仮面ライダー鎧武 Another hero   作:kue

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第三十五話 極

バイクを走らせ続け、ユグドラシルタワーの近くに差し掛かると向こうのほうにすでに、

インベスと戦闘を開始しているのかすべてのアーマードライダーが円陣を組んで、

向かってくるインベス達を最小限の動きだけで迎撃していた。

「っらぁ!」

「三直!」

戒斗に飛びかかろうとしていたインベスをバイクで横から突っ込み、吹き飛ばし、

バイクに乗ったまま弦を引絞って矢を一撃、お見舞いしてやると直撃し、

小さな爆発をあげてインベスは消滅した。

「なるほど。お前が纏めたのか。この難しい奴らを」

「なんのことだ」

……自覚していないタイプか。こいつは人を引き付ける力がある。

「分かっていないならいい……さっさとこいつらを片付けるぞ」

「あぁ。行くぞ!」

戒斗のその一声ですべてのアーマードライダーが己の武器を持ってインベス達を迎撃していく。

俺たちではなく周りの一般人へ向かおうとする上級インベス達は俺と戒斗、

そしてピーチが放った矢で消滅させ、飛びかかってくる奴らは弓の刃で切り裂いていく。

なるほど……確かにアーマードライダーで各々、戦うよりも円陣を組んだ方が最小限の動きだけでインベスと対峙できるし、無駄な消費もすることはない。

『オレンジオーレ! ジンバーレモンオーレ!』

『レモンエナジースカッシュ!』

『ピーチエナジ―スカッシュ!』

『ドングリスカッシュ!』

『クルミスカッシュ!』

『ドリアンオーレ!』

俺は二回、ブレードを降ろすと弓の刃に光が走って行き、弓を真横に振るうと、

横一直線に黄色の斬撃の衝撃波が放たれ、俺たちから逃げようとしていたインベスを複数体、

一気に真横に切り裂き、消滅させた。

ほかの連中のほうを見るとすでにインベスの姿は見当たらなかった。

「お、終わった~」

「まだだ……まだ本命が」

そこまで言いかけた直後!

『ウオァァァァァァ!』

突然、円陣を組んでいた俺たちの中心から溶岩のようなものが噴き出したかと思えば、

地面に穴が開き、そこから以前見た姿とは少し違った姿をしている赤いオーバーロードが現れた。

肩から二本の青い角のようなものが飛び出しており、持っている刀も刀身に棘のようなものが、

無数に生え、足の踵からも先端が尖った角のようなものが生えていた。

「くそ! やはりこいつに時間を与えたのが間違いだった。こいつ、

ヘルヘイムの果実を食らって、この前よりも遥かに強くなっているぞ!」

『かかってこい、猿ども。すべて、この俺が潰してやる!』

「先手必勝!」

そう言いながら城乃内が小さなハンマーを片手に後ろからオーバーロードへ飛びかかっていくが、

奴が後ろを振り返ったと同時に振るわれた刀が直撃し、火花を散らせながら吹き飛ばされた。

「こんの! よくもワテクシの大切な弟子を!」

「一人で行くな! 同時に行くぞ!」

戒斗の言葉通り、湊と凰連が己の武器をオーバーロードめがけて振り下ろし、

奴に直撃するが火花が散っただけで奴自身は何もダメージなどおっていないように見えた。

『ハァァァ!』

「うあぁ!」

「うぉぉ!」

奴の両肩の角から電撃のようなものが周囲にまき散らされ、至近距離にいた二人はもちろん、

離れた所にいた俺たちにまで電流が流れ込んできて、地面に膝をついた。

『フハハハハハハ! どうした! この程度か!』

「だったら!」

『レモンエナジースカッシュ!』

『オレンジスカッシュ! ジンバーレモンスカッシュ!』

『クルミオーレ!』

「「はぁぁぁぁぁぁ!」」

ザックが二度、ブレードを降ろした後に光球を腕に装備している武器から何発も放ち、

俺と戒斗が上空へ跳躍し、奴めがけて蹴りを入れようとするがオーバーロードはザックが放った光球を片腕ですべて叩き落とし、俺たちの蹴りを武器も何も使わず、己の体だけで受け止めた。

バカなっ! 蹴りを体で受け止めただと!?

『ヌアァァァァァ!』

「がぁ!」

「ぐぁ!」

奴が叫んだ瞬間、奴の全身から炎が噴き出し、至近距離にいた俺達はその噴き出した炎をまともに食らい、

大きく吹き飛ばされて近くの建物の壁に叩きつけられた。

なんて力だ……元から強大な力を持っている上にヘルヘイムの果実を食らったことでさらなる次元の強さを手に入れたとわな……くそっ! あの時に邪魔さえなければ!

