仮面ライダー鎧武 Another hero   作:kue

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第四十話 狂戦士

「あ、健太」

ゆっくりと歩きながら拠点に向かって歩き続けること約30分。

拠点の入り口で俺を待っていてくれたのか舞が心配そうな表情を浮かべて俺を見てくるが、

俺が持っているメロンロックシードを見て、薄々ながら気づいたのか何も言ってこなかった。

「……舞。お前はこの状況でもあいつを助けたいか」

「………………」

そう尋ねても舞は何も言わなかった。

奴は……光実はもう超えてはならない一線を越えてしまった……もう、ゲネシスドライバーを破壊したところで奴は止まらない……本当にそのすべてを止めない限り、あいつは止まらない。

貴虎さん……あんたができなかったことは俺が命を懸けてやり遂げる。

「やあやあ、三直君」

「……今、お前と楽しく喋れる気分じゃないんだがな」

そういいながら振り返るとそこには半袖短パンのプロフェッサーこと戦極凌馬が小さく笑みを浮かべながら俺に向かって手を小さく振っていた。

沢芽市をこんな状況に陥れた張本人……のこのこと戻ってきやがって。

「何か用か」

「私も非常に悲しいよ。友であった貴虎が死んでしまったんだ。胸が裂かれる思いだ。

私も君と同じ心境だ。沢芽市を救う貴重な戦力が消えてしまったんだ」

「その状況を作り出したのはいったいどこのどいつだ。マスターインテリジェンスシステムでこの町の電子機器をすべて壊し、地獄となったこの町に住民を押し込みやがって」

「まあ、そう怒らないでくれたまえ。今日は戦いに来たんじゃない。提案しに来たんだ」

今にも変身して飛びかかりそうな感情をどうにかして抑え込み、戦極を拠点の中へといれると、

中にいた連中が一気に殺気だったが俺が何も言わずに目で連中に訴えかけると連中も渋々といった様子でそれぞれのドライバーを戻した。

「今回、私はユグドラシルタワー奪還について君たちに提案をと思ってね」

「プロフェッサー。今更、貴方の意見など」

「湊」

戒斗がそう一言いうと湊はまだ言いたそうなことがある表情をしたがとりあえず、下がった。

「今、ユグドラシルタワーには十人ほどの住民が監禁されているだろう。君たちはその住民も助けたい。

そして私はユグドラシルタワーへと戻りたい。さらに戻る道も私は知っている。どうかね?

利害は完ぺきとは言わずともかなりの部分で一致していると思うが」

戦極がそう言うと全員だんまりを決めてしまい、拠点内には変な空気が流れ始めた。

確かに俺たちはユグドラシルタワーに浚われた人達を助けなくてはならない……だが、協力を申し出てきたやつがこの町をこんな状況に陥れた張本人だからな。

「ま、今日にとは言わない。別にいつでもいい……だが、タワーにいる人たちはいつまでもつか」

そう言い残して戦極は拠点から去って行った。

あまりにも重苦しい空気に飽き、俺は一人、屋上へとつながる階段を歩いていき、ドアを開けるとすでに時間帯は夕方へと傾いており、太陽が地平線に沈もうとしていた。

…………滅びの序章みたいな状況でも太陽は平常運転か。

「うっ! ぐぁっ!」

突然、右腕に凄まじい痛みが襲い、あまりの痛みに平衡感覚すら失い、どうにかして屋上の柵をもって、

立ち続けようとするが痛みに耐えきれず、そのまま地面にへたり込んでしまった。

「な、何が……なっ!」

痛みの発端である右腕を見るとそこにあったのは普段から見慣れている腕ではなく、インベスのような真っ白に染まり、爪は相手を切り裂けるほどにまで伸びていた。

が、痛みが治まるとともに徐々にその右腕は姿を消していき、最終的には元の腕に戻った。

「…………明らかに人間のじゃなかった」

「健太? どうしたの?」

さっきの音がしたにも伝わっていたのか心配そうな表情をしている舞と何故かは知らんが仏頂面の戒斗が屋上に姿を現した。

「いや、何もない」

「ふぅ~ん。こんな状況でも夕焼けってきれいね~」

そう言いながら舞が俺の右隣にやってきた。

「ねえ! この町がまた平和になったらみんなでパーティーしようよ!

