仮面ライダー鎧武 Another hero   作:kue

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第七話  西瓜

「……アーマードライダー・ブラーボですか」

「そう! そいつがかなり強いのよ!」

僕――――光実は舞さんの話を聞きながらここ数日、ビートライダーズに、

インベスゲームを仕掛けては粉砕し続けているブラーボの動画を見ていた。

DJサガラによって命名されたブラーボはその高い戦闘力で次々とインベスゲームに勝利し続け、

つい先日にはバロンのリーダーさえ、一対一で撃破したと聞いた。

バロンにさえ、勝てなかった僕がバロンを下したブラーボに勝てるのか……。

「そう言うことだから私たちもミッチーを応援する!」

確かに今、チームには人数以上のロックシードがあるけどそれはどれも低ランクで、

下級インベスしか呼べないし、数で攻めてもブラーボに全部蹴散らされるだけだろうし、

インベスにロックシードを食わせて上級にするっていう手もあるけど、

それだとコントロールから離れて暴走するかもしれないし。

「じゃ、じゃあこういう時こそ健太さんの力を借りたら」

「それはいくらなんでも都合が良すぎます。使いたいときだけ使うなんて」

「……でも、あいつが裏切ったせいで俺達は最悪のスタートだったんだし」

ラットが言った言葉に全員が黙りこくってしまった。

違うんだ、あれには理由があって……そう口に出して言いたいけど、

あのことに関しては健太さんから絶対に言うなって厳命されているし。

「とにかく! あいつの力を借りずに私たちだけの力でやろうよ!

このチームは私たちで守るの!」

舞さんの一声でさっきまでの沈んだ気持ちが嘘のように消え、

皆の表情にやる気が満ち溢れた。

……裕也さんが居なくなった今のこのチームのリーダーは舞さんかもしれない。

「もうすぐステージなんだし、行こ! 

もしもブラーボが来たら皆で追い返せばいいじゃない!」

「……うん! 行こう!」

……僕がこの力を手に入れたのも健太さんばかりに戦わせないため。

僕はポケットに入れているドライバーとロックシードを強く握りしめ、

ダンスステージへと向かうため、皆と一緒に拠点のガレージを出て、

歩き始めるとステージに近づけば近づくほど、

チームのユニフォームに似せた服を着ている人たちが多くなっていく。

そしてステージにつき、パスを機器に挿入しようとした瞬間、

周りの観客からどよめきが聞こえ、観客のほうを向くと観客を割って、

ステージの前に筋骨隆々の男性がこっちに近づいてきた。

「こんなアマチュアのステージにも観客は集まるのね」

……オネエ言葉……そうか、あの人が噂の。

「貴方が今、噂のブラーボですか」

「そうよ。いくつかのチームとやったけどムッシュ・バナーヌ以外は、

骨もない偽物だったわ。さて、貴方はワテクシを楽しませてくれるかしら?」

『ドリアン!』

ブラーボがステージに上がると同時にロックシードを解錠し、

上空にアームズを浮遊させ、ドライバーにロックシードをセットした。

……僕達のステージは僕達が護る!

『ブドウ!』

僕もブドウのロックシードを解錠し、ドライバーにセットした。

「「変身」」

『ドリアンアームズ・Mr dangerous!』

『ハイー! ブドウアームズ・龍砲・ハッハッハー!』

同時にブレードを降ろすと頭上に浮遊していたアームズが頭にかぶさり、

一瞬暗くなったかと思うとアームズが変形していき、数秒で変身は完了した。

相手はバロンを下した相手……怖気ついても何も変わらない!

僕は覚悟を決め、銃をブラーボに向けると同時に引き金を引いて光弾を連続で放つけど、

相手のとげが無数に生えている二本の刀に全てたたき落とされた。

「はっはっは! その程度で当たると思って!?」

「くっ!」

相手の刀を避けながらも銃を向け、引き金を引こうとするけどその寸前に、

相手の蹴りで腕を観客の方に向けられ、引き金を引けずにそのまま相手の刀で斬られ、

怯んだところを腹に蹴りを貰い、軽く吹き飛んだ。

凄い力だ! スペック云々よりも僕と相手とじゃ鍛え方が違う!

「ミッチー!」

「大丈夫です! まだ行けます!」

僕は舞さん達がロックシードを使おうとしているのを見て、

慌てて起き上がってブラーボに殴りかかるもひょいと避けられ、背中を斬られた。

Aランクのロックシードならともかく、低ランクのロックシードで、

呼び出したインベスをぶつけても一瞬で蹴散らされて所持している数が減るだけだ!

僕は銃のトリガーを引き、連射から単発モードに切り替え、隙を見て、

引き金を引くけど全て刀で叩き落とされて一発も当たらない!

「おっほっほ! 銃の扱いにも慣れていない初心者が使っても当たらないわよ!」

……だったら!

