自殺志願の神殺し(F)/生存欲の魔王(B)   作:天崎

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舞う鴉羽(C)/生命を喰らう炎(F)

 

鮮血が散る中で、女の周囲で黒い羽が舞う。

女は手だけで無く全身の姿を変えていく。

周囲を舞う羽が女を包むと、その身が膨らむ。

黒い羽が散り、その姿が露になる。

 

「鴉?」

 

喰に駆け寄っていた半月が呟く。

現れたその姿は血にまみれた爪を持つ巨大な鴉であった。

 

「フフフフフフ、ハハハハハハハハハハァ!!まさか女を庇うとは!!こうも主の仇があっさりとは思わなかったよ!!」

 

喰は服を真っ赤に染め、辺りを血だまりにしたままでピクリとも動かない。

 

「一先ずは予定通り貴女も殺りましょうか!!」

 

「っ!!」

 

その言葉に半月が身構えるが、その瞬間にボソリとした声が聞こえてくる。

 

「………せよ。地を裂きし、爪よ。我が元に現れよ!!」

 

「なっ!?」

 

突然、龍の爪が顕現し、完全に油断していた鴉の身を貫く。

 

「ったく、うるせぇな…………少しは休ませろよ」

 

喰はムクリと起き上がる。

半月はキョトンとした様子でそれを眺めている。

 

「あんた………随分とピンピンとしているわね……………」

 

「輸血パックが裂かれて、肌を薄く斬られただけだからな」

 

喰は懐から裂かれた輸血パックを取り出す。

 

(全滅か。まぁあれ相手ならいらねぇか)

 

「貴様ぁぁぁ……」

 

いまだに爪に貫かれたままの鴉が恨めしそうに睨んでくる。

喰は恐れるわけでも無く観察する様に鴉を見る。

 

「なんだ?一枚じゃ不満か?」

 

現在顕現させているのは左手の人差し指の分だけである。

喰は中指と薬指も剥がすと、龍の爪が更に顕現する。

そして、それを鴉に向けて振り降ろす。

 

「なめるなぁぁ!!」

 

鴉は自力で身を貫いていた爪から抜けると、追加の二枚を避け、その瞳を光らせる。

直後に喰の横の教会の壁が崩れてくる。

 

「【弾】【止】【防】起動、三連障壁」

 

適当に呪符をばら蒔き、起動させる。

幾つかの魔法陣が現れ、喰と半月に向かってくる瓦礫を止め、弾いていく。

 

「大丈夫か?」

 

「大丈夫よ。それより、あのまつろわぬ神の正体分かるの?」

 

「わざわざ特定する必要も無いが………おそらくラウムだろ」

 

ラウムはソロモン72将の一人である。

姿は鴉であり、人に化ける時は炎色の衣を纏った女性になる。

元天使であり、ルシファーと共に堕天したのだ。

主の仇とは、つまりルシファーの仇と言う事である。

 

「だろ?正解か?」

 

「その通り。我はラウムなり!!」

 

はっきりと答える。

ラウムは言動が正直なので聞けば答える。

 

「まっ特に対策を打つ必要もねぇ。お前は既に俺の巣の中だ」

 

「戯言を!!」

 

ラウムが喰へと突進してくる。

喰は“鬼切丸”を取り出し、真っ向から迎え撃つ。

 

「ぐっ!?」

 

と、思わせて仕掛けていた物を発動させる。

ラウムは仕掛けられていた“糸”に引っ掛かり、動きが鈍る。

そこへ、呪符などがまとわりついていく。

 

「言ったろ?巣の中だってな」

 

「ぬぐぅぅぅ!!」

 

抵抗するラウム。

しかし、呪符によって縛られた体ではカンピオーネの呪力で強化された“糸”を引き千切るのは叶わない。

その間に喰は近付いていく。

 

「さぁ、終わりだ」

 

「おのれぇぇぇ!!」

 

抵抗虚しくラウムは左の龍の爪によって斬り裂かれ、血が舞う。

吹っ飛んだラウムにトドメを刺す為に歩を進める。

その間に“鬼切丸”に自身の血を塗りつける。

ラウムの目の前に来て、刀を振り降ろそうとした瞬間にその身を羽が包む。

そして、姿を女へと変える。

 

「どうかお許しを!!貴方は私のような女に慈悲も

 

「うるせぇよ」

 

悪足掻きの命請いを無視して、心臓に刀を突き刺す。

 