「おい、三直! あのカチドキとか言うロックシードはどうした!?」

「……もうない」

そう言うと戒斗は舌打ちを一度するが再び立ち上がり、オーバーロードへと向かっていった。

……例えカチドキがなくても奴を倒さなきゃならないんだ……絶対に倒れねえ。

「三直! 今だ!」

そんな声が聞こえ、オーバーロードのほうを向くと俺以外のアーマードライダーがオーバーロードにしがみつくようにして動きを止めていた。

『オレンジスカッシュ! ジンバーレモンスカッシュ!』

「ママぁぁぁぁぁ!」

ブレードを一度下し、飛びあがろうとしたその時に叫び声が聞こえ、一瞬だけ、

そちらのほうを向くと逃げ遅れたのか、それとも逃げている最中に母親と逸れてしまったのか、

小学生くらいの男の子が泣き叫びながらフラフラと歩いていた。

『邪魔だぁぁぁぁぁぁ!』

視線を元へ戻すと奴にしがみ付いていたアーマードライダーが吹き飛ばされ、

奴の周囲にいくつもの火球が浮かび上がり、奴が腕を横に振った瞬間、

その火球が辺りに放たれた。

「っっ!」

放たれてきた火球を凰連が棘が刀身に無数に生えている二本の刀で弾くが、

その火球が軌道を変え、泣き叫んでいる少年に向かってまっすぐ突き進んでいた。

「くそぉぉぉぉ!」

俺は弓を投げ捨てて少年の前に出るように飛び出し、火球を己の身に受けた。

「ぐあぁぁ!」

火球をもろに食らい、地面に倒れ込んだ俺は首だけを動かして少年のほうを見ると、

さっきの少年に怪我らしきものは見当たらず、目の前で起きた爆発を見たせいなのか気を失い、

地面に横たわっていた。

よかった……。

『ハハハハハハハハ! バカめ! 俺だけに集中していれば傷くらいは負わせられたものを』

「余計な御世話だ……俺が戦う理由はお前を倒すためじゃない……これ以上の犠牲を出さず、

誰かの幸せを潰させないために戦っているんだ……あの少年にだって幸せはある」

『そんなちっぽけなものを守って何になる! 最後に頼れるのは己の力のみ!

ちっぽけなものなど最後には足枷となり、邪魔なものになるごみくずだ!』

「違う! 確かに自分の力は頼れるだろうな! 結果がお前の姿だ! 

力をふるい、力を持たない奴を潰す……俺たちが……力を持った奴がするべきことは力を持たず、

己の力で戦うことのできない人たちの代わりに戦い、それらを守ることだ!

俺達はお前たちとは違う!」

「そうだ…………お前みたいなやつにこの街は潰させない!」

城乃内がそう叫びながら立ち上がるとほかの連中たちも痛む体に鞭を打ち、

己の武器を持って立ち上がり、オーバーロードをその視界に入れた。

『何故だ! 何故、立ち上がる! 滅び行くだけのサルにいったい何があるというのだ!』

「俺たちは滅び行くだけの猿なんかじゃない……人間だ」

『ヌァ!?』

俺がそう言った直後、砕け散ったはずのカチドキのロックシードと神のロックシード、

そして俺が所有しているすべてのロックシードが共鳴し合うように輝きだしたかと思えば、

意思があるように俺から離れ、オーバーロードに体当たりするように奴にぶつかり、

俺たちから距離をあけるように奴を吹き飛ばした。

そして、神の果実とカチドキのロックシードを除いた空中に浮遊している全てのロックシードから一筋の光がカチドキに注がれ始め、数秒ほど経過したときに大きな穴があいていたカチドキのロックシードが徐々に修復されていき、一分も経たないうちに完全に修復され、その二つが俺の手元に返ってきた。

……舞には感謝しないとな。

「……………さあ、カチドキを上げるぞ」

『ソイヤ! カチドキアームズ・いざ・出陣! エイエイオー!』

カチドキのロックシードを解錠すると頭上に円形にクラックが開き、そこからカチドキのアームズが出てくると、俺の頭上で浮遊し、ブレードを降ろして錠前を展開すると頭上に浮いていたアームズが俺に被さり、

