仮面ライダー鎧武 Another hero   作:kue

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第三十話  協力

「は、はは……やった」

僕――――光実はその手に銃を握り締めながら今、目の前の状況を喜んでいた。

何故なら目の前にいたやつが僕が放った光弾を背中から直撃して、

そのまま吹き飛んで気を失ったからだ。

僕は倒れているやつのもとへと近づくと駆紋戒斗が驚いた様子で佇みながら僕のほうを見ていた。

そんなバロンを放置して、とどめを刺そうと銃を向けた瞬間。

「ぐぁ!」

突然、僕の脇腹のあたりに衝撃が走り、そのまま軽く吹き飛んで地面に倒れた。

慌ててそちらのほうを向くと何故か僕のほうに弓を向けたバロンが立っていた。

「何をするんだ!」

「それはこちらのセリフだ。なぜ、貴様が三直健太に牙を剥く!」

「邪魔だからさ……この人は僕の大切な人を悲しませた……だからさ」

立ち上がり、もう一度銃を向けようとした瞬間、今度は弓で切り裂かれ、

顔を殴られ、さらに連続で何回も弓で切り裂かれてゼロ距離からの矢を食らって、

変身が解除してしまった。

「だから何をするんだ! こいつが消えれば君にだっていいはずだ!」

「確かにこいつは俺にとって邪魔ものだ。だがそれだけにしか過ぎない。

俺が潰すべき相手は俺の敵だ……こいつは敵などではない!」

……ダメだ。何を言ってもこいつとは仲良くなれないよ。

倒れている奴のロックビークルを奪うのを断念し、僕はその場から離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……いい加減起きたらどうだ」

「そうだな」

戒斗に言われ、服に付いた砂をはたきながら立ち上がった。

今まで疑念でしかなかったがさっきのでようやく疑念が確固たる証拠となって、

俺にやつが敵であることを示してくれた。

以前、ステージでインベスを呼んで俺に仕向けたのもすべての偶然も、

やはりあいつにとっての計画のうちだったというわけか。

「なぜ、やつは貴様に牙をむいた」

そう言いながら戒斗は変身を解除し、俺のほうを向いた。

「さあな、詳しいことなど俺が知る由もない……ただ、あいつはもう、

俺が知っている光実じゃない……これからどんな行動を起こすのか想像もつかない」

「まぁいい。貴様らの仲間割れなどどうでもいいことだ。俺はきちんと、

お前の指示に従ったんだ……今度は俺の指示に従ってもらうぞ」

「あぁ、その日に連絡をくれ。いろいろと俺も準備がいるんだ……これからどうするんだ」

「俺のやることは一つだけだ……そんなこと貴様がよく知っているはずだ」

確かに……こいつがやることはただ一つ。ただ純粋に力を追い求めてゆき、

自らの前に立ったものは何であろうとつぶしていく。

いずれ俺の目の前にこいつが立ちはだかれば……潰すだけだ。

「これだけ言っておく……おそらく、ユグドラシルは俺たちが思っているほどに、

単純な組織じゃない……もっと深いぞ」

「知ったことか。俺はただ力を追い求めるのみ」

そう言い、奴が背を向けたと同時に俺も奴に背を向けて奴とは別の方角へと歩きだした。

第三者が今の光景を見ればただ単にお互いに別の方向へ歩み始めた様に思うだろうが、

それは全くの間違いで本当の意味は互いの決別。

互いが敵対する位置に立てばどちらかがつぶれるまで戦いあう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は戒斗と別れたあと少し適当に歩いてヘルヘイムの森を散策しているが特に新しい発見もなく、

