「ぐあぁっ!」
地面に叩き付けられ、変身が解除された。
こちらへゆっくり近づいてくるロシュオを見て、もう一度変身しようとドライバーへ手を伸ばした瞬間、
指の先に熱さを感じ、思わず手を引き、ドライバーを見てみるとカチドキロックシードが先程の、
衝撃波に耐えきれなかったのか砕け、見えている中身からは煙が出ていた。
「オシカッタナ、ミノウケンタヨ。カミノカジツ……スナワチ、チエノミハムクナヤツニアタエラレル。
モシモ、キサマハアノトキ、ジュンスイニワタシヲタオソウトシテイレバキサマガカッテイタデアロウ。
ノロウガイイ。ニンゲンデアルコトヲ」
知恵の実……アダムとイブはそれを食したことにより、無垢を失い、人間へと落ちた。
……無垢とはすなわち、純粋。欲に呑まれたか。
「グァッ」
直後、地面に跪いた音が聞こえ、顔を上げてみると剣を杖のように地面に突き刺し、
見るからに激しく消耗しているロシュオの姿があった。
奴もまた、俺という挑戦者を倒すために莫大な力を解放した。
その時、地面にひれ伏せている俺の背後で誰かが歩いてくる音が聞こえ、後ろを見てみると、
ロシュオと俺に向かってゆっくりとレデュエが向ってきていた。
「コノトキヲドレホドマチワビタカ……ユダンメサレマシタナ! オウヨォォォォォ!」
「ヌゥ!」
叫びながらレデュエがロシュオに向かって手のひらから緑色の光球を複数生成し、放つと、
すでに俺との戦いで消耗しすぎているロシュオはそれを裁ききれずに直撃し、地面に倒れこんだ。
さらにそんなロシュオに追い打ちをかけるようにレデュエは近づき、槍を振り下ろし、
倒れこんでいるロシュオの背中に何度も槍を叩き落としていく。
「アッハハハハハハハ! コノトキヲズットマッテイタンダ! クロウシタヨ。
カミノカジツノスベテヲテニシテイルキサマトノジツリョクサハレキゼン。イクエニモサクヲネッテ、
ヨウヤクチャンスガマッテキタカトオモエバ、チョウドイイサルガキサマヲタオシタ。
イクラカミノカジツヲショユウシテイヨウガイマノキサマナドテキデハナイワ!」
「グアァァ!」
叫び散らしながらレデュエは槍をロシュオに突き刺していく。
それを止めようにもすでに俺に立ち上がる気力などもなく、奴に対抗することができるカチドキも、
ロシュオとの戦いで破損している。
「ッハハハハハハハ! ハァァ!」
「グアァァァ!」
奴がロシュオの背中に腕を突き刺し、引き抜いたかと思えばレデュエの手の中に黄金の輝きを放つ果実があり、辺りに眩しいくらいの輝きを放ち始めた。
「ヒャッハハハハハハハハ! コレデワタシハカミトッッッ! ナ、ナンダコレハッ!」
突然、果実が輝きを失い始めたかと思えば果実が一瞬にしてグチュグチュに腐ってしまった。
なんだ……いったい、何が起きているんだ。
「キサマァ! カジツヲドコヘヤッタァ! イエェ!」
「グァ! ワ、ワレフェムシンムノウグァ! ヤクメハオワッタ!」
「フザケルナァァァァ!」
「ゴァ! ア、アイスルモノヨウグァ! ワタシモ、ソコヘ」
愛する者? ……………あの棺に眠っている人のことなのか……よく考えてみろ。
言い伝えでは知恵の実は蛇に唆されたイブによってもぎ取られ、アダムへと与えられた。
仮に……仮にこの言い伝え通りにフェムシンムを当てはめればフェムシンムの長であるロシュオがアダム、
そして唆した蛇が……ほかの奴としよう。ならばイブが……ロシュオが愛した人。
俺の推測通りに果実がもたらされたのだとしたら……ロシュオではない誰かがイブの役目となる。
「アアァァァァ! ワタシガカミトナルチャンスヲツブシヤガッテ!」
「っぁぁぁ! レデュエェェェェェェ!」
叫びながら……痛みに耐えながら両足で立ち上がり、レデュエを睨み付けた。
「貴様だけは……欲にまみれた貴様はこの俺がぶっ潰す!」
「クタバリゾコナイノオマエニイッタイナニガデキルッテンダァ? アァ!?」
「甘く見るなよ……まだ、戦う力ならいくらでもある!」
『ミックス! オレンジアームズ・花道・ON・ステージ! ジンバーメロン! ハハー!』
二つのロックシードを開錠し、同時にドライバーにセットしてブレードを下すとオレンジのアームズとメロンエナジーのアームズが融合した状態でクラックから落ちてきて、俺に被さり、ジンバーの黒い鎧に緑色のメロンの絵が描かれた部分が加わった物が展開された。
これが最後のジンバーの姿……勝てるかはわからんがな。
『ハァアア!』
「ふんっ!」
レデュエが叫びながら振り下ろしてきた槍を片腕で防ぐと同時に奴の腹部をもう片方の腕で殴りつけると奴の体からくぐもった音が聞こえると同時に奴の苦しそうな声が聞こえ、数歩後ろへ後ずさった。
なるほど……スピード、聴覚、全体強化の次は腕力強化か。
『キサマヲツブシテオウゴンノカジツヲミツケルノダァ!』
「くっぅうあ!」
再び奴が振り下ろしてきた槍を今度はソニックアローで防ぐが狂喜により、タガが外れてしまったのか奴の一撃は凄まじく重いものでロシュオとの戦いの後の俺にとっては防ぐことのできない一撃となり、
ソニックアローごと俺を切り裂いた。
『ハァァ!』
「ぐぁぁあっ!」
奴が掌に緑色の光球を浮かべ、俺に向かって放つと複数に分裂した球体が俺の周囲の地面に直撃し、
砂を巻き上げて俺の視界を潰したと同時に最後の一発が俺に直撃した。
直撃し、吹き飛ばされ、地面に背中から倒れたと同時に変身が解けてしまった。
くそっ! ロシュオとの戦いで消耗しすぎた……。
『アッハハハハハハハハハハハ! ソンナキズダラケデカテルハズガナインダヨォ!
ケイカクハスコシクルッタケドキサマトソコニコロガッテイルヤツヲコロシ、オウゴンノカジツヲミツケレバワタシガカミニナルケイカクハカンセイスル! モウ、ワタシニショウガイナドナインダァァァ!
ハハハハハハハハハハハハハハハハハッハハハハハ!』
……こいつが……こいつが神になれば確実にすべての人類は殺される……させるかよ。
『アァ?』
狂喜の笑いを上げているレデュエを睨み付けながら俺は立ち上がりった。
カチドキのロックシードを握りしめ、試しに開錠してみるがまったく反応はない。
神の果実の一端である極ロックシードを持っているならば俺もロシュオと同じ位置にいるはずだ。
…………カチドキ。お前はこんなところでくたばっていいものじゃないんだ!
俺が……俺が王となるその時までわなぁ!
「あぁぁぁ!」
『っっ! マサカ、キサマッ! スデニ!』
大きく叫びながらカチドキを握りしめ、奴に向けた瞬間、手の中でカチドキが輝きだし、
数秒もたたないうちに一瞬にしてその形が元に戻った。
……俺も正真正銘、人間ではなくなったか……まぁ、良い。目の前の奴を倒せるならばなぁ!
「変身ッッッ!」
『エアァァ』
『カチドキアームズ! ロックオープン! 極アームズ! 大・大・大・大・大将軍!』
『キウイ激輪! イチゴクナイ! バナスピアー! ドンカチ! ドリノコ!』
『影松!』
奴が放ってきた緑色の光球をすべてのアーマードライダーのアームズがはじき返し、
俺にカチドキの鎧が被さると同時に周囲のアームズと一つとなり、極の鎧が生成され、
さらに連続で極ロックシードを弾き、武装を連続で呼び出してレデュエに向かって放ち、
手元に影松を握りしめ、レデュエに向かって駆け出した!
「はぁぁぁ!」
『ヌァァア!』
同時に振り下ろされた互いの得物がぶつかり合い、目の前で火花が散るが奴が反応する前に、
槍の先端で奴を突き刺し、さらに横なぎに大きく振るって奴を斜めに切り裂き、軽く吹き飛ばした。
『チョウシニノルナヨ! ハァァ!』
「っっ!」
レデュエが槍を地面に突き刺した瞬間、奴の周囲に光の穴が生まれ、
そこからヘルヘイムの植物のツタが一瞬で繁殖し始め、俺に向かって伸びてきた。
植物ごときが…………俺に従えっ!
『ナッ! グアァァ!』
植物を睨み付けた瞬間、植物が奴の周囲から消えると今度は俺の周囲から植物が繁殖し、
奴にグルグルに巻き付き、そのまま遠くへと投げ飛ばすと同時に落ちているロシュオの剣を植物で掴み、
自分の手元へと寄せ、握りしめた。
『バ、バカナ! アノタンジカンデワレラトオナジソンザイニッ!』
「インベスども……俺に従え!」
ロシュオの剣を叫びながら地面に突き刺した瞬間、俺の周囲に五つのクラックが出現したかと思えば、
そこから五体の上級インベスが出現した。
『シタガエタダトッ!?』
生まれるや否や、インベスどもがレデュエに向かって駆け出し、奴に攻撃を仕掛けていく。
「レデュエ! 貴様が神になることはない……貴様に代わってこの俺がこのヘルヘイムの支配者となる!」
『フザケルナァァァァ!』
上級インベスどもを蹴散らし、俺に向かってくるが奴が俺の近くへ到達するよりも前に、
ジンバーピーチ並みの速度で俺が奴に近づき、すれ違いざまにロシュオの剣で切り裂き、
さらに先程の道を戻るようにしてすれ違いざまに奴をもう一度切り裂くと怯んだ奴の胸を蹴り、
大きく吹き飛ばした。
「えあぁぁぁ!」
『グァッ! バカナッ! コノワタシガッ! ホロビルトイウノカ!』
『火縄大橙DJ銃!』
『ロックオン!』
「貴様らの過去の世代の時代は終わり、新たな……俺の時代が始まる! だぁぁぁぁ!」
『オレンジチャージ!』
「アアァァァァァァァァァァ!」
呼び出した銃の側面にある窪みにオレンジロックシードをセットし、引き金を引くと銃口から、
巨大なオレンジ色の火球が放たれ、レデュエに直撃し、大爆発を上げて一撃のもと消し去った。
俺が……新たなヘルヘイムの王となる。
「アァ……アイスルモノヨ…………ワレラノシメイハオエタ。コレデヨウヤクアンネイノトキガ」
「……ロシュオ。今までお疲れ様。フェムシンムの長としてのお勤め、ご苦労様でした。
これでようやく、静かに…………二人で暮らせるのね」
「……レデュエの機械に送られたエネルギーでわずかばかり、この世界に戻ってきたか。
皮肉なものだな。ロシュオがあんたの愛を伝えたのもあんたが死んだとき。
そして遥かな時を経て、想いを返したときはすでにロシュオが死んでいた。
王妃様よ。あんたはこう言いたいんだろ? あいつらをどうするのかって。
心配すんな。俺が奴らをどうこうすることはない。あくまで俺は傍観者であり、
蛇だ。新たな王が生まれればわれ等は王へと下る。ま、安らかに眠れ。
時代はすでに新たな時代に突入した」