮を越える叫び声を上げると同時に、海中の中から四十の長い腕が飛び出し、ブラックに向かって伸びて行く。

 その突然の事態にブラックは驚きながらも即座にアーマゲモンの顔から飛び退くが、次々と海中から伸びている腕はブラックを追い回して行く。

 そしてそのブラックを追い回している腕に見覚えがあるオメガモン達は信じられないと言う顔をしながら腕の伸びている海面に目を向けると、同時に海中から凡そ二十体近くの悪魔のような姿をしたデジモン-ディアボロモン達が姿を現す。

 

ーーーバッシャン!!

 

『サアァァァァァァァァァーーーーーーーー!!!!!』

 

『デ、ディアボロモン!!!』

 

 海中から姿を現した二十体近くのディアボロモンの姿に、オメガモン達は目を見開きながら声を上げた。

 ネット世界で確かに倒した筈のディアボロモン。しかもその数はネット世界で戦った時の数の十倍。

 何故ディアボロモンが現実世界にいるのかと、誰もが疑問に思い、目を見開きながら上空を飛び回っているブラックに向かって手を伸ばし続けるディアボロモン達を見つめる。

 これこそがアーマゲモンの最後の切り札にして対ブラック用に用意した最大の切り札。現実世界に出て来ていたのは進化出来ないクラモンだけではなかったのだ。

 進化出来ないクラモン達を隠れ蓑にして、進化出来る能力を持ったクラモンも何体か紛れ込ませていたのだ。確かに大半の進化出来る能力を持ったクラモン達は、ブラックに対して送り込んでしまったので殆ど失われてしまった。だが、万が一、嫌、億が一の可能性さえも考えてアーマゲモンは海中の中で進化出来るクラモン達を進化させていた。

 敵側である選ばれし子供達は上空に浮かんでいた、自身が生まれた巨大なデジタマばかりを気にして海中にまで目がいかないであろう事も予測し、アーマゲモンは自身さえも最後の切り札の隠れ蓑にしていた。

 全ては最大の仇敵であるオメガモンを倒し、ブラックと言う横槍を入れてくれた存在を完全にこの世から抹消する為に、最後にして最大の切り札まで用意していたのだ。最もそれが出来るのは驚異的なスピードで進化出来るクラモンの特性が在ってこそなのだ。普通のデジモンでは先ず不可能に近い行為。

 そしてそれは成功を治めた。流石に同レベルの究極体の攻撃を回避し続けるのは無理だったのか、ブラックは空中でディアボロモン達が伸ばしていた腕に拘束されてしまう。

 

ーーーガシッ!!!ガシッ!!

 

「グッ!!おのれ!!」

 

ーーーギリギリギリギリギリギリッ!!

 

 空中で四十近くの腕に拘束されたブラックは拘束から逃れようと力を込めるが、ディアボロモン達は逃さないと言うように更に力を込め、ブラックを空中に押さえつける。

 その様子を見ていたアーマゲモンは自身が最も憎んでいる敵を殺せるチャンスに残忍な笑みを浮かべながら口にエネルギーを集め、拘束から逃れようともがいているブラックにアルティメットフレアを撃ち出す。

 

「アルティメットフレアッ!!」

 

ーーードゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!

 

『ブラックウォーグレイモン!!!!』

 

「ブラック様!!」

 

 ブラックに向かって迫るアルティメットフレアを目撃したヒカリ達は悲鳴のような声を上げ、ブイモンとワームモンが近くにいるのにも関わらずにルインも慌てて立ち上がりながら悲鳴のような叫びを上げるが、アルティメットフレアは止まる事無くブラックに進み続ける。

 その姿にブラックは来るであろう衝撃に耐えようと全身に力を込めた瞬間、ブラックの目の前にオメガモンが現れ、右手の砲身の照準を迫って来ているアルティメットフレアに合わせ、砲撃を撃ち込む。

 

ーーービュン!!

 

「ガルルキャノン!!!」

 

ーーードゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!

 

「ッ!!」

 

「ガアッ!!」

 

 アルティメットフレアがガルルキャノンに相殺される様子を目にしたブラックとアーマゲモンは目を見開きながらオメガモンを見つめるが、オメガモンは構わずに左手のグレイソードをブラックを拘束している腕に振り下ろす。

 

「グレイソーーード!!」

 

『ッ!!』

 

ーーーシュン!!

 

 流石に腕を切り落とされる訳には行かないのか、ディアボロモン達は即座にブラックから腕を手放し、グレイソードを避けた。

 その様子にブラックは僅かに不機嫌そうな顔をオメガモンに向けると、オメガモンは済まなさそうな顔をしながら憎しみに満ちた視線を向けて来るアーマゲモンとディアボロモン達に顔を向ける。

 

「すまない、ブラックウォーグレイモン・・・君の戦いへの拘りは分かっていたが、相手は一対一で君と戦うつもりはないようだ」

 

「フン・・・そのようだな・・・・・礼を言うぞ、オメガモン」

 

「先に助けられたのは此方だ。それよりも」

 

「チッ!分かっている!気に入らんが相手が相手だからな!」

 

 ブラックはそうオメガモンが告げようとしている言葉を読み取ると、オメガモンと共に海面に立っているアーマゲモンとディアボロモン達に構えを取る。

 

「・・・・行くぞ!!」

 

「応ッ!!」

 

ーーービュン!!

 

「ギギャアァァァァァァァーーーーー!!!!」

 

『サアァァァァァァァァァァァーーーーーーーー!!!!』

 

 突撃して来るブラックとオメガモンに対してアーマゲモンは口にエネルギーを集め、ディアボロモン達も胸の発射口にエネルギーを集中させると、アーマゲモンはアルティメットフレアを、ディアボロモン達はカタストロフィーカノンを連射する。

 

「アルティメットフレア!!!」

 

『カタストロフィーカノンッ!!』

 

ーーーズドオォン!!ズドォン!!ズドオォン!!ズガアァァンン!!

 

『フッ!!』

 

ーーービュン!!

 

 向かって来ているアルティメットフレアとカタストロフィーカノンに対して、ブラックとオメガモンは同時に左右に避ける事で回避し、そのまま同時にアーマゲモンとディアボロモン達を挟むように海面に着地すると、ブラックは再びガイアフォースを作り上げ、オメガモンも右手の砲身をアーマゲモンとディアボロモンに照準を合わせ、同時に必殺技を撃ち出す。

 

「ガイアフォーース!!!」

 

「ガルルキャノン!!!」

 

「ガアッ!!」

 

ーーーブザン!!

 

ーーードゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!

 

 ブラックが放ったガイアフォースとオメガモンが放ったガルルキャノンは高速でアーマゲモン達に迫り、アーマゲモンは回避出来ないと事に気がつくと、即座に十体ほどのディアボロモンを自身の下の方に移動させ、そのまま二本の巨大な足を上げガイアフォースとガルルキャノンを切り裂き、爆発が起きた。

 それと同時にブラックとオメガモンに、残っていたディアボロモン達がそれぞれに五体ずつ襲い掛かって来る。

 それに対してブラックは残っている左腕のドラモンキラーを構え、オメガモンも左腕のグレイソードを構えると、迫って来ているディアボロモン達を薙ぎ払う。

 

「ドラモンキラーー!!」

 

ーーーズドォン!!

 

「グレイソーーード!!!」

 

ーーーブザン!!

 

『サアァァァァァァァーーーー!!』

 

 ブラックとオメガモンは避けると同時に攻撃を放っている直後のディアロボモン達に攻撃を繰り出すが、残りの攻撃を免れたディアボロモン達がそれぞれ拳をブラックとオメガモンに向かって放つ。

 

『サアッ!!』

 

ーーーブン!!

