「はぁ……キツイな」
休憩しようと柱にもたれ掛った瞬間、俺の少し前の空間に突然、一つのクラックが開いた。
まるで俺に休憩などせずにこの扉を通って行けとでも言いたそうに。
……行くか。
休憩も早々と切り上げ、突然開いたクラックへ入るとちょうど近くに果実が見えたので、
その果実を手に取ってロックシードへと変換し、ドライバーに装着するとドライバーの機能により、
種子のロックシードが淡く輝きだしたかと思えば全身にあった疲労感が少しずつ消えていくのを感じた。
人間の飯が喉を通らず、ロックシードから送られてくるエネルギーを補給する様は傍から見れば、
もう完全にインベスと同じだな。
ま、この状況を否定する気はない……この力なくして世界を救うことはできないからな。
少し歩くと先程の疲労感は消え、淡く輝きを発していた種子のロックシードは輝きをなくした。
「三直!」
「戒斗」
「囚われた奴らは全員解放した。凰連たちも生きている。あとこれはお前への餞別だ」
そう言い、戒斗はポケットから一つのロックシードを取り出して俺に向かって投げてきた。
それを受け取ってみてみると光実が使っているはずのメロンエナジーのロックシードだった。
「これは」
「奴との戦闘のさなか、凰連達が合流してな。その間に奴を叩き潰した」
これであいつがゲネシスドライバーを使っての変身はなくなり、
残っているのは戦極ドライバーでの変身に使うブドウとキイウだけになったということか……。
「そうか……行くぞ」
そう言うと戒斗は頷き、俺とともに道なき道を歩き始めた。
凰連たちが生きていると言う事は無事に大勢のインベスをすべて倒したと言う事か……ここか。
少し歩いた先から凄まじい圧力のようなものを感じ、それを感じる場所へと向かうと棺のようなものの近くに置かれている玉座のような石の椅子に腰を下ろしている白色のオーバーロードがいた。
……感じる。こいつはレデュエや赤色のオーバーロードとは力の次元が違う。
「ヨクゾキタ」
「高司舞はどこだ」
「アンズルナ。アノオンナニヤクメヲアタエ、モトノセカイヘトモドシタ」
話についていけないがとりあえず、舞は向こう側の世界へ送られたことはわかった。
ポケットからカチドキのロックシードを取り出すと灰色のオーバーロードは重い腰をゆっくりと上げ、
地面に突き刺さっている大きな剣を手に取り、俺たちの方を向いた。
「フェムシンムノオサトシテナンジラノカクゴヲミキワメヨウ。ハァァ!」
「ぐぁぁ!」
「うぁぁぁ!」
突然、奴が俺たちに向かって手を翳したかと思えば俺たちの体が見えない何かに壁に押し付けられ、
指一本動かすことすらできなくなってしまった。
っっ! そうか! レデュエに見せられた幻影で俺が使ったのと同じもの!
「ぐあぁぁぁぁっぉっぉ!」
『カチドキ!』
叫びながらカチドキのロックシードを開錠するとロックシードから衝撃波のようなものが放出され、
ロシュオが放っていた力を相殺し、俺たちを解放した。
「「変身!」」
『ロックオン・ソーダ・レモンエナジーアームズ』
『ソイヤ! カチドキアームズ・いざ出陣! エイエイオー!』
「ワガナハロシュオ! フェムシンムノオサトシテヤクメヲハタソウ!」
「今度は植物か!」
「ここの力はっ! うぁぁぁ!」
どうにかして変身を完了させ、ロシュオへ切りかかろうとするが今度はどこからともなくヘルヘイムの植物が伸びてきて俺たちの腰のあたりに巻き付くと次々に植物が巻き付き、ロシュオが浮かび上がると同時に植物も意思があるかのように俺たちを持ち上げ、そのまま森の方へと俺たちを投げ捨てた。
そして、ゆっくりと剣を握っているロシュオが下りてきた。
「カカッテクルガヨイ。チョウセンシャヨ」
「うおぉぉ!」
「ッフッフッフ」
「ぐぁ!」
二人同時に立ち上がり、奴に向かって駆け出すが奴が翳した手から青白い光球が放たれ、
俺たちに直撃し、再び地面に俺たちを伏せさせた。
「ドウシタ? ソンナモノカ!」
「あぁぁぁ!」
「おおぉぉぉ!」
無双セイバーを握りしめ、奴に向かって駆け出していき無双セイバーを振り下ろすが当たる直前で、
奴が光となり、俺の正面から消滅した。
自らの姿を消した……どこに消えたっ!
「フン!」
「ぐぁ!」
「なっ!」
「コッチダ!」
「あぐぁ!」
後ろを振り返った瞬間、奴が現れてその巨大な剣を振り下ろして俺を切り伏せるや否や、
再び自らの体を光へ変化させ、姿を消すと今度は戒斗の背後へ出現し、後ろから先程の光球を放って、
戒斗を吹き飛ばすだけでなく、立ち上がろうとしていた俺への追撃もした。
こいつっ! 一人だけを見ずに俺たち二人を同時にみている!