「うあぁぁぁぁぁ!」

「ぬぅ!」

僕は全力で相手にタックルし、腰にしがみ付くと同時に銃を密着させた状態で、

引き金を引くと鎧から火花を散らせてブラーボが数歩、後ずさった。

でもそれと同時に相手の二本の刀が僕の鎧に直撃した。

「あらあら、アマチュアの割には覚悟が座ってるじゃない。セパージュ・坊や」

ここで負けたらまた一つ、僕たちが踊ることのできるステージが消えてなくなるんだ。

でも、もうあんな自爆特攻みたいなことはできない。僕のこともあるけど、

相手だってまたあんな攻撃があるということを踏まえて戦闘をするだろうし……。

次の一手を考えている時、観客側から拍手が送られてきた。

「喜べ光実。プロに褒められたぞ」

聞き覚えのある声が聞こえ、慌ててそちらのほうを向くとそこにはサングラスをかけ、

黒一色の服に身を包んでいる健太さんがいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「け、健太さん!?」

「あら。この前、レディースセットを買った坊やじゃない」

サングラスを外しながらステージに上がり、光実の前に立った。

「驚いたよ。まさかフランスの軍隊に従軍し、落下傘部隊にいたとはな。

しかも中東やアフリカへの派兵経験もあり……そこまでの実力も納得がいくよ。

凰蓮・ピエール・アルフォンゾ」

「あら、物知りね」

こいつを初めて見た時、通りで威圧的な雰囲気を感じたわけだ。

一切、気を抜くことができないまさに地獄といえる場所……それが戦場であり、

相手に対して一切の情を捨て去る。

圧倒的に実力が下の相手にも一切、手加減をしない。

良いように言えばすべての物事に全力で取り組んでいる、

悪いように言えば手加減の仕方を知らない頭が筋肉でできている筋肉バカ。

ドライバーを腰に装着し、ロックシードを解錠するとブラーボは驚いたように、

両肩を竦めた。

「あら、貴方もビートライダーズとか言うアマチュア集団のお仲間?」

「バカを言うな。俺はビートライダーズではない……俺がアマチュアかどうかは、

その体に徹底的に叩きこんでやるよ。変身」

『ソイヤ! オレンジアームズ・花道・ON・ステージ!』

変身が完了すると同時に腰にぶら下がっていた刀を右手に持ち、

左手には湾曲したオレンジ色の刀を握り締め、奴と対峙した。

「先攻は貴様にくれてやる。かかってこい」

「……アマチュア風情が」

今の俺の人と子に僅かながらに怒りを覚えたのか先ほどまでの緩い雰囲気は消え去り、

触れるだけで切断されそうなくらいに鋭い雰囲気を醸し出した。

ゆっくりと奴が歩いてくるのを確認し、右手に持っている刀のトリガーを引いて、

銃弾をチャージした。

それと同時に二本の刀を奴が振り下ろしてきたので、片一方を湾曲した刀で受け止め、

もう片方を体を反らして避けると同時に引き金を引き、至近距離で数発の弾丸を撃ち込むが、

怯むことなく右足が俺に向かってくるのを確認し、姿勢を低くしてそれを避け、

右手に持つ刀を横に振るい、切り裂こうとするが寸前のところで相手が、

後ろに下がったことで刀は空を切った。

数秒、たがいを睨みつけると同時に走り出し、同時に刀を突き出すがそれを避け、

再び同時に蹴りを入れると同極の磁石が離れるようにして距離が開いた。

「はっ!」

残っている銃弾を全て奴めがけて放つが相手の二本の刀ですべて、

叩き落とされた。

……放たれる弾丸を全てたたき落とすとはな……反射神経もそうだが、

動体視力も半端じゃないな。

「なるほど。軽口を叩くことだけはありそうね。じゃあこれはどうかしら!?」

そう言うと何処からともなく高ランク、低ランクが入り混じった、

幾つものロックシードを取り出すと、

それら全てを解錠したと同時に手を離しやがった。

インベスのコントロール権があるのは解錠した本人のみだが、

そいつから離れれば当然の如くコントロールはなくなる。

あちこちからチャックが開き、高ランク、低ランクのインベスが、

何体も出てきて観客の方に向かっていく。

「光実!」

「はい!」

「な、なによこいつら! なんでワテクシを殴ってくるのよ!」

呆れたいくらいのブラーボの言葉を聞き流しながら、

観客に襲いかかるインベスを無理やり引っぺがし、ステージ側へと追い込んでいくが、

その数が二人ではカバーできないくらいに多い。

「アマチュアを憎むんならインベスゲームのルールくらい熟知しておけ!

