仮面ライダー鎧武 Another hero   作:kue

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第二十九話 あぶりだし

「さてどうするかね」

俺――――三直健太が軽い過労で入院してから早五日ほど。

入院中の舞の看病もあってか医者が予定していた日数よりも早い段階で退院し、

今はチームの拠点地であるガレージ内に置かれているソファに横になり、

連中が踊っているのを横目で見ながらひたすら考え続けていた。

……最近の光実については怪しい点がありすぎる。

最初は奴の言う通り、偶然かとも考えていたが偶然にしては起きすぎているし、

そのタイミングも計ったかのように最適だ。

あいつはユグドラシルの主任である貴虎さんの弟らしいからユグドラシルと、

繋がっていると考えても何らおかしくはないし、

むしろそう考えた方がいいくらいにあいつの最近の行動は怪しい。

「……少しカマを掛けてみるか」

おそらくあいつは舞のことが好きなはずだ。あいつが舞と接する態度を見れば、

一目瞭然なわけだが……あいつは異常なまでに裕也の真実を舞に隠したがる。

もしも、その真実を俺が舞に教えれば……あいつが本当にどの位置に立っているかがわかる。

さすがにヘルヘイムの森やオーバーロードに関しては何も言えないがな。

だが……それのために舞を不用意に傷をつけるっていうのもな。

舞にも協力してもらうか……だが、それだとなんで光実を疑っているのかという疑念ができる。

そうなればあいつのことだからそれについてしつこく聞いてくる……何かいい案はないものか。

「んじゃ、ちょっと休憩にしようか!」

舞のその一言で連中が休憩に入った。

「ザック」

「ん? どうした」

「戒斗の連絡先なんか知ってるか?」

「あぁ、知ってるけど」

「教えてほしい」

若干、驚かれながらもザックから戒斗の連絡先を聞き出し、ガレージから出て、

教えてもらったその連絡先へスマホを使って電話をしてみた。

カマをかけるには俺だけの力では不可能な話だ……この状況だと戒斗が一番、

最良な相手なわけだが……はたして承諾してくれるか。

『誰だ』

何回かの呼び出し音の後に向こう側からぶっきらぼうな様子の声が響いてきた。

相も変わらずな様子だな……。

「俺だ」

『……なんで貴様が知っているんだ』

「ザックから聞いた……少しお前に協力してもらいたいことがある」

『俺に?』

「あぁ、少し敵をあぶりだしたいんだ。そのためにはお前の力も必要なんだ」

『…………良いだろう。だが貴様にも手伝ってもらうぞ。俺が探している奴を倒すために』

「それはオーバーロードか」

そこまで言ったところで俺は言ってはいけないことを思わず言ってしまったことに気づいた。

『……何故、そのことも貴様が知っているんだ』

「……なんでお前がそのことを知ってるのか俺も聞きたいところだ。

だが、わかった。俺もオーバーロードの件を手伝おう」

そこから戒斗と打ち合わせを五分ほど行い、すべての事柄を決めてから、

通話を切り、スマホをズボンのポケットに入れた。

以前、ヘルヘイムの森で奴を見かけたときにしていた行動となぜ、

オーバーロードのことについて知っているのかはどうやら繋がっているようだ。

奴もサガラからオーバーロードのことについて聞いたのか……だが、

サガラはユグドラシルの人間だ。

ユグドラシルを憎んでいるあいつがユグドラシルの人間の言葉をそのまま、

正直に聞くとも思えないんだがな……。

その時、後ろからドアが開いた音が聞こえ、振り返るとそこにはスポーツ飲料を持ち、

首からタオルをかけた舞がいた。

……やはり、こいつにあの真実を話して光実を揺さぶるのはやめよう。

「どうかしたのか?」

「ううん、別に……ねえ、練習が終わってからでいいから少し付き合ってくれる?」

「……あぁ、別にいいぞ」

そう言うと舞は一瞬だけ笑みを浮かべるとそのままガレージへと戻り、

再びダンスの練習を始めた。

裕也が死んだという真実を舞に話せば今迄のように普通にダンスをすることなんて、

できなくなるだろうし、もしかしたら再起不能に……そこまではいかなくとも、

今が壊れるのは間違いない。

「……すべてが終わってから話すのが一番、あいつが傷つかない方法なのか。本当に」

俺がやるべきことはもう変える気はないし、これから先に何があっても、

変わることはないが舞のことに関してだけは別問題だ。

すべてが終わってから話す……良いように見ればそれはあいつのことを、

考えての最善の方法なのかもしれないが、悪いように見れば、

言わなければならない秘密をずっと黙っているということだ。

「……何が最良の選択なんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから約九十分後、今日の練習を終えた舞がガレージから出てきて、

