「な、なんだ今のは」
「アレガワレラノオウノチカラサ! タタカイヲカチヌキ! ショウシャノミがテニイレラレルカミノカジツトモイエルチエノミヲテニイレタオウノチカラサ!」
知恵の実の力…………すでに神の領域に入っている力だ。まさしく神の果実……シドはこれを狙っていたのか。
ふと、見上げると満足したのかレデュエは俺達に背を向け、立ち去ろうとしていた。
「待て!」
「グリンシャ」
『ブルアァァ!』
レデュエを追いかけようとした瞬間、俺達の目の前にグリンシャと呼ばれた白いオーバーロードインベスが俺達の背後から目の前に飛び込んできて俺達にタックルをかましてくるがそれを戒斗と二人ががかりで受け止め、同時に奴の腹部に蹴りを入れて軽く吹き飛ばした。
そのあとにレデュエの姿を探すがすでに奴の姿はどこにもなかった。
「今はこいつを片付けるぞ!」
「あぁ、そうするか」
『フルーツバスケット!』
『ロックオープン! 極アームズ! 大・大・大・大・大将軍!』
極ロックシードを解錠すると上空に円形のクラックが出現し、そこから全てのアームズが出現し、
俺の周囲を旋回しはじめたかと思えば俺と一つになり、カチドキの鎧が砕け散り、
その下から銀色の鎧が出現した。
『マンゴーパニッシャー!』
『パインアイアン!』
極ロックシードを二回、弾くと目の前にパインアイアンとマンゴーパニッシャーが出現し、
パインアイアンの鎖をマンゴーパニッシャーの持ち手にぐるぐる巻きにして無理やりドッキングさせ、奴が突進してきた瞬間にアイアンを蹴り飛ばした。
『ぐぉ!?』
「もういっちょ!」
『グアァァ!』
奴に直撃し、こちらに帰ってきたアイアンを今度はマンゴーパニッシャーで打ちつけると、
先ほどとは比べ物にならない速度で奴に向かって飛んで行き、直撃すると小さな爆発を起こした。
「さあ、トドメだ。戒斗!」
『レモンエナジースカッシュ!』
「はぁぁ!」
『極スカッシュ!』
「うらぁぁぁ!」
『グアァァァ!』
パインアイアンを上空へ蹴り飛ばすと同時に戒斗が飛びあがり、レバーを押し込んで、
足にエネルギーをまとわせた状態でアイアンを蹴り飛ばすとアイアンの周りを黄色いエネルギーが包み、奴に直撃するとアイアンがパイナップルを模した形へと変化し、奴を閉じ込めた。
そこへ一度、ブレードを降ろし、エネルギーを充填させたマンゴーパニッシャーで牢屋を叩くと、
中にも衝撃が走り、小さな爆発を起こしながら地面に倒れ込み、その直後に大きな爆発が起き、
白いオーバーロードが消滅した。
「やっと消えたか……にしてもあの力」
「まさしく神の力……俺達はとんでもない奴らに戦いを挑んでいるみたいだな」
そう言いながら変身を解除した直後―――――。
『健太!? 聞こえる!?』
耳に付けていた通信機に慌てた様子の舞の声が聞こえてきた。
「聞こえてる。どうした」
『チャッキーとラットと連絡が取れなくなったの!』
「あ、目が覚めた? 二人とも」
タワーに戻る際に下級インベスがチャッキーとラットを担いできていたからとりあえず、
憂さ晴らしに下級インベスを消し、気絶していた二人を元々は兄さんの部屋だった場所に連れてきて、ソファの上に寝かせていたら5分ほどで目を覚ました。
「ミ、ミッチー? ここって」
「ユグドラシルタワーですよ。安心してください。インベスは僕には攻撃してきませんから」
僕は笑みを浮かべながら二人にそう言うと二人はあり得ないと言いたそうな表情を浮かべ、
周囲をキョロキョロと見渡していた。
ま、仕方がないよね……あんな奴がいる場所に長い間いたんだ……洗脳されても仕方がない。
「ミッチー。確か潜入してたって」
「ええ。潜入していました……そして僕はインベスの親玉と話をしました……ほら、
さっきレデュエも言ってたでしょ? 支配下に入れば命は取らないって。
それに僕は人間を管理する役目を貰ったんです。2人は勿論、チームのみんなを僕が守ります。
もちろん、僕には向かう人は別ですけどね」
「何言ってんだよミッチー! それって要は自分が好きな奴だけ助けるってことじゃねえか!」
「違うよ。僕が好きな人だけじゃないよ……僕を好意的に受け入れてくれる人を助けるんだ」
その時、机の上に置いてあるノートパソコンからメールを着信した音が聞こえ、
いったん、二人から離れて画面を開けてメールを確認すると下の階層にいるレデュエから、
メールが来ていて開いてみると写真が添付されており、そこにはドウスル? と書かれていた。
その写真を見てみるとそこには僕も見知った顔の女性が映っていた。
……へぇ。こいつは確かあいつの……中継でこいつを痛めつけるのも良いけどそれだと、
舞さんにも嫌われるからね……ま、少しくらい恐怖は味あわせるか。
僕はキーボードを叩き、インベスに攻撃させずに囲ませたら? という文を打って、
それをレデュエに送った。
「さて、話の続きだけど今のところ助けようと思うのは舞さんだけど他に要望はある?
