仮面ライダー鎧武 Another hero   作:kue

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第四十二話  未来

「ここがタワーの地下だが……見る影もないね」

戦極の先導の下、ユグドラシルタワーの地下階層を上り、地上階層へ到着したらしいのだが、

辺り一面に植物が繁殖しており、

ほんの数日前まで人間が生活していた場所とは思えないレベルにまで植物に覆われていた。

やはり、オーバーロードの支配下にあるこのタワー内部の繁殖のレベルは外部とは違うのか。

「三直君。きたまえ」

そういわれ、奴に着いていくとある一室の扉の前に立ち止まり、その扉を静かにあけて中に入るとそこにはインベスに攫われたと思われる人たちが機械を中心にして円を描くようにベッドの上に寝かされていた。

そしてすべての人たちに真ん中の機械から伸びているチューブがつけられている金属製のマスクをつけられており、そのチューブを通って何か光るものが機械に送られていた。

「大丈夫だ。君のお姉さんもお仲間さんも生きてはいる。パッと見だが人間のエネルギーを吸収しているみたいだね。生命力とでも言おうか。だがこの程度の機械では微々たる量だろう」

『ソノビビタルリョウデモワレワレニハヒツヨウナノサ』

そんな声が聞こえ、ゆっくりと振り向くとそこにはヘルヘイムの果実がぶら下がっている槍をもった緑色のオーバーロード――――レデュエが立っていた。

「ほぅ。それは興味深いが……彼が許してくれそうにないな」

「レデュエ……ここでケリをつけるぞ。変身」

『ソイヤ! ロックオープン! 極アームズ・大・大・大・大・大将軍!』

『無双セイバー!』

『ロックオン・レモンエナジーアームズ』

「はぁぁぁ!」

変身が完了したと同時に極ロックシードをひねり、無双セイバーを手元に呼び寄せてレデュエに切りかかると槍によって防がれるがそんなこと気にせず、そのまま無理やり押し込み、ドアを突き破ってさらに窓をも突き破り、そのまま二人してユグドラシルタワーの外へと落ちた。

『ブドウ龍砲!』

「はぁ!」

『フッフッフ!』

「っっ!」

不気味な笑みを浮かべながら俺が放った紫色の弾丸を姿を消すことで避けた。

『キミハナンノタメニタタカッテイルンダ?』

後ろからそんな声が聞こえ、振り向かずにブドウ龍砲を後ろに向けて引き金を引くが当たった様子はなく、

ただただ壁が砕け散る音と地面に瓦礫が落ちる音だけが響いた。

どうも頭がいい奴らは姿を消したがるらしいな。

「この世界を救うためだ。お前たちに支配されたこの世界をな」

『キミトカレノサイシュウモクテキハニテイルヨウデチガウ。キミハコノフルイセカイヲ、

カレハアラタナセカイヲサイシュウモクヒョウニシテイル。ソシテリョウシャノアイダノケッテイテキナサハオノレノイノチヲステテマデスクウカドウカダ』

「何が言いたい」

『フッフッフ……キヅイテイルンダロウ? モウスデニジブンガヒトナラザルモノニナリツツアルト』

味覚の喪失、聴力の異常なまでの強化、そして極めつけは己の体の変化……ふん。

「お前にはわからんさ。俺が救おうとしているものの素晴らしさを」

『ダッタラキミニミライヲミセテアゲヨウ』

「っっっ」

突然、目の前が光り始めたかと思えば全身の力が急激にぬけていき、両手に持っていた無双セイバーとブドウ龍砲が手から滑り落ち、その滑り落ちた音と同時に目の前の光が消えた。

何も聞こえない状態が続くこと数秒……突然、俺の耳に人々の声が聞こえてきた。

そんな馬鹿な……この街に人は今っっ!

そんなことを思いながら目を開けて目の前の景色を見てみるとそこはユグドラシルタワーなどではなく、

芝生が一面に広がっている公園だった。

慌てて周囲を見渡してみると犬の散歩をしている人や子供と一緒に遊んでいる夫婦、ベンチに座っている老夫婦の姿などがそこらじゅうにみられた。

…………これも何かの幻覚なのか。

「っっ……フリスビー?」

その時、背中に何かが当たったような感触がし、下を見てみると俺の後ろにフリスビーが落ちていた。

「あ、すみま……うわぁぁぁぁ! ば、化け物だ!」

フリスビーを取りに来たらしい男性が俺に近づくや否やその言葉を発すると周囲にいた人もその声に反応して俺の方を見ると全員が同じように恐怖を顔に表しながら逃げていく。

「インベスかっ!」

慌ててポケットからドライバーを取り出そうとしたときに、何かがズボンのポケットに引っかかり、

イラつきながら自身の手を見た瞬間、腰を抜かしそうになった。

「な、この腕は」

俺の腕だったものはそこにはなく、目の前に見えているのは肌色などではない灰色がかった色をした腕で指先は真っ白に染まっており、その先端からは人間のものではない鋭くとがった爪が軽く伸びていた。

