仮面ライダー鎧武 Another hero   作:kue

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第五話  決闘

物騒な森から抜け出したかと思えば、今度は物騒な奴らとの戦いか……面倒だ。

そう思いながらもバイクから降り、周囲を見渡して情報を集めて今、

目の前で起こっている状況を理解した。

……インヴィットとレイドワイルドのリーダーは放っておくとして、

バロンがガイムに勝負を吹っかけてきて今、その勝負の真っ最中だと。

「随分と調子に乗ったな。駆紋 戒斗」

「何か悪いか? 力あるものが力なきものを叩き潰すことに」

「別に……ただ、俺がいない間に襲いかかってくることは理解しがたないな」

『オレンジアームズ・花道・オン・ステージ!』

オレンジのロックシードを解錠し、ドライバーへと装着してブレードを降ろすと、

ロックシードが横に割れると頭上からオレンジの浮遊物が頭にかぶさり、

視界が晴れたと同時に手に持っているブレードでフィールドを切り裂くと、

光の粒子が周囲に散らばって消滅した。

「全力じゃない相手を倒して強いと考えるなら相当、頭が弱いぞ」

「はっ」

戒斗は小さく笑うと二体のインベスから離れ、ゆっくりと俺に向かって歩いてきた。

それを確認した俺は光実の肩を軽くたたき、二体のインベスを任せると、

ゆっくりと近づいてくる戒斗へと向かっていく。

そして奴の槍のリーチの中に俺が入った途端、槍が横薙ぎに振るわれてくるがそれを腕で防ぎ、

空いているもう片方の腕を防ぐと同時につきだして、相手を殴り飛ばした。

「どうした? その程度か」

「黙れ!」

槍の突きを避けると腰に引っ掛けてあった刀を抜くと同時に相手を切り裂き、

ひるんだと同時に蹴りを入れて、相手を大きく蹴り飛ばした。

「甘く見るな!」

『カモン! バナナスカッシュ!』

『ソイヤ! オレンジスカッシュ!』

相手がブレードを下ろした瞬間、俺もブレードを降ろし、相手の槍に纏われた、

バナナの形のエネルギーがつきだされたと同時にオレンジ色に輝いている湾曲した刀を投げると、

バナナのエネルギーが消滅した。

「なっ!」

「まだだ」

『ソイヤ! オレンジスカッシュ!』

「ぐぁぁ!」

エネルゴーが砕け散った衝撃で吹き飛んだ刀を跳躍して、足にエネルギーを纏わせた状態で、

蹴り飛ばすと刀の周囲に巨大なオレンジの形にエネルギーが形成され、

そのままバロンに直撃して周囲に果汁が散るようなエフェクトを見せながら爆発四散した。

「健太さん! これも使ってください!」

光実の声が後ろから聞こえ、振り返るとインベス二匹と戦っているあいつから、

イチゴの装飾が施されたロックシードが投げられてきた。

『ソイヤ! イチゴアームズ・シュシュっとスパーク!』

それを受け取り、ドライバーからオレンジのロックシードを抜いて、

イチゴのロックシードをドライバーの窪みにはめ込み、ブレードを降ろすと上空に浮遊していた、

イチゴの浮遊物が降りて来て、展開され、数秒で鎧が新たなものに変化した。

……動きやすさを追求したアームズか。

掌を空に向けるとそこにクナイのようなものが出現し、それを投げるが相手の槍に弾かれた。

が、弾かれた直後にクナイが爆発した。

面白いじゃないか!

俺はクナイを両手に持ち、バロンへと突っ込んでいく!