あ、もちろん2人の家族もここに連れてきてもいいよ?」
舞から2人がいなくなったという連絡を受け、俺一人で周囲を捜索するが2人は見つからず、
2人が向かったはずの場所へ行っても何の手がかりも見つけることができなかった。
あの人間を連れ去っていくインベス……二人もそれに捕まったのか。
周囲を見渡してみると車はひっくり返って火に包まれ、電柱はへし折られ、
道路にはガラスの破片がそこらじゅうに大量にばらまかれており、
歩くたびに破片が砕ける音が聞こえてくる。
「まさに世紀末……誰だ」
そんなことを思った矢先、一瞬ガラスの破片が砕ける音が火に包まれている車の向こう側から聞こえ、声をかけるが向こうは聞こえていないらしく、こっちに顔を出すことはなかった。
「安心しろ。インベスから逃げるんなら俺がそこまで」
そう言いかけた直後に車に隠れていた人物がその姿を現した。
その姿を見た俺は言葉を失い、ただただ目の前に立っている人物の顔を見ていた。
「三直。久しぶりだな」
そこにいたのはボロボロに破けたスーツに黒い布のようなものを巻きつけた貴虎さんだった。
その腰にはゲネシスドライバーではなく、イニシャライズをオミットしたことで、
大量生産された戦極ドライバーをつけ、種子のロックシードをドライバーにはめ込んでいた。
恐らく、メロンエナジーのロックシードとゲネシスドライバーはあいつが所有しているだろう。
「貴虎さん……その格好を見るに散々な目に逢っていたようだが」
「まあな。仲間に裏切られた結果だ……ところで光実は無事か? この町の様子だと、
あまりいい結果にはなっていないみたいだが」
……貴虎さんに光実が裏切り、オーバーロードと行動していることを言うべきか。
「とりあえず、ここで話すのもなんだ。俺達の拠点に行こう」
ロックビークルを解錠し、バイクへと変形させて貴虎さんを後ろに乗せ、拠点へと向かった。
十分ほどバイクを走らせ、拠点へとたどり着き、貴虎さんを中へ案内するとみな、
驚いた様子だったがその中でも湊の驚きようはほかの奴らとは種類が違った。
……大体、想像はつくがな。
「三直。光実はどうした」
「…………そのことで全員に話したいことがある」
そう言うと後ろから肩を引っ張られ、無理やり後ろを振り向かせられるとそこには戒斗と、
湊が若干、不満そうな表情を浮かべて後ろに立っていた。
だが俺は何も言わずに2人をじっと見続けると2人は諦めたように俺の肩から手を離し、
湊は近くのソファに、戒斗はポップコーンメイカーの近くにもたれかかった。
「何? 話したいことって」
「……光実はもう俺達の知っている光実ではない」
そう言うと貴虎さん以外は俺の言っていることが全く理解できない様子だった。
「光実は……奴はもうオーバーロード側の人間だ」
「……な、何言ってんのよ健太! こんな時にそんな冗談」
「冗談なんかじゃない……俺は事実、昨日奴と交戦した」
普段から俺が冗談などを言わないことなど全員が知っている中で全員が冗談と片付けようとしたが、
今の俺の一言と今までの俺の言動で一気に全員の心が揺れ動いたように見えた。
特にその動きが激しいのは同じメンバーだった舞だ。
「いつ……から?」
「俺が変わった辺りからだ」
正確にいえばその時はユグドラシル側についただけに過ぎないが裏切ったということでいえば、
何ら変わりはない……オーバーロード側に寝返ったのは分からないからな。
「やつはもう……ここには戻ってこない。やつは人類の敵であり……倒すべき相手だ」
俺がそう言うと舞は脱力したように地べたにへたり込み、ザックと城乃内は怒りを滲ませ、
凰連、湊、戒斗の三人は感情を出さずにずっと何も言わずに壁にもたれかかっていた。
音一つないガレージから出ると俺はポケットからスマホを取り出し、
未だに機能だけは残っているアプリを使い、ある人物にメッセージを送った。
電波が掌握されている中、届くかは知らんが……。
そのまま俺はサングラスをかけ、ある場所へと徒歩で向かい始めた。
全てを……今まで築きあげてきた人間の関係をすべてリセットしてまでお前はいったい何を求める。
そんなことを考えながら五分ほど歩くと目的の場所にたどり着いた。
そこはつい先日まで工事がおこなわれていたがオーバーロードによる地球侵略が開始されてから、
中断……と言っていいのか分からないがともかく、工事が途中で進まなくなった場所だった。
その時、後ろから砂利を踏む音が聞こえ、振り返ってみるとそこにはスーツを着て、
腰にゲネシスドライバーを装着した光実が立っていた。
「呼び出したかと思えばあんた一人か……説得でもしに来たのか?」
「馬鹿を言うな。昨日言っただろ。俺はお前を殺す覚悟がある……世界を救う上でかつての友が壁として立ちはだかるならば俺はその壁を潰して世界を救う。光実、お前は何をしようとしている」
「お前とは逆のことだよ。お前が元の世界を救うのならば僕は元の世界を潰すんだ。
そしてまた、作り直す。僕が価値のある人間だと思った人たちだけの世界を!