お前自身がアマチュアその物じゃねえか! うら!」

空中を飛びまわりインベスめがけて装填しなおした光弾をぶつけ、地上に落とした後に、

湾曲した刀に腰にぶら下がっている刀を接続し、薙刀モードに切り替えて、

複数のインベスを一気に斬っていく。

「面倒だな。一気にイチゴで」

「そうだ! 健太さん! これ使ってみてください!」

イチゴを取り出そうとしたときに光実からロックシードを投げられ、

それを受け取るとスイカの装飾が施されたAランクのロックシードだった。

…………あまり、良い予感はしないが使ってみるか。

『スイカ!』

「うわ、でか!」

「……光実」

解錠した途端、俺の頭上に巨大な円を描きながらチャックが開き、

そこからその穴と同じ大きさのスイカのアームズが降りてきた。

光実の方を見てみると奴はわざと俺の方向を見ないようにして、

周囲のインベスを片付けていた。

……まあ、良い。後でこってり絞ってやる。

『ロックオン! ソイヤ! スイカ・アームズ・大玉・ビッグバン!』

音声が流れた瞬間、まるで着ぐるみを着たように巨大なスイカのアームズがすっぽり、

俺を覆い隠すと小さな隙間から下級インベスが大勢、

俺に近づいてきているのが見え、なんとなく体を前かがみに倒すと、

球体がものすごい勢いで転がり、下級インベスを数体踏みつぶした。

……これは良い。

小さな隙間から外の様子を見ながら体をインベスの方へと傾け、

大きなスイカで周囲を転がりながら次々とインベスを踏みつぶした。

「ついでにお前もだ!」

「ぐぬぬぬぬ!」

「どらぁ!」

「Poo!」

転がって奴に体当たりをかますが一瞬、動きを止められそうになったが、

その場で高速で回転し、回転を加えて思いっきり吹き飛ばして壁に叩きつけた。

『ヨロイモード!』

そんな音声が流れたかと思えば、ガチャガチャと音を立てながら球体が変化していき、

景色が明るくなったので下を見てみると右手に双刃刀を握り締めていた。

なるほど。さっきの球体が変形して鎧のように俺の身を包んだ訳か……他の錠前とは、

頭一つ分出ている強力なロックシードだな。

「な、なによその巨大ロボは! 卑怯よ!」

「プロがアマチュア狩りをするよかましだ。うらぁ!」

「ノーン!」

全力でブラーボを殴りつけるとまるでボールを蹴飛ばしたかのように、

すっとんでいった。

ブラーボが壁に激突し、変身が解除されたときに俺の視界の端でインベスが、

ステージの上に転がっている複数のロックシードに近づいているのが見えた。

それを見てすぐさま行動を起こそうとしたが一足遅く、インベスが全てのロックシードを吸い込んだ。

すると突然、地べたに突っ伏したかと思えば肉体が次々に変容していき、

大きさが三倍に膨れ上がったかと思えば体がはじけ飛び、下級インベスから、

巨大な赤黒い猪のようなインベスが生まれた。

「ヤバい!」

光実が相手に光弾をいくつも放ち、全て直撃したが気にもしていない様子で、

光実達のところへ突っ込んでいく。

「光実。こいつは俺がやる」

大きな手で相手の角を鷲掴みにして動きを止め、蹴り飛ばした。

双刃刀を握りしめ、奴が突っ込んでくるのと同時に駆け出し、

跳躍して奴の頭上をすれ違いざまに刀で切りつけると、

相手の頭に生えている角が二本とも砕け散った。

『ゴアァァァ!』

角が砕け散った激痛からかインベスは叫びながら地面をのたうち回った。

「トドメだ」

『スイカ・スカッシュ』

ブレードを降ろすと目の前にスイカを模したエネルギーの塊が出現し、

それを相手にめがけて飛ばすとそのまますっぽりと相手に覆いかぶさり、

まるで牢屋のように相手を拘束した。

「輪切りにしてやる」

そのまま高く飛びあがり、落下の勢いのまま双刃刀を縦に振り下ろすと、

スイカの牢屋ごとインベスが真っ二つになって爆発四散し、消滅した。

その直後、スイカの鎧が一瞬で消滅して変身が解除され、

マンションの二回の高さとほぼ同じ場所から、地面に落ちた。

危ね……素人がやったら怪我するぞ。

「凄いですよ、健太さん! あんなでかいロボを初見で使いこなすなんて!」

同じく変身を解除した光実が憎たらしい笑みを浮かべながら近づいてきたから、

軽くデコにチョップを入れてやるとデコを抑えながらもヘラヘラと笑っていた。

ふと、スイカのロックシードを見てみると先ほどとが違い、色が完全に抜けて、

まるで腐ったバナナの皮のように真っ黒に変色しており、解錠すらできなかった。

凄まじい強さを得る代わりに一回使うごとにエネルギーチャージが必要ってわけか。

「凰蓮は」

「なんか、仕事の時間だわ! とか言ってどっか行っちゃいました」

…………二度とこっちにちょっかいをかけてこないことを祈りたいものだな。

あのオカマ野郎。


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