 

「チィッ!!オォォォォォォーーー!!」

 

「ハアァァァァァァァァァーーー!!!」

 

 ディアボロモン達の攻撃をブラックとオメガモンが避けると同時に攻撃を放っている直後のディアロボモン達に攻撃を繰り出すが、それぞれのディアボロモン達はトリッキーな動きでブラックとオメガモンの攻撃を回避し、一体のディアボロモンがオメガモンの背に張り付いてくる。

 

ーーーガシッ!!

 

「何!?」

 

 突然に自身の背に張り付いて来たディアボロモンに、オメガモンが慌てて背に張り付いているディアボロモンに顔を向けてみると、背に張り付いていたディアボロモンはニタリと笑いながら全身の力を全て開放する。

 

「パ・ラ・ダ・イ・ス・ロ・ス・ト」

 

ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!

 

「グアァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーー!!!!!」

 

ーーードン!!

 

『オメガモン!!!』

 

 ディアボロモンの爆発を至近距離で受けたオメガモンは苦痛に満ちた叫び声を上げ、海面に膝をついてしまう。

 それを目にした太一達の叫び声を耳にしたブラックは、自身の周りにいるディアボロモン達を吹き飛ばそうとする為に力を集めるが、その前にオメガモンの時と同様にディアボロモン達がブラックの体に次々と張り付き、全身の力を解放する。

 

『パ・ラ・ダ・イ・ス・ロ・ス・ト』

 

ドゴゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!

 

『ブラックウォーグレイモン!!』

 

 ブラックに張り付きながら自爆したディアボロモン達を目撃した太一達は悲鳴のような声を上げ、ヒカリはワナワナと体を震わせながら爆発によって生じた煙を見つめる。

 そして煙が徐々に晴れていくと、背中に装着したブラックシールドと鎧がボロボロになったブラックが煙の中から姿を現し、そのまま力無く海面に倒れてしまう。

 

ーーードバッシャン!!ブクブクッ!!

 

「いやぁ」

 

「そ、そんな」

 

「ブラックウォーグレイモンが、負けた」

 

 海中に沈んで行ったブラックを目撃したヒカリは現実が信じられないのか否定の声を上げ、同じように離れた場所で戦いを見ていた京と伊織も信じられないと言う声を上げた。

 そしてブイモンとワームモンと共に戦いを見ていたルインはブラックが海中に沈むのを確認すると、即座に立ち上がり、持っていたパソコンを魔力で保護しながら走り出し、海面に向かって迷わずに飛び込む。

 

ーーーバッシャン!!

 

「おい!人が飛び込んだぞ!!」

 

 ルインが飛び込むのを目撃した一人の男性が叫び、慌てて他の人々とブイモン、ワームモンはルインが飛び込んだ場所を見つめるが、ルインが海面に浮かんで来る事は無かった。

 

 そしてブラックが倒された姿を目にしたオメガモンは、自身の受けたダメージや周りを囲んでいる四体のディアボロモン達に構わずに嘲りに満ちた顔を向け続けていたアーマゲモンに向かって突進する。

 

「ウオォォォォォォォォーーーーーーーーーー!!!!!!」

 

 残された全ての力を振り絞ったオメガモンの突進によって周りを囲んでいたディアボロモン達が次々と吹き飛ぶが、オメガモンは止まる事無く突進の勢いを利用してアーマゲモンの頭部にグレイソードを深々と突き刺す。

 

ーーードスウゥゥゥーーン!!

 

「ガアァァァッ!!」

 

 深々とグレイソードを突き刺さられたアーマゲモンは苦痛の叫びを上げながら暴れるが、オメガモンは好機を逃す事はしないというようにグレイソードを更に深く突き刺し、右手の砲身をアーマゲモンの口内に滑り込ませ砲撃を連射する。

 

「ウオォォォォォォォーーーーー!!!」

 

ーーーズドオォン!!ズドォン!!ズドオォン!!ズガアァァンン!!

 

「グゥッ!!」

 

 口内に砲撃を連射で撃ち込まれたアーマゲモンは暴れるが、即座に口内に撃ち込まれた砲撃を吸収し、威力を倍増させたアルティメットフレアを逆に至近距離でオメガモンに向かって撃ち返す。

 

「アルティメットフレア!!!」

 

ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!

 

「グアァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーー!!!!!」

 

 超至近距離でアルティメットフレアの直撃を受けたオメガモンは苦痛に満ちた叫びを上げながら吹き飛び、森が広がる陸地に激突してしまう。

 

ーーードオオオオオオオオオン!!

 

「ウッ・・・・ァァァ」

 

ーーーガッシャン!!

 

 陸地に激突したオメガモンは立ち上がろうとしたが、突然に両手が地面に千切れ落ち、オメガモンの瞳からも光が消えてしまった。

 その様子を目にしたアーマゲモンと十四体のディアボロモン達は自分達が遂にオメガモンを撃ち破った事を確信し、空に向かって顔を上げて歓喜に満ちた咆哮を上げ始める。

 

「ギギャァァァァァァァァァーーーーーーーーーー!!!!!」

 

『サアァァァァァァァァァァァァーーーーーーー!!!!!』

 

 遂に宿敵だったオメガモンと邪魔をしてくれていたブラックを倒した。

 その事実にアーマゲモンとディアボロモン達は三年掛かった事を成し遂げた喜びに打ち震え続けるが、逆に戦いを見ていた太一、ヤマト、ヒカリ、テイルモン、京、ホークモン、伊織、アルマジモン、ブイモン、ワームモン、そして人々の心には絶望感が広がっていた。

 最強の騎士だったオメガモンが敗れた上に、ブラックと言う強力な究極体さえも戦いに敗れてしまった。

 その事実に誰もが絶望を覚えていると、二台の自転車にそれぞれ乗った大輔と賢が漸く戦いの場に駆けつけ、瞳から光を失い、仁王立ちし続けているオメガモンを目撃する。

 

「・・・オ・・メ・・・ガ・・モン」

 

「クッ!!ブラックウォーグレイモンもいない・・・・あいつ等にやられたのか」

 

 賢はそう呟きながら歓喜に満ちた咆哮を上げ続けているアーマゲモンとディアボロモン達に目を向けた瞬間。

 

ーーードバッシャン!!!

 

『ッ!!!』

 

 突然に海面の一部が盛り上がり、ボロボロになった状態になりながら立ち上がるブラックを誰もが目にする。

 その満身創痍としか言えない姿になりながらも立ち上がったブラックの姿に、大輔と賢だけではなく誰もが目を見開くが、驚愕はそれだけでは治まらなかった。

 

ーービリッ!!

 

「グウッ!!ウオォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」

 

『ッ!!』

 

 突如としてブラックが咆哮を上げると共に、その身を覆い尽くすかのように膨大なエネルギーの本流が発生し、ブラックの周りにエネルギーが渦巻く。

 一体何が起きたのかと、戦っていたアーマゲモンとディアボロモンだけはなく、東京湾に集まった大勢の人々がブラックを見つめていると、渦巻くエネルギーの中でブラックの両目が赤く輝き叫ぶ。

 

「ウオォォォォォーーーーー!!!ブラックウォーーーグレイモン!!!X進化!!!!」

 

ーーーギュルルルルルルルルーーーー!!!

