ブラーボ撃退から数日、俺――――三直健太は平穏な日々を送っていた。
結局、あの日以来奴が表立って行動することはなくむしろ、
アーマードライダーであることを利用して店に客を集めているらしく、
そのおかげでもともと繁盛していたものがさらに繁盛しているらしい。
ようは奴の中でアーマードライダー、インベスゲームは二の次であり一番は、
本職のパティシエらしい。
そんな俺は結局、チームガイムの用心棒という職は捨て去り、
今はアルバイト探し……をしようと思っていたのだがそれはどうやらまだまだ、
出来ない状況らしかった。
「だからなんでいきなり居なくなっちゃうわけ!?」
買い物の帰り道、偶然学校帰りらしい舞に遭遇してしまい、
まるでストーカーのように付きまとわれて、ブーブーと文句を言われ続けていた。
「食うか?」
「いらないわよ! だからなんで何も言わないわけ!?」
うまーか棒を一本差し出したがどうやらそれで火がついたらしく、
さらに追撃に拍車をかけてしまった。
やはり女性の扱いをなれるにはいくら俺でも経験と理論が膨大に必要らしい。
「別に何も言わなかったわけじゃない。光実には言ったさ」
「ミ、ミッチーだけに言っても仕方がないじゃない! そもそも、
ミッチーがあんたを尊敬してること知らないの!?」
んなもんわざわざ舞に言ってもらわなくても気づいていた。
「まったく、なんでミッチーはこんな奴を尊敬してるのよ」
「それに値することをしたからじゃないのか?」
そこまで言った時、ふと狭い路地に視線を向けると小さくチャックが開いているのが見え、
そこから向こう側の森が見えていた。
あのチャックからはインベスが来ないという保証はないよな……。
舞も俺が立ち止まったのを見て俺が見ている方向を見ると表情を驚きの色に染めた。
「な、なんでチャックが」
「さあな」
そう言い、その場から離れようとしたときに腕を引っ張られてそのまま狭い路地に引っ張られて、
閉じかかっているチャックの中に入って以前、入った森の中に侵入した。
その直後に完全にチャックが閉じてしまった。
「なんで俺も」
「裕也を探すのよ。それにここにはインベスがいっぱい、
いるんだから護ってくれる人が必要でしょ」
「……そうだな。俺も手伝おう」
そう言うと舞は驚いたような表情を浮かべて俺の顔を見てきた。
「どうした」
「いや……断るかと思ってたから」
ポケットからロックシードを解錠させてロックビークルに変化させ、
荷物を渡して後ろを指さすと舞は渋々といった表情を浮かべて後部座席に乗り、
俺の腰回りに腕をまわした。
エンジンをふかせてゆっくりとした速度で森を進んでいく。
森の中を少し、進んだところでバイクのタイヤが何か固い物をふんづけ、
砕けたような音が聞こえ、急停車して地面を見てみると、
真っ二つに裂けたロックシードが地面に転がっていた。
「どうしたの?」
「……この森にロックシードが落ちていること自体がおかしい。そもそも、
この森の果実はドライバー所有者にしかロックシードには変えられない」
「じゃあ、私たちよりも先にここに来てる人がいるってこと?」
「かもな……ここからは歩くぞ」
そう言い、舞を先に降ろしてからロックビークルを元の錠前の状態に戻し、
それをポケットに入れてゆっくりと歩きだした。
地面に落ちていたロックシードは最下位のランクのものだった。
つまり俺たちよりも先にここに来ている奴はロックシードの数よりも単体での質を優先して、
回収しているということになるな。
……まあ、そんなことをやりそうな男は一人くらいしか思い浮かばないんだがな。
「……ねえ、なんであんたはチームを抜けたのよ」
突然の舞のその質問に俺は何も答えずにいると、
自然の騒音と呼ぶべきものがやけに大きく聞こえた。
俺がチームを抜けた本当の理由を知っているのは光実と俺の姉貴ぐらい……あいつには、
教えるなと厳命しているからこいつらが知らないのも無理はないな。
「俺はあの時、お前達がしていることを子供の遊びといった……でも、
ここ数日考えたんだよ。あの事が起きる前に俺はその子供の遊びに、
熱中していたんじゃないかって……あの時言った言葉は間違っていた。
むしろ俺が子供だったんだ。俺は大人ぶっていただけ……すまなかった、舞」
そう言い、俺は座っている舞に対して深々と頭を下げて謝罪した。
俺がやったことは社会人としても、子どもとしても許されないことだ。
「……許したくない……本当はそう思ってるけど……」
……本当に俺はあの時、あの出来事があったせいで異常なまでに、
子供の遊びと決めつけて排除していた。
でも、俺はそれ以上は何も話さなかった。