俺と合流すると俺にはこれから向かう先を伝えないまま歩き始めた。

何度聞いても言葉を濁すだけでどこへ向かうのか一切答えないまま、20分ほど歩き続け、

ユグドラシルタワーの近くに流れている大きな川の前に設置されたベンチの前にたどり着き、

そこで舞が歩みを止めた。

「どうしたんだよ、今日は。俺をこんなところに連れてきて」

「うん、まあね……これ」

そう言い、舞はベンチに座り、背負っていたリュックサックから、

タッパを取り出して俺に手渡してきた。

それを受取って中を開けてみるとそこにあったのは小さなおにぎりが二つ、

そしてタコの形に切られた小さなウインナー、唐揚げが入っていた。

「ほら、この前病院で言ってたでしょ。退院祝いも兼ねて作ってみたの。食べてみて」

そう言われ、ベンチに座っておにぎりを一つ口へ運び、ゆっくり味わうと、

中に入っている鮭の塩味と白飯がいい具合に混ざっており、口にうまみが広がっていくのを感じた。

……なんというか……昔を思い出す。

昔、いない両親に代わって姉貴が毎日毎日、作ってくれた弁当。

姉貴も自分の仕事があり、そんなに豪華なものではなかったがそれでも、

その中に入っている料理はすべて俺からすればどんな高級食材を使った料理よりも旨かった。

そして、この弁当も……なんでだろな。

「どう? 私の得意料理で埋めたんだけど」

「あぁ……旨い。旨すぎるくらいだ」

「そう……ありがとね」

「何がだ」

具を食べながら彼女にそういうと突然、立ち上がって少し歩いてから俺のほうを振りかえった。

「全部よ。今までのこと全部……裕也がいなくなってからチームを救ってくれたこと、

私たちのためにラストステージのために走り回ってくれたこと、

そして私を正しい道に連れてきてくれたこと……全部、あんたがしてくれたこと。

そりゃ、まあ昔は酷いことされたけどそれとこれの話は別。

本当にありがとう……でもね。ひとつだけ、嫌な部分もあるんだ」

弁当を食べ終わり、舞のリュックサックに直している最中、

その発言を聞き、思わず腕を止めてしまった。

その嫌なことは何なのかと聞くべきなのか……それとも、

今俺の頭の中で鳴り響いている危険を知らせるアラームに従ってこのまま何も聞かないのか。

「……なんのことだ」

俺はアラームを無視し、尋ねた。

「ねえ、健太……何か私に隠してることない?」

女性は時に第六感を持っているといわれている。

たとえば旦那が完璧に浮気の証拠を消した状態で自宅に帰ってきたとする。

その旦那の行動を見た妻は傍から見れば普段と同じ行動をしているように見えるが、

ほんの些細なことで違和感を抱くという……これも似たような状況か。

「健太。もしも私のことを気にしてるんだったら大丈夫よ!