 

「なっ!?」

 

「進化だって!?」

 

 ブラックが上げた叫びの意味に気がついた大輔と賢は信じられないと言う顔をしながら、叫ぶと同時にデジコードに包まれたブラックを見つめていると、デジコードは消失し、デジコードが消えた後にそれは立っていた。

 背中に巨大な二つのバーニアを備え、通常の時よりも機械的になった鎧とドラモンキラーを装着し、赤い瞳を持った漆黒の竜機人。その姿こそ、ルインと言うパートナーを得た事によってブラックが新たに手に入れた力が顕現した姿。その名も。

 

「ブラックウォーーグレイモンX!!」

 

ブラックウォーグレイモンX、世代/究極体、属性/ウィルス種、種族/竜人型、必殺技/暗黒のガイアフォース、ハデスフォース、アフターバースト

ブラックウォーグレイモンが『X抗体』を得た事に寄って未知の力が引き出された姿、背中に在ったシールドが消失し、代わりに二つのバーニアが装備され機動性が飛躍的に上がっている上に、両腕に装備したドラモンキラーは爪の部分が射出が出来る様に成った上に硬度は通常時に背中に装備していたシールドと同等にまで強化されている。必殺技はゼロ距離で高密度のエネルギー弾を相手に向かって撃ち出す『暗黒のガイアフォース』と、『ガイアフォース』を回避不可能なほどの超高速で連射する『ハデスフォース』。そして『ドラモンキラー』に備わっているバーニアで加速して攻撃を繰り出す『アフターバースト』だ。

 

『ッ!!!』

 

 進化を終えたブラックウォーグレイモンXの姿に、ブラックウォーグレイモンの事を知っているヒカリ達は目を見開いた。

 幾らブラックウォーグレイモンが強くなれるとは言え、ブラックウォーグレイモンは本来ならば進化も成長もする事が出来ないダークタワーデジモン。だが、未だ短時間しか制御出来ないが、ルインと言うブラックの唯一無二のパートナーとユニゾンした時だけブラックは、ブラックウォーグレイモンXに進化出来るようになった。

 その事とルインがブラックウォーグレイモンとユニゾンする瞬間を目撃していないヒカリ達は、在りえないものを見たと言う顔をしながらアーマゲモンと十四体のディアボロモン達に構えを取るブラックウォーグレイモンXを見つめる。

 しかし、当人であるブラックウォーグレイモンXはヒカリ達の様子になど構わずに、歓喜に満ち溢れた顔をアーマゲモン達に向ける。

 

「良い攻撃だった。久々に死ぬかと本気で思ったぞ」

 

(ブラック様の馬鹿!!本当に!本当に危ない所だったんですよ!!幾らディストーションシールドを使用してダメージを軽減させていても!!私がユニゾンしなければ、本気で死んでいましたよ!!)

 

(少し静かにしていろ・・・それよりも今の状態ではどれほど持つ?)

 

(・・・約二十分です・・・それ以上はブラック様の体が持ちません)

 

(まだ、制御仕切れないと言う事か)

 

 ルインの報告にブラックは僅かに苦い想いを抱いた。

 『X進化』と言う新たな切り札を得たブラックだが、その力は完全に制御し切れていなかった。そもそも『X進化』は制御出来なければ暴走してしまう可能性を持った危険な力。ルインとユニゾンする事で得た力だが、ブラックが万全な状態で『一時間』持つかどうかだった。

 未だ制御が完全に出来ていない事実にブラックは苦い気持ちを抱きながらも、より機械的になった両腕のドラモンキラーをアーマゲモンと、その周りに居るディアボロモン達に向かって構える。

 

「・・・アーマゲモン、それにディアボロモンども。貴様らは最高の敵だ。だが、俺をこの姿にさせた事を後悔しろ!!」

 

ーーーガッシャン!!!ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!

 

『ッ!!』

 

 背中のバーニアを噴かせながら超高速で突進して来るブラックウォーグレイモンXに、アーマゲモン達は驚愕に顔を歪ませるが、ブラックウォーグレイモンXはアーマゲモン達の驚愕になど構わずに一番近くにいたディアボロモンに背中のバーニアの勢いによって威力を極限にまで上げた渾身の蹴りを叩き込む。

 

「ハアアッ!!」

 

ーーードゴオオオン!!

 

「ガハッ!!」

 

 ブラックウォーグレイモンXの蹴りを受けたディアボロモンは苦痛の声を上げながら吹き飛ばされようとするが、吹き飛ぶ前にブラックウォーグレイモンXが右手でディアボロモンの頭部を掴み取り、渾身の力を込めた膝蹴りをディアボロモンの頭部に叩き込む。

 

「ムン!!」

 

ーーードオオン!!

 

「グガッ!!」

 

 ブラックウォーグレイモンXの膝蹴りを頭部に叩き込まれたディアボロモンは、一瞬息が詰まるような声を上げた。

 しかし、ブラックはディアボロモンの様子になど構わずに両手の間に一瞬の内に巨大な黒いエネルギーを作り上げ、未だに動けずにいるディアボロモンに向かって同等の大きさのエネルギー球を連続で撃ち出す。

 

「ハデスフォーーース!!!」

 

ーーードゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!

 

『ギャガアァァァァァァァーーーーーー!!!』

 

『ッ!!』

 

 ブラックの連続で放ったハデスフォースは狙いを定めていたディアボロモンだけは無く、その周りに居た他のディアボロモンにまで直撃し、それぞれ苦痛に満ちた雄叫びを上げながら、データ粒子に変わり消滅した。

 その事実にブラックウォーグレイモンXとディアボロモンの戦いを見ていた誰もが目を見開いた。

 オメガモンでさえも倒すのに時間が掛かったディアボロモンをたったの三回の攻撃で、しかも信じられないほどの威力が在るとしか思えないハデスフォースによって複数のディアボロモンが倒れた。

 短時間でディアボロモンだけではなく、インフェルモン、クリサリモン、ケラモン、そしてアーマゲモンと何度も戦いを繰り広げていたブラックウォーグレイモンXは、その戦いの中でディアボロモンが非常に撃たれ弱い事実に気がついた。だからこそ、急所と呼べる部分に連続で攻撃を撃ち込む事でディアボロモンの動きを完全に封じ、更に自らの必殺技であるハデスフォースを使用して周りに居た他のディアボロモン達も巻き込んで消滅させたのだ。

 そしてブラックウォーグレイモンXは残っているディアボロモン達にドラモンキラーを振り抜き、次々とディアボロモン達に大ダメージを、または消滅させながらアーマゲモンに向かって進撃する。

 

 その様子を見ていた大輔、賢は、ブラックウォーグレイモンXの異常過ぎる強さに目を見開くが、アーマゲモンが全身の力を口に集めている事に気がつくと、慌ててブラックウォーグレイモンXだけには戦わせてはいられないと思い、自分達のパートナーであるブイモンとワームモンを探し始める。

 そしてそれと同時に離れた場所からブイモンとワームモンの大輔と賢を呼ぶ叫びが響く。

 

「大輔!!」

 

「賢ちゃん!!」

 

『ハッ!!』

 

 自身のパートナーの声を耳にした大輔と賢が顔を向けてみると、ブイモンとワームモンが少し高い場所に立っていた。

 それを目にした大輔と賢は急いでブイモンとワームモンに駆け寄ろうとするが、多くの人々が立っていたせいで思うように前に進めず、悔しげな叫びを上げてしまう。

 

「ブイモーーーン!!!!」

 

「ワームモーーン!!」

 

ーーーザッ!

