Angel Beats! the after story   作:騎士見習い

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お見合い

 

チャーの財力によりお見合い会場を1日貸し切り、お見合いを成功させるために盗聴器に隠しカメラ、こちら側が雇ったスタッフもろもろと完璧に準備をしてある。あとは本人しだい。

 

 

『あ〜テステス、こちらリーダー。声が聞こえるなら返答をどうぞ』

 

ザザーっと耳障りな音とともにゆりっぺの声が届く。言われた通りに返答する。

 

『こちら日向。通信良好だ』

 

『こちら野田。以下略』

 

『こちら大山。以下略』

 

 

手抜き感がある通信に多少不安を覚えるが気にせず作戦成功のために集中する。作戦の内容は至ってシンプル。ありとあらゆる手を使って結婚を成立させること。そのために俺とゆりっぺは別室にてチャーの支援。野田と大山は臨機応変に活動するように言ってある。

 

 

『始まったわよ』

 

 

隠しカメラから部屋の様子を見るとチャーの顔面は強ばり、体は硬直してるかのように固まっている。

 

『何してるのチャー!さっさっと会話しなさいよ』

チャーには小型のインカムを耳につけてもらい指示を出す。早速チャーからアイコンタクトが飛んでくる。

 

【なにを話したらいいんだ。教えてくれ】

 

序盤から助けを求めるあたり、この先が思いやられるな。こういうことは俺よりも女性であるゆりっぺの方が良い質問を教えてくれるだろう。

 

 

『とりあえず趣味でも聞いときなさい』

 

 

定番な質問だがここで共通の趣味があれば仲が大きく深まるだろうな。だが、あのチャーと美人なお相手の間に通じ合える部分があるように思えない。まさに《美女と野獣》

 

 

「し、ししし趣味ははななんですか!?」

 

 

とんでもなく緊張しているのが一発で分かる。さて、これで引かれてなければいいが……。

 

「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。趣味は、そうですね。料理や最近だとガーデニングにハマってます。尚人さんは何か趣味があるんですか?」

 

 

あまりの非の打ち所のない対応と趣味。『何その完璧な趣味……』とゆりっぺの敗北宣言がボソッと聞こえてきた。

 

『気にするな、ゆりっぺ。たとえドン引きするような趣味でもオレは愛しているぞ』

 

『駄犬は黙っててくれないかしら』

 

野田がゆりっぺの中で駄犬にまでランクアップした。 とまぁ、気を取り直してチャーの返答を待つ。

 

「あ〜えっ〜」

 

またしてもアイコンタクトが飛んでくる。これからずっと助け舟を出し続けたら偽りだらけの詐欺人間になってしまう。さて、どうしたもんかな……。

 

『まぁ僕に任せなよ。この本州のサラブレッドと呼ばれた、この、僕にね!』

 

『やめろ大山!』

 

『口を出すんじゃない日向くん!僕に任せれば一瞬で口説き終わるさ』

 

そこまで言うなら、と渋々、大山に返答を委ねる。

 

『まずは自慢のGTRで夕日を見ながら海岸沿いをドライブ。そして夜は行きつけのバーでウイスキーを飲みながらダーツを嗜む。この充実した一日が趣味だぜ』

 

 

俺が知ってる趣味の範囲を超えている回答が出たことに呆れて何も言えなかった。まぁ、さすがにチャーも分かってるだろ。

 

 

「しゅ、趣味はGTRに乗りながらウイスキーを飲む」

 

 

『飲酒運転じゃねぇぇか!!!』

 

 

あまりにも最悪な部分だけを選択していた。もうただの犯罪者である。

 

 

「ふふっ。尚人さんはおもしろい方ですね。今まで両親が紹介してくださった方々は自分の地位や自慢話ばかりで飽き飽きしていました」

 

 

ユーモアの域を超えているような回答だったが案外悪くない反応だったのはせめてもの救いだろうな。

 

彼女の言葉にチャーは懐かしむように微笑んでいた。理由を聞きたいところだが、どんな状況でも教えてくれないだろうな。

 

「自分も初めてのお見合い相手があなたで良かったです。その、自分を相手に選んでくれた理由をお聞きしてもいいですか?」

 

これも本州のサラブレッドの力なのだろうか、さっきまでの緊張はどこへやら、とスラスラと会話をしている。とんでもない失敗は一周まわって人を冷静にさせるのか。それとも………。

 

 

『おーばーおーばー。総員に告ぐ、もう何もしなくていいわ。あとはチャーの判断と言葉に委ねて、暖かい目で見守りましょ』

 

 

『うちのリーダーはオカン属性が強くて最高だぜ!』

 

 

『日向くん、その減らず口を閉ざさないと舌を切り落として駄犬の餌にするわよ』

 

変に茶化した代償がデカすぎて背筋が凍りつく。

 

『わ、悪かった』

 

 

気を取り直して画面に映る御二方を見る。隠しカメラなんて最初からなかったかのようにチャーは真剣な眼差しで彼女の方を見つめていた。

 

 

「女の勘ですよ。この人はきっと良い人だって思ったんです。理由にならないですか?」

 

 

「そっくりだ……あ、いえ。十分に納得出来る理由だと思います」

チャーは誤魔化していたが、きっと前世のお嫁さんと瓜二つなのだろう。中身も。

チャーの顔は覚悟を決めた表情となっていた。

 

「今の自分はオモチャを作ることしか能がない男です。こんな自分で良ければお付き合いさせてください」

『きゃあぁぁ!!告白よ告白!くぅ〜〜チャーもやり時はやるわね』

 

『ふんっ、俺に比べれば少し劣るがな。俺の告白はロマンチックの塊だったよな。ゆりっぺよ』

 

 

『あ〜はいはい。ロマンチックでしたロマンチックでした』

 

 

ゆりっぺの乙女心を揺さぶった告白の結果はいかに!!

 

 

「嫌です」

 

 

『『『『へっ!?えぇ〜!!!!』』』』

 

 

今の流れが嘘かのような返答に俺たちは絶叫してしまった。告白した当人は真っ白に燃え尽きている。あまりの状況に混乱が隠せない。

真っ白のチャーにトドメをさすのか再び口が開かれた。

 

 

「ただのお付き合いなんて嫌です。……結婚を前提にお付き合いして欲しいです」

 

 

まさかの逆プロポーズ!!

 

「まだ会って1日も経ってないのよ!!大丈夫なの!?!?あっ………」

 

ゆりっぺが画面に映っていた……。つまり、作戦はバレてしまったってことだ。

 

作戦成功のために何通りもの計画を練っていたのに全て無駄になった。

あの時の珍しくゆりっぺが俺たちに素直に謝ったことに軽く感動をしたのを覚えている。

 

 

 

 

後日談としては、俺らの作戦を全て話した。これといったお咎めもなく無事にチャーのお見合いは成功を収めた。

 

 

『今度こそ最後まで守りきる』

 

 

そう呟いたチャーに俺は何も言わず、ただ肩に手を置いた。

 

 

 




どうも久しぶりです。騎士見習いです。
何ヶ月ぶりでしょうか……。でも久々に投稿できて良かったです!!

前回、投稿して数日後に週間ランキングに載っていたと聞いて嬉しかったです!!これも皆様のおかげです!ありがとうございます!!

では、あらためて話し的には短いですがチャー編はこれにて終了とさせていただきます。残るメンバーは2人?ですかね。
約5年間投稿し続けてだいぶ終わりが見えてきた気がします。
時間がかかると思いますが、完結目指して頑張りますのでよろしくお願いします。
では、あらためまして読んでくださってありがとうございます。これからもよろしくお願いします。意見・感想も待ってます。




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