「はぁぁ!」
「はっ!」
「フン。ハァ!」
「ぐぁ!」
倒れこみながらも戒斗が放った黄色い矢を素手で掴むと切りかかろうとしていた俺の方を見ず、
その矢を放り投げて直撃させ、さらに先程の手から放った見えない何かで矢を支配下に置き、
方向を急に転換させ、戒斗に直撃させた。
比べ物にならない! こいつが闘ってきた場数と俺たちの場数が違いすぎる!
経験則、本能、そして圧倒的なまでの神の果実の力を余すことなく存分に発揮している!
「ドウシタ? カミノカジツハスグソコニアルノダゾ!」
「このっ!」
『『ロックオン!』』
戒斗はドライバーからレモンエナジーロックシードを取り外してソニックアローにそれをはめ込み、
俺はドライバーからカチドキロックシードを取り外して火縄大橙DJ銃の側面にある窪みにそれをはめ込み、
仁王立ちしているロシュオへと銃口を向けた。
だが、ロシュオはそんな挟撃されるというにもかかわらず俺たちの方など一切見ていなかった。
「だあぁぁぁ!」
「えあぁぁぁ!」
『カチドキチャージ!』
『レモンエナジー!』
「フッフッフ! ハッ!」
「なっ!」
「バ、バリアだと!?」
引き金を引き、銃口から巨大な火球が放たれると同時に逆方向から強大な一撃の矢が放たれるが、
奴を中心として一瞬だけ展開されたバリアのようなものに直撃し、バリアと押し合うことなく、
一瞬にして二つの攻撃が消滅した。
バカな……赤いオーバーロードにさえ、突き刺さってダメージを与えた一撃と亀の甲羅のようなものを背負ったオーバーロードを一撃で葬ることができる威力を出す銃での一撃を触れもせずに掻き消した!
「ハァァァ!」
ロシュオが地面に剣を突き刺した瞬間!
「ぐぉぁぁ!」
「がっぅぁぁ!」
奴の全身から炎と手から放たれていた見えない何かが混ざり合ったものが放出され、
俺たちをいとも簡単に近くの大木の幹に叩き付け、押さえつけた。
ぐぁぁぁ! これがっ! これが神の果実のすべてを手にした男の力かっ!
「モシモ、キサマラガアンイナカンガエデカミノカジツニテヲダソウトシテイタノナラバ。
ソレハオロカデ、ナゲカワシイツミダ……ソノツミヲ……ミズカラノイノチヲサシダスコトデツグナエ!」
直後、さらに奴の全身から放たれているものの威力が増し、押さえつけられている大木の幹がミシミシと今にも折れそうなくらいの悲惨な悲鳴を上げ始めた。
安易な考え……だとっ! ……ふざけるなぁぁぁぁぁ!
「戒斗ぉぉぉぉぉ!」
「三直ぉぉぉぉぉ!」
互いに相手の名前を叫びながらゆっくりとロシュオに向かって歩き始め、無理やり腕を動かして、
それぞれのドライバーのブレードとレバーに手をかけた!
「せいぃぃぃ!」
「だぁぁぁぁぁ!」
『レモンエナジースパーキング!』
『カチドキスパーキング!』
「ヌアァァァ!」
ブレードを三回降ろし、跳躍して奴めがけて蹴りを叩きこむがそれすらも見えないバリアでいとも簡単に防がれ、奴が一回転しながら剣を振り回したことで鎧を切り裂かれると同時に吹き飛ばされ、
戒斗に至っては吹き飛びながらドライバーも腰から外れ、変身が解除された状態で地面に叩き付けられた。
「ぐあぁぁぁぁ!」
「っ! 戒斗!」
突然、奴が腕を抑えながら叫び始めたかと思えば、
包帯が巻かれていた腕の傷が緑色に淡く輝いているのが見えた。
あれは、レデュエにやられた時の! まさか、あいつ!
「ホゥ。ソノキズデヨクタタカエタモノダ……ダガ、アンシンスルガイイ。イマラクニ」
ロシュオが戒斗に向けて剣を振り下ろそうとした瞬間、地面に横になった状態で火縄大橙DJ銃の引き金を引き、隙だらけの奴の背中に火球を直撃させた。
「待てよ……俺はまだ立っているぞ! ロシュオオォォォォォ!」
叫び散らしながら引き金を引き続け、火球を何発も連続でロシュオめがけて放つが、
その全てが奴の剣によって叩き落され、近づき、振り下ろされてきた剣を銃で受け流しながら、
至近距離から火球を放つも足で弾かれ、もう一度振り下ろされてきた剣を受け止めると、
凄まじい力が俺にのしかかり、地面に膝をついた。
「俺を……人間をなめるなよ!」
「ヌグッ!?」
片腕で奴の剣を抑え、空いた腕で無双セイバーを手に取って銃をドッキングさせ、
無理やり剣を振りぬくと奴の鼻のあたりを切り裂いたがすぐにその傷はふさがった。
絶大な力だけじゃなくて絶大な回復力もありか!