 

 二人の叫びを耳にしたのか大輔達とブイモン達を繋ぐように人々は道を開け、大輔と賢は思わず立ち止まりながら人々を見つめると、人々は大輔と賢を応援するように叫ぶ。

 

『いっけぇぇぇぇーーー!!』

 

『頑張れぇぇぇぇぇーーーー!!!!』

 

「・・・・よし!待たせたな!!ブイモン!!」

 

「行くぞ!ワームモン!!」

 

「応!!」

 

「うん!!」

 

 人々の間を駆け抜けながら上げた大輔と賢の叫びに、ブイモンとワームモンは気合の篭った声を返した。

 それと同時に大輔と賢が持つD-3が光り輝き、ブイモンとワームモンは同時に進化する。

 

「ブイモン進化!!エクスブイモン!!」

 

「ワームモン進化!!スティングモン!!」

 

『ジョグレス進化!!』

 

 エクスブイモンとワームモンは成熟期の進化を終えると同時に更なる進化を行い、光へと変わり一つに合わさる。

 そして光が消えた後には背中に四枚の翼を生やし、腰に二本の砲門を装備しエクスブイモンとスティングモンの特徴を持ったデジモン-パイルドラモンが現れる。

 

パイルドラモン、世代/完全体、属性/ワクチン種、種族/竜人型、必殺技/デスペラードブラスター

エクスブイモンとスティングモンが合体した姿だが、昆虫よりも竜の性質が強く出ている竜人型デジモン。パワー、スピードともに高く、昆虫の持つ甲殻で高い防御力を身につけている。忠誠心が強く、主人のために命をかけて戦う、忠義に厚い戦士。必殺技は、腰から伸びている2本の生体砲からエネルギー波を放つ『デスペラードブラスター』だ。

 

「パイルドラモン!!究極進化!!インペリアルドラモン!!」

 

インペリアルドラモン・ドラゴンモード、世代/究極体、属性/ワクチン種、データ種、フリー、種族/古代竜型、必殺技/メガデス、ポジトロンレーザー

パイルドラモンが究極進化した究極の古代竜型デジモン。他のデジモンとは存在感や能力で大きく上回っている。その強大な力ゆえにコントロールが難しく、善にも悪にもなってしまう。また、インペリアルドラモンにはドラゴンモードの他にファイターモードとパラディンモードが存在し、全部で三形態在ると言う珍しいデジモン。必殺技は、背中にある砲身から超重量級の暗黒物質を発射し、半径数百メートルを、暗黒空間に飲み込む『メガデス』と、同じように背中の砲身からレーザーを撃ち出す『ポジトロンレーザー』だ。

 

 パイルドラモンへの進化を終えると同時に再び光が発生し、光が消えた後には巨大な体と背に翼を生やした四足歩行の竜-『インペリアルドラモン・ドラゴンモード』が現れた。

 インペリアルドラモン・ドラゴンモードは姿を現すと同時に、そのまま東京湾の方に向かって飛び立ち、ディアボロモンを倒しながら進んでいるブラックウォーグレイモンXの頭上を通過する。

 

ーーービュン!!

 

(ムッ!!)

 

ーーードゴオオン!!

 

 自身の頭上を通過し、アーマゲモンに向かって突撃して行くインペリアルドラモン・ドラゴンモードに気がついたブラックウォーグレイモンXは、ディアボロモン達に攻撃を繰り出しながらユニゾンしているルインと会話をする。

 

(漸く現れたか。もうすぐだな)

 

(はい・・・・・残り時間は十五分在りますが、本当に宜しいのですか?)

 

(フン、構わんさ。本当はこの手で奴と決着をつけたかったが、それではオファニモンの依頼が完遂出来ん。ならば多少は我慢してディアボロモンどもで気を晴らす。もう既に今回の戦いは充分に楽しめたからな)

 

 そうブラックウォーグレイモンXはルインに答えながら自身の周りに残っている五体のディアボロモンと、アーマゲモンを護るように立ち塞がっている三体のディアボロモンに目を向け、インペリアルドラモン・ドラゴンモードに向かって叫ぶ。

 

「インペリアルドラモン!!ディアボロモンの方は俺に任せろ!!お前はアーマゲモンを狙え!!」

 

「分かった!!任せろ!!」

 

 ブラックウォーグレイモンの叫びにインペリアルドラモン・ドラゴンモードは即座に答えると、背中に備わっている砲塔からアーマゲモンに向かってエネルギー弾を連射する。

 

ーーードドドドドドドドドドドドドドドドドドドドゴオオン!!

 

『グガアッ!!』

 

 インペリアルドラモン・ドラゴンモードが放った連続エネルギー弾を食らったアーマゲモンと四体のディアボロモン達は後退り、少しでもインペリアルドラモン・ドラゴンモードの攻撃から逃れようとする。

 しかし、そうはさせないと言うようにブラックウォーグレイモンXが自身の近くにいたディアボロモンの体を掴み上げ、アーマゲモン達が後退りしている方向に投げ飛ばす。

 

「オォォォォォォォォーーーーーーー!!!!」

 

ーーードゴオオオオン!!

 

『ッ!!』

 

 自分達が逃げようとしていた後方に突然に吹き飛んで来たディアボロモンの姿に、アーマゲモン達は思わず驚くが、インペリアルドラモン・ドラゴンモードはその隙を逃さずに背中の砲塔から強力なレーザー砲をアーマゲモンに向かって撃ち出す。

 

「ポジトロンレーザーーー!!」

 

ーーービィィィィィィィーーーーー!!!

 

ーーードゴオオオオオオオオオオオオオオオオン!!

 

「グガッ!!ググググッ!!ブラックレイン!!」

 

ーーードドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!

 

 インペリアルドラモン・ドラゴンモードが発射したポジトロンレーザーを背中に受けたアーマゲモンは、流石にダメージを受けたのか悔しげな唸り声を上げ終えると同時に、自身の背中からインペリアルドラモン・ドラゴンモードに向かってブラックレインを発射した。

 それに対してインペリアルドラモン・ドラゴンモードは即座に体を動かし、ブラックレインから逃れようとするが、追尾能力を持っているブラックレインから逃れる事は出来ず、全弾直撃を食らってしまう。

 

ーーードドドドドドドドドドドドドドドゴオオオン!!

 

「クソッ!!」

 

「負けるな!!」

 

「ウオォォォォォォーーーーー!!!!」

 

 戦いを見ていた大輔と賢の叫びが聞こえたのか、爆発によって生じた煙の中から人型の形態であるファイターモードへと変形したインペリアルドラモンが飛び出し、そのままアーマゲモンの頭上に移動し、胸に備わっている竜顔の装甲部分から砲塔を出現させ、アーマゲモンに照準を合わせる。

 

インぺリアルドラモン・ファイターモード、世代/究極体、属性/ワクチン種、フリー、種族/古代竜人型、必殺技/ギガデス、ポジトロンレーザー

インペリアルドラモン・ドラゴンモードが全ての力を開放した姿。ドラゴンモードからファイターモードへ変化したことにより、全ての力がコントロール出来るように成った。必殺技は、右腕に装備している『ポジトロンレーザー』を胸にはめ込み、強力なエネルギー波を発射する『ギガデス』に、ドラゴンモードの時同様に強力なレーザーを発射する『ポジトロンレーザー』だ。

 

 その様子を見ていたブラックウォーグレイモンXも自身の周りに残っている全てのディアボロモンをアーマゲモンに向かって蹴り飛ばし、或いは殴り飛ばすと、再び自身の両手の間に巨大な黒いエネルギー球を作り上げ、インペリアルドラモン・ファイターモードと同時に必殺技を放つ。

 

「ギガデス!!!」

 

「ハデスフォーーース!!!」

 

ドグオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!

 

 インペリアルドラモン・ファイターモードが胸の砲塔部分から放ったギガデスと、ブラックウォーグレイモンXが連続で撃ち出したハデスフォースは寸分違わずにアーマゲモンとディアボロモン達に直撃し、十数メートル以上の大爆発が起きた。

 それによってディアボロモン達は次々とデータ粒子に変わり消滅していくが、最後の敵であるアーマゲモンだけは爆発によって発生している炎にさえも構わずに、自身の上空に存在しているインペリアルドラモン・ファイターモードに向かってアルティメットフレアを発射する。

 

「アルティメットフレア!!」

 

ーーードゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!