「はぁ!」

相手の槍での突きを両手に持ったクナイでいなし、相手が再び槍を振るう前に、

二つのクナイを横に振るって相手を切り裂き、少し相手から距離を取ったところで、

手に持ったクナイを連続で相手めがけて投げつけると鎧に直撃したとたん、

二つが爆発し、バロンを大きく吹き飛ばした。

「くそ!」

バロンはロックシードを使って下級インベスを楯のように目の前に持ってくるが、

後ろから紫いろに輝く光弾が俺のギリギリのところを通過して二体に直撃した。

「トドメ行くぞ」

「はい!」

『ロックオン・一・十・百・イチゴチャージ!』

『ハイー! ブドウスカッシュ!』

「せいや!」

腰にぶら下がっている刀を手に持ち、トリガーの近くにある窪みにドライバーから外した、

イチゴのロックシードをはめ込み、下から上へ刀を振るうと上空に、

イチゴの形をしたエネルギーの塊が撃ち放たれるとその塊がはじけ飛び、

いくつものクナイがインベスに直撃し、動きを止めたところへ光実の銃から、

ドラゴンの形をしたでかい光弾が放たれ、二体のインベスに直撃すると大爆発を上げて、

インベスごと消滅した。

「……そう言えばお前、光実か」

「はい!」

何気なしに紫色のアーマードライダーを光実だと思い込んでいたんだが……まあ、

舞達が後ろで観戦している時点でこいつなのは消去法で明らかか。

「……面白い連中だよ。お前達は」

「駆紋 戒斗。まだやるのか」

そう言うと奴は槍を持ち、構えた。

……その正々堂々とした心構えだけは感心するよ。

光実を後ろに下げ、俺も刀を持った瞬間、突然俺と駆紋 戒斗の間にレイドワイルドと、

インヴィットのリーダー二人が割って入ってきた。

「この状況は不利にも程があんだろ」

「男子三日会わざるは括目せよってね!」

そう叫ぶや否や、二人はポケットからドライバーを取り出し、腰に付けると拘束具が射出され、

二人の腰の辺りにドライバーが固定され、さらに二人揃ってロックシードを解錠した。

「「変身!」」

『ソイヤ! マツボックリアームズ! 一撃・イン・ザ・シャドウ!』

『カモン! ドングリアームズ! Never・give up!』

二人は同時にロックシードをドライバーに装着させ、ブレードを降ろすと空中に、

浮いていた浮遊物が二人に覆いかぶさり、鎧が展開されていく。

完全に鎧が展開されると二人の手にはそれぞれ茶色のハンマーと黒い槍が握られていた。

「俺はアーマードライダー黒影。こいつはグリドンな」

「え? 初瀬ちゃんが決めちゃう系?」

ドングリだからグリドンか……ただ単に文字の順列を変えただけだな。

「光実。お前はどう思う」

「ぷふっ……ま、まあありじゃないですかね? くふっ」

「わ、笑われちゃってんじゃん! もっとましな名前付けるし! えっと」

「これで状況は逆転したな」

城乃内が新しい名前を考えようとしている最中に二人の間を抜けて、

バロンが俺たちに再び宣戦布告をしてきた。

俺は……ん?