そのうち本当の理由をポロっと話してしまいそうな感じがして仕方がないし、
こいつが理由を知る必要もない。
『バナナスカッシュ!』
「「っ!」」
直後、聞き覚えのある音声が流れるとともに爆発音が周囲に響いた。
爆発音が消えた数秒後に茂みから変身した状態の戒斗が出てきて、
俺達の姿を見るや否や驚いたのか歩みを止めた。
「……より強いロックシードのために森に来ていたのはお前だったか」
「貴様……何故」
戒斗がそこまで言った瞬間、突然茂みの中から上級インベスが飛びだし、
バロンを背中から飛び蹴りをくらわせて、軽く吹き飛ばした。
この森にいるのは下級インベスだけじゃないのか、それとも、
こいつが地面に落としたロックシードを喰らって下級インベス、
が上級インベスに進化を遂げたのか。
どちらにしろここでたたいておかないと後々、面倒なことになる。
「変身」
『ソイヤ! オレンジアームズ・花道・ON・ステージ!』
ドライバーをセットし、ロックシードを解錠してドライバーにセットし、
ブレードを降ろすと上空に生成されていたアームズが俺の頭にかぶさり、
ものの数秒でアーマードライダーの姿が完成した。
「戒斗、手伝え」
「ふざけるな。貴様が俺を手伝え」
相変わらず闘争心だけはどいつよりも強いな。
バロンが相手めがけて槍を突き出すが直後に金属音が響いて、槍が弾かれた。
俺も確かめるために湾曲したオレンジ色の刀で一度切り裂いてみるが、
かなり奴の体表が固いのか火花が散っただけで特にインベス自身はひるんでいなかった。
その時、後ろを振り返ると舞の背後にチャックが開いていた。
「戒斗! いったん出るぞ」
舞を抱きかかえ、チャックを通って元の世界へはいりこむと後から奴と、
インベスもチャックを通って来てこっち側の世界へと戻ってきた。
舞を離れた場所に降ろし、俺も戦闘に参加するべくパインのロックシードを解錠した。
『ソイヤ! パインアームズ・粉砕・デストロイ!』
上空に生成されていたパインのアームズが装着され、手にアイアンを持って、
遠距離からぶつけると火花こそ散らなかったが奴が一瞬ひるんだ。
「……なるほど。俺に足りなかったのは使いわけか」
そう言い、バナナのロックシードをドライバーから外して、
マンゴーのロックシードを解錠した。
『カモン! マンゴーアームズ・fight・of・hunmer!』
ブレードを降ろすとマンゴーのアームズが奴にかぶさり、展開されていくと、
手には打撃部分にマンゴーの形をしたものが装着されたハンマーが現れ、
マントをはおった姿に変化した。
バロンはそれを引きずりながらインベスへと近づいていき、射程距離に入った瞬間、
全力でハンマーを振りかざして奴に打ち込むとたった一撃で大きく吹き飛んだ。
そしてインベスが立ちあがったところを俺のパインのアイアンを顔面にぶつけ、
ひるんだすきにハンマーの突きを叩きこむと大きく吹き飛び、地面に膝をついた。
「さあ、トドメだ」
『マンゴー・オーレ!』
『パイン・オーレ!』
二回ブレードを降ろし、インベスめがけてアイアンを投げつけると、
ワイヤーがインベスに絡まり、動きを止めた後にトリガーつきの刀にエネルギーが溜められていき、
それが最大にまで溜められたのを確認した後に奴めがけて駆け出し、
すれ違いざまに切りつけた直後、奴が放り投げたマンゴーのハンマーがインベスに直撃し、
大爆発を上げてインベスが消滅した。
それを見届けた後、変身を解除した。
「で、収集はできたか?」
「……そう簡単にAランクが集められると思うか」
「それもそうだな……早く戻った方が良い。お前のチームの連中が待っているぞ」
「貴様……名前は」
そう言い、舞のもとへと向かおうとしたときそう聞かれた。
「三直健太。ちなみにお前よりも一つ年上だ。じゃあな」
そう言うと奴は俺を今まで年下か同世代だと認識していたらしく一瞬、
表情を驚きに染めるがすぐさまそれをなくし、俺とは違う方向へと歩いていった。
「お、お疲れ様」
「俺を労わってくれるのか?」
「う、うるさいわね。いくら嫌いな人でもいたわりの心くらいありますー!
あんたとは違って見下したりなんかしませーん!」
「……見下す? 俺が?」
「はぁ? あんた気づいてないの? はぁ……ねえ、
あんたの人生は今まで成功尽くしだった?」
「まあ……失敗はないが」
「そうなんだ……じゃあ、私の言っていることが分からないかもね」
そう言って舞はそのまま一人で歩き始めた。
俺が……見下す?
当分はこのままのキャラで行きますがゲネシス勢が出てきた辺りが、
成長……というか主人公が変わるころ合いです。
言っちゃっていいのかわかんないけど