 

「グアッ!!」

 

 アーマゲモンが口から発射したアルティメットフレアを食らったインペリアルドラモン・ファイターモードは、鈍い苦痛の叫びを上げた。

 そしてアルティメットフレアの直撃を食らったインペリアルドラモン・ファイターモードは、全身から力を失ったように空中に浮かび続け、戦いを見ていた誰もが絶望感を覚えるが、ただ一人ブラックウォーグレイモンXだけは諦めた様子を全く見せずにアーマゲモンに背中のバーニアを噴かせながら突進する。

 

ーーードオオオオオオオオオオオオオン!!

 

「オォォォォォォォーーーーーー!!!!」

 

「ギギャ!!ブラックレイン!!」

 

ーーーードドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!

 

 突進して来るブラックウォーグレイモンXを目撃したアーマゲモンは即座にブラックレインを再び撃ち出し、ブラックウォーグレイモンXを撃墜しようとする。

 しかし、ブラックウォーグレイモンXは自身に迫って来ている何十発ものブラックレインを目にしてもスピードを緩める事無く逆に更にスピードを増して、ブラックレインの隙間を縫うようにアーマゲモンに接近し、全力を込めた右拳をアーマゲモンの胴体に撃ち込む。

 

「ムン!!」

 

ーーードグオォン!!

 

「ガハッ!!」

 

 体の大きさのせいでブラックウォーグレイモンXの全力を込めた右拳をアーマゲモンは避ける事が出来ずに食らい、息が詰まったような声を上げてしまう。

 その上更に追い討ちを掛ける様にブラックウォーグレイモンXを追尾していたブラックレインが飛来し、ブラックウォーグレイモンXは自身に被弾する前にアーマゲモンの傍から離れ、ブラックレインは急なブラックウォーグレイモンXの移動に対応する事が出来ず、放った張本人であるアーマゲモンに全弾直撃し爆発が起きる。

 

ーーードドドドドドドドドドドドドドドゴオオオン!!

 

「ガアァァァァァァァァァァッ!!」

 

「ハァッ!!」

 

ーーードゴオン!!

 

「ッ!!」

 

 苦痛の叫びを上げていたアーマゲモンの頭部にブラックウォーグレイモンXは踵落としを食らわせ、アーマゲモンは声も上げる事が出来ずに海面に顔をぶつけてしまう。

 

 そしてブラックウォーグレイモンXの戦いぶりを見ていた誰もが思った。

“諦めていない。どれほどに絶望や力の差を見せられても、ブラックウォーグレイモンXは全く諦めていない”。

 X進化した事によって自身の力が上がっている事などブラックウォーグレイモンXには関係ない。最後の一瞬まで諦めずにブラックウォーグレイモンXはアーマゲモンと戦い続ける。

 その姿に誰もが再び希望を胸に抱いた瞬間、戦いの場から離れていた所で両手を失い立ち尽くしていたオメガモンの目に再び光が宿り、それと同時に地面に落ちていたウォーグレイモンの頭部を象った左腕と、メタルガルルモンの頭部を象っていた右腕の目の部分に光が発生し、僅かに宙に浮かび上がる。

 

『そうだ・・・最後まで諦めちゃいけない』

 

『俺達の・・・皆の心をインペリアルドラモン・・・・君に託す』

 

ーーーピカアァァァァァァーーーーン!!!

 

 ウォーグレイモンの頭部とメタルガルルモンの頭部が言葉を呟き終えた瞬間、オメガモンのボディは光り輝き、そのまま白きリング-『ホーリーリング』に形を変えると、上空に浮かんでいるインペリアルドラモン・ファイターモードに向かって行く。

 それを目撃したアーマゲモンは、自身の本能が最大の警鐘を鳴らすのを感じると、インペリアルドラモン・ファイターモードに『ホーリーリング』を受け取らせない為にアルティメットフレアを発射しようとする。だが、発射する直前にブラックウォーグレイモンXが背中のバーニアを噴かせながらアーマゲモンに急接近し、アーマゲモンの顔の前で急停止しすると、両手をアーマゲモンの頭部に押し当てゼロ距離で高密度のエネルギー弾を撃ち出す。

 

「邪魔はさせん!!暗黒のガイアフォーーース!!!」

 

ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!

 

「ガアァァァァァァァァァァァァァーーーーーー!!!!!!」

 

 ブラックウォーグレイモンXが放った暗黒のガイアフォースを食らったアーマゲモンは、今までの中で最大の苦痛に満ちた咆哮を辺りに響かせた。

 その間に『ホーリーリング』はインペリアルドラモン・ファイターモードの胸の前で再び光り輝き、今度は白い刀身の部分にデジモン文字で『initialize(初期化)』と書かれた剣-『オメガブレード』に変形した。

 それを目にした大輔と賢はインペリアルドラモン・ファイターモードに向かって自身の出せる最大の声で叫ぶ。

 

「受け取れェェェェェェェェェーーーーー!!!」

 

「皆の力だァァァァァーーーー!!!」

 

ーーーガシィン!!

 

 大輔と賢の叫びが聞こえたのかインペリアルドラモン・ファイターモードは胸の前に存在していたオメガブレードの柄を両手で握った。

 その瞬間、インペリアルドラモン・ファイターモードの体が光り輝き、光が消えた後には純白の翼を背中から生やし、白を基調として所々に金色の装飾が成された鎧を身に着けた『インペリアルドラモン・パラディンモード』が朝日の光を浴びながら空に浮かんでいた。

 

インペリアルドラモン・パラディンモード、世代/究極体、属性/ワクチン種、データ種、フリー、種族/古代竜人型、必殺技/オメガブレード、ハイパープロミネンス

古代より伝わるインペリアルドラモンの最終形態。古代デジタルワールドの崩壊の危機を救ったとされる。その手に持つ大剣『オメガブレード』にはデジモン文字で『initialize(初期化)』と刻まれている。このインペリアルドラモン・パラディンモードこそ“ロイヤルナイツ”の始祖に当たる。必殺技は、巨大な剣の一振りで敵の構成データを問答無用で初期化してしまう『オメガブレード』に、全身の全砲門より一斉放射する『ハイパープロミネンス』だ。

 

「これが・・・・」

 

「皆の・・・・」

 

 インペリアルドラモン・パラディンモードは、自身が握っているオメガブレードから伝わる人々の力と想いを感じながら、ゆっくりと苦痛に苦しみ続けているアーマゲモンに顔を向け、オメガブレードを正眼に構えながら突進する。

 

「ウオォォォォォォーーーーーーー!!!」

 

「ッ!!グアァァァァァッ!!」

 

ーーーズドオォン!!ズドォン!!ズドオォン!!ズガアァァンン!!

 

 自身に向かって背中の羽を羽ばたかせながら突進して来るインペリアルドラモン・パラディンモードに気がついたアーマゲモンは、即座にアルティメットフレアを連射し、インペリアルドラモン・パラディンモードを撃ち落そうとする。

 しかし、インペリアルドラモン・パラディンモードはアルティメットフレアをその身に食らっても怯む事無く突進し、大輔と賢は同時に叫ぶ。

 

『いっけぇぇぇぇぇぇーーーーーー!!!』

 

「ウオォォォォォォォーーーーーーー!!!」

 

ーーードスウゥゥゥゥーーーーーーーーン!!ッ!!!