その世界にお前は邪魔だ……舞さんを洗脳する屑はいらないんだよ!」
『メロンエナジー』
以前の奴の姿からは全く想像がつかない狂気に満ちた表情を見ながら俺はサングラスを外して地面に放り投げ、ポケットから戦極ドライバーを取り出して装着し、オレンジとレモンエナジーのロックシードを解錠すると頭上に円形のクラックが開き、そこからオレンジのアームズとレモンエナジーのアームズが出現した。
「「変身」」
『ソーダ・メロンエナジー・アームズ』
『ミックス! オレンジアームズ・花道・ON・ステージ! ジンバーレモン! ハハー!』
奴がレバーを押しこむと同時に俺もブレードを降ろすとロックシードが展開され、
上空に浮遊していたアームズが俺に被さると一瞬で鎧が展開され、右手にソニックアローが収まった。
…………光実。おまえは俺がここで潰す。
「あぁぁぁ!」
「はぁ!」
同時に駆けだしながら矢を放ち続け、そのすべてが真正面から衝突しあって消滅し、
迎撃範囲に奴が入った瞬間、ソニックアローを振り上げると奴が振り下ろしてきたソニックアローとぶつかりあい、目の前で火花が散るがそんなことなど気にも留めず、蹴りを入れようとするが相手の腕に阻まれ、
ソニックアローが突き出されるがそれをギリギリでかわし、そのまま一回転しながら姿勢を低くし、
ソニックアローを振りぬくと奴の腹のあたりを切り裂いた。
「ぐあぁ! ああぁぁぁ!」
「はぁ!」
「うわぁ!」
奴が放ってきた緑色の矢をソニックアローでうまい具合にはじき返し、奴に直撃させると、
そのまま数発連続で矢を放ち、倒れ込んでいる奴にすべて直撃させると小さな爆発が鎧上で起きた。
「たてよ、光実!」
「ぐあぁぁ!」
倒れている光実の首を掴み、無理やり起こしてからソニックアローを全力で振り下ろし、
切り裂くと奴の腹部に膝蹴りを入れ、屈んだところを後頭部にひじ打ちを入れ、
顔を蹴りあげ、大きく吹き飛ばした。
『ロックオン! メロンエナジー!』
「ああぁぁぁぁぁぁぁ!」
『オレンジオーレ! ジンバーレモンオーレ!』
「うらぁぁ!」
「なっ!」
『ロックオン! レモンエナジー!』
「ぐあぁぁ!」
光実が放ってきた強大な緑色の矢をブレードを二回おろし、ソニックアローの刃にエネルギーを充填させた状態で叩き落とし、ソニックアローにレモンエナジーのロックシードをはめ込み、
ブレードを降ろさずに矢を放った。
直撃した光実は直撃したか所を押さえながらも立ちあがろうとするがひざまづいた。
「光実……お前にそのドライバーは必要のないものだ……」
光実のゲネシスドライバーめがけて矢を放とうとした瞬間!
「三直!」
「っ!」
『ちっ』
後ろから戒斗の声が聞こえ、振り返ると目前に緑色の球体のようなものが見え、反射的に姿勢を低くすると球体が俺を通り過ぎていき、近くの壁に着弾した瞬間に爆発をあげ、壁を粉々に吹き飛ばした。
『邪魔をするなよ』
「ぐあぁぁ!」
顔をあげて目の前を見てみると腕のあたりを切り裂かれたのか血をポタポタと地面に垂らしている戒斗と、
緑色のオーバーロードのレデュエの二人が立っていた。
「レデュエ!」
『ふん!』
レデュエめがけて矢を放つがどこからともなく生えてきたヘルヘイムの植物に遮られ、
直後に後ろを振り返ってみるとそこには既に光実の姿はなかった。
逃げたか…………。
俺は負傷した戒斗を担ぎ、拠点へと戻った。
キャリー・ローダー……連載にしてみようかな?
考え中ですが……さて、ジンバーメロンをどうやって矛盾なく出すか……考えとこ。