カチドキの鎧が一瞬で展開された。

『サルごときが!』

「ふん!」

奴が放ってきた火球を片腕で受け止めようとするが腕に当たった瞬間に爆発し、カチドキの鎧に火が移り、

俺の全身を炎が燃やすが熱さなど全く感じず、それどころかどこからともなく力があふれ出てきた。

「俺はこの世界を救う……お前たちなんかに……この世界を滅ぼさせたりさせない!」

『フルーツバスケット!』

『何!? グアァア!』

神のロックシードを解錠するとロックシードから衝撃波のようなものが放たれると同時に、

鍵のような突起物が出て、鎧に移っていた火が一瞬にして消えたかと思えば、

上空にいくつもの円形のクラックが開き、そこからアーマードライダーの全てのアームズが出現し、

オーバーロードに連続で体当たりをかまし、軽く吹き飛ばした。

そしてドライバーから光が漏れだしたかと思えばカチドキ・ロックシードの丁度、真横のあたりに鍵穴のような穴が開いた区切り板のようなものが出現した。

「行くぞ」

『ロックオープン! 極アームズ! 大・大・大・大・大将軍! 大・大・大・大・大将軍!』

神のロックシードから出てきた鍵のようなものを区切り板にある鍵穴のような場所に差し込み、

鍵を開けるように差し込んだロックシードを回すと自動的に閉じていたカチドキ・ロックシードが展開されると同時に差し込んだロックシードも展開され、俺の周囲を回るように浮遊していたアーマードライダーのアームズたちが俺と一つになり、カチドキの鎧があたりへ放たれ、新たな鎧が生まれた。

…………これまた随分とカラーチェンジをしたものだ。

オレンジ色だった鎧が全て銀色の鎧へと生まれ変わっており、その鎧にはバナナやメロン、

ブドウといったフルーツの模様が描かれていた。

『フン! 今更変わろうが俺の敵ではない!』

『大橙丸!』

「はぁぁ!」

『グァァァ!』

極のロックシードを一度、目の前に捻るとその音声とともにオレンジアームズでの武装である湾曲したオレンジ色の刀が俺の手元に飛んできた。

その刀を握り締め、奴が振り下ろしてきた刀を弾き、隙ができた奴を二度切り裂き、

さらに胸を蹴って、軽く吹き飛ばした。

……カチドキよりも動きやすい……それに力が断然違う!

『だったら! ヌァァァア!』

『メロンディフェンダー!』

『ブドウ龍砲!』

「はぁ!」

『グアァ!』

奴が両肩から放ってきた電流をメロンディフェンダーを呼び出してそれで防いでいる間にブドウ龍砲を呼び出し、電流をメロンディフェンダーで弾き返すと同時に引き金を引くと、

紫色の弾丸が放たれ、奴に直撃して小さな爆発を連続で上げた。

『バナスピアー!』

「えあぁぁ!」

奴に向かって飛びかかりながらバナスピアーを手元に呼び出し、飛びかかった勢いのまま、

槍で突き刺し、そのまま連続で回転しながら奴を切り裂き、

腹部に思いっきり突き刺すと奴は軽く吹き飛んだ。

『グゥ! あり得ん……滅び行くだけのサルがぁぁぁ!』

『ドンカチ!』

「おらぁぁぁぁぁ!」

『グアァァ!』

奴は自分の掌の上にありったけの炎を集めて巨大な火球を作り出すが俺は手元にドンカチを呼び寄せ、バットでボールを打つかのような動作で、ハンマーを用いて向かってくる巨大な火球を相手にはじき返すと、火球がオーバーロードに直撃し、大きな爆発をあげて吹き飛ばした。

「これで終わりだ!」

『バナスピアー!』

『極スカッシュ!』

「はぁぁ!」

『ヌアァァァ!?』

ブレードを一度降ろし、バナスピアーを地面に突き刺すと奴の周囲の地面からバナナの形をしたオーラが次々と突き出してきたかと思えば奴に突き刺さって動きを封じ込めた。

『み、認めん! 滅び行くだけのサルにこの俺が!』

『無双セイバー! 火縄大橙DJ銃!』

『極オーレ!』

極ロックシードを二回捻り、手元にトガー付きの刀とカチドキの銃を手元に呼び寄せ、

それらをドッキングさせて新たな刀にした後、ブレードを二回おろすと刀から莫大な炎が噴き出した。

「えあぁぁぁぁ!」

『グアァァァァ! サル……アァァァァァァァァ!』

バナナのオーラで拘束されている奴を噴き出している炎によって刀身の長さが伸びている刀をバツ印を描くようにふるい、十字に奴を切り裂くと奴は叫びを上げながら全身から小さな爆発をあげ、

そのまま背中から地面に倒れた瞬間、ひときわ大きな爆発をあげて消滅した。

「す、すげえ」

「あのオーバーロードを圧倒するアームズ……いったいどこで」

…………これが俺の力…………。




一応……王道っぽいんですが失敗でしたかね?
自分的にはこの世界を救おうとする気持ちに反応して……っていう感じです。

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