 

 大輔と賢が叫び終えると同時にインペリアルドラモン・パラディンモードが突き出したオメガブレードの刃が深々とアーマゲモンの頭部に突き刺さり、ピタリとアーマゲモンの動きは完全に止まってしまう。

 そしてインペリアルドラモン・パラディンモードがオメガブレードをアーマゲモンの頭部から抜き去ると同時に、オメガブレードの刺さっていた箇所からクラモン達が溢れ返るように飛び出し、アーマゲモンの体も次々とクラモンに戻っていく。

 

ーーーブシュウゥゥゥゥゥゥゥーーーー!!!

 

「クラモン!!」

 

「このままじゃ!奴らのデータがまた生き残ってしまう!!何か方法は・・・・そうだ!ゴミ箱だ!!」

 

 初期化されてクラモン達が空へと流れていく様子を離れた所で見ていた京、伊織はクラモン達のデータが再び逃げ出してしまう事に焦りを覚えるが、伊織は京のパソコンを見た瞬間に何かに気がついたように叫び、そのまま周りの人々に向かって叫ぶ。

 

「皆さんの光を!インペリアルドラモンの剣に!剣に集中させて下さい!!」

 

「ウオォォォォォォーーーーー!!!」

 

 伊織のやろうとしている気がついたのかインペリアルドラモン・パラディンモードは、オメガブレードを天に高く掲げる。

 それと同時に東京湾に集まっていた大勢の人々や太一達は、自身の持っている携帯やモバイル、そしてデジヴァイスやD-3をインペリアルドラモン・パラディンモードの掲げているオメガブレードに向け、光がオメガブレードに集まって行く。

 

ーーーピイィィィィィィーーーーー!!

 

「よし!!これでクラモン達を全部パソコンに転送出来・・・・・」

 

「如何しました?京さん?」

 

「如何したんダギャ?」

 

 突如として言葉と動きが止まってしまった京の姿に、傍にいたホークモン、アルマジモンは質問するが、京は答える事無くパソコンの画面に映っていたゴミ箱から扉を開けるように出現したデフォルメされた二頭身のルインの映像を見つめる。

 呆然としている京達の様子に構わずに、パソコンの画面内でデフォルメ・ルインは京に深々と頭を下げながらメッセージを告げる。

 

ーーーピコン!!

 

『全てのクラモン達とディアボロモン達、そしてインフェルモン達のデータ回収にご協力頂きありがとうございます!!これで全てが私達の狙い通りになりますよ。因みに私達の本当の目的は、ディアボロモンの消滅ではなく、デジタマに初期化する事でした!!』

 

『なっ!?』

 

 デフォルメ・ルインが告げた事実に京だけではなく、横でパソコンの画面を覗いていたホークモン、アルマジモンも驚愕の叫びを上げた。

 しかし、遂にブラックウォーグレイモンXとルインの目的を明らかにしたデフォルメ・ルインは、京達の様子になど全く構わずに説明を続ける。

 

『あるお方の頼みでクラモン達を全て回収するように私達は頼まれていたのです。ですが、幾らなんでも万単位のクラモン達など連れて行くわけにはいかないので、一度全てのクラモン達とディアボロモン達のデータを一箇所に集める必要があったのです。そしてその状況で初期化に成功すれば、元々一体だったディアボロモンは、全て初期化され、一個のデジタマに戻ります。色々と予想外な事態も起きましたが、概ね私達の計画通りに事は進みました。貴女がたのご協力が無ければ無理な事でしたよ。本当にありがとうございました!!・・・・なお、この映像が流れ終えてから数秒後に自動的に貴女のパソコンの電源は切れて、其方に送られる予定だったクラモン達は全て私達の所有しているパソコンに転送されます。それではもう会う事は無いでしょう。さようなら』

 

ーーーブン!!ピッ!!

 

「ちょ、ちょっと!!一体如何言う事よ!?」

 

 デフォルメ・ルインの宣言通りに電源が切れたパソコンに京は叫ぶが、パソコンは電源が切れたまま何も答えなかった。

 その間にもインペリアルドラモン・パラディンモードの掲げているオメガブレードに人々の光は集まり続け、全ての光がオメガブレードに宿った瞬間、インペリアルドラモン・パラディンモードとその周りを漂っていたクラモン達全てが光の柱に包まれる。

 

ーーーピカアァァァァァァァーーーーーン!!

 

「よし!これで全部終わるぜ!!」

 

「・・・・いや!よく見てみろ!!クラモン達が空に昇って行っているぞ!!」

 

「えっ!?」

 

 賢の突然の叫びに大輔が慌てて光の柱の中に目を向けてみると、確かに賢の叫び通りにクラモン達は転移する事無く上昇し続け、その先に何時の間にか移動していたドラモンキラーを外したブラックウォーグレイモンXの右手の中に浮いている小さなパソコンの中に次々と入り込んでいた。

 その様子に大輔と賢だけではなく、離れた所で戦いを見ていた太一、ヤマト、ヒカリ、テイルモン、アグモン、ガブモン、そして後から駆けつけて来た空やオメガブレードに光を送っていた人々も様子が可笑しい事に気がつくが、ブラックウォーグレイモンXは構わずに全てのクラモン達が自身の右手の中に存在しているパソコンの中に入り込むのを待ち続ける。

 そして最後のクラモンがパソコンの中に移動するのを確認すると、パソコンを宙に浮かせ、訳が分からないと言う顔をしているインペリアルドラモン・パラディンモードに目を向け、瞬時にインペリアルドラモン・パラディンモードの目の前に移動する。

 

ーーービュン!!

 

「ッ!!」

 

「悪いが少し借りるぞ!」

 

ーーードン!!

 

『ッ!!』

 

 ブラックウォーグレイモンXは叫ぶと共に右手を振り抜き、インペリアルドラモン・パラディンモードが右手に握っていたオメガブレードの柄の部分を殴り、オメガブレードはその衝撃によってクルクルと宙を舞ってしまう。

 それに気がついたインペリアルドラモン・パラディンモードは慌ててオメガブレードに手を伸ばすが、その前にブラックウォーグレイモンXがオメガブレードの柄を右手で掴み取る。

 

ーーーガシッ!!

 

「ッ!!何をするつもりだ!?」

 

「フン、少し見ていろ。すぐに返して、ムッ!!」

 

ーーーギリギリギリッ!!

 

 インペリアルドラモン・パラディンモードの質問にブラックウォーグレイモンXが素っ気無く答えようとした瞬間に、ブラックウォーグレイモンXが握っていたオメガブレードが急に揺れ動き、ブラックウォーグレイモンXの手から逃れようとし始めた。

 それを目にしたブラックウォーグレイモンXは、内心でやはりと思った。

 ブラックウォーグレイモンXの力は闇の力に分類される。そしてオメガブレードの力は光に分類される力。相反する力を持つブラックウォーグレイモンXから、オメガブレードは逃れようとしているのだ。

 その事は既にオメガブレードについての知識を持っているブラックウォーグレイモンXは予測していたが、最後の作業の為にはオメガブレードの力がブラックウォーグレイモンXには必要だった。

 本来ならばネット世界でオメガモン達よりも前にディアボロモンの下に辿り着き、ディアボロモンが存在していた空間そのものを遮断し、ブラックウォーグレイモンXが全てのクラモン達とディアボロモンを倒し、回収したデータを持ってオファニモン達の下に戻る予定だった。だが、ブラックウォーグレイモンXの知識を越える予想外が多発し過ぎた為に、オメガブレードを使う以外にクラモン達をデジタマに戻す事が出来ない状況になってしまったのだ。だからこそ、ブラックウォーグレイモンXは何が何でも一度だけでも、オメガブレードを使用しなければいけないのだ。

 

「貴様からすれば俺は認められん存在だろう。だが、嫌でも従って貰うぞ!!オォォォォォォーーーーー!!!」

 

ーーービリビリビリビリビリッ!!