ただ単に同じ景色が広がっているだけだった。

時計を見てみるとすでに時間はお昼過ぎ……さすがに腹が減ってきた。

「……試してみるか」

ふと、戦極が言っていたことを思い出した俺はドライバーを腰に装着し、

近くにあった果実を手にとってロックシードに変え、装着してみた。

「……特に腹が満たされた様子はないが……確かに効果はあるらしい」

ポケットに入っていたガムを口の中に入れようとするがロックシードをつけてから、

わずか数秒でガムは要らないと何故か思ってしまった。

確かに腹が満たされた感じはしないがそれでも空腹は少しずつ和らいでいるらしい。

「最近、凰連が静かだが……まぁ、静かなほうがいいか」

最近、本職のほうが忙しいのか俺たちがダンスをしていても首を突っ込まなくなり、

一般市民たちも正義のヒーローが姿を見せないことに首をかしげている。

その証拠に今まで俺たちを一方的に罵倒し、批難してきた反ビートライダーズともいえる、

連中が最近はめっきり大人しくなった。

まぁ、所詮は凰連という虎の威を借りた小動物だったということだ。

……それよりも光実のことを舞に言うべきか否かだ。

歩きながらそのことについて考えていくが特に舞に話さなければならない理由もないし、

それを話せば余計にチームが混乱するだけだ。

ただでさえ裕也の真実でガタガタになっているチームが光実が敵だということも、

知ってしまえばダンスなんてできるレベルじゃなくなってしまう。

「そのうちボロを出すだろう」

そう結論付け、顔をあげたときに向こうのほうで誰かが木にもたれかかって、

座り込んでいるのが見えた。

すぐさま草むらに姿を隠そうかとも思ったがその姿を見た俺は姿を隠すのをやめて、

その人物のもとに近づいて行った。

「何やってんだお前」

「ぬっ! あ、あなたこそなんでここにいるの!?」

木の根もとに座り込んでいたのは凰連だった。

心なしか痩せこけて見えるが……ロックビークルを持っているこいつが出られないということは、

クラックに入ったのはいいが入り口が閉じてしまい、出られなくなったというわけか。

しかもロックビークルを持たずに入ったみたいだしな。

「忙しい奴だな……なんでお前がこの森に」

「ふ、ふん! 少し調べたいことがあったの。そのためにここに入ってきたのよ」

「そうか……出るんだったらユグドラシル側の出口から出るしかないな。

おそらくお前なら襲撃をされずに外に出られるだろう。そこまで案内する」

そう言い、凰連を立たせてユグドラシルのキャンプ地へと向かって歩き始めた。

ふと、気づいたが先ほどよりも空腹がだいぶマシになったな。

たった数分だが先ほどに比べると何かを食べたいという感情は消えうせ、

丁度いいくらいの膨れ具合にまでなった。

これが戦極ドライバーの真の性能か……だが、なぜわざわざ変身能力までつけたんだ。

人類救済計画を進めるだけならば果実の変化能力、そして、

このエネルギー吸収能力を付加させるだけで十分完成の域に至れたはずだ。

まあ、現地調査隊の護衛用に一つ、制作するのなら話はわかるが、

わざわざ複数作っておれたちに配布する意味はなかったはずだ。

それにてっきりゲネシスドライバーを作るために複数作ったと思っていたが、

おそらくそれは間違いだろう。

……仮にだが最初は戦極凌馬もオーバーロードを見つけるまでは人類救済計画だけ、

進めていたが奴を見つけてから力が必要になった。

だから大量生産の過程で変身能力を付加したものを俺たちに配布し、

データを集めることでゲネシスドライバーを制作した。

そう考えればわざわざ俺たちに配布してデータ収集をした理由もなんとなくわかる。

「そう言えば貴方達、ロックシードを捨てたんですってね」

「あぁ。あのラストステージ以降、ロックシードもランキングもすべてなくなった」

「そう……貴方達じゃなかったというわけね」

城ノ内からの入れ知恵でようやく気づいてくれたか……これで、

何もしないようになってくれればあいつらも何も心配せずに踊れるんだがな。

「ほら、あそこがユグ」

「キャー!」

悲鳴が聞こえ、向こうのほうを見てみるとユグドラシルのキャンプ地が、

大量のインベスの襲撃にあっているのが見え、黒影達が戦闘をしているが、

数が多すぎるらしく押され気味だった。

「凰連!」

「ええ!」

『オレンジ! レモンエナジー!』

『ドリアン!』

「「変身!」」

『ドリアンアームズ・Mr dangerous!』

『ミックス! ジンバーレモン! ハハー!』

たがいに同時に変身を終え、ユグドラシルのキャンプ地に侵入して、

丸腰のやつらに襲いかかっている下級インベスをつぶしていく。

弦を引絞り、矢を放って下級インベスを葬っていくがいったいどこから、

湧いてくるのか倒す個体よりも流れてくる個体のほうが多かった。

「主任!」

声が聞こえ、そちらのほうを向いてみると貴虎さんが赤い体色のオーバーロードと、

戦闘を繰り広げている様子が目に映った。

そうか……理由はわからんが奴が人間の集落に襲撃してきたか。

「凰連! ここは任せるぞ!」

「お任せあれ! この傭兵ピエールに破れないものはなくって! トイヤー!」

俺の目の前から向かってくる個体に向かって棘がついた刀を一本投げつけて、

吹き飛ばして俺の道を作ってくれた。

その道を通り、オーバーロードに体当たりをかまして貴虎さんから突き放し、

