仮面ライダー鎧武 Another hero   作:kue

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第三十七話  王の力

「大丈夫なの? 健太」

「あぁ、少し疲れただけだ。気にするな」

翌日の朝、俺はガレージに置かれている黒いソファに横になりながら休憩していた。

どうも最近、おかしなことばかりが続く……インベスの気配を察知できたり、五感……おもに、

嗅覚だったり、聴覚だったりが以前と比べてかなり良くなっている気がする。

それにアーマードライダーの力も上がっていることも気になる。

「避難状況はどうかしら?」

「問題ない。ユグドラシルタワー周辺の住民はすでに完了している。後は住民を外へ誘導するだけだ」

「流石はムッシュバナーヌとオランジーナの坊やね。私たちの方もほぼほぼ完了しているわ」

「ところでミッチー最近見ないけど」

「やつは……」

舞がそのことを話し、戒斗が真実を話そうとしたので眼でそのことは言うなと、

戒斗にいうとそこから先は何も言わずにコーヒーを再び飲み始めた。

このメンバーの中で光実の謀反を知っているのは湊と戒斗、そして俺だけ。

あとのメンバーはまだ、このチームの一員だと思っている……いつ、話すべきか。

その時、ガレージのドアが開いた音がし、そちらの方を向くと今までにしてきたことなど忘れたかのように何食わぬ顔でガレージの中へ入ってくる光実の姿があった。

「ミッチー! どこ行ってたの!?」

「すみません。今まで一人でユグドラシルタワーに入って調べていました」

舞やチャッキー達は光実の帰還に喜ぶが俺達三人だけは疑いのまなざしを向けていた。

一体何のためにのこのこと帰ってきたんだ……。

が、こんなところで騒ぎを起こせば混乱を招く……ここは何も言わないのがいいか。

「タワーはもう完全にあいつらの手に落ちました。ヘルヘイムの森の植物に覆われ、

インベス達が大量にいました……それと敵の親玉も」

笑みを浮かべながら舞たちと話をしていく光実だが浮かべているその笑みは無理やり、

作ったもののようでさっきからしきりにチラチラと周りを見渡している。

今更気づいたのか……すでにここが自分なしで成り立っていることに。

そのまま数分ほどしゃべり続け、光実は再び潜入捜査と偽り、ガレージから出て行った。

「でも、よかった~。ミッチーが無事で。ねえ、健太」

「……そ」

直後、突然勝手にテレビの電源がつき、映像が映し出されたかと思えば画面にデカデカと、

緑色の体色をしたオーバーロードインベスが現れた。

『ジンルイノショクン。ワタシハインベスのリーダーのレデュエダ。キョウハオシラセガアル。

イマカライチネンイナイニコノチキュウヲワレワレガセンキョスル。ソシテ、イマカラ、

キミタチノモトニムカエヲヨコス。セイゼイニゲルトイイヨ』

その言葉を最後にテレビの画面は砂嵐に包まれた。

「ふざけやがって!」

「こら! 待ちなさい!」

先ほどの放送を聞いて怒り心頭のザックがガレージのドアを蹴り開け、出ていくとそのあとを追って凰連、

城乃内も次々とガレージから出て行った。

「ねえ、さっき言ってた迎えって何だろ」

「さあな……ただあまり嫌な予感はしない。湊。あんたはここに残ってみんなを頼む」

「ええ、任せて」

「戒斗。行くぞ」

そう言うと戒斗は普段通りのしかめっ面を浮かべながらも不平・不満を一つも言わずに、

俺と一緒にガレージを出て、外に置いてあったロックビークルにまたがり、

ユグドラシルタワーへと向かい、バイクを走らせた。

「っっ!」

「っ! いきなり止まるな!」

が、バイクを走らせた数秒後にバイクを急停車させ、後ろから戒斗にそう怒鳴られるがヘルメットを外し、

目の前を見続けていると戒斗も前を向いた。

「離してよ!」

どんな理由かは知らないが複数の下級インベスや上級インベス達が一般市民たちが集まっている避難所を襲撃し、人々を担いだりしながらどこかへと連れて行こうとしていた。