 

「ッ!!止めるんだ!!ブラックウォーグレイモン!!そのままじゃ、お前もオメガブレードも吹き飛ぶぞ!!」

 

 力が反発し合って電撃が舞い散り始めたブラックウォーグレイモンXとオメガブレードを目撃したインペリアルドラモン・パラディンモードは、無理やりにでもブラックウォーグレイモンXとオメガブレードを引き離そうと叫びながら飛び掛かった。

 しかし、ブラックウォーグレイモンXは力の反発によって発生している電撃に体が傷つきながらも、自由になる左手に小さな黒いエネルギー球を作り上げ、飛び掛かって来ているインペリアルドラモン・パラディンモードに投げつける。

 

「邪魔をするな!!」

 

ーーードオン!!

 

「グアッ!!」

 

 ブラックウォーグレイモンXが投げつけた黒いエネルギー球を胸に食らったインペリアルドラモン・パラディンモードは僅かに苦痛の声を上げ、胸元を手で押さえながらブラックウォーグレイモンXを見つめる。

 その間にもブラックウォーグレイモンXは、オメガブレードが発する電撃によって、体が傷ついて行くが、構わずに強い決意が篭った叫びを放つ。

 

「これは俺の役目だ!!本来のオメガブレードの持ち主である貴様にも邪魔はさせん!!オォォォォーーーーーーー!!!!」

 

ーーービリビリビリビリビリビリッ!!!

 

「グゥッ!!否定するか!俺を!!だが、貴様は俺に従え!!!」

 

ーーードゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!

 

『ブラックウォーグレイモン!!!』

 

 ブラックウォーグレイモンXが叫ぶと同時に力の反発が最大にまで高まったのか、ブラックウォーグレイモンXとオメガブレードは突如として発生した爆発に飲み込まれた。

 それを目撃したインペリアルドラモン・パラディンモード達は、驚愕に満ちた声でブラックウォーグレイモンXの名を叫び、誰もが心配さと不安に満ちた顔を爆発によって生じた煙を向けると、煙の中から黒い閃光が一閃され、煙を吹き散らす。

 そして煙が吹き散った後には、黒く塗り潰されたオメガブレードを右手に握ったブラックウォーグレイモンXが存在し、賢は信じられないと言う声を出す。

 

「・・・信じられない・・・相反する力を、意志力で捻じ伏せて従えた・・・・オメガブレードに宿る意思が、皆の力が・・・インペリアルドラモンだけではなく、ブラックウォーグレイモンに力を貸す事を認めたんだ」

 

「・・・アイツ・・・やっぱあのブラックウォーグレイモンだ・・・本当に生きていやがったんだ」

 

 オメガブレードを従えたブラックウォーグレイモンXの姿に、賢と大輔はそれぞれ声を上げながら、使い心地を確かめるようにオメガブレードを振り回しているブラックウォーグレイモンXを見つめる。

 そしてある程度試し終えたのか、ブラックウォーグレイモンXは自身の頭上に浮かんでいるパソコンに向かってオメガブレードを構え、目を伏せながら精神を集中させると、目を見開き、オメガブレードをパソコンに向かって突き出す。

 

「オメガブレーーーード!!!」

 

ーーードスゥゥゥゥーーーン!!

 

ーーーピカカァァァァァーーーーン!!

 

『ウワッ!!!』

 

 ブラックウォーグレイモンXがオメガブレードをパソコンに突き刺すと同時に凄まじい光が発生し、様子を見ていた誰もが思わず声を上げて目を瞑ってしまう。

 そして光が治まるのを確認すると、人々はゆっくりと目を開け、ブラックウォーグレイモンXを見てみると、左手に小さなデジタマを浮かばせている姿を目にする。

 それと同時にブラックウォーグレイモンXは右手に持っていたオメガブレードをインペリアルドラモン・パラディンモードに投げ渡し、インペリアルドラモン・パラディンモードが握った瞬間に、オメガブレードは再び白き輝き放つ長剣に戻る。

 

ーーーガシッ!!

 

「ソイツはやはりお前が持て。オメガモンが次の世代であるお前に託した物だからな」

 

「ブラックウォーグレイモン・・・・お前はやっぱり生きていたのか?」

 

「・・・・・・・・違うな・・・俺は確かに死んだ・・・・今此処にいられるのは、あるデジモンのおかげだ・・・それに時間が来たようだ」

 

「時間だって?如何言うッ!?」

 

 ブラックウォーグレイモンXの言葉の意味がよく分からなかったインペリアルドラモン・パラディンモードは、詳しく話を聞く為にブラックウォーグレイモンXの肩を掴もうとしたが、手はブラックウォーグレイモンXの肩をすり抜けた。

 その事実にインペリアルドラモン・パラディンモードだけではなく、様子を地上から窺っていたヒカリ達は目を見開くが、ブラックウォーグレイモンXはそうなる事を知っていたかのように薄れていく自身の体を冷めた目で見る。

 

「俺が再びこの世界にいられる時間は、クラモンのデジタマを手に入れる時までだった・・・・そしてクラモンのデジタマを手に入れた今、俺はもうこの世界から消える」

 

「そ、そんな!?待ってくれ!!一体誰なんだ!?お前をこの世界に再び現したデジモンって言うのは!?」

 

「安心しろ・・・・奴はチンロンモンと同じぐらいに信用も信頼も出来るデジモンだ・・・クラモンのデジタマは絶対に悪用はしないだろう・・・・奴が俺にクラモンのデジタマを回収してくれと頼んだのだからな・・・・それよりもインペリアルドラモン・・・お前はアグモンとガブモンからこの世界の人間達の想いを受け継いだ・・・だからこそ、俺はお前にこの言葉を送る」

 

「何だ!?」

 

「この世界の事を頼んだ。この世界にはこの後も、多くの危機が訪れるかもしれない。俺はもうこの世界には戻れない。この後の危機はお前達が自分達の力で解決しろ・・・それじゃ…」

 

『ブラックウォーグレイモン!!』

 

「ッ!!」

 

 聞こえて来た二つの声にブラックウォーグレイモンXは自身の体が半分以上消えながらも、声の聞こえて来た方に目を向け、涙を目に浮かべたヒカリとアグモンの姿を目にする。

 

「待って!?まだ、話したい事が!?“あの時”のお礼を言いたいの!?」

 

「もう少しだけこの世界に居てよ!!お願いだよ!?」

 

 自らに向かって想いの篭もった叫びを上げるヒカリとアグモンにブラックウォーグレイモンXは僅かに胸に痛みを覚えるが、すぐにそれを振り払い、体が消え掛けながらもインペリアルドラモン・パラディンモードやヒカリ達に背を向ける。

 

「・・・・また、何時の日か会おう、俺の親友達」

 

ーーーシュウゥゥゥゥゥーーーーー!!!