これは前にもあったっ! まさか、オーバーロードになりつつ

「やっと見つけたぞ! 最後の化け物が!」

「っっ! ゆ、裕也!」

後ろから聞き慣れた声が聞こえ、振り返ってみるとそこにはチームガイムのリーダーであり、

俺が殺してしまった角居裕也の姿があったがその眼は知り合いの俺に向けられる目ではなく、

忌々しいものでも見ているかのような目だった。

「お前を倒せばこの世界は本当の意味で平和になるんだ!」

「な、何を言っているんだお前は! 俺だ! 三直健太だ!」

「黙れ! 世界を救った英雄だか救世主か何だか知らねえがお前がいると人々は本当に安心してこの街で過ごすことはできない! 悪いが…………俺たちの平和のために死んでくれ」

そう言うや否や裕也がポケットに手を突っ込み、引き抜くとその手には戦極ドライバーが握られており、

さらに逆の手にはオレンジ・ロックシードが握られていた。

バ、バカな……あれは俺の……。

『オレンジ』

「変身!」

『ソイヤ! オレンジアームズ・花道・ON・ステージ!』

ドライバーにオレンジロックシードをセットすると裕也の頭上にオレンジのアームズが出現し、

ブレードを下した瞬間、聞き慣れた音声が流れ、裕也にオレンジのアームズが覆いかぶさり、

一瞬にしてオレンジの鎧が展開され、手に大橙丸が握られた。

「えああぁぁぁぁ!」

「っ! 裕也! おい!」

振り下ろされてきた大橙丸を避け、必死に裕也に叫びかけるが俺の叫びに反応することなく、

裕也は次々に俺に剣を振り下ろしてくる。

「待ってくれ!」

「ぐぁ!」

静止を呼びかけようと腕を上げた瞬間、偶然にも俺の詰めが裕也がまとっている鎧を切り裂いた。

っっ! さ、さっきよりも浸食が進んで!

「くそっ! この化け物が」

裕也が俺に向かって無双セイバーの銃口を向けた瞬間!

「な、なんだこいつらは!」

突然、俺の後ろから下級インベスが五体ほど俺を飛び越えるようにして裕也に襲い掛かった。

「っっっくそ!」

痛む右腕を抑えながら、下級インベスに襲われている裕也を見捨ててそのまま走り出し、

公園を出てすぐのところにある公衆トイレの壁にもたれかかった。

どうなっているんだ……これは幻覚なんかじゃない。紛れもない現実だ。

「見つけたぞ!」

「っっ! ザック、湊!」

声が聞こえ、そちらの方を向くとすでに変身し終えているザックと湊の二人が迷うことなく、

俺に向かって真っすぐ突き進んできた。

痛む右腕を抑えながらその場を離れ、二人から少しでも離れようとただ走り続けた。

「っっ!」

芝生の上を走っていると俺の足元の地面が小さく爆発し、辺りに土がばら撒かれた。

「追い詰めたわ」

「これで終わりだ!」

『トウ!』

『セヤッ!』

俺の背後から背中に甲羅を背負っている亀のようなオーバーロードとクジャクのような無数の羽が腕に生えているオーバーロードが目の前に飛び込んできて二人と戦い始めた。

『ユケ! ワガトモヨ! ムコウデナカマガマッテイルゾ!』

「なか……まだと」

『ソウダ! カツテハアラソイアッタナカデアッテモイマハトモダ! ユクノダ!』

これは……これは本当に。

腕を抑え、今の状況が処理できないほどにパンクしている思考回路の状態でフラフラと木に当たりながら公園内を歩いていると向こうの方に緑色の体色のオーバーロードと赤色の体色のオーバーロードが立っていて、

俺の姿を見つけるや否やゆっくりとこっちに近づいてきた。

『ナニヲシテイル! オソイデハナイカ!』

『デムシュ、キガミジカイトコロハイケナイナ』

なんなんだ……何故、こいつたちが俺に親しげに話しかけてくる!

俺は……俺は…………俺は何だ……オレハ……。

『アァ、ミンナカエッテキタミタイダ。サア、ユコウカ。コレカラハキミノセカイダ』

「見つけたぞ! 化け物!」

向こうの方から鎧武が走ってくる…………。

「あぁぁぁぁ!」

腹の底から叫ぶと体から凄まじい力が湧き上がってくる感じを抱き、それと同時に俺の体が変化し、

全身が灰色がかった白に変色し、右手には巨大な真っ白い剣が握られていた。

「うおおぉぉぉ!」

「っぁぁあ!」

「ぐあぁぁぁ! な、なんだこの力は!」

向かってくる鎧武に向かって手のひらを翳すと肉眼でもはっきりと認識できるほどに手元の景色がゆがみ、

向かってきていた鎧武をいとも簡単に近くの大木に叩き付け、行動を抑えれた。

「はぁ!」

「うあぁあ!?」

さらに向けていた腕を右方向へ動かすと押さえつけられていた奴が勝手に吹き飛んだ。

コレガ……コレガオーバーロードノオウデアルオレノチカラ!