これがレデュエとかいう奴が言っていた迎えか……。

「「変身!」」

『ソイヤ! オレンジアームズ! 花道・ON・ステージ!』

『ソーダ! レモンエナジーアームズ』

バイクから降りて同時に変身を完了させ、連れて行こうとしていたインベス達を武装で切り裂き、

一般市民を救出しながら避難所を襲撃しているインベス達を消していく。

「なぜ、奴らは人間を」

「さあな。ただ、あんまりいい予感はしない」

『オレンジスカッシュ!』

『ロックオン・レモンエナジー!』

「「はぁ!」」

ブレードを一度下し、エネルギーが充てんされた大橙丸で近くにいたインベス達を切り裂き、

戒斗のソニックアローから放たれた黄色の矢が逃げようとしていた複数のインベスを貫通し、

連続した爆発をあげてインベスを消滅させた。

「この近くに避難所はあったか?」

「…………ある。一か所だけな」

戒斗がそう言った直後、向こうのほうから凄まじい爆音が鳴り響いた。

それを聞いた俺達はそのまま走ってその爆音が響いたか所へと向かうと小学校の体育館をインベスと牛が二足歩行しているような恰好の白い体色のインベスが襲撃していた。

出口から出てきた下級インベスはどれも人を担いでいた。

「健太!」

「あ、姉貴!」

最後に出てきたインベスに担がれた姉貴の姿見え、すぐさまそのインベスを切り裂こうとするが、

白い体色のインベスが俺が振り下ろした無双セイバーを腕を使わずに自らの肉体だけで受け止め、

そのまま軽く蹴りを入れられるが想像以上に衝撃が走り、そのまま軽く吹き飛ばされてしまった。

「なるほど。怪力ってか……戒斗! こいつは俺がやる!」

『ミックス! ジンバーチェリー! ハハー!』

戒斗に連れ去られかけている人たちを任せ、ジンバーチェリーへと姿を変えた直後に、

白い体色のインベスが俺に向かって突っ込んでくるがそれを高速移動でかわし、

奴の背中を切り裂き、矢を数発放つが全てその硬い肉体にはじかれてしまった。

「お姉ちゃん!」

「っ! おい姉貴! 邪魔だ退け!」

後ろから男の子の泣き叫ぶ声が聞こえ、振り返ると下級インベスに担がれている姉貴の姿見え、

すぐさまそちらへ向かおうとするが俺の目の前に牛が立ちはだかり、俺に突進をしてきた。

「健太! その子をお願い! 絶対に守って!」

「おい! 姉貴! 姉貴!」

牛を何とかして退かそうとするが凄まじい力で押さえつけられ、やっとのことで振り払ったころには、

既に姉貴を担いだインベスの姿はどこにもなかった。

『ワレワレノジャマヲスルナ。ホロビユクサルガ』

「……オーバーロード……お前たちこそ邪魔だ。俺達が平和に暮らすこの世界に!」

『ソイヤ! カチドキアームズ! いざ出陣! エイエイオー!』

ソニックアローを投げ捨てカチドキのロックシードを解錠すると俺の頭上にアームズが出現し、

ドライバーにはめ込んでブレードを降ろし、ロックシードを展開すると鎧が俺に被さり、

ジンバーチェリーからカチドキアームズへと姿を変えた。

『ブルアァァ!』

「うらぁ!」

突っ込んできた牛を止めるがその凄まじい力でズルズルと後ろに押されていくが背後のビルの壁を蹴り、

奴の両肩を掴んで奴の後ろへと飛びこみ、背中にある二つの旗をつかみ、奴を切り裂き、

地面に突き刺すとそこから炎が噴き出し、奴を空中へと浮かびあがらせ、そこへ蹴りを加えると、

小さな爆発が起き、奴を軽く吹き飛ばした。

『グルアァァァ!』

「はぁぁ!」

奴が叫び、再び俺に突っ込んでこようとするがそこへ俺の背後から黄色の矢が飛んできて、

奴の腹部にあたり、軽く吹き飛ばした。

「行くぞ、三直!」

「あぁ!」

腰にぶら下がっている火縄橙橙DJ銃と無双セイバーをドッキングさせ、一本の刀に変形させ、

戒斗とともに牛へ振り下ろすが奴の硬い肉体に阻まれ、そのまま二人して奴の突進で後ろへと大きく引きずられ、壁に激突し、壁と奴に挟まれた俺たちにさらに頭突きがくわえられていく。