 

 ブラックウォーグレイモンXが言葉を告げ終えると共に、その体は光の粒子へと変わり天に昇って行った。

 その姿にブラックウォーグレイモンXが世界から再び消えた事をヒカリとアグモン達は知るが、何故か前のような悲しみは湧き上がって来なかった。逆に何時かまた再会出来ると言う確信がヒカリ達の胸に宿るのだった。

 

 

 

 

 

 三大天使世界デジタルワールド。

 その地に存在している火の街に別世界の地球からクラモンのデジタマを回収したブラックとルインが訪れ、二人が必ず戻って来てくれる事を信じていたオファニモンにデジタマを渡していた。

 

「依頼の品だ」

 

「ありがとうございます。新たに生まれて来るこの子はきっと、大勢の幼年期デジモン達と歩み、多くの事を今度こそ知るでしょう」

 

「フン、だといいがな・・・もし新たに生まれて来たクラモンも同じ事を繰り返したら、今度こそ俺は奴を滅ぼす」

 

「安心して下さい。この子は私達が最も信頼しているデジモンに預けます。あの方々ならば絶対にクラモンを間違った方向には進ませないでしょう」

 

 そうオファニモンは優しげな笑みを口元に浮かべながら、クラモンのデジタマを優しく撫でる。

 オファニモンがクラモンの存在を知ったのは、チンロンモンの報告のおかげだった。何も知らずに究極体にまで成長してしまったクラモン。そして大勢の人々にクラモン自体のせいだったとは言え、嫌われてしまったクラモンを助けたいとオファニモンは思い、本来ならば緊急事態でも無い限り、禁じられている他のデジタルワールドの干渉を行なったのだ。

 その罰は何れ他世界のデジタルワールドのデジモン達から下されるかもしれなかったが、オファニモンはそれでもクラモンを放っては置けず、ブラックにクラモンのデジタマの回収を依頼したのだ。

 その事を知っているルインはオファニモンに何れ下される罰の事を思い、悲しげに顔を伏せてしまうが、ブラックだけは険しい顔をしながら気になっていた事をオファニモンに話す。

 

「ディアボロモンに干渉していた奴がいたぞ」

 

『えっ?』

 

「ネット空間の内部でインフェルモン達に囲まれた時に奴らが言っていた。何者かが奴に干渉し、戦いは遊びなどと教え込んだようだ。恐らく俺が知る歴史との違いの原因もそれだろう・・・・そしてディアボロモンに干渉した奴は相当に頭がキレる。それこそ、『倉田』の奴並みか、それ以上にな」

 

「まさか・・・・・それが事実だとすれば、精神は子供とは言え、究極体であるディアロボモンに干渉出来た者が居ると言う事ですか?」

 

「間違い無いだろうな・・・だが、あの世界での主だった世界を滅ぼそうと考えていたデジモンは殆ど居なくなった筈だ。残っているデジモンでは、現実世界で、更に言えば究極体のディアボロモンに干渉出来るほどの力が居る奴が居るとは思えん。一番可能性が高い『デーモン』は封印されたらしいからな」

 

「・・・他の世界に平然と干渉し、尚且つ崩壊に追い込もうとする巨大な力と思想を持つ可能性があるデジモンは、現状では一体だけ考えられます・・・・既に覚醒している可能性が高いかも知れません・・『ルーチェモン』が」

 

 そうオファニモンはディアボロモンの操ったであろう可能性が在る巨大な悪意を持ったデジモン-『ルーチェモン』の名を、苦虫を噛み潰したような声で呟くのだった。

 

 

 

 

 

 アーマゲモンが暴れた別世界の地球と隣接しているデジタルワールド。

 その地に存在しているデジモン達が死んだ後に訪れる場所である『はじまりの町』

 多くの幼年期デジモンやデジタマが在る場所で、悠然と十二枚の純白の翼を生やし、四つの『ホーリーリング』を身に付けた子供の天使-『ルーチェモン』は楽しげに笑みを浮かべていた。

 

ルーチェモン、世代/成長期、属性/ワクチン種、種族/天使型、必殺技/グランドクロス

遥か古代のデジタルワールドに降臨した天使型デジモン。デジタルワールドに秩序と平和をもたらしたデジモンだが、そのすぐ後にデジタルワールドで反乱を行い、永き暗黒の時代を作り上げた。成長期でありながら完全体クラス所か究極体さえも凌駕する力を持っている。必殺技は、惑星直列“グランドクロス”のように、10個の超光熱球を十字に放つ『グランドクロス』。その威力はセラフィモンの必殺技を凌駕し、またあらゆる災害が起きるとされている。

 

「計画通りだね。ディアボロモンが現実世界で暴れたから、こっちのデジタルワールドに居る『エージェント』連中はその対処で忙しくて、デジタルワールドにまで目が行っていない。フフフッ、僕の策どおりだよ」

 

 そうルーチェモンが楽しげに笑っていると、大きな風呂敷包みを背負った赤い服を着た女性と青い帽子に青いコートを着た片目しかない男性が、ルーチェモンに声を掛けて来る。

 

「ルーチェモン様!『デジタマ』の数は充分に回収しました!」

 

「ヘヘヘヘッ、序でに幼年期デジモンの方も結構な数を捕まえておきましたぜ」

 

「ご苦労だね・・・僕らの計画を実行するのには、『倉田』が集めたデジタマじゃ足りないから、もっと集めないといけないからね・・・それにしても全くディアボロモンも不甲斐ない。アレだけ僕が策を与えてあげたのに、全部潰されてデジタマに戻されるなんて、不甲斐なさ過ぎるね・・・・いや、それだけデジモンと人間の絆が脅威と言う事かな」

 

「俺達もソイツには苦労させられました」

 

「本当だよね・・・折角追いつめてもあいつらは互いがやばくなったら急に強くなるし・・・本当に苦労させられたよ」

 

「それにあの黒いデジモン・・・・アレも危険だ。僕らの計画の障害になるのは間違いない」

 

『ウッ!!』

 

 ルーチェモンの言葉に女性と男性は先ほどまでの余裕が消えて、顔を青ざめさせながら体が恐怖で震えていた。

 黒いデジモンこと、ブラックと二人の間には因縁が存在している。それこそブラックが女性と男性の生存を知ったら、即座に殺しに向かうほどの憎しみにまみれた因縁が。

 

(何だってアイツが生きてんだよ!?確かに死んだ筈なのに!?)

 

(何としてもあたしらが生きてる事だけは知られないようにしないとね。せっかくこうやって生き延びたんだから、何が何でも生き抜いてやるよ!!その為に『ルーチェモン』様に協力してるんだからね!!)

 

 そう男性と女性がそれぞれブラックに対して考え込んでいると、ゆっくりとルーチェモンは右手を振るって空間の歪みを発生させる。

 

ーーーブオン!!

 

「一先ずは帰るよ。これ以上この世界に居たら流石にばれるからね。次はまた別世界のデジタルワールドで『デジタマ』と・・・そして『七大魔王』を回収しに行くから」

 

『はい!!』

 

 ルーチェモンの指示に女性と男性は頷き、眠らせた幼年期デジモン達が入っている檻と、デジタマが大量に包まれている風呂敷を持ってルーチェモンが作り上げた空間の歪みの中に入って行く。

 それを確認したルーチェモンもゆっくりと自身が作り上げた空間の歪みの中に入り込み、最後に『はじまりの街』を見回す。

 

「フフフッ、何れこの世界も僕のモノにしてあげるよ。そして楽しみにしているよ、選ばれし子供たち。君達が頑張った全てを別世界の人間が踏み潰す瞬間を。どれだけ頑張っても、それを蔑ろにするのは、同じ人間なんだからね。精々頑張っておくんだね・・フフッ、ハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!」

 

 ルーチェモンはそう残忍さと冷酷さに満ちた笑い声を上げながら、空間の歪みは徐々に小さくなり、その姿は消え去った。

 

 ディアボロモンと言う地球を滅ぼす危機は確かに去った。

 だが、それは更なる闇の呼び声に過ぎなかった。

 本格的に時が動き出すのは九年後。その時に再びヒカリ達は漆黒の竜人と出会う。

 しかし、それは喜びの再会ではなく、全てのデジタルワールドと多くの世界を巻き込む激戦への参戦だった。


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