「この化け物がぁぁぁぁ!」

「ふん!」

「ぐぁぁ!」

振り下ろしてきた無双セイバーを真っ白の巨大な剣で受け止めるとあいている左腕で奴の手首のあたりを殴りつけ、無双セイバーを落とし、さらに剣で斜めに切り裂き、先程の押さえつけた力で吹き飛ばすと、

一瞬で奴の変身が解除された。

『サスガハカミノカジツノセンレイヲウケタカレダ』

『アタリマエダ! アノテイドノテキデクセンスルヨウナライバルハオレニハオラン』

剣を握り、引きずりながら奴の近くへとゆっくり歩いていくと奴は俺を憎しみを顔全体に滲ませて、

俺を睨み付けてきた。

「この化け物がっ! コソコソ隠れて仲間を増やしてやがったのかっ! 何が救世主だっ!

やっぱりてめえはこの世界を争いで包む化け物だっ!」

「ナントデモイエ……モウ、オレハニンゲンジャナインダ。カンケイナイコトダ」

「……たとえ、俺がやられたとしても必ず俺の仲間がお前を倒す! 絶対にだ!」

「ソレハイツニナルンダロウナ」

『優しい王様になって』

「っっっ!」

睨み付けてくる奴めがけて剣を振り下ろそうとした瞬間、頭の中に誰かの声が響き渡り、

ギリギリのところで剣を振り下ろせなくなってしまった。

ダレダ……コノコエハダレナンダッ!

『優しい王様になってね……健太』

……………舞。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴様。落ちるところまで落ちたな」

「言ってなよ。君は僕の世界に入らない人だ。ここで消すよ」

舞さんをロシュオとかいうオーバーロードの王様に預けたときにネズミがコソコソ動き回ってるっていうから見に来てみれば本当にネズミさんがコソコソ動き回っていたなんてね。

でも……今の僕の敵なんかじゃない。僕は兄さんを越えて光になれたんだ……あんな奴に負けない。

「インベスに身を売った貴様が統治する世界などろくなものになる気はしないがな」

「そんなことないよ。み~んな僕の好きな人だ。それは素晴らしい世界になる……争いもないし、

お前たちみたいに僕を裏切る奴もいない。入れてくれって言われても君たちはいらないよ」

「……ふん。貴様の統治する世界よりも奴が統治する世界の方が幾分は魅力がありそうだな。変身」

「言ってなよ。変身」

『ソーダ・レモンエナジーアームズ』

『ソーダ・メロンエナジーアームズ』

同時に変身を完了させ、そして同時に駈け出すと僕たちは互いにソニックアローをぶつけあった!

「貴様のことを好きになる奴しかいない世界など機能するはずがない!」

「君こそおかしいよ! 好きな人を集めた世界だからこそこの世界を自由にできるんだ!」

『レモンエナジースカッシュ!』

『メロンエナジースカッシュ!』

「はっ!」

「はぁぁ!」

互いに至近距離でゲネシスドライバーのレバーを押し込むとソニックアローの刃の部分にそれぞれの色のエネルギーが走り、刃の部分が光輝き始めた。

「ぬうあぁぁ!」

「はぁぁぁぁ!」

そして互いにソニックアローを振りぬいた瞬間、僕たちの目の前で凄まじい爆音とともに、

衝撃波が走り、僕たちは全く逆の方向へ吹き飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ドウシタ?』

「…………化け物か……裕也からすればそうだろうな。俺はお前を殺した張本人だ。インベスに成り果てた状態で遭遇したといっても俺は頭の中では一切、お前の可能性は考えなかった……すまない。裕也。

そして俺はその罪を背負いながら戦い続けるといったのに……この様だ。裕也……俺はこの世界を救う。

お前がいたあの世界を! 舞がいるあの世界を! みんながいるあの世界を俺は守る!」

『極アームズ・大・大・大・大・大将軍!』

『バカナッ! コンナジョウキョウデワタシノゲンカクヲヤブルナド!』

「元の世界へ戻るぞ……はあぁぁぁぁぁ!」

無双セイバーを手に取り、地面に突き刺した瞬間! 突き刺した個所から光が漏れ始め、

やがてその光は周囲へと広がり始め、偽りの世界を真実の世界へと戻していく。

その時、俺の肩に手が置かれたような感覚がした。

裕也…………お前のおかげで俺は改めて俺自身の罪と向き合えた……お前がいた世界は俺が護って見せる!

やがて、偽りの世界が真実の世界へと塗り替えられた時、目の前にレデュエの姿はなかった。

「ふぅ……行くか」

変身を解除し、一息ついてからそう呟いて一歩踏み出した瞬間、俺の脚と地面の接着部分から、

ヘルヘイムの植物が一気に繁殖し始め、一瞬にしてコンクリートが見えないレベルにまで植物が繁殖した。

 


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