「この程度で我が死ぬとでも?」

 

口から血を流しながらラウムが言う。

確かにまつろわぬ神は心臓を貫いた所で死にはしないだろう。

 

「火よ。我が司りし四元素の火よ。創造と破壊、生命力と死、相反する物を司りし火よ!!我の生命を種火とし、燃え上がれ!!」

 

刀に塗られた血が発火する。

 

「ごがぁぁぁぁぁぁ!?し、しかしぃ!!内側から火で焼かれた程度でぇぇぇ!!」

 

「そりゃただの火ならな。俺のは四元素の火だ。生命力を司る四元素の火は他人の生命力にも干渉出来る。さすがにカンピオーネやまつろわぬ神相手だと無理だがな」

 

「な、ならばぁぁぁぁ我には意味がぁぁぁぁ」

 

「但し工夫すれば干渉出来る。例えば心臓に触れるとかな!!」

 

「なっ!?」

 

「お前の生命力を貰うぜ」

 

「ゴガァァァァァァ!?」

 

刀に纏われていた火が急激に大きくなっていく。

対してラウムは見る見る干からびていく。

ラウムの絶叫が響く。

完全に絞り尽くすと、ラウムの体を宙へと放り投げる。

 

「じゃあな」

 

「ぐるばぁぁぁ!?」

 

宙に放り投げたラウムを龍の爪で斬り裂く。

斬り裂かれたラウムは断末魔を響かせながら消えていくのだった。

同時に刀を包んでいた炎も消えるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆           

 

 

「まつろわぬ神にしては小物もいいところだったな」

 

とはいえ、ラウムを倒した事によって“彼ら”の体には何らかの力が流れ込んでいく。

とりあえず、まつろわぬ神ではあったのだろう。

喰はそれで完全に殺った事を確認する。

 

「えーと、もう倒したの?」

 

「あぁ、終わったぜ。つーかお前は途中から何処に行っていた?」

 

「物陰に隠れてたわよ」

 

「……………そうかい。まぁまつろわぬ神相手ならそれでいいだろ」

 

一応、納得する。

まつろわぬ神を相手にしたら逃げるのが一番である。

 

「ところで………あんた」

 

「何だ?」

 

「何で私を庇ったの?」

 

「言ったろ?お前を守ると“玉依姫”と契約してるって」

 

「そうね。言ってたわね。まぁそういう事でいいわ」

 

何故か拗ねた様にしながら半月は呟く。

そんな様子を見ながら喰は頭を掻く。

 

「(考えるより先に体が動いたのも事実だが)」

 

「何か言った?」

 

「いいや、何でもねぇよ」

 

適当に答えておく。

半月もそれ以上は追求して来ない。

 

「さ、中に戻りましょ。騒ぎの事とか、そこの壁の崩れた理由を院長に説明しないといけないし」

 

「そうだn

 

直後に上から飛んできた槍が喰を貫く。

 

「は?」

 

「え?」

 

「我の狩るべき獲物は先に狩られてしまったようですね。まぁいいですよ。神殺しよ、貴方でも代わりに………否、代わり以上の相手になってくれるでしょう」

 

「クソが……いきなりかよ……………ゴフッ」

 

「喰!!」

 

膝を着き、口から血を垂らし、身を貫いている槍に血を滴らせながら、槍の飛んできて、呟きの聞こえた方向を見る。

寄って来た半月は自身の背後へと留める。

槍の飛んできた方向には多数の腕を持つ女神が浮かんでいた。

 

「テメェ………何者だ?」

 

「戦う前に名乗るのは当然ですね」

 

 

「我が名はドゥルガー!!シヴァ神の暗黒面に対応する、血と破壊の女神なり!!」

 

 

女神は高らかと名乗るのだった。

喰はまた面倒な女神様が来た物だ、と顔をひきつらせながら呟くのだった。

 

 





ラウム戦終了!!
直後にドゥルガー戦に突入しましたが。

四元素の火の生命力干渉を軽く説明すると、周囲の生命体の生命の炎を吸収したり強めたり出来ます。
ただし、魔術師などには干渉しづらく、カンピオーネやまつろわぬ神には心臓に直接触れるなどしない限りは干渉出来ません。

ルシファーの権能、もとい悪龍の部位は十分ほどで自然に消滅します。
意図的に消す事も可能です。


それでは質問があれば聞いてください。
感想待ってます。


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