戒斗を拠点まで運び入れ、舞たちに処置を頼んでいる間、俺は考えていた。
もう、取り残された人たちの避難はほぼほぼ完遂されたといってもいいレベルに達している……だが、インベスに連れ去られた人を救出しなければ俺たちの役目は終わらない。
このままここで待っていても仕方がない……どうすれば。
「ねえ、健太」
「どうした?」
「…………これって使えないかな?」
そう言われ、舞に手渡されたのはゲネシスドライバーとチェリーエナジーロックシードだった。
一瞬、なんでこいつがこんなものを持っているのかとも思ったがそういえばシドとの戦いを一番近くで見ていたのはこいつだし、ドライバーとロックシードも近くに落ちていたな。
「貸してみろ」
『チェリーエナジー!』
……この前、開錠できなかったのはただ単にエネルギー切れか。
こんな状況でも小さな希望は出続けるものだな。
「ペコ」
「ん?」
舞からドライバーとロックシードを受け取り、ペコの近くまで行ってその二つを手渡すと、
ペコはこれまでに見たことがないくらいに驚きを顔に表したのと同時にどこか嬉しさを隠し切れない表情も浮かべた。
「ゲネシスドライバーにイニシャライズはない。この状況で戦える奴が増えるのはうれしい。
やってくれるか? ペコ」
「あ、あぁ! 俺も戦う!」
思わぬプレゼントだな……そういえば。
「舞。貴虎さんは」
「あれ? そういえば」
舞が周囲を見渡し、いないのを確認して上に向かうがどうやらいなかったらしくすぐに戻ってきて、
俺の顔を見ながら首を左右に振った。
どういう意味だ……あの人がここから出ていく理由はないはずだが……。
「主任ならやるべきことがあると言って行ったわ」
後ろからそんな声が聞こえ、振り返るとそこにいたのは腕を組んだ状態で壁にもたれている湊だった。
やるべきこと……まさか、光実か。くそ! やっぱり、あいつの裏切りは言うんじゃなかった!
俺は慌てて拠点を抜け出し、ロックビークルを開錠してバイクへと変形させ、自由に戦うことができるほど、広い場所を虱潰しに探し始めた。
貴虎さん! あんたが消えるのは早すぎる!
ユグドラシルタワーでイライラしながら待っているときにパソコンにメールが届き、その中に書かれていた場所へ向かうとそこには腰に戦極ドライバーを装着し、手にはメロンロックシードを持っている兄さんが立っていた。
「光実……何故、裏切ったんだ」
「兄さん……もうあんたの言うとおりに動くのはうんざりなんだよ。僕は昔からあんたの敷いたレールの上ばかりを歩かされてきたんだ。生き方も、将来する仕事も……僕はあんたの影だ。あんたが歩いてきた道をひたすら歩いてきた。でも、もう影に徹する必要はない! 僕は光になる! 価値のある人間とともにこの世界を管理するんだ! 悪いけど兄さん……あんたには光を失ってもらうよ」
「……光実。お前は何も分かっていない。光にはその役目が、闇にもその役目がある。
確かに私は今までお前をレールの上に歩かせてきたかもしれない……だが、それはお前の将来を思ってのことだ……だが、お前にとってそれは迷惑以外の何物でもなかったようだな」
「そうだよ。僕は自分で歩きたかった……」
「だが、奴らの側に着くのだけはやめてくれ。実の弟が人類の敵になど」
「言っただろ。もうあんたに僕の人生は関係ないんだよ!」
『メロンエナジー』
「……すまない。光実」
そう言うと兄さんはポケットからゲネシスドライバーのコアスロットルを取り出すとイニシャライズをされていることを示しているプレートを取り外し、そこへコアスロットルを装着し、
さらにポケットからレモンエナジーのロックシードを取り出した。
「通常のロックシードとエナジーロックシードの同時使用については技術者からも想定はされていたがあのような結果になると言う事は凌馬でも想定外のことだった。光実……オーバーロード側の光ではなく、
三直とともに人類の光になってほしかった……許してくれ」
『メロン』
『レモンエナジー』
「「変身」」
『ミックス! メロンアームズ・天下御免 ジンバーレモン! ハハー!』
『ソーダ・メロンエナジーアームズ』
この瞬間から僕が影から光へと進化する戦いが始まった。
貴虎さん……どこだっ!
