仮面ライダー鎧武 Another hero   作:kue

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第二十三話

バイクを走らせること十分。

俺は姉貴とともに暮らしているハイツの駐車場にバイクを止めて、ハイツの様子を見ているが、

特に変わった様子もなく俺が住んでいる部屋に明かりはついていなかった。

この時間帯なら姉貴はまだ仕事の真っ最中……だが、ここは俺が知る世界とは別の世界だ。

今あの部屋にいる奴が俺かもしれないし改変された姉貴がいるかもしれない。

「が、この世界を知るには必要なことか」

そう結論付け、俺はロックビークルを錠前の形へ戻すとそれをポケットにしまい、

鍵を取り出して裏口の扉のカギ穴に差し込むと入り込み、あけることができた。

そのことに安心しながらも俺が住んでいる部屋へと向かっていく。

「……まあ、俺が住んでいるのは確実か」

部屋の前にたどり着き、部屋番号が書かれている板の空白に三直と書かれているから、

とりあえずは俺が入っても何も怪しまれることはない。

鍵を差し込み、まわして解錠してから中へ入ると部屋の中は真っ暗で壁伝いに歩いていきながら、

居間へとはいっていくが特に変わった様子はなかった。

家具が置かれている位置も、壁も何も変わらない……。

その時、後ろから部屋の扉が開く音がし、振り返ったと同時にある人物と目が合ってしまった。

「…………健太っ!」

そう……姉貴だった。

姉貴は俺の姿を見るや否や目に涙を浮かべて俺に抱きついてきた。

「あ、姉貴?」

「分かってる……貴方は違う健太なのよね……でも、少しだけこうさせて」

……俺が別の沢芽市から来たことを知っている……なんでだ。

姉貴は五分ほどそうしたあと目からこぼれ落ちそうになっている涙を指で拭き取った。

「ごめんね。急に抱きついたりして」

「……教えてくれ。姉貴。この世界はどうなっているんだ」

「うん……今から一年前くらいかな? ユグドラシルがある技術を完成させたの。

それが次元移動システム……灰色のオーロラのようなものを通って、

他世界に行くことができるようになったの。それでユグドラシルはすべての情報を私たちに伝えたわ」

つまり、奴らはもうすべての人間にドライバーを渡せる準備が整ったことで隠す必要がなくなり、

ヘルヘイムの森のこともその果実も……そしてヘルヘイムの侵攻によってあと十年で滅びることも。

「もちろんそのことで大混乱が起きたの……でも、ユグドラシルが次元移動システムを見せたら、

あっという間にその混乱はなくなった……そしてユグドラシルは他世界と協力して、

戦極ドライバーの七十億台大量生産計画を始動させた」

だから一般人の奴らが戦極ドライバーを所有していたのか……。

「順調だった。政治家から一般市民までドライバーが徐々に配布されていって、

これでみんな助かる……そう思っていた矢先にオーロラを通って黒いアーマードライダーが現れた。

あいつは何かを探しているみたいに高校生の女の子を襲い始めた。それだけじゃない。

それを阻止しようとした人たちも全員皆殺しにしていった……それで健太も」

……つまりこの世界にいたもう一人の俺は黒いアーマードライダーを倒そうとして、

戦いを挑んだが奴にはかなわずにそのまま殺されてしまった。

「でも、健太こうも言ってた。必ず別の世界から俺以上の奴が来るって。

この世界にはもうゲネシスドライバーもエナジーロックシードもない。

全部、あいつに壊された。だから……貴方だけが最後の希望」

そう言い、姉貴は俺の手を軽く握り締めた。

俺もその手を握りしめた……必ず奴を倒すという決意を胸に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ここは」

私――――高司舞が目を覚ました時、まず最初に視界に入ってきたのは機械だった。

私にはこれが何のために存在しているのか理解はできないけど、

ろくなことに使われない機械だってことはその姿を見ただけでなんとなく察しがついた。

その場から動こうと立とうとした時に腕に何かが食い込んだ感じがして自分の体を見てみると、

黒い椅子と私が鎖で括りつけられていて全く動けなかった。

「目が覚めたか」

声を掛けられ、前を見てみるとそこには黒いギザギザの突起物がいっぱい、

ついた刀をもった黒いアーマードライダーが立っていた。

「だ、誰」

「我が名はロット」

「どうして私を」

「簡単なことだ……我の宝ともいえる人物を蘇らせるためだ」

そう言うとロットとか言う黒いアーマードライダーはどこから取り出したのか分からない、

ロックシードを手に持って、私に見せつけるように目の前に持ってきた。

そのロックシードには私と同じ顔をした高校生くらいの女の子の写真が貼られていた。

「な、なんで私が」

「これは貴様ではない……私の宝ともいえる存在だ……顔、背格好は同じだがな。

この錠前には彼女の精神が封印されている。もう直完成する専用のドライバーでこれを解錠し、

お前に……彼女の精神をかぶせるのだ」

「ふ、ふざけないでよ! なんで私がそんな」

「それが貴様の運命だ。我が宝の精神と同調できるのは貴様だ。異なる顔の人物に精神をかぶせれば、

それだけで精神が傷ついてしまう……だが同じ顔であれば話は別だ」

そう言ってロットはどこかへと立ち去った。

……もしかして宝って言うのはあいつの……そんなことよりもこの場所を健太に知らせないと。

私は後ろ手に縛られているのをどうにかして体を揺すったりしながら、

ズボンの後ろポケットに手を突っ込んで、そこからスマホを取り出し、

画面も見ない状態で連絡帳を開いた。

毎日スマホをいじってるいまどきの女子高生にスマホを持たせたままがあんたの失敗よ!

