仮面ライダー鎧武 Another hero   作:kue

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第三十二話  入口

「是非とも君たちの力を貸してほしい」

そう言う戦極だが俺たちはその言葉を全く信じておらず、その手は何があっても、

すぐに変身できるようにロックシードを握っている。

「まあまあ、そう警戒しないでくれたまえ。話は車の中といこうじゃないか」

そう言い、奴らが道を開けたかと思うと工場の前に黒塗りのリムジンが停車しており、

護衛らしき黒影が武器ももたずに扉を開けて待っていた。

まあ、それはそれで凄い光景なんだが……武器ももたずか。

俺は戒斗と一瞬だけ目を合わせ、そのリムジンの中へとはいって行った。

俺たちが入ったのを確認すると戦極と秘書も乗り込み、変身を解除した黒影が運転席に座り、

リムジンがゆっくりと動き始めた。

「随分と待遇が違うじゃないか。どういう心変わりだ」

「まあ、そう言わないでくれよ三直君。ま、とにかくゆっくりしてくれたまえ」

「ゆっくりできるならとうにしている……話は」

「……単刀直入に言おう。シドが裏切った」

……まあ、あいつがやりそうなことには間違いないが何故、今このタイミングで裏切ったんだ。

確かに奴はゲネシスドライバーにエナジーロックシードを手に入れたがあいつだけで、

何か大きなことをできるわけでもないだろ。

それにまだこのタイミングではユグドラシルの下にいたほうが安全に動けると思うんだが。

「まさか、シドの討伐か?」

「その通りよ。もちろん、タダでとは言わないわ」

そう言うと秘書は封筒をひと袋、俺に渡してきた。

それを受け取り、中身を見てみると万札の束が二つほど、ぎゅうぎゅう詰めにして入れられていた。

「シドはすべてのロックビークルを破壊し、我々が保持していた人工クラックも壊したわ。

そのせいでヘルヘイムに逃げたシドを追いかけられない。

だからロックビークルを持っている貴方達に依頼したのよ」

別にこんな一般人の俺なんかに頼むよりも本物の傭兵さんにゲネシスドライバーと、

エナジーロックシードを渡して依頼でもすれば一番、確実に近い方法だと思うんだがな。

あいつは何者よりもまず依頼を遂行するが俺だったらこの金だけ持って逃げるかもしれないのに。

「やってくれるかい?」

「……ひとつ聞きたい。何故、貴虎さんに頼まない」

そう言うと二人して急に黙り込んでしまった。

シドが裏切ったということはユグドラシルのメンバーの中心が一人いなくなったというわけで、

かなりの非常事態のはず。普通だったら主任の地位にある貴虎さんと秘書に頼めば、

あとは時間さえ立つのを待てばシドなど容易に捕獲できるはずだ。

そう考えていると車が停止し、扉が開けられたのでとりあえず外へ出ると、

目の前にユグドラシルタワーの正面玄関が見えた。

「じゃ、行こうか」

戒斗と秘書、戦極が中へ入ったのを追いかけるように俺も中へはいり、

三人が前を向いているすきに受付へと俺は歩いて行った。

「すみません」

「はい?」

「貴虎という社員は今日はいますか?」

「貴虎……ですか? えっと……そのような名前の社員はおりませんが」

「……どうも」

受付嬢の受け答えから表情を観察していたが特段、嘘をついている様子もなく、

社員名簿を調べていたから急遽、受付嬢に動かされたのか最近、入社したのか。

まあ、こんな中途半端な時期の入社はこんな大企業じゃあまり考えられないが。

もしくはロックシードに関する部門自体が一般社員には知らされていないのか……。

シドが裏切った件といい貴虎さんの名前が消えているといい……どうやら、

何か大きなことが起きているらしい。

そう考えながら三人を追いかけていき、エレベーターの中へと入ると扉が閉じ、

エレベーターが上へと向かって動き始めた。

「さっき、受付嬢と何を話してたのかしら?」

「別に。男だったらナンパの一つくらいするだろ。なあ、戒……戦極凌馬」

「おい。何故、俺を飛ばした」

戒斗が俺に詰め寄ると同時にエレベーターの扉が開いたので質問には答えず、

そのまま戦極と秘書について行った。

なんかあいつ、女には興味なさげだからな……これはまた。

二人に案内された場所は以前、ヘルヘイムの森にあるキャンプ地からタワー最上部へ、

抜け出れたクラックがある大きなホールのような場所だが、今は機材の破片などが散乱していた。

ふと、周囲を見渡した時に見知った顔が一瞬視界に入り、思わずそちらを二度見すると、

そこにいたのは光実だった。

「あぁ、彼も呼んだんだよ。貴重な戦力だ」

俺的にはこいつよりも凰連を呼んだほうがさらに戦力は上がると思うんだがな。

「さて、返事のほうはどうかな? やってくれるかい?」