「なに!?」
突然、目の前の地面からヘルヘイムの植物が生えると周囲の車に突き刺さり、大きく振るわれ、
車二台が俺に向かって飛んでくるがバイクの進路を変更し、どうにかして直撃はよけるが地面にたたきつけれれた衝撃からの爆風には対応できず、ハンドルを取られ、そのままポリバケツのごみ箱に直撃し、
ゴミだらけになってようやく停車した。
『ハハハッ。ヨクオニアイデスゾ? オウサマキドリクン』
「ふん。水も滴るいい男とはよく言うがゴミも滴るいい男とは言わん。覚えておけ」
『コレハコレハ』
ゴミを退かせながら四つ角の道路を見てみるとそこにヘルヘイムの果実がぶら下がっている槍を持った緑色の体色のオーバーロード―――レデュエがその表情からは読み取れないがニヤニヤしているような雰囲気をまとった状態で立っていた。
「そこを退け。レデュエ。お前がいるということはその先にいるんだろ?」
『フッフッフ。ジャマヲシテアゲナイコトダ。オモシロイジャナイカ。キョウダイ、チノツナガッタカゾクデアルジンブツトコロシアウノハモウスバラシイコトジャナイカ。カンサツシナイカネ?』
「断る。貴様がどかないのなら……その存在ごとこの世界から退かしてやる。変身」
『ソイヤ! カチドキアームズ・いざ・出陣! エイエイオー!』
カチドキロックシードを開錠し、ドライバーに装着してブレードを下すとロックシードが展開され、
上空に浮いていたアームズが俺にかぶさり、一瞬でカチドキの鎧が展開されると同時に腰のホルダーに装着されている無双セイバーを取り外し、握りしめた。
「エアァァァァ!」
『ハァァ!』
互いに得物を握りしめ、同時に駈け出すと同時に俺はトリガーを引っ張って弾丸を装填し、
引き金を引いて三連続で光の弾丸を放つがそのすべてがレデュエの持つ槍によって叩き落され、
横なぎに振るわれた奴の槍と俺の無双セイバーがぶつかり合い、目の前で火花が散った。
『ヌハハハハハ!』
「よっ!」
槍でセイバーがはじかれ、俺の脚めがけて奴の槍が振るわれてくるが右足を後ろへ引くと同時に左足を少し上げて振るわれてくる槍を避け、無双セイバーを奴の顔めがけて振るうがギリギリのところで奴にバック転をされて後ろへと下がられ、無双セイバーは空を切った。
『アブナイアブナイ。ワタシノカオニキズガツクトコロダッタヨ』
「レデュエ。何故、人間をさらったんだ。お前の宣言を見る限り、この世界を征服することがお前たちオーバーロードの最終目的じゃないのか? 人間をさらう意味などないように見えるが」
『マアネ。セイフクナンテイツデモデキル。イマハオウノゴキゲントリサ』
「王のご機嫌取りね…………んな下らない事情で俺たち人類を無茶苦茶にするなよ。
人間をなめていると…………痛い目を見るぞ」
『フルーツバスケット!』
『ロックオープン! 極アームズ・大・大・大・大・大将軍!』
極ロックシードをカチドキロックシードの側面にあるカギ穴に差し込み、回すとカチドキロックシードがさらに展開されると同時に頭上から落ちるようにクラックから出てきたすべてのアーマードライダーのアームズが俺の周囲を回転し始め、俺と一つになったと同時にカチドキの鎧が砕け散り、その下から銀色の鎧が現れた。
『ン~。ゼヒ、ソノチカラトタタカッテミタカッタンダヨ!』
『影松!』
「はぁぁ!」
駆け出すと同時に極ロックシードを弾いて手元に影松を呼び出し、奴の槍とぶつかったと同時に刃がついていないほうで奴を打撃しようとするが同じように奴の槍に防がれた。
『ブドウ龍砲! キウイ撃輪!』
『ヌァァァ!?』
影松を手放すと同時に手元にブドウ龍砲を呼び出し、至近距離から数発連続で奴に直撃させ、
その衝撃で後ろへ下がった奴に呼び出したキウイ撃輪を二つ直撃させ、さらにブドウ龍砲の引き金を引いて奴めがけて光弾を連続で放つが奴の槍に叩き落された。
『コノチカラ……タシカニ、デムシュヲタオシタダケノコトハアル。ダガ!』
「っ! これは!」
奴が槍を地面に突き出したかと思えばそこからヘルヘイムの植物がすさまじい速度で繁殖していき、
俺の周囲を囲むとその距離を縮めてきた。
ヘルヘイムの植物で俺を押し殺そうということか…………植物ごときが俺の邪魔をするな!
