仮面ライダー鎧武 Another hero   作:kue

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第三話  敵対

「なんでまたあんたがここに居んのよ!」

暴走インベスとの戦いから二日後、俺――――三直健太は光実お手製の紅茶を飲みながら、

背中に舞の怒鳴り声を聞かされていた。

チャッキー、リカ、ラットも何か言いたそうな雰囲気なんだがそれを超える舞の怒りのオーラで、

何も言いだせずに俺達とは少し離れた場所から見ていた。

光実はニコニコと笑みを浮かべながら給仕係っぽいことをしている。

「まあまあ、舞さん。怒鳴るよりも先に健太さんの話を聞きましょうよ。ね?」

「ぬぐぐぐぐぐ……分かった」

流石はこのチームのムードメイカ―……いや、コントローラーと言った方がいいか。

「お前らも知っているとは思うがリーダーの裕也が行方不明だ。

おまけにチームガイムも衰退しつつあるときた」

何やら背後でガタガタ! と何かを動かしたような音が聞こえたがまあ、気にせずにいよう。

「で、でもロックシードを使えば」

「インベスゲームで勝ったことがあるか?」

そう言うと舞は何も言わなくなった。

光実から聞いた話によると二日前のお昼頃、チームバロンの連中がここにきて、

宣戦布告をしにきた。その際にバロン側はパインのロックシードを、

ガイム側はプレイヤーパスをかけたインベスゲームを提案してきたらしく、

そこでちょうど俺が光実に渡したロックシードが役に立ち、見事圧勝したらしいんだが……。

向こう側の妨害によってインベスが暴走。そこへ丁度俺がやって来て後は……。

それにAランクを使ったから勝てただけであって普段のインベスゲームでは、

俺の計算では勝率一割前後。

まあ、元々俺以外の連中はみんな16,7の奴らばかりだから資金調達も、

ほかのチームと比べて悪く、手元に集まるロックシードは大体最低ランク。

「そこで俺からの提案だ。俺を用心棒にしないか?」

「……つまり、あんたがあの変な力でこのチームを護ってくれるってこと?」

俺は紅茶を飲みながら首を縦に振った。

裕也が行方不明になった時点でこのチームが消滅するのは時間の問題だ。

「裕也が帰ってくるまでの間、俺がこのチームを護る。どうだ?」

「僕は賛成です。裕也さんが居なくなった今、

僕達のチームが残るためには健太さんの力が必要だと思います」

とはいえ、そんな素直に承諾するはずもなく三人の顔はあまりよろしくない。

「ちょっと待ってよ、ミッチー。いくらなんでもこいつなんかに……」

あの三人の中で最も強い反対をしているのが舞。

あいつがダンスに注いでいる情熱はおそらくこのチームの中では……もしかしたら、

全てのダンスチームのメンバーよりも熱い情熱を注いでいる。

その性格ゆえにこのチームのメンバーの中で一番、

俺がしでかしたことを恨んでいるというか怒っている。

「だったら健太さんのドライバーが使えるのか試してみませんか?