「俺の知ったことではないが……シドにオーバーロードを倒されるのは困る。

オーバーロードは俺が倒す……そしてその次に貴様だ。三直」

「光実君。君は?」

「僕は構いません。シドが暴れたせいでインベスがこっちに流れてきても困りますし」

「君は?」

…………どうするべきか。貴虎さんの名前がこの会社から抹消されているのも気になるし、

シドがオーバーロードを倒したせいでこっちの世界に何らかの影響を与えられるのも困る。

かといってこいつらの要望どおりにシドを倒せば得をするのはこいつらのほうだ……が、

ここは要望どおりに動くと同時に探ったほうがよさそうかもな。

何故、シドがこのタイミングで裏切ったのかも気になる。

「分かった。だが、金はいらん。その代り自由に行動させてほしい」

「それは構わないよ。シドを始末、もしくは捕獲してこっちに連れてきてくれるならね」

「了解した。戒斗、お前もそうだろ」

「貴様と組むのはもうごめんだ」

そう言って、戒斗は腰にドライバーを装着した状態でこの大ホールから出て行った。

できれば俺も一人で行動したいところだがそうすると光実を疑っていることが、

バレてしまうかもしれないので俺は光実とともにいったん、タワーから出ると、

人気が少なく、広い場所まで行った。

「「変身」」

『ハイー! ブドウアームズ・龍砲・ハッハッハ!』

『ソイヤ! オレンジアームズ・花道・ON・ステージ!』

俺たちは同時に変身を完了させるとロックビークルを解錠させてバイクへと変形させ、

跨って一定の速度まで上げ、ヘルヘイムの森へと突入し、周りにインベスがいないのを確認し、

一旦バイクから降りた。

「健太さん。僕たちも別行動をとりましょう。そっちの方がシドも見つけやすいですよ」

「そうだな。そうするか……常にジンバーピーチの状態でいるから何かあれば叫べ。

声を聞き次第、すぐにそっちへ向かう」

「了解しました。それでは」

そう言い、俺はバイクに乗り、光実とは反対の方向へとバイクを走らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……もう良いかな」

健太さんの姿が見えなくなったくらいに僕はバイクに乗って走らせ、

いったん外の世界へと戻るとある場所へと向かった。

プロフェッサーに呼ばれる数分前に僕あてに届いたメールの差出人から指定された場所へ向かい、

変身を解除してから指定された場所に立っている廃工場に入るとそこに差出人はいた。

ほんと、この街は廃工場が多いから密会にはちょうどいいよ。

「よう、坊ちゃん。来てくれると思ったぜ」

「シド……どうしてこのタイミングで裏切ったの?」

「それはお前さんもわかってるだろ? 邪魔な貴虎が消え、さらには神の果実の在り処も知った。

その状態で反旗を翻さない奴はよっぽど馬鹿な奴か馬鹿正直に世界を救おうとしてるやつぐらいだ」

「神の果実……そんなものあるんだ」

「あぁ。それを手に入れたものは神となる。だが手に入れられるのはたった一人……。

それを握っているのはオーバーロードだ。俺と組んで邪魔な奴らを先に潰しちわまないか?」

「……邪魔ものは共通だね……でも、僕は神の果実なんて興味ないよ。むしろ神様に恩を売って、

後々、それで揺する方が興味あるね」

「ハハハハハ! 良いねぇ~! じゃあ、決まりだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ジンバーピーチ! ハハー!』

襲い掛かってくる下級インベス、時々上級インベスをジンバーピーチで潰していきながら、

オーバーロードの捜索と貴虎さんの捜索を同時進行で行っていた。

あの時、俺たちに襲い掛かってきた奴は少なくとも貴虎さんではない可能性が高い。

まあ、まだ可能性の域を超えないが九割かたは光実が何らかの方法でドライバーと錠前を奪取、

そのドライバーで変身し、俺たちに襲い掛かった。

目的は俺を潰すことだろう……となるとあの時の戒斗との戦闘は予想外だったのか。

『オブスピアー!』

その時、戒斗が変身した際の音声の一部分が聞こえると同時に金属がぶつかり合う音が響き、

一瞬だけだがシドの声も聞こえた。

俺も向こうへ行った方が……いや、ゲネシスドライバーを持っているあいつなら、

シド程度の相手なら特に苦戦もしないだろう……俺がしなければならない相手は

「はぁ!」

振り向きざまに俺に向かってきていた矢を叩き落とすと前方にメロンが立っていた。

……この戦いで真実が分かる……俺の予想が真であるのか偽であるのか。

「はぁぁぁぁぁ!」

たがいにかけだし、すれ違いざまに弓を振るいあうが両者に直撃はせず、振り向くと同時に弓を振るうが相手が姿勢を低くしたことで空を切る……しかし、すぐさまその場で側転をし、足めがけて振るわれてくる相手の弓をよけ、いったん距離を取った。