こう見えて私って結構、メンタル面じゃ強いって自信あるんだから……だから、

教えて。健太はいったい何を私に隠しているの」

……もうこの機会を逃して舞に真実を言う機会は永遠に訪れないだろう……。

「あぁ、俺は今までお前に隠し事をしてきた……裕也のことに関してだ」

「……うん」

「裕也は……もう帰ってこない」

その一言である程度のことを理解したのか舞は一瞬驚いたような顔をし、

力が抜けたように後ずさってベンチに座った。

「あの森の果実……あれを食べた存在は例外なくインベスに代わるんだ。

裕也もあの森で迷い、森の果実を食べてしまった。そのインベスは……俺達があの日、

インベスに襲われた……あのインベスが裕也だったんだ」

さすがにヘルヘイムの森の侵攻、十年もすれば滅亡してしまうことは伏せておいた。

俺が舞に伝えなければならない秘密はこれだけだ……それ以外の秘密は、

こいつが知って傷つく必要はない……。

「……いつから知ってたの」

「知ったのは先週の話だ……すべてが終わってから話そうと思っていた」

「裕也はもう……帰ってこないんだ」

泣いている様子はない……だが、さっきまでとは様子が全く違う。

俺の選択は最良だったのか……それは後々わかることだ。

「……皆に話すね」

「あぁ……今まで話さなくてすまなかった」

「ううん……話してくれてありがとう。でもさすがに……ちょっときつすぎるよ」

今まで帰ってくると信じていたものが二度と帰ってこないとわかった以上、

今までのテンションと同じような生活はもう送れない……俺が……真実を話した、

俺がやるべきことは……。

「健太……」

俺は下を俯いている舞をやさしく抱きしめた。

「……俺は裕也を救えなかった……この罪は一生消えることはない。

だから俺はもう、これ以上の犠牲を出したくないから戦うんだ……体を壊してまでもな」

途端に舞は泣き出し、俺はただただ泣いている舞の頭をなでながら抱きしめ続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、俺は遠くのほうから舞たちのダンスステージを眺めていた。

このダンスステージが終了したときにチームガイムの連中に昨日、

俺が話した真実を話すらしい。

本当に話してよかったのか……っ!

直後、俺の背後で何かが高さのある場所から降り立ったような音が複数聞こえ、

慌てて振り返ってみるとそこには数体の上級インベスと十体ほどの下級が集結していた。

それに気づいた観客たちが悲鳴を上げながら散りじりに逃げていく。

今まで俺が戦ってきた上級インベスが大集合じゃないか……。

慌てて顔を上にあげてみるとすでに閉じかかってはいたが複数のクラックが見えた。

俺はインベスの攻撃を避けながらドライバーを腰に装着し、

オレンジのロックシードを解錠しようとした瞬間にふと気づいた。

何故かインベス達は観客のほうへは向かわず、全員が俺のほうを向かってきていた。

……自然に開いたチャックから出てきた奴らじゃなさそうだな。

「変身!」

『オレンジ! レモンエナジー!』

『ミックス・オレンジアームズ・花道・ON・ステージ! ジンバーレモン! ハハー!』

変身が完了し、向かってくる赤い体色にライオンのようなインベスをすれ違いざまに切り裂くと、

上空から俺めがけて急降下してくる蝙蝠のインベスの姿が見え、矢を放とうとした瞬間、

俺の後ろから紫の光弾が放たれて蝙蝠の上級インベスに直撃し、地面に落した。

さらに俺の背後から俺を飛び越えるようにして変身を終えたザックが飛んできて、

十体の下級インベスを殴りつけていく。

……いったい誰が操っているんだ。

「トドメだ」

『ロックオン・オレンジスカッシュ!』

『ブドウスカッシュ!』

『クルミスパーキング!』

インベスへと向かう直線状に輪切りにされたオレンジとレモンの断面が交互に出現し、

引き絞った弦を離すとその断面を通過し、光実が相手をしている蝙蝠を除いた、

上級を次々に貫通し、インベスが背中から地面に倒れ込んだ瞬間、連続して爆発が起きた。

インベスが消えたのを確認してから周りを見渡してみると、

すでにザックも光実も倒し終わっていた。

「終わっ!」

俺が変身を解除したとたんに光実が俺の胸倉を掴んできた。

「どうしてあの事を言ったんですか!」

「……お前、舞から聞いたのか」

「急に呼び出されたかと思ったらあのことをみんなに話すって相談されましたよ。

なんで……なんで舞さんを巻き込むようなことをしたんですか!」

……あのインベスは誰かに召喚された個体……仮にだがその召喚したやつを光実と仮定すると、

俺を消し去るために大量のインベスを召喚した……そう考えれば筋は通っている。

あくまで推論にしか過ぎないが。

「話す必要があったから話したまでだ。あのとき以外に舞に話すチャンスはなかった。

そしてその真実を知って戦いに巻き込まれるのなら俺が守ればいい」

「だからって今話さなくても!」

「今話さずにいつ話すんだ! お前は巻き込みたくないというがすでに、

舞もチームの連中も俺たちの戦いに巻き込んでいるんだよ! 

真実を知ってこの状況が変わるか!? 真実を知っていればインベスに襲われなくなるのか!? 

違うだろ! 巻き込んでしまっている以上、俺達の手で護るしかないだろうが!