起き上がったところに矢を放つが刀によって弾かれてしまった、

「三直! 一体こいつは何だ! 武装し、言語を操るインベスなど」

「……こいつはオーバーロードインベス。森の浸食を凌駕し、新たな生命へと、

進化を遂げたこのヘルヘイムの森の支配者だ。さらにはヘルヘイムの森の植物も操れるという、

オマケつきだ。対話は無理だろうが……おそらく、人類すべてが生き残るヒントはあるはずだ」

「なっ! ……どこでそんなことを」

「話はあとだ。今は丸腰のやつらの避難が終わるまでこいつをたたく」

「いいだろう。後で話はゆっくり聞くとする!」

『サルドモ! ツブス!』

そう言い、俺達は同時にその場から駈け出した。

オーバーロードが振り下ろしてきた刀を俺が弓で防ぐと奴の腹部を貴虎さんの弓が切り裂き、

体勢を一瞬だけ崩したところを弓を連続に振りまわし、

何度も切り裂くがそれで倒れることなく刀を振るってくる。

振るってきた刀を姿勢を低くして避けたところを俺の背後にいた貴虎さんが放った、

数発の弓が奴に直撃した。

「「はぁぁ!」」

ひるんだところを同時にけり飛ばし、吹き飛んだところを同時に、

矢を数発連射するとすべて直撃してさらに軽く吹き飛ぶがすぐさま起き上がり、

俺たちに拳を見せつけたかと思えば突然、近くに生えていた大きな木が勝手に動き出し、

その長い枝を使って俺たちを攻撃してきた。

「邪魔だ!」

互いに木の枝に向かって矢を放ち、枝を砕くと木自体が死んだのか動かなくなった。

「三直!」

『オレンジスカッシュ! ジンバーレモンスカッシュ!』

「だぁぁぁ!」

貴虎さんが上空に矢を放ち、メロンの形をしたものへ変形させた瞬間に、

跳躍しながらブレードを一回おろし、足にエネルギーをまとわせた状態で、

それに回し蹴りを入れると破裂したかと思えば無数の黄色とオレンジ色と緑色の矢が、

上空から降り注いでオーバーロードに直撃した。

そのすべての矢がロックシードを弓にはめ込んで矢を放った際のものであり、

強大な威力のものを何発も受けた奴は全身から煙を噴き出しながら、

俺たちに恨みつらみをはいていく。

『サルゴトキガ! #$&$$#$&%$%&!』

よほど激昂したのか人間の言葉ではなく奴ら独自の言葉を口早に吐き出し始めた。

どうやら緑のやつと比べてかなり短絡的な奴で激昂すれば暴走するタイプ……ん?

「$%$#%&’%$#%&!」

突然、やつが頭を押さえて苦しみだしたかと思えば奴らの言葉を使って、

誰かと話をし始めたが周囲にその言葉がわかる存在はいない。

……いったい誰と話しているんだ。

そう思った瞬間、やつは自らの体を液体状に変化させてどこかへと飛んでいく。

「待て!」

慌ててそのあとを追っていくが速度が速く、木々が生い茂っている林の中へ、

入った時点で姿を見失ってしまった。

……何故、あそこまで怒っていたのかは知らんが。

「三直、やつはいったい」

「あぁ……やつらはオーバーロードインベス。さっき言った通り、この森の侵略から生き残った存在だ。

見て分かる通り、奴らはヘルヘイムの森の植物を操る力がある……が、おそらく対話は無理だろう。

俺達を見かけた瞬間から潰しにかかってくる相手だからな」

変身を解除しながら俺が持っている情報を話していく。

「成程……確かにヒントだけなら掴めるかもしれない」

おそらくあいつがあそこまで怒っていた理由は猿としか認識していなかった人間、

つまり戒斗に傷をつけられたからだろうな。

……似た者同士で喧嘩をすればすさまじいことになるというが本当らしい。

ただ……できれば対話を行い、奴らの力を借りて森の侵略を止めるという手が最も、

理想的で最良の選択だがあの様子じゃ人間を良いようには思っていない。

「貴様の言う誰かの幸せをつぶさないための方法か……」

「同時にあんたの世界を救うという方法でもある。人々を犠牲にするという、

絶望の選択ではなく、犠牲をこれ以上出さずに救うという希望の選択だ。

俺だけでは到底できそうにない……だが、あんたが入ってくれれば話は別だ」

「……あぁ。私もお前の希望の選択を信じよう」

そう言い、貴虎さんが手を出してきた。

俺はその手を取り、力強く握手を交わそうとした瞬間!

「うわっ!」

俺達の間の地面が突然爆発を起こし、俺はその爆風で軽く吹き飛ばされてしまった。

「よう、やっと見つけたぜ。三直健太!」

そんな声が聞こえ、そちらの方を向くとすでに変身を完了したシドが弓をこちらに向けて立っていた。

「シド!」

「ここでてめえは終わりだ!」

シドはそう叫ぶと俺に向かって弓を振り下ろしてくるがその弓を変身を終えた貴虎さんが防いだ。

「おいおい、いったい何の真似だ? 三直をつぶすんじゃなかったのか?」

「状況が変わった! やつは……三直健太は俺たちに絶望以外の選択肢を示してくれたんだ!

今は戦うよりもその選択肢を進めることが優先事項だ!」

「はっ! てめえ自身が潰すと言っていたのによ」

「状況が変わったと言っているだろう! 行け! 三直! 貴様はやつを追え!」

「あぁ!」

俺は貴虎さんにシドを任せ、走り出すと同時にジンバーピーチに変身をして、

オーバーロードの音が聞こえる場所へと向かった。


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