心の中であいつにそう叫びながら健太に空メールを送った。

震えてない……つまりここは圏外じゃない……なんとか健太のスマホで探してくれれば。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

姉貴からこの世界の話を聞き出し、ユグドラシルタワーへと向かっている最中に、

スマホが震えたのを感じ、停車してから画面を見てみると一通のメールが届いていた。

確認するのも面倒だがとりあえずメールの差出人を確認してみると、

そのメールの送り主は舞からだった。

スマホを落としそうになりながらもメールを開くが空メールで文は何も書かれていなかった。

……メールが送られてきたということは舞がいる場所は電波が通っている……そうか。

俺はすぐさまアプリを起動させ、舞のスマホのGPSの反応がないかを確認すると、

ちょうど俺がいる場所からそう離れていない場所に反応が示されていた。

「待ってろよ、舞。今すぐ」

場所を確認し、そこへバイクを走らせようとした瞬間、突然俺の目の前に三つのクラックが開き、

そこから凄まじい数の下級インベスが水があふれ出るような勢いで出てくるとともに、

上級インベスも大量にあふれ出てきた。

偶然か……それとも奴が俺を足止めするためにクラックを開いたのか……くそ!

ドライバーを腰に装着させ、変身しようとした瞬間!

『バナナスパーキング!』

「っっ!」

聞き覚えのある音声が響くと同時に目の前の地面からバナナの幻影が何本も勢いよく飛び出し、

大量の下級インベスに突き刺さってどんどん消し去っていく。

慌てて後ろを振り返ってみると俺の後ろに槍を地面に突き刺しているバロン……つまり、

戒斗が立っていた。

「貴様の姉から連絡を受けてな……行け三直! ここは俺が片付ける! 

俺も後からそっちへ向かう! 貴様は先にロットを潰してこい!」

「あぁ、頼んだ!」

バロンのサポートを受けながら開かれた道をバイクでつきぬけ、反応があった場所へと、

向かっていくがさらに三つのクラックが俺の前方に開き、

そこから上級インベスが三体出てくるが背後から、緑色をした大型のチャクラムが二つ、

飛来したかと思えば上級インベスに直撃して、道を作った。

「健太さん! 行ってください! 僕たちも後で行きます!」

後ろを振り向かなくても誰なのかは分かった。

俺は光実に上級インベスを任せてバイクを走らせていく。

「変身!」

『ソイヤ! オレンジアームズ・花道・ON・ステージ!』

変身を完了させ、俺は舞がいる場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やはり天才は生かしておいて正解だった」

そう言いながらロットは私の腰に無理やり黒いドライバーを装着させてそう言った。

なんで……なんで私が別人に体を乗っ取られて生きなきゃならないのよ!

「安心しろ。貴様に宝の精神を被せた後は何もせん。が、邪魔者は消すがな」

ロットがそう言うと私の腰にあるドライバーのブレードを一回おろすとはめられていた錠前が割れて、

私の頭上に円形にチャックが開いてそこから丸いものがゆっくりと私に向かって落ちてきた。

私はなんとかそこから退こうと体を揺すったりするけど地面に椅子が接着でもされているのか、

全く動く気配もなく、ただただ無駄な足掻きにしかならなかった。

「もうすぐだ……もうすぐ私の願いは叶い、あの幸せをもう一度!」

私の頭に丸い物が被さろうとした瞬間!

銃声のようなものが聞こえたかと思えば私の頭上にあった丸いものが粉々に砕け散って、

その破片が私に降り注いできた。

「っっ! 貴様ぁぁぁぁ!」

ロットがどなっている方向を見るとそこにいたのは

「健太!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待たせて悪かった……もう大丈夫だ」

「よくも……よくもぉぉぉぉぉぉぉ!」

奴は激昂しながら俺に向かってギザギザのついた刀を振り下ろしてくるが、

それを飛びのいて避けると置かれていた機械に直撃して火花が上がると同時に小さな爆発も起き、

大量の煙が奴に覆いかぶさった。

そのすきに舞のところへと向かい、彼女を拘束していた鎖を無理やり引きちぎった。

「すぐにケリをつける……下がってろ」

「うん」

舞を物陰へと隠し、煙から出てきた奴と対峙した。

「お前が舞を使って何をしようとしたかは知らないが……諦めろ。

お前のやりたいことはこれで終わった」

「ふふ……フハハハハッハ! 終わってなどいない! 我が生きている限り、計画は続く!

この世界で失敗すればまた別の世界へ行けばいいこと! まだ錠前も生きている!

それに貴様の力など我の足元にも及ばぬものだ!」

『ソイヤ。ロット・オレンジアームズ・腐の道・ON・ステージ』

ドライバーから黒い錠前をいったん外し、もう一度セットしてからブレードを下ろすと、

奴にアームズが被さり、鎧が展開され、オレンジが腐ったような色をしている鎧を身