話す話さないの問題じゃない!」

「貴方は……貴方にはヒーローの資格なんかない!」

光実が俺を突き飛ばした瞬間、後ろから舞が走ってきて光実の前に立つと、

手加減なしの全力で腕を振るって舞の頬をはたいた。

「私は……話してくれて嬉しかった。もしもあの時、話してくれなかったら、

健太を心の底からは信じれなかったと思う……今のミッチーおかしいよ。冷静になって」

舞にそう言われた光実は呆然とした様子に陥りながらも俺のほうを睨みつけ、

フラフラと覚束ない足取りでどこかへと歩いて行った。

……決まりだな……だが、もう少し強い証拠がほしいな。

俺は時計を見るとすでに約束の時間が近かった。

……行くか。

「ザック……少しの間、舞たちのこと頼むぞ」

「あ、あぁ。おまえはどうするんだよ」

「……少し仕事だ」

そう言い、その場から離れて人目がつかないところで変身を完了させ、

ロックビークルを開場してバイクへと変形させ、ヘルヘイムの森へと突入した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もしもし、僕だけど……気をつけたほうがいいよ。

そっちにあいつが行ったから。うん……ぼくも行くよ……消すためにね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ジンバーピーチ! ハハー!』

ヘルヘイムの森へと突入が完了し、ジンバーピーチへと変身した俺は音を聞き分け、

戒斗の場所を突き止めて、そこへとバイクを走らせるとうまい具合に遭遇できた。

が、なぜか奴はところどろこに包帯を巻いており、さらに腰にはユグドラシルの連中と同じ、

ゲネシスドライバーが装着されていた。

「なんでお前、ゲネシスドライバーを」

「奴らからもらったんだ……勘違いするなよ。俺はやつらに従っているわけじゃない。

奴らを利用しているんだ……すべてを屈服させることのできる力のために」

「別に止めやしないが……まぁいい。前に言った通りの手筈で頼む」

「本当にオーバーロードのほうを手伝うんだろうな」

「もちろんだ。俺もお前とは違う方面で奴らと向き合いたいだけだ。

ちなみにやつは西の7キロ先にいる」

そう言うと戒斗はつまらなさそうな顔を一瞬だけした後、

俺に背を向けて俺が言ったオーバーロードがいる場所へと向かっていった。

あいつはもともと力にのみ重きを置いていたやつだ。

今更ユグドラシル製品のゲネシスドライバーを持っていても別に、

おかしなことはどこにもないし、やつ自身、ユグドラシルを憎んでいる人間だ。

そうそうなことではユグドラシルの下につくとは思えない。

「……はぁ!」

その時、一瞬だけ自然の音とは違う音が聞こえ、その方角に向って矢を放つと、

向こうからも同時に矢が放たれ、ぶつかりあって衝撃をあたりにまき散らしながら消滅した。

……ジンバーピーチはレモンやチェリーのように戦闘面では微妙だが、

不意打ちにはいち早く反応できるのはうれしいな。

「なるほど。私から奪ったロックシードがそんな力を」

そう言いながら茂みから変身をすでに終えている秘書の女が出てきた。

「この世界を救うには力が必要でね……申し訳ないがあんたの力を少し盗んだわけだ」

「世界を救う……ぜひとも協力したいところだけど貴方にウロチョロされると、

こっちの計画がぐちゃぐちゃになるのよ!」

そう叫びながら弦を引絞って俺に向かって矢を放ってきた。

俺はそれを横に飛びのいてその場から離れると同時に矢を奴めがけて放つが、

弓の刃で矢をたたき落とされた。

そう簡単にこいつに一撃は与えられないのは既に承知だ!