二本の刀を握ろうとした瞬間、ゆっくりと二人が武器を構えながらバロンに近づいていき、

手が肩に当たるところまで近づいた瞬間、突然二人がバロンにそれぞれの武器を叩きつけた。

「ぐあぁ! 貴様ら!」

バロンは驚きながらもすぐさま反撃に転じようとするが次々と、

加えられていく攻撃になすすべなく壁にぶつけられた。

「行くよ! 初瀬ちゃん!」

「おっしゃ!」

『ソイヤ! マツボックリ・スカッシュ!』

『カモン! ドングリ・スカッシュ!』

「うらぁ!」

「はいやぁ!」

初瀬は槍を持ったまま上空に跳躍し、城乃内はハンマーを持ち、その場で高速回転しだした。

槍から黒いオーラが放出され、マツボックリの形へと変化し、

高速回転しているグリドンが大きなドングリの形へとオーラが変化し、

そのままバロンへと叩きつけた。

二人の技を叩きつけられたバロンは壁に強くたたきつけられ、変身が解除された。

「まあ、このままさ。バロンの下に居ればずっと一位なのは分かり切ってるんだけど、

俺達でのっとちゃえば俺達のチームが一位になるし」

「それにてめえの態度、気に食わねえんだ。ドライバーぶっ壊してそれお終いだ!」

初瀬が黒い槍をバロンのドライバーにぶつけようとした瞬間、その槍を鷲掴みして止めた。

そのままもう片方の手に持っていた刀で初瀬を斬ったあとに蹴り飛ばした。

「っ! なにすんだよ!」

「バロンがぶっ潰れたらガイムにだって利益あるでしょ!」

「知ったことか。俺はガイムのメンバーじゃない。俺は用心棒だし、

ダンスの順位なんか知ったことか」

「じゃあ、手ぇ出すんじゃねえよ!」

そう言いながら槍を突き出してくるのを避け、トリガーを引っ張って弾丸を装填し、

至近距離で引き金を引き、火花を散らせながら初瀬を吹き飛ばした。

「用心棒は気ままに暴れる時もあるんだ。そんな不運なときにお前達が来たわけだ」

「ふざけんな!」

槍の突きを足で弾き、相手の顔を一発殴った。

「おい、どうした? その程度か?」

「うあぁ!」

相手も槍で俺を攻撃しようとしてくるが俺が近くにいるせいで先端部分に当たらず、

大きな隙を生むだけで、なんの意味もない。

本当に勢いだけで戦ってるな……どこぞの不良の喧嘩となんら変わらないな。

「うりゃぁぁわぁ!」

後ろから城乃内がハンマーを持って飛びかかってくるが横から飛んできた光弾が直撃し、

火花を散らしながら大きく吹き飛んだ。

「確かにチームが上位に行くのは嬉しいですけど、

こんな卑怯な手で上位に行ってもねえ」

「決まりだ」

『ソイヤ! オレンジアームズ・花道・オン・ステージ!』

イチゴからオレンジへとロックシードを変えると確かにさっきと比べて重みは増えたが、

やはりこちらの方が体にしっくりくるな。

「かかってこい。アマとプロの戦いの差を見せてやる」

「あぁぁぁ!」

右からの槍の薙ぎ払いを頭を伏せて避け、相手の脇腹に蹴りを入れ、

怯んだところをアッパーを撃ち込んだ。

「つっ! まだまだぁ!」

相手も蹴りを入れてくるがそれを右腕で殴りつけて勢いを殺し、

空いている左腕を相手の胸へと叩きこみ、大きく吹き飛ばした。

「トドメだ」

『ソイヤ! オレンジスカッシュ!』

「はぁぁ!」

「ぐあぁぁ!」

跳躍し、最高点でブレードを降ろし、足にエネルギーを集約しながら降下し続け、

その勢いとともに相手に蹴りをうちこむとそのまま近くの壁に激突し、

ドライバーから外れたマツボックリのロックシードが俺の手元に飛んできた。

「イタイタイタイタ!」

そんな間抜けな声が聞こえ、振り返ると光弾を連続で受けたドングリが近くの階段から転げ落ち、

変身が解けたと同時にドライバーのドングリのロックシードが光実のもとへと飛んでいった。

バロンと俺達のインベスゲームに割って入ったために奴らにも、

インベスゲームのルールが適用された訳か。

「ちっ! 覚えてろ!」

その捨てゼリフを吐きながら、初瀬と城乃内はどこかへと歩き去った。

「上を見過ぎて下の連中を見なかったが故に起きた事態だな」

変身を解除し、そう言いながら地べたに座っている戒斗の隣に立って見下ろすと、

奴は心底、今の状態が気に食わないらしく眉間に皺を寄せた鬼の形相で睨んできた。

ここで手を差し伸べていたら殴りかかられていただろうな。

「なぜ貴様はそれほどの力を持ちながら現状に満足しているんだ」

「考え方の違いだ。お前は現状に満足が出来ないからさらなる高みへと向かっていく。

だが俺は現状だろうが上へ行こうが満足できればそれで良い」

「それはただ単にリスクを恐れているだけだ!」

「お前から見ればそうだろうな……だがな、リスクを恐れずに突っ走った結果、

破滅の事態に陥った奴はこの社会に五万といる。力を求めるのは良いが、

追い求め過ぎて落とし穴に落ちないようにな」

俺はそう言って光実達が集まっている場所へと向かった。

ああいうタイプの人間は破滅に陥るまで進み続けるか、それとも破滅に陥る前に、

持ち前の運で全てを力で掌握するかの二パターンだ。

あいつがどちらのパターンに……もしくは全く違うパターンに向かうか。

「お疲れ様です! 健太さん」

「まさか、お前までなっていたとはな」

「はい! これからは健太さんだけには」

「じゃあ、俺はもういらないな」

「え」

そう言うと光実はあり得ないとでも言いたげな表情を浮かべた。

「で、でも裕也さんが帰ってくるまでって」

「チームに二人もアーマードライダーはいらない。お前さえいれば、

あいつが帰ってくるまでチームは生き残る」

そう言い、ロックビークルの錠前を解錠すると一瞬でバイクに変形して、

俺の目の前にバイクが出現した。

「本当にいなくなっちゃうんですか」

「……後ろのお方たちが許可してくれるならばこれからも用心棒として付いてやるよ。

まあ…………本当にお前じゃ解決できない事態に陥った時は……御祈りでもすれば、

良いんじゃないのか?」

そう言い、俺はバイクを発信させ、光実達から離れた。


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