坂東さんのお店を貸し切っていろんな食材買ってきてさ!」

…………時々、こいつの明るさが羨ましくなる時がある。どんな状況でも決して笑顔を絶やさず、

何か嬉しいことでもあれば子供のように笑う……俺もそんな純粋な子になりたかったもんだな。

「そうだな。その時は社会人として俺が奢ってやる」

「ほんと!? 嘘じゃないよね!?」

「嘘じゃない。平和になってからすぐは難しいが半月もあればその位は貯まる」

「さっすが健太! 楽しみにしてる!」

満面の笑みを浮かべてそう言いながら舞は下へと降りて行った。

あいつのことだ……さっきのことをみんなに言って何を食べるかでも考えるんだろ。

そんなことを思っていると仏頂面の戒斗が俺の隣にやってきた。

腕の包帯…………まだ、治らないのか。

「三直。貴様はやつの提案に乗るのか」

「乗るしかないだろ。あいつの言うとおり、利害は一致している。それに取捨選択しているような時間は俺たちにはない。が、奴がおかしな行動を少しでもすれば」

「その時は潰す。奴の利用価値はそこだけだ」

纏まったな……ユグドラシルタワーに連れ去られた人達を救出し、オーバーロードをすべて倒し、

この世界を救う……もう少しだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「3200円。ん、ちょうど」

「よし。んじゃかえるか」

「舞さん」

僕がそう声をかけると振り向き、そして表情を一変させた。

まあ、仕方がないかな……クズの掃除用にまた、新しいオーバーロードを連れてきてるし。

「何の用だよ!」

なんか吠えてるね……誰だったかな。確かチームバロンとか言う集団の……あぁ、ペコだっけ。

「舞さん。迎えに来ました。ここにいたら危険ですからね」

できるだけの笑みを浮かべながら舞さんの近づいていくとまた、さっきの吠えていたやつが舞さんの前に立ちはだかって、さらにはゲネシスドライバーまで腰に装着していた。

なんで、こいつが……あぁ、そういうことね。

そいつが手に持っているチェリーエナジーロックシードを見て、なんとなくだけどこいつがドライバーを持っている理由が分かった。

おそらく、死んだシドのものを回収してこいつにあてたんだろう。

……でも、戦闘慣れしていないこいつが僕はおろかオーバーロードの一端であるこいつにすら勝てないっていうことが分かっているのに何で戦うんだろうね。

「変身!」

『ロックオン・ソーダ・チェリーエナジーアームズ』

ロックシードを開錠し、ドライバーにセットしてレバーを押し込むと円形のクラックから出てきてあいつの上空に滞空していたアームズが被さり、一瞬でチェリーエナジーの鎧が展開され、

その手にソニックアローが握られた。

……僕が変身するまでもないな。

「シンムグルン」

『リョウカイ』

「えあぁぁぁ!」

振り下ろされてきたソニックアローを背中のひし形みたいな形をしている甲羅で防ぐと腕を下から上へ振り上げ、鋭い爪でシグルドを切り裂くと小さな爆発を起こしながら数歩後ずさった。

やっぱり、戦いなれてない……壁にもなりゃしない。

「くそぉ! 食らえぇ!」

『フン!』

奴が放った赤色の矢を背中の甲羅で再び、防ぐと右肩のあたり蛇のような生物が伸び始め、

シグルドへ向けての威嚇なのか蛇と同じ威嚇を始めた。

へぇ、あれって生きてるんだ。

「この野郎っ! うわっ!」

「ペコ!」

その伸びた蛇は何度もソニックアローで切り裂かれるけど一切、傷などつくことなく逆に奴に巻き付いて、

拘束するとそのまま空中へ持ち上げ、そしてそのまま思いっきり地面にたたきつけた。

「がっ!」

さらに何度も地面に叩き付け、最後は壁に叩き付けて放り投げると変身が解除され、

床に何度もたたきつけられた影響か、額などから血を流した奴が地面に転がった。

馬鹿だね。まだ、実戦で戦いなれていない力で戦うなんて。

「やれ」

「がっ! ああぁぁぁぁぁ!」

僕がそういうとシンムグルンはそのまま踏みつけ始めた。

「ミッチ! もう止めて! ペコが死んじゃう!」

「舞さん。あいつはごみなんですよ? ゴミは掃除しなきゃ……でも、舞さんが僕と一緒にユグドラシルタワーに来てくれるって言ってくれたらやめます」

「分かった! 私ならどこにでも行くからペコを放してあげて!」

「さすが舞さん。その言葉を待ってました。おい」

僕がそういうとシンムグルンは踏みつけるのをやめ、こっちへと戻ってきた。

「じゃ、行きましょうか。舞さん」

僕は彼女の手を取り、ユグドラシルタワーへ向かって歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい! ペコ! しっかりしろ!」