「こんの! 猪野郎が!」

『グオォォォ!』

無双セイバーのドッキングを解除し、トリガーを引いて至近距離から奴の腹部へ、

五発の光弾を直撃させて体勢を崩し、戒斗と同時に奴へ蹴りを食らわせ、大きく吹き飛ばした。

「トドメだ」

『ロックオン! バナナチャージ!』

「はぁぁぁ!」

『グオォォ!? ナンダコレハ!?』

戒斗がソニックアローにバナナロックシードを装填し、それを地面に突き立てるとその場所から、

無数のバナナのエネルギー体が生え、牛へ直撃するとそれが覆いかぶさって黄色い牢獄を作り出し、

奴を閉じ込めた。

『ロックオン! カチドキチャージ!』

「らぁぁ!」

そこへ、俺が火縄橙橙DJ銃にカチドキロックシードをはめ込み、銃口に巨大な火球を作り出し、

引き金を引くと銃口から巨大な火球を奴に向かって放たれ、奴の鋼鉄レベルの固い肉体をも無視して、

直撃と同時に爆発した。

「ふぅ……あ?」

爆風が消え去ると緑色のツタのようなものが牛を覆っており、

ツタが消えるとそこから煙を出した牛が現れ、そのまま地面に倒れ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ワルイネエ。タオサレルトコマルンダヨ」

「っっ! お前はっ!」

声が聞こえ、そちらの方を向くと緑色の体色をしたオーバーロードインベス―――レデュエが杖を持ち、

建物の二階部分から俺達を見下ろしていた。

「ドウセナラデムシュヲタオシタチカラヲミタカッタンダケドネ。フフフフッ」

「お前たちは何が目的だ」

「ソウダネェ……カンケツニイウナラバネンリョウアツメカナ?」

「貴様、ふざけるな!」

戒斗がレデュエの言ったことに怒り、叫びながら奴に向かって矢を放つがレデュエは軽く、

ヒョイッとジャンプして戒斗が放った矢を避けると建物を大きく飛び越えた。

俺達もそのあとを追いかけると坂道の上に奴が立っていた。

「イイノカイ? ワタシヲオイカケテ」

「どういう」

『健太! 聞こえる!?』

その時、通信機から慌てた様子の舞の大きな声が響き渡った。

「どうした」

『全世界のミサイル基地から沢芽市に向かって軍事用ミサイルが大量に発射されたわ!』

「っっ! なんだと!?」

湊の説明を聞き、俺達は一瞬で理解した。

恐らくさっきのレデュエの宣戦布告にも似た放送は全世界にも発信されており、その放送を見た世界各国の首脳陣はこの沢芽市ごとレデュエを滅ぼそうと軍事用ミサイルを発射した。

今までユグドラシルタワーがやってきたことを今度は世界各国クラスにまで広げただけか!

「ハハハハハハハッ! キミタチハミステラレタノサ! ドウゾクカラネェ!

アハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

どうすればいい……いくらアーマードライダーの力があるとはいえ全てのミサイルを着弾する前に破壊することなどほぼ不可能な話だ……どうすれば。

その時、腰にぶら下げている極ロックシードが勝手に揺れたかと思えば輝きだし、

ロックシードから一筋の光がタワーの最上階へと伸びた。

その光が伸びた先を見てみるとわずかだかが人のような存在が立っているように見えた。

「三直! 伏せろ!」

戒斗にいわれ、顔を上げたと同時に視界に大量のミサイルの姿が見え、

俺も伏せようとした瞬間、どこかからか凄まじい衝撃が走った。

「くっ! いったい何が……これは」

衝撃をやりすごし、顔をあげた瞬間、目の前には空中でその動きを止めている大量の軍事用ミサイルの姿が見え、再び衝撃が俺達を襲いかかったかと思えば一瞬にしてミサイルがバラバラに分解され、

この世から消え去ったかのようにその姿を一瞬で消し去った。

「っ! ミサイルが」

「あの一瞬で一体何が」

「アハハハハハハ! ミヨ! これがワレワレノオウノチカラダ! ハハハハハハ!」

突然のことに呆然として何もしゃべることができない俺達とは対照的にレデュエは腹の底から笑い、

ミサイルが消え去った青空を眺めていた。




こんにちわ。もうすぐ夏休みが終了する

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