俺は弓を下ろし、ゆっくりとやつへ近づいていく。

「来い。あんたが絶望を選択とするのなら……俺は希望を選択する。

僅かな希望があれば俺はそちらにかける」

言い終わった直後に振り下ろされてきた弓を片腕で防ぐと奴は驚き、距離を取ろうとするがそれをする前に俺が振るった弓が奴を切り裂き、一瞬だけ体勢を崩したところで胸をけり、大きく吹き飛ばした。

『オレンジオーレ! ジンバーピーチオーレ!』

「えあぁぁ!」

ブレードを二回おろし、下から上へ弓を斜めに振り上げると桃色の斬撃が放たれ、

奴に直撃してさらに大きく吹き飛ばした。

俺は負けられないんだ……この世界を救うまでわな。

「ぐぁ!」

『ウオオォォォォ!』

「っ! オーバーロード!」

突然、喚き声が聞こえたかと思えば左側側面に凄まじい衝撃が走り、

ろくな受け身も取れずに地面に叩きつけられ、慌てて顔だけをあげて前を見ると、

いつものように闘う気満々の赤色のオーバーロードが立っていた。

戦いに集中しすぎて奴の音を聴き逃していたか。

そう思っていると突然、奴が別の方向へ走りだしたかと思えば、逃げようとしていた奴に襲い掛かった。

奴は俺との戦闘で疲れ切っているのかオーバーロードに叩きのめされており、

反撃しようと弓を振り下ろすが簡単に避けられていた。

……ここで放っておけばそれはそれで世界を救う資格なしだな!

『レモンエナジー』

『ミックス! ジンバーレモン! ハハー!』

レモンエナジーの錠前を解錠し、ドライバーにセットしながらオーバーロードめがけて走りだし、

それと同時にブレードを下ろして形態変化を終えると同時に弓を振り下ろすが相手の大きな刀に防がれた。

「なぁ、オーバーロード様よ。ちょっとお取り込み中なんであっちいっててくれないか」

「ダマレ! ホロビユクダケノサルゴトキガ!」

「あぁ、そうかい……ただ一つ、言っておいてやる。俺達人間は滅び行くだけの生物じゃない!」

そう言い、俺は腰に常備装着されているホルダーからトリガー付きの刀を抜きつつ、

奴の腹部を切り裂くとさらに追撃として二本の刀で連続で切り裂き、相手の顔を殴り飛ばした。

「サルガァァ!」

『ロックオン・一・十・百・千・万・イチゴチャージ!』

「はぁぁ!」

奴が手元に炎を集めだすと同時にトリガー付きの刀にイチゴのロックシードを装着させ、

無理やり気味に弓に装着させて弦を引絞って矢の代わりに刀を放つと、

刀を覆うように赤色のオーラが放出され、イチゴの先端を相手に向けた形になると、

奴が放ってきた火球を貫通して奴の腹部に刀が深く突き刺さった。

案外、思いつきの攻撃も相手の意表をついていいな。

「グアァ! グゥゥゥゥゥゥ! ユルサン! ユルサンユルサン! サルゴトキガァ!」

「ただのサルじゃねえんだよ!」

『オレンジスカッシュ! ジンバーレモンスカッシュ!』

「喰らうおぁ!」

ブレードを一度降ろして、俺とオーバーロードを結ぶ道となったオレンジと、

レモンの断面を通るように上空へ跳躍してやつへ蹴りをぶち込もうとした瞬間、突然、

脇腹のあたりに強い衝撃が走り、空中で姿勢を崩し、地面に落ちた。

「やらせるかよ! 三直健太!」

声がする方向を向くとそこにはシドが立っており、

俺のことはお構いなしにオーバーロードへ切りかかった。

「よう、オーバーロード! お前らが持っているっていう例の神の果実、いただきに来たぜ!」

「ハッ! サルニワタスモノデハナイ」

「うおっと」

神の果実……何かは知らんがそれを狙ってシドは裏切ったのか?

「三直!」

「戒斗……シドを潰した方が良さそうだ」

「その様だな。貴様はオーバーロードに集中しろ! 俺がシドをやる!」

そう叫び、同時に走り出すと戒斗がシドを後ろから羽交い絞めにして無理やり、

オーバーロードから引き離すと戦う相手がいなくなったオーバーロードめがけて、

矢を数発連続で放つがすべて刀で叩き落とされた。

「お前みたいな単細胞な奴は嫌いだ」

「ダマレ! キサマラ……ホゥ」

突然、奴が後ろを向いたかと思えば俺の前方に縦に大きなクラックが突然、開いた。

っっ! こんな時に! しかもユグドラシルタワーに近い場所じゃねえか!

「ソウカ。アレガキサマラノイリグチカ。ハァ!」

「っっ! 待て!」

「待て、三直!」

「貴様の相手はこの俺だ!」

後ろの二人の声を無視し、クラックから外へと出たオーバーロードを追いかけに俺も外へと出た。




お久しぶりです! ようやく夏休みになりましたので更新再開いたします!

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