まーじゃんぱにっく!!   作:ハルハルX

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3にちめ!part2

3日目の午前は特になにも言うことがなかった。強いて言うなら今日も淡と照さんと麻雀をうって何も出来ずにぼろ負けしたことだろうか。淡は「今日のハルトは弱いね」とか言うし、照さんも「もっと考えてうった方がいいよ」って言ってたけどこれがもともとの実力差だろうな。…ちくしょう。

 

昼食が終わり、後片付けも終わった。昨日と違い牌譜の整理もないし今日はすぐにでも対局室に向かうべきなんだろうか。

 

 

「…ん? あれって確か…」

 

 

調理場から食堂に行き、対局室に行こうとすると食堂に人がいることがわかる。この時間に食堂にいるのは三日間で始めてだ。だが、遠目でも誰かは分かった。

 

白水哩、新道寺のエースだ。この合宿に来てから何回か見かけてはいたものの特に話そうとも思ってなかったので、接触はしていなかった。

 

 

「はぁ…」

 

 

白水さんは1人机に頬杖をつき、ため息を漏らす。いかにも、私困ってますって感じのオーラ出してるなぁ。俺なんかが行っても白水さんの悩みなんか解決できないだろうし、1人にさせてあげるのが一番かな。

 

 

「…ん?」

 

 

食堂から出ようと歩き始めると白水さんがこちらに気付いたのかこちらを向く。軽く会釈して通りすぎようとすると、腕を捕まれる。

 

 

「えと、どうしたんですか? 何か用ですか?」

 

「…てほしか」

 

「し、白水さん?」

 

「標準語の特訓に付き合ってほしか!」

 

 

白水さんは立ち上がってこちらに顔を近づけてくる。初対面の人にここまで顔を近づけられ、しかも美人ときたもんだから自分の顔が熱くなっていくのがわかる。

 

 

「聞きたいことは何個かあるんですけど、とりあえず一つ、なんで俺なんですか? 新道寺のみなさんに協力してもらえばいいんじゃ…?」

 

「そげなことはわかっとる。確かに、姫子や花田に頼めば協力してくれるはずばい。ばってんそんなん恥ずかしか」

 

 

恥ずかしいって美人なイメージがある白水さんがそんなこと言うとなんかかわいいかんじがするな。

 

 

「それに新道寺のみんなは私が博多弁しか喋れんイメージしかなかと。そんな私が標準語の特訓なんて笑われるんに決まっとる…」

 

「そんなことはないと思いますけど…それに標準語の特訓ってなにすればいいんですか?」

 

「あんたは特になんもせんでいい。私が標準語で話すけん、博多弁でとったら指摘してくれるだけでもよかと。その時、麻雀の話でもすればよか」

 

「分かりました。どうなるかわかりませんがとりあえずやってみましょう」

 

 

こうして、白水さんとの謎の特訓が始まる。俺が何をすればいいかはあんまりわからなかったけれど、白水さんの役にたてるならまぁいいか。

 

 

 

 

「えっと…白水さん、少しでも意識しないと博多弁でてしまいますね…」

 

 

あれから約15分程白水さんと麻雀の話をした。けど白水さんはすぐに博多弁が出てしまって話が全然進まないという事態になってしまった。

 

 

「なんで姫子は喋れて私は喋れん…? 姫子だってみんなとおる時は標準語使っとらんのに」

 

「あのー、インターハイで東京来たときはどうしてたんですか? インタビューとかあったと思うんですけど」

 

「そんときは敬語やけん、敬語なら問題なか」

 

「じゃあなんかあったら敬語で喋ればいいんじゃないんですか?」

 

「敬語で喋れば確かに問題なか。ばってん距離を感じるけん、なるべくタメ口でいきたいと思っとる」

 

 

どんどん白水さんがうつむいていく。力になれないのは辛いけどそれでも俺には何をすればいいかわからず少し沈黙が続く。

 

 

「あれ、ぶちょーこげなとこで何してるとですか?」

 

 

その時、第三者の声が食堂に響く。振り向くと一人の少女がこちらに歩いてきていた。

 

 

「姫子? なんでここに来たと?」

 

「ぶちょーが対局室におらんのを気づいて探しとったとです。ぶちょーこそ麻雀せんでなにしとるんですか?」

 

「……」

 

 

白水さんはなにも話さない、それどころかどんどんうつむいていく。

 

 

「なぁあんた、ぶちょーになんかしたと?」

 

「いや、俺は別になにも…」

 

「嘘ばい! やったらなしぶちょーがこうなってると!?」

 

「ひ、姫子、やめ…」

 

 

鶴田さんが俺に激昂しているときに白水さんが鶴田さんを止めようとする。だが、鶴田さんは止めようとした白水さんの手を振りほどき、こちらを睨んでくる。

 

 

「じゃあなか!? ぶちょーは勝手に落ち込んどるとでも言うと!?」

 

「だから、俺はなにもしてませんって!」

 

「なしそげな嘘を…!」

 

「姫子!!」

 

 

白水さんの叫びに鶴田さんが話すのをやめる。白水さんの顔こそ見えなかったが、その声には怒気が含まれていた。

 

 

「姫子、なしそげんことば言える? なにもしとらんっていっとるじゃなか。証拠もなにもなか」

 

「ぶちょー…」

 

「あんたもすまんかった、私が言わんかったからこげなことに」

 

「大丈夫ですよ。それより、言ってもいいんですか?」

 

「よかよか。姫子に誤解されん前に言うことだったばい」

 

「ぶちょー?」

 

「姫子、実は、私は標準語ば喋る特訓ばしとった。ばってん姫子や花田に言うんははずかし。それに麻雀ばうたないかん、暇じゃなか。だけん、こいつに頼んだ。それだけばい」

 

「じゃあ、私は勘違いしとったとですか?」

 

「そういうことばい、だけん、こいつに謝れ」

 

「ご、ごめんなさい! 私とんでもない勘違いを!」

 

「別にいいんですよ。誰にだって間違いはありますから」

 

 

鶴田さんが頭を下げてくる。その後ろで白水さんが腕を組み満足げな顔で微笑んでいた。

 

 

「白水さん、これからどうしますか? まだ特訓続けるんですか?」

 

「当然ばい。標準語ばマスターするまでやると。それと、私のことは白水さん、なんて呼ばなくてもよか。これから話す機会も多いけん、名前でよんでもよかよ?」

 

「ぶちょーが名前呼びいいなら私も大丈夫ばい」

 

「それじゃあこれからもよろしくお願いしますね、哩さん、姫子さん」

 

 

哩さんと姫子さんと握手した時の笑顔を見て、いつの間にか俺も笑顔になっていた。




どうも第10話です。

まず、すいませんっしたーーー!!
もともとこの話では哩を登場させる予定だったのですが、方言が難しかったのとネタが思い付かずこんな後になってしまいました(汗)

これからはなるべくはやく投稿していきたいと思ってます。

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