もし、僕たちでも使えたらそれで良いですし」

「そ、そうよ! それよそれ!」

「何明るくなってんだか……ほら」

光実の提案通り、ポケットに入れているドライバーを舞に手渡すと早速、

彼女は自分の腰にドライバーを当ててみるが特に変化は起きなかった。

何度か当ててみるもののうんともすんともいわず、他の三人も腰に当ててみるが全く動かなかった。

光実からドライバーを返してもらい、俺の腰に当ててみるとドライバーから帯のようなものが、

自動射出されて俺の腰回りを回ってドライバーを腰に固定した。

「つまり、そのドライバーは健太さんにしか使えない……舞さん」

「ちょ、ちょっと考えさせて! 三人も来て!」

悔しそうな顔をしながらも舞は光実以外の三人を呼び、外へと出ていった。

「……光実。お前、俺にしか使えないとわかっててあの提案を出したろ」

「え? なんのことですか?」

光実はニコニコと笑みを崩さないまま、空になったカップの中に再び熱々の紅茶を注いだ。

こいつがずる賢いのか、それともほかの連中が単純すぎて予想通りの展開に進んだのか……まあ、

どっちにしても俺がやることは変わらなかったがな。

あいつらが受け入れてくれれば良し。受け入れてくれないのであればコソコソと、

ほかの下位チームを潰しにかかっただけだし。

堂々とやるかコソコソトやるかの違いしかないんだがな。

「で、あれからランキングはどうなった」

「今のところはバロンが不動ですね。少なくとも一位になるには、

上位チームを全部倒さないといけないんですが今日、

レイドワイルドがバロンに負けたので繰り上がりで僕達が三位です」

「……ただ、影響は少なからずあったはずだ」

「むしろ大き過ぎるくらいです」

光実がそう言いながらスマホを俺に見せてくるとそこにはDJ・サガラとか言う奴がやっている、

非公式ラジオ放送に中で先日の戦いの様子が流れており、

画面の端にあるコメント欄は炎上に近い盛り上がりをしている。

とりあえず、注目度に関してはチームガイムが一番高いという訳か。

「このまま行くと」

「このまま順調に行くはずはない」

「……どういう意味ですか?」

「すぐにわかる……ほらな?」

その時、ドアが荒々しく開けられたかと思えばズカズカとふてぶてしい顔で、

バロンのリーダーらしき人物が入ってきた。

そして、その手には俺と同じドライバーが握られている。

「何か用か?」

「一つ聞く。何故、その力で上位を目指さない」

「俺はこのチームのメンバーじゃないんだ。

あくまで用心棒。インベスゲームにまで首を突っ込む気はない」

「……甘いな。そしてお前はその力の使い方がなっていない」

こいつが言いたいことを要約すれば力を持っているならさっさと使って、

他の奴らを蹴散らせってことだ。

「なっているか、いないかはこれで決めるか?」

ドライバーを見せるとあちらもやる気らしい。

そのまま俺達は何も言わずに戦いに最適な場所へと向かった。

どうやら既に場所は相手が決めていたらしく、チームガイムの本拠地から歩いて三十分ほど、

離れた所にある広場が戦いの場で止まった。

俺とバロンのリーダーが戦うことはすでにどこかからか漏れていたらしく、

俺達を囲うように大勢の観客が集まって来ていた。

「俺もお前と同じ力を手に入れた……これがその力だ!」

『バナナ!』

相手がバナナの装飾が施されているロックシードを解錠すると奴の上空にバナナの形をした浮遊物が、

円状に開いたチャックから現われた。

「変身」

『カモン! バナナアームズ! ナイト・オブ・スピアー』

ドライバーにロックシードをセットし、ブレードを降ろすと浮いていた浮遊物が、

奴にかぶさるとともに鎧が展開され、その手にはスピアが現れた。

……へぇ。あんな感じで俺も変身していた訳か……初めてその瞬間を客観的に見れた。

「変身」

『ソイヤ! オレンジアームズ! 花道・ON・ステージ!』

俺も解錠し、ドライバーへとセットした直後にブレードを降ろすと視界が一瞬だけ暗くなり、

ガチャガチャと機械音が鳴り響き、あっという間に鎧が展開された。

新たな鎧の戦士の誕生に周りにいる観客達は歓声を上げ始めた。

「アーマードライダー・バロン……行くぞ!」

「ちょっと待ったー!」

相手が駆け出そうとした瞬間に声が聞こえ、そちらのほうを向くと、

そこにはドルパーズでよく見かけるロックシードをビートライダー達に、

売りさばいている錠前ディーラーがいた。

「オレンジに会うのは初めてだな。俺は錠前ディーラーのシド。

悪いがあんた達が使っている力は少し特別なんだ。

もうそれはインベスゲームの範疇を大きく超えてんだよ」

そう言うとディーラーはキャリーバッグのようなものを開けてゴソゴソとすると、

俺たちに一つずつ錠前を投げてきた。

それを受取って見てみると普段、目にしているロックシードよりも一回りほど大きく、

さわり心地もかなりゴツゴツしていた。

「試作品なんだが解錠してみな。面白いことになるぜ」

ディーラーの言うとおりに受け取ったロックシードを解錠してみると勝手に手から離れ、

空中で静止したかと思えばその場で回転しはじめ、ロックシードが一台のバイクへと変化した。

その様子を見ていた周囲の観客は驚きを隠せずにいた。

「今回はまけといてやるよ。またのご利用を待ってるぜ」

そう言うとディーラーはキャリーバックを持って、この場から去っていった。

「ついてこいよ。うってつけの場所がある」

そう言い、バイクに跨ってこの勝負の蹴りをつけるとっておきの場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは」

バイクを止めると俺の隣にバロンが停止した。

俺がバロンを連れてきた場所は数キロにわたるまっすぐな道路が建設される予定の場所だった。

しかし、ユグドラシルがこの街に来て支配し始めた時からその工事はどこへ行ったのやら、

資材は片付けられたものの途中までしかできていない中途半端な道路が残った。

ここなら誰も来ないし思う存分できるだろ。

「で? どうやって戦うんだ?」

「その場の雰囲気でだ!」

そう叫ぶとバロンはバイクのエンジンをふかせ、猛スピードで中途半端な道路を走っていった。

俺も渋々、バイクのエンジンをふかせ、バロンを追いかけていくと目の前に不法投棄されたらしい、

粗大ごみが大量に転がっているのが見えた。

……使えるんじゃね?

俺は速度を最大にまで上げ、粗大ごみめがけて突っ込んでいくと、

うまい具合にタイヤが粗大ごみに乗っかり、そのままジャンプ台を使ったかのように高く上がった。

下にバロンを見ながら、左腰の辺りに装備されている刀のトリガーを引いて弾丸を充填し、

バロンめがけて四発の弾丸を放った。

「っ! 貴様ぁ!」

「ルールはないんだろ? だったら……あ?」

ふと、視界にモニターらしきものが映り、そちらのほうを向くと、

徐々に表示されている数字が上昇し始めていた。

なんだこれ……スピードメーターじゃない。

そう思った瞬間、花びらが舞ったかと思えば目の前の空間に裂け目ができると同時に、

バイクが浮かびあがってそのまま横に回転し始めた。

「こ、これは!?」

そのまま、俺達は空間の裂け目へとバイクごと突っ込むと、

一瞬にして景色が全く違う場所へと転移した。

「ここは……あの時の……どうやら、熱烈大歓迎らしい」

背後から虫の羽音のようなものが聞こえたかと思えば俺達の頭上を、

二体の羽が生えたインベスが通り過ぎ、前方に立ちふさがった。

「邪魔だ」

俺は最大スピードから急ブレーキをかけると同時に飛びあがると、

今までの勢いが全てそれに上乗せされ、まるで弾丸のようにインベスに向かって吹き飛んだ。

「はぁ!」

左腰の刀で一体を切り裂くと地上へと落ち、そのまま追い打ちとして充填した弾丸を四発、

一気にぶつけてやると背中に生えていた羽がちぎれて、吹き飛んでいった。

「トド」

『カモン! バナナ・スカッシュ!』

そんな音声が耳に入ってきたかと思えばバナナの形をしたオーラがインベスを貫いた。

貫かれたインベスは断末魔を上げながら、爆発し、消え去った。


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