さらに数発連続で矢を放っていくがどれもたたき落とされ、

奴から振り下ろされてきた弓を己の弓で防ぐと目の前で火花が散った。

「誰の指示でここに来た」

「プロフェッサーに決まっているじゃない!」

腹を軽く蹴られ、数歩後ろに後ずさった直後に横薙ぎに相手の弓が向かってくるが、

それを片腕で防ぐと奴は一瞬、驚きの声を上げた。

その一瞬の隙を見逃さず、腹部を思いっきり蹴って体勢を崩すと、

弓を何度も振りかざし、相手を切り裂き、ゼロ距離からの矢で相手を軽くふき飛ばした。

「っっ! 私を圧倒するまでの力をいったいいつの間に!」

「俺も人間なんでね。いつまでも子供のままでいる気はない」

「あらそう!」

『ロックオン・ピーチエナジー!』

『ロックオン・オレンジスカッシュ・ピーチエナジー!』

同時にゲネシスドライバーからピーチのロックシードを外し、

弓にはめ込んで強大な一撃を同時に放つと矢と矢がぶつかりあい、

地面の砂を舞あげて砂の煙ができた。

『ジンバーチェリー! ハハー!』

「うあぁ!」

砂埃の中でジンバーチェリーへ姿を変えると同時に高速移動で駆けだし、

すれ違いざまにやつを切り裂くと途中でUターンしてもう一度やつを背後から切り裂き、

さらにもう一度ターンしてすれ違いざまに切り裂いた。

「終わりだ」

『オレンジスカッシュ! ジンバーチェリースカッシュ!』

「だぁぁぁぁ!」

「うあぁぁぁ!」

弓を投げ捨てながら上空へと高く跳躍して最頂点の位置でブレードを一回おろすと、

奴から見て斜めの軌道上に輪切り状態のオレンジとチェリーのエネルギーの板が出現し、

それを通過しながら急降下して奴に蹴りを直撃させると大爆発を起こし、

その衝撃で吹き飛び、多大なダメージにより強制的に変身が解除され、地面に倒れ伏した。

「くぅ! これほどまでの力を短期間にどうやって!」

「あんたにそう言ってもらえればうれしいよ。じゃあな」

そう言い残し、高速で移動しながら戒斗が向かった場所へと、

向かうとものの数秒でたどり着いた。

そこは広い洞窟のような場所で周囲を警戒しながら中へとはいっていくと金属音が聞こえ、

壁に隠れながらその物音のほうを見ると開けた場所で、

赤い体色のオーバーロードと戒斗が戦っていた。

戒斗のゲネシスドライバーにはレモンエナジーのロックシードがはめられており、

戦況は五分五分といった様子だった。

……ドライバーを変えるだけであそこまでの戦闘能力を発揮できるのか。

戦いの様子を見ていると戒斗がレモンのロックシードを取り外して、

弓にはめ込むと同時にオーバーロードも剣を地面に突き刺すと、

持ち手の部分にある輪っかのような場所から青色の炎が噴き出し始めた。

戦いに手を出すのはあまり好きじゃないが……こっちも急いでいるんでね。

俺は物陰から青色の炎が噴き出している輪っかめがけて矢を放つと、

それに気づいた奴がその場から離れて俺の矢を避けるが戒斗が放った矢は腹に直撃し、

深々と突き刺さった。

「グッ! サルゴトキガ! コノ! オレニ!」

……ずいぶんと言葉が達者になったな。戒斗の話す言葉を聞いて学習したのか。

奴は突き刺さった矢を掴んで抜き取り、地面に突き刺さっている剣を抜き取ろうとするが、

すぐにその手が止まった。

不思議に思い、周囲を見渡してみると以前、俺のことを暇つぶしのおもちゃと称した、

緑色のオーバーロードが立っていた。

すぐさま弦を引絞って矢を放とうとするがすぐさまその姿消え去った。

戒斗のほうを見てみるとそちらのオーバーロードも姿が消えていた。

「戒斗」

「三直……ちょうどいい!」

そう叫んだ直後、手加減なしで戒斗が弓を振り下ろしてくる。

俺はその場から離れて振り下ろされてくる弓を避けた。

「いきなりなんだ!」

そう叫びながら俺は再び振り下ろされてくる弓を己の弓で防いだ。

「まさか今迄してきたことを忘れたわけじゃあるまい!

ここでその借りを返すとともに貴様に引導を渡してやる!」

奴の蹴りを右腕で防いだ瞬間、ゼロ距離からのやつの矢を食らって軽くふき飛ばされた。

「今、お前と戦ってる状況じゃないんだよ!」

『カチドキ!』

カチドキのロックシードを手に持ち、オレンジとチェリーを外したドライバーにはめ込むと、

ジンバーの鎧が消え去り、俺の頭上にカチドキのアームズが現れた……その直後!

「ぐぁ!」

突然、背中から連続した衝撃をもろに食らってしまい、そのまま高さのある場所から、

まっさかさまに地面に落ちてしまった。




順番間違えました

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