ペコから通信が入り、俺と戒斗、ザックでペコに言われた場所へ行くとドライバーをつけたまま、

額から血を流しているザックが商店街の道路に横たわっていた。

一応、ゲネシスドライバーを使って応戦したみたいだが……ただのインベスじゃないのか。

「舞が……舞が光実にっ!」

「ザック……こいつを頼む」

「あぁ。任せろ! しっかりしろ」

ペコをザックに任せ、俺と戒斗は奴が通ったであろう場所をひたすら走り続けると意外に早く、

舞と光実、そして新たなオーバーロードの姿が見えた。

「舞!」

俺がそう叫び、舞が反応しようとした瞬間に俺たちの間に光実が立ちはだかった。

ゲネシスドライバーを装着し、その手にメロンエナジーロックシードをもって。

「行け」

奴がそういうと舞を抱きかかえるとそのままビルなどを飛び越していきながらどこかへと消えてしまった。

「お前たちが触れて良い人じゃないんだよ。あの人は唯一、この世界で価値がある人間であり、

僕の隣にい続ける人間なんだ……消えてくれよ」

「それ以外は無価値ってか……アダムとイブ気分はさぞかし、良いだろうな」

俺がそういうと奴は額に青筋を立て、俺を睨み付けながらロックシードを開錠し、それを見た俺たちも同時にロックシードを開錠すると空中に三つのアームズが出現した。

悪いがもう、ジンバーで行くような相手じゃない……徹底的に叩き潰す。

「「「変身」」」

『ロックオン・ソーダ・メロンエナジーアームズ』

『ロックオン・ソーダ・レモンエナジーアームズ』

『ソイヤ! カチドキアームズ・いざ出陣! エイエイオー!』

三人同時に変身を終えた直後、それぞれの遠距離での攻撃が直撃し、凄まじい爆音が辺りに響き渡るが、

そんな者全員無視し、己の武器をもって駆け出した。

「えぁぁぁ!」

「はっ!」

「せいっ!」

奴が振り下ろしてきたソニックアローの一撃を俺が無双セイバーで受け止めると戒斗がすれ違いざまに奴の腹部を切り裂き、怯んだところを俺がもう片方の腕でつかんだ火縄大橙DJ銃の一撃を浴びせると、

衝撃に耐えきれずに後ろへと下がるがどこか飄々とした雰囲気は健全のままだった。

「ハハ……ハハハハ」

「「はぁ!」」

火縄大橙DJ銃の側面にあるテーブルをクラッチし、スイッチを90度倒すとホラ貝のような戦極ドライバーの待機音のピッチが早いものへと変わり、引き金を引くと凄まじい速度で小さな火球が銃口からはなたれ、

さらに戒斗が放った黄色い矢も直撃し、いくつもの小さな爆発が鎧の上で起こり、軽く吹き飛んだ。

「ハハハハ……ハハハハハハハハ」

……兄を自らの手でつぶした影響で若干残っていた良心が崩壊し、壊れたか?

「えあぁぁぁぁ!」

「うらっ!」

叫びながら走ってきた奴に向かって火球を一発放って直撃させるがそんなものお構いなしに向かってきて、

ソニックアローを振り下ろしてくるがそれを戒斗が防いだと同時に奴の腹部に蹴りを入れ、

軽く吹き飛ばすがそれでも飄々とした雰囲気は健在だった。

「ハハハハハ……お前たち程度の攻撃じゃ今の僕は止まらないんだよ……この世界は創り直す。

その際に舞さんは僕の隣にいる人なんだ。そして一緒に、永遠に幸せに暮らしていくんだ……その幸せの邪魔なんか……また、お前か。クフフフフフウフフウフフウ! 何度現れたって同じなんだよ!

僕はもうあんたの影じゃなくなったんだ! 邪魔なお前ごとゴミどもを潰してやるよ!」

『ロックオン』

一人で俺たちには見えない何かと言い合った奴がドライバーからメロンエナジーロックシードを取り外し、

ソニックアローに装填したと同時に無双セイバーと火縄大橙DJ銃とドッキングさせ、

一本の剣に変え、カチドキのロックシードを側面にはめ込んだ。

『一・十・百・千・万・億・兆! 無量大数!』

「消えろぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

「はぁぁ!」

奴が放った強大な一撃の矢と俺が横なぎに振るい、刃から放った橙色の斬撃の衝撃波がぶつかり合い、

周囲の椅子や建物の屋根を吹き飛ばすと同時に一番近くにいた俺たち三人までもを大きく吹き飛ばした。

「うあぁぁぁ!」

「おわぁ!」

大きく吹き飛ばされた俺たちはそのままどこにあるかもわからないビルの壁に直撃し、

壁に大きな穴をあけてビル内へと転がり落ちた。

…………奴が壊れたことで抑えていたものが解放されたのか、もしくは奴の何かに充てられたロックシードが本来以上の威力を発揮したのか……面倒なことになったな。

「奴め……もう、何もかもを捨て去り、少しの躊躇すら捨てたようだな」

……あいつはいったい、どこまで落ちていくのやら……光実。




こんにちわ。もうすぐ鎧武も終了です

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