「うあぁぁぁぁ!」
『ナニ!? ソノチカラハ!』
『バナスピアー!』
『極スカッシュ!』
「うらぁぁぁ!」
『ヌァ!? コ、コレハッ!? ガァッ!』
全力で叫ぶと鎧から光が発せられたと思った瞬間、俺の周囲を囲んでいたヘルヘイムの植物が一瞬にしてちりとなって消滅し、奴がその光景を見て驚いている一瞬のスキをついてバナスピアーを手元に呼び寄せ、
ブレードを一度おろして奴めがけてバナスピアーを突き出すとバナナの形をしたエネルギー体が出現し、
奴をそのバナナの中に閉じ込めて近くのマンションの壁に激突させるように放り投げた。
『バカナ!? コノチカラハマサシクオウゴンノカジツノ! イヤ、ソレダケデハッ!』
『火縄大橙DJ銃!』
『ロックオン! オレンジチャージ!』
「消えろぉ!」
『フン!』
手元に火縄橙大DJ銃を呼び出し、オレンジロックシードを銃の側面に装着させると銃口にオレンジ色のエネルギーが集約されていき、引き金を引いた直後、すさまじい大きさのエネルギーの球体が奴めがけて放たれるがヘルヘイムの植物によって引き寄せられた車が楯となって奴に直撃しなかった。
『ナルホドネ。ソノチカラヲウケイレルテイルカラキュウソクニシンカシテイルトイウコトカ。
グリンシャ、デュデュオンシュがカテナイワケダ』
「何の話だ」
『ジキニキミニモワカルサ』
そう言い、レデュエはそのままどこかへと飛び去ってしまった。
「……今は奴よりもあの二人だ」
「えあぁぁ!」
「はぁ!」
放たれた矢はまっすぐ兄さん向かって突き進んでいくも兄さんのソニックアローに叩き落され、
振り下ろされてきたのをソニックアローの刃の部分で受け止めるけどすさまじい力が僕にのしかかり、
地面に膝をついた。
「光実! 何故だ! 何故、オーバーロード側に付いたんだ!」
「もうあんたには関係ないだろ! えあぁぁぁぁ!」
叫びながらソニックアローを両手で持って相手のを弾き、弓を振り下ろすけど兄さんの腕に防がれ、
さらにはソニックアローの刃が僕の腹部を横に切り裂き、
その衝撃に耐えきれずに軽く吹き飛んでしまった。
くそっ! なんでだ……ゲネシスドライバーを使っているのに何で僕はあんな奴にも、
兄さんにも敵わないんだ! 何が足りないんだ……僕に何が足りないんだぁぁぁぁぁぁ!
『メロンエナジースカッシュ!』
「うあぁぁぁ!」
『メロンオーレ! ジンバーレモンオーレ!』
『メロンスカッシュ! ジンバーレモンスカッシュ!』
「はぁっ!」
「ぐぁ!」
ゲネシスドライバーのレバーを押し込み、ソニックアローを横なぎに振るって緑色の光の斬撃を放つも、
兄さんも同じように放った衝撃がはぶつかり、斬撃が消滅した瞬間、
上空に飛んでいた兄さんの蹴りをまともに食らい、鎧から小さな爆発を起こしながら吹き飛んだ。
「光実。もう止めろ…………こんなことをして何になる!」
「黙れ! 今まで決められたレールを歩かされ続けてきた僕の気持ちがお前に分かるもんか!
僕は今ようやく自分の足で歩けているんだ! 邪魔をする奴は潰す! 僕は……僕はあの人と一緒に、
この世界で暮らしていくんだぁぁぁぁぁぁぁ!」
『ロックオン! メロンエナジースカッシュ!』
「光実ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
『メロンスカッシュ! ジンバーレモンスカッシュ!』
メロンエナジーロックシードをソニックアローに装填し、弦を引き絞って矢を放つと、
強大な一撃が放たれ、僕に向かって駆け出してくる兄さんめがけて飛んでいく。
消えろぉぉぉぉぉぉぉ!
「はぁぁぁぁぁ!」
「なっ! ぐあぁぁ!」
直撃すると思っていた矢がいとも簡単に叩き落され、緑色に輝いているソニックアローで切り付けられ、
衝撃に耐えきれずに背中から地面に落ちた僕めがけて、ソニックアローが振り下ろされてきた。
僕は…………僕はぁ!
「兄さん!」
「っっ!」
そう呼ぶと兄さんは振り下ろした腕を途中で止めてしまった。
「…………甘いね。えあぁぁぁぁぁ!」
『メロンエナジースカッシュ!』
「ぐぁぁぁぁぁ!」
レバーを押し込み、緑色に輝いているソニックアローの刃で兄さんのベルト部分を全力で横に切ると、
小さな爆発を起こしながら兄さんは吹き飛び、真っ二つに切り裂かれた戦極ドライバーからメロンロックシードとレモンエナジーロックシードが外れ、そのまま兄さんは海へと落ちていった。
……変身が解除されて生身で海に落ちた……上がってこない……。
「…………ハハ……やった……僕は……僕は光になれたんだぁぁぁぁぁぁぁ! アハハハハハハハハハハ!
アハハハハハッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
「うらっ!」
工事用の仕切り版のようなものを蹴り飛ばし、自由に戦える場所の考えられる最後の場所へとたどり着いた俺は乱れた息を整えようともせず、周囲を見渡しながら二人を探した。
その時、何か固いものを踏んだような音が足元から聞こえ、下を見てみるとそこにあったのは貴虎さんが使用していたと思われるメロンロックシードとレモンエナジーロックシード、
そして黒い破片が周囲に大量に落ちていた。
「…………何故だ…………」
一応、鎧武以外にもジンバーは使えるという前提のもとのお話です。
原作設定はわかりませんが。それでは!