仮面ライダー鎧武 Another hero   作:kue

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第四十八話  決着の時

「はぁぁぁ!」

「えああぁぁ!」

戒斗が放ってきた黄色い矢を二本のロッドで叩き落し、奴めがけてロッドを突き出すが蹴りでそれを弾かれ、バナスピアーが突き出されてくるがもう一本で防いだ。

「俺は舞を手に入れ、黄金の果実を手にし、神となってこの世界を創り直す! そのために障害となりうるすべてのものは俺が叩き潰す! そして今! 貴様が俺にとっての最後の障害だ!」

「その最後の障害でお前は終わる! 俺が神となって!」

『バナナスカッシュ!』

『カチドキスパーキング!』

互いに己の野望を叫びながらいったん距離を開け、奴はレバーを二回押し込み、

俺はドライバーのブレードを三回降ろすと全身から炎があふれ出し、

奴の全身からは黄色いエネルギーがあふれ始めた。

「せぃぃぃぃぃ!」

「せいはぁぁぁぁ!」

同時に駈け出し、とび上がって同時に蹴りを繰り出すと互いの足がぶつかり合い、

炎とエネルギーが周囲に放出されて地面を抉っていく。

「ぐあぁぁ!」

「ぐぉぉ!」

『フルーツバスケット!』

『ロックオープン! 極アームズ! 大・大・大・大・大将軍!』

ぶつかり合った瞬間に互いのエネルギーと炎が直撃し、そのまま姿勢を崩して上空から地面へと背中から落下するがすぐに立ち上がり、極ロックシードを開錠すると周囲にクラックが開き、そこからすべてのライダーのアームズが射出され、俺と一体化し、カチドキの鎧が砕けて極の鎧がその下から現れた。

『無双セイバー! 火縄大橙DJ銃!』

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

戒斗も最強の姿へと変貌し、剣をもって俺に向かってきた。

「だぁぁ!」

「はっ!」

奴が振り下ろしてきた剣を姿勢を後ろへ逸らして避けた直後に無双セイバーと火縄大DJ銃を一体化させた剣を横薙ぎに振るい、奴を切り裂こうとするが奴の剣に阻まれた。

「戒斗ぉぉぉぉ!」

『極オーレ!』

「三直おぉぉぉぉぉ!」

ブレードを二回降ろすと鍔迫り合いをしている剣の刃から炎があふれ出すと同時に奴の剣の刃からも赤黒いエネルギーのようなものが放出され、炎と赤黒いエネルギーが目の前でぶつかり始めた。

そして同時に剣を離し、同時にぶつけあうと目の前で凄まじい衝撃が発生し、ビシッ! というひびが入るような音が聞こえた瞬間、互いの剣が砕け散り、ためられていたエネルギーが俺たちの間で爆発し、

互いにその爆風をもろに受けて吹き飛ばされた。

……互いに譲らずか…………最初に戦ったアーマードライダーがまさか、最後の敵になるとはな。

そして一人の女を互いの野望を叶えるために取り合う……いったいどこの昼ドラだ。

爆風に影響なのかそれともダメージを受けすぎたのか極の鎧は解除されてオレンジの鎧へ戻り、

戒斗もヘルヘイムの力が弱まったのかバナナアームズへと戻っていた。

「まだだ……まだだっ! 俺の望む世界のために! 俺はこんなところで屈しはしない!」

「俺も同じだ……戒斗!」

大橙丸と無双セイバーをドッキングして薙刀の形へとしたものを握りしめ、

駆け出すと奴もバナスピアーを握りしめて駆け出し、己の得物がぶつかり合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうだ。自分を求めて男たちが闘いあうさまは」

「……最悪よ…………どちらかが死ぬ結末なんて」

「だが、始まりの女となった以上、お前さんはあの戦いを見届けなければならない。

この時空の狭間に広がっている無限の世界……その全ての結末は力を持った者同士でたった一つのものをかけて命を削り、戦いあう……そして勝ち残った者だけに神の果実の祝福は降り注ぐ」

「貴方は止めようとはしないの……目の前の戦いを」

「俺はどいつの敵でもなければ味方でもない。運命を手にした者の支配下に下る。

俺は蛇なのさ。始まりの女を唆せ、勝ち残った者に果実を渡す……言わば運命の渡し手さ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『バナナスカッシュ!』

『オレンジスカッシュ!』

「だぁぁぁ!」

「はぁぁぁぁ!」

ブレードを互いに一回降ろし、得物にエネルギーを充填させてぶつけ合うがそれでも、

俺たちの決着はつくことなく、また一つ、武器が砕け散った。

「はぁ……はぁ」

「ぜぇ……ぜぇ」

戦い始めて何分経ったかは知らない……互いに持てるだけのすべての力を相手にぶつけ、

時間など忘れてただひたすら、我武者羅に戦ってきた……己の野望のために。

周りのことなど一切頭の中にはない……たとえぶつかり合う衝撃で地面が抉られようが鳥たちがバサバサと羽音を大きくたててここから飛び去ろうが視線は常に相手へと向けられている。

「はぁ!」

「だぁ!」

砕けた武器を捨て去り、己の拳を相手の鎧へぶつけ、脇腹へ蹴りを入れるが相手の腕に阻まれ、

互いに頭突きをかまし、そして互いの拳を鎧に叩き付ける。

ただひたすらに原始的な戦いをつづけた。

「だぁぁ!」

「ぐぁぁ!」

「うらぁ!」

「ぐぅぁっ!」

俺の拳が奴の顔面に突き刺さり、後ろへ後ずさった奴の鎧へもう一発、

全力の拳を叩き付けると奴はそのまま軽く吹き飛んでいき、背中から地面に倒れこんだ。

もうこれが……これが最後の一撃だ!

『ソイヤ! オレンジスカッシュ!』

ブレードを一度おろし、上空へ飛び上がると同時に俺の脳裏に今までの戦いの様が流れ始め、

メンバーと一緒にダンスをしたこと、そのメンバーを傷つけたこと、ともに戦いあい、

ともに歩んできた仲間たちの姿が流れていく。

その中に初瀬や裕也の顔もあった……。

これで……これで終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

「せいはぁぁぁぁぁぁぁ!」

「がぁっ!」

戒斗が起き上がったと同時にオレンジ色のエネルギーに包まれた俺に蹴りが直撃し、鎧の上で小さな爆発をいくつも起こしながら戒斗は吹き飛んでいき、まともに受け身をとれない状態で背中から落ち、

それでもなお立ち上がろうとするが鎧からいくつもの爆発が起き、奴自身の体が限界を迎えたのか立ち上がると同時に奴の足が崩れ、地面に膝をついた。

「この俺がっ!」

鎧のあちこちから小さな爆発が起き始める。

「……なるほどな……………貴様が強いわけは……誰かを……信じ……る……心……かっ」

戒斗はその言葉を残すと同時に大爆発を起こし、戦極ドライバーと吸収された3つのロックシードは爆発の瞬間に戒斗の体内から吐き出されると粉々に砕け散り、すべてを失った奴はそのまま目を閉じ、

背中から地面に倒れ、動くことはなかった。

「…………」

何も言わず、展開されていたオレンジのロックシードを元の形へ戻し、

ドライバーから取り外すと変身が解除され、今までの爆音が嘘のように静かになった。

……戒斗……お前にも信じる心はあったんだ…………ただそれが未来なのか、今なのかの違いだ。

その時、後ろに気配を感じて振り返るとそこには白い装束に身を包み、金髪の舞の姿があり、

ゆっくりと俺に向かって歩いてきた。

「…………終わったのね……すべて、何もかも」

「あぁ……終わった……終わったんだ」

そう言うと舞は掌を合わせるとそこに金色の輝きが発せられ、再び手を開くとその中に辺りを明るく照らし程のまばゆい輝きを放っている黄金の果実が浮かんでいた。

俺はそれを手に取り、黄金に輝くその果実を一口齧り、飲み込むと手の中にある黄金の果実は消滅し、

俺の足元から黄金の輝きが一瞬だけ発せられた。

すると戦極ドライバーが突然、輝きだしたかと思えば俺が所持していたロックシードも共鳴するかのように光を発しながら宙に浮かび上がるとそのまま光の粒子となって俺の中へと入っていき、

その役目を果たしたのか戦極ドライバーも光の粒子となって消え去った。

「始まりの男と始まりの女……これで全てが揃ったな」

後ろを振り返るとそこにはサガラがいた。

……自分を観客と言いながら俺に力を与えたやつは……本当に何者なんだ。

「サガラ。お前は何なんだ」

「新たな王を見極め、始まりの女を唆し、黄金の果実……すなわち神の果実を渡す。

目ぼしい奴がいれば俺はそいつの手を取り、運命へと導く存在……運命の渡し手といったところか」

……すなわち、あいつはユグドラシルで俺のコアスロットルを渡した時点で目をつけていた。

……なるほど。奴にとって目ぼしい奴である俺があんなところでつぶれてもらうのは困ると言う事か。

「さあ、王よ。世界を思うがままに……古き世界は終わり、新たな世界が始まる」

「いいや……世界は終わらないさ」

「……何を言っているんだ」

サガラは俺が言っていることを理解できていない様子だった。

「確かに世界はお前の言う通り一度終わる……だが、それはこの世界じゃない。

この世界はこの力によって修正され、新たな未来へと進め始め、ヘルヘイムの時は終わる」

「……ハッハハハハハハッハ! なるほど! これは驚いたぜ! この世界とヘルヘイムの世界を切り離したうえでこの世界に修正を加える。修正が加えられたこの世界は進み、切り離されたヘルヘイムの世界はお前さんを王としてまた新たな世界として始まる。

そう言うわけか……これは予想外だ。まさか世界を分けるとはな」

「修正を加えると言っても過去に戻すわけじゃない。失われた命を創造し、ヘルヘイムを切り離したうえでこの世界の時間を進める。ヘルヘイムはヘルヘイムとして新たな時間を進める。この星で二度とこんな争いが起きないように……それが俺の究極の目的であり、

こいつと……優しい王になるという舞と約束したことだ」

そう言うとサガラは笑みを浮かべ、俺たちに背を向けた。

「破壊でもなければ創造でもない……良いぜ。俺は蛇だ。どこまでも付き合うぜ」

そう言ってサガラは光の粒子となって俺たちの目の前から消え去った。

「ねえ、健太……できるかな?」

舞は不安げな表情を浮かべながらそう言い、俺の手を軽く握ってきた。

「できるさ……俺たち二人なら」

そう言い、舞の手を強く握りしめながら指をパチン! と鳴らすと上空に巨大なクラックが開き、

まるでブラックホールのように町に繁殖していたヘルヘイムの植物を吸収し始め、

それに加えて各地に転がっていたヘルヘイムの果実、そして町で暴れているすべての上級・下級インベスを吸収していき、さらにヘルヘイムの世界とこちらの世界の切り離しが始まったのか地面が……いや、地球そのものが大きく揺れ始めた。

「すべての要素は取り除かれ、修正が加えられた世界は進みだす」

そして切り離しが完全に終了したのか揺れは収まった……それと同時にもう一つ、

上空に大きなクラックが開くとそこから金色の光の粒子が地上へ降り注ぎ始めた。

ヘルヘイムによって失われたすべての生命は新たな生命としてこの世界に誕生し、

人を蝕んでいたすべてのヘルヘイム因子は消え去る。

もちろん、目の前で倒れている戒斗の体からも全てのヘルヘイム因子はぬけ去り、

人間となったその体に上空のクラックからの光の粒子が降り注いでいく。

貴虎さんも湊もザックもペコも……そして初瀬や裕也……もちろん、戦極凌馬……まあ、

こいつは危険だからヘルヘイムに関するすべての知識を削除したうえでの誕生にするがな。

「ねえ、健太……ミッチも」

「分かってる。あいつには役目を与えたうえでもう一度生きてもらうさ。

ヘルヘイムの世界は新たな世界として進み始めるとともに運命も動き出す……俺たちの戦いはここで終わるんじゃなく、またヘルヘイムの世界で始まる……ついてきてくれるか」

「うん。もちろん」

俺たちの運命は始まったばかりだ……たとえそれが辛く、苦しい道だったとしても。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――未来はきっと素晴らしいものになるさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

健太によって世界からヘルヘイムが切り離されてから3か月後。

沢芽市の復興は着々と進んでおり、ヘルヘイムによって失われた命はすべてこの世界へ戻り、

人を蝕んでいたヘルヘイム因子も全て消え去った。

沢芽市の象徴であったユグドラシルタワーは解体作業が行われており、ユグドラシルという組織自体が解体されていった。

なかにはヘルヘイムの技術を利用せんとする奴らもいたがその技術はヘルヘイムがあってこそ成り立つものであり、ヘルヘイム世界が切り離された今、失われた技術となり、永遠に闇に葬られることになった。

沢芽市は復興が着々と進み始め、沈んでいた町はビートライダーズのダンスステージという娯楽により、

徐々に浮かび始めてきている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして戦いの真実を知る者たちの結末。

『アーマードライダー・ブラーボ、グリドン』

凰連・ピエール・アルフォンゾと城ノ内秀保は復興が進みつつある沢芽市で新たに店を開いた。

 

 

 

『アーマードライダー・マリカ、斬月、シグルド、デューク』

呉島貴虎のもと、ユグドラシルに代わる新たな組織が生み出され、その下で湊耀子は秘書、

戦極凌馬は研究者として、シドはその技術を他社へ売っていく者として働いている。

 

 

 

『アーマードライダー・ナックル、黒影、2代目シグルド、バロン』

ザック、ペコ、戒斗は新生チームバロンを結成し、ビートライダーズの一員として日々、

ダンスに明け暮れており、初瀬も再びチームに戻り、ダンスに打ち込む毎日を送っている。

 

 

 

 

 

『アーマードライダー・鎧武=始まりの男、高司舞=始まりの女』

今も二人でともに運命と戦い続け、輝く未来へと歩んでいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長きにわたる戦いは世界が切り離されるという結末で幕を閉じた。

その戦いの中でで二人の人物のことを知るものは数少ない。

残された家族は返されたペンダントを胸に、いつか再び会うことを待っている。


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