「フン!」
「くっ!」
奴が持っている剣の刀身が光輝き始め、振り下ろされてきたのを剣となった銃で弾くが、
先程とは比べ物にならない衝撃が全身に響き、さらに振り下ろされてきた一撃を受けた瞬間、
耐え切れずにそのまま吹き飛ばされてしまった。
「ナゼ、キサマハタタカウ」
「何度も言わせるな。この世界を救うためだ!」
「ミズカラノイノチヲステテデモカ?」
自らの命……こいつが言っているのは俺が徐々に人間ではなくなっていることだ。
「決めつけるなよ」
「ナニ?」
「何で世界を救うと俺の命が失われんだよ。神の果実さえ、手に入れれば俺が王となり、
このヘルヘイムの世界をコントロールすることができる。確かに人間という存在ではなくなるが、
俺が死ぬわけじゃない…………俺は生きて、この世界を救って見せる!」
『フルーツバスケット!』
「俺には帰る場所も……守るべき人もいる!」
「ッッッ!」
『ロックオープン! 極アームズ・大・大・大・大・大将軍!』
『火縄大橙DJ銃! 無双セイバー!』
アームズチェンジした際に消滅した二つの武器を再び手元に呼びよせると同時にドッキングさせ、
一本の剣へと変形させると同時に奴に向かって駆け出し、振り下ろすが灰色がかった剣に受け止められた。
「ナルホド。カエルベキバショ、マモルベキヒト……ソレガキサマノミナモトトイウコトカ。
カクゴハミトメヨウ……ダガ、キサマノジツリョクハカミノカジツニハアタイシナイ!」
「くっ! まだだ!」
『ソニックアロー!』
相手が剣を上に振り上げたことにより、俺の手から剣が離れ、丸腰となってしまったが、
瞬時に手元に二本のソニックアローを呼び寄せ、相手が振り上げてきた剣を二本を交差させて防ぎ、
相手が振り上げる力を利用して上空へと飛び上がった。
『極スカッシュ!』
「だぁぁぁぁ!」
「ヌォアオァオ!」
ブレードを一度おろすとソニックアローの刃が輝きだし、急降下の勢いのまま奴めがけて振り下ろすと、
剣に直撃はしたものの受け止められるがそのまま力任せに奴を押し込むと地面に膝をついた。
『クルミボンバー!』
「ヌッァ!?」
受け止められている間にソニックアローを少し動かし、湾曲している刃の先端で極ロックシードを弾くと、
奴の頭上からクルミボンバーが落下し、直撃と同時に大爆発を上げた。
いまだ!
「だぁぁ!」
クルミボンバーの爆発の影響で力が分散した一瞬のスキを突き、右腕に持っているソニックアローを振り上げると奴の腹部のあたりを縦にまっすぐ切り裂いた。
「まだだ!」
「ヌゥゥゥ!」
『ブドウ龍砲!』
一本を投げ捨て、後ろへと数歩後ずさっている奴めがけて矢を連続で放ち、奴に直撃させると同時に、
ブドウ龍砲を手に呼び寄せ、紫の光弾を連射すると数発は直撃したがほとんどが剣に叩き落された。
これで終わらせる!
『極スパーキング!』
「はぁぁぁぁ!」
ブレードを三回降ろすと全身の鎧が黄金の輝きを発し始め、足に黄金に輝くエネルギーが集まっていくがそれと同時に奴も強大な一撃を準備し始めたのか、奴の剣の刀身が今までにないほどの輝きを発し始めた。
この一撃ですべてが決まる! 俺が終わるのか! それとも奴が終わるのか!
「はっ! でやあぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ヌオアァァァァァ!」
黄金の輝きを発しながら跳躍し、奴めがけて急降下しつつの蹴りを浴びせようとした瞬間、
俺と蹴りと奴の刀身が大幅に伸びた剣がぶつかり合い、凄まじい衝撃が俺に加わると同時に、
周囲に衝撃波が放たれ、地面をえぐっていく。
「うおぉぉおぉぉ! セイハァァァァァァ!」
「ヌォゥオ!?」
叫びをあげると同時に奴の刀身にひびが入り、刀身を砕きながら少しづつ奴に近づいていく!
もう少しだ! もう少しで……もう少しで世界を救う力が!
そう思った直後、今まで押していた俺の力が突然、奴の力に押され始めた!
「フッフッフ……ココマデノフントウ、ミトメヨウ。タシカニキサマハカミノカジツニチカヅイタ。
ダガ! サイゴノサイゴデヨクヲダシタナ! ヌアァァァァ!」
「うあぁぁぁ!」
目の前が輝きで染め上げられたと思った直後、ドライバーのあたりに凄まじい衝撃が走り、
そのまま俺はビルの三階分の高さから落ちた。
どもっ! 今回は連続で行きます!