昼食後、キョウや咲、照さん達はみんなまた対局室へと戻っていった。今頃はまた麻雀をうっているのだろう。なぜそんなことを推測しているのかと言うと、
「ごめんなぁ、付き合わせてもーて」
「大丈夫ですよ。それより体調はよくなりましたか?」
「まだ少しかかるかなぁ」
「今はしっかり休んでくださいね」
俺は医務室で園城寺さんに付き添っていた。
~2日目、昼食後、食堂~
「後片付けも終わったし、また対局室行くか」
「キョウだけで行ってくれ。俺は牌譜の整理でもしてるから」
「牌譜の整理だったら俺も手伝うぞ」
「キョウがいなくても1日分の牌譜なんだからすぐ終わる。それに気になることがあるんだ」
「そっか、なら先に対局室行ってるな」
ああ、と短く返事をして対局室から持ってきておいた牌譜を眺める。今日の午前だけの牌譜だからキョウに言ったとおり整理はすぐに終わるが、それは建前でただひとりになりたかった。
「結局、照さんの言ってたことはよくわからないな。今日だって成り行きで偶然うつことになって、それで偶然…」
『偶然じゃないよ』
照さんの言葉が頭から離れない。なにかにしてないとこれしか考えられなくなっていた。
しばらくたった頃、ようやく牌譜の整理を終えた俺は少し休もうかと自室に戻ろうとする。食堂から出ようと、席を立ち出口へと向かう。
すると、フラフラと誰かが食堂の前を横切る。あれは千里山の園城寺さんだったはず、対局がすべて終わって部屋に戻る途中か?
だけど、そっちには俺達男子の部屋しかない。道を間違えたなら伝えないとな。
俺が声をかけようと食堂から出たとき園城寺さんは壁に寄りかかり座った。そしてそのまま倒れてしまった。
「園城寺さん!?」
すぐに近くに行き呼び掛ける。返ってくるのは荒い息だけでとてもつらそうだ。
「とりあえず医務室があったはずだからそこに連れていこう」
俺は園城寺さんをお姫様だっこして医務室への道を急いだ。
~医務室~
「熱はないみたいだけど、貧血かなにか…いや持病でもあったのか?」
医務室についた俺は備え付けのベッドに園城寺さんを寝かせ、椅子に座る。園城寺さんは目覚める様子はない。息は荒いままだし熱もないからどうすればいいか分からなかった。
「にしてもここ、いい施設だよな…」
医務室にはかなりの数の薬が揃ってるし、対局室には新型の自動麻雀卓が10、それに部屋だってかなりいいものだった。麻雀卓は後から運んだものだとしてもここは何のために建てられた施設なんだろう。
「ん、うぅ…」
「!?」
「あれ、ここは…?」
「医務室ですよ、食堂の前で倒れたんです」
「あんたが運んでくれたんか、ありがとな」
園城寺さんはベッドに横たわったままこちらを見て話しかけてくる。さっきよりは辛くなさそうだ。
「ごめんなぁ、付き合わせてもーて」
「大丈夫ですよ。それより体調はよくなりましたか?」
「まだ少しかかるかなぁ」
「今はしっかり休んでくださいね」
「私、病弱でなぁ、準決勝でも倒れてしもーて」
「そこまで辛い対局だったんですか?」
「チャンピオンを止めるためにちょっと無理したみたいでなぁ」
「チャンピオン…」
照さんかぁ。あの人を止めるとなるとそりゃ無理しなきゃダメだよなぁ。さっきうったけど淡ですら止められてなかったし。
「そういやあんた、さっきチャンピオンとうってたはずやな。どうやった? 強かったやろ、チャンピオン」
「ええ、とてもじゃないけどまともにうちあえるとは思えませんでしたよ。一応一回あがれましたけど」
「東1局やろ? チャンピオンは東1局は様子見するからなあ」
「いえ、たしか東3局だったはずです」
「え…? 誰かとコンビうちしたんか?」
「そんなことできませんよ。そこまでの技量は俺にはありません」
「技量て…チャンピオンからあがれるならあんた、そうとうな雀士やで」
「えっと、照さんが、いってた通りにうっただけなんですけど」
「何て言ってたん?」
「他の人のうちかたを参考にしろって」
考えないようにしていたのに園城寺さんの話題で結局は考えることになってしまった。何かをして誤魔化そうとしてたけど、最後には考えなきゃいけないなら今結論を出した方がいいのかもしれないな。
「まぁ園城寺さんが気にしても仕方ないですよ。今は体調をーー」
「怜ーーーーー!!」
静かだった医務室に急に叫び声が響く。振り替えると園城寺さんと同じ制服を着た少女が息をきらしていた。
「大丈夫か怜! この男になんかされへんかったか!?」
「ちょっ、変なことなんてしてませんよ!」
「そうやで、竜華。この人は私をここまで運んでくれてくれたんやで」
「そ、そうなんか?」
「せや、この人に謝ってや」
「ごめんなぁ、えっと…」
謝ってくれたが途中で言葉が詰まる。? どうしたんだ
「と、怜、この人の名前なんなん?」ヒソヒソ
「なんや竜華知らんの? この人の名前はなぁ……そう、あれやあれ」ヒソヒソ
「なんや怜も知らんやん」ヒソヒソ
何を話してるんだこの二人は。声が小さくて何て言ってるかまでわからない。話すたびにこっちをチラチラと見てるんだけど、俺、今何か変なのか?
「あの、どうかしたんですか? 俺、何かしましたか」
「いやちゃうねん、えっとえっと…」
「竜華ちゃんと言わな伝わらんでー」
「怜ぃー、そのごめん! うちあんたの名前知らんねん!」
「名前、ですか? そんなことなら別にすぐ聞いたらどうですか?」
「え…怒らんの?」
「そんなことじゃ怒りませんよ。俺の名前は藤堂悠斗です」
「じゃあ私は悠斗って呼ぶなぁ。これから長い間一緒に過ごすんやし変なとこで遠慮するのもあれやしな。あ、それと私のことは園城寺さんじゃなくて怜でええで」
「怜! こんな男に名前でよばせたらあかんて!」
「竜華、そんなこと言ったらあかんで」
「わ、私は嫌やからな! 私のことは名前でよんだらあかんからな! まぁ清水谷って呼ぶ分には構わへんけど…」
「えー…それじゃあ怜さんと清水谷さんでいいですか?」
「ええでー、これからもよろしくな、悠斗」
「まぁ怜が認めてるし話すくらいならええで。よろしく、藤堂」
「よろしくお願いします、二人とも」
清水谷さんが着たからもう怜さんの付き添いはいいと言うことで医務室を出る。どあを閉めるときに見た清水谷さんと怜さんの姿を見て、いつかは清水谷さんとも仲良くなれるのか? と少し不安になっていた。
どうも第七話です。
アンケートに答えてくださった皆さんありがとうございます。おかげで出すキャラが決まってとても書きやすいです。まだアンケートはつづくのでどんどん参加してくれたらありがたいです。
本編ですが、関西弁って難しいですね(汗)これであってるかどうか全然わかりせん。
怜はアニメなどを見た感じフレンドリーですけど竜華はなんだかすぐには男に馴れ合わなそうだなぁと思いこんな感じにしました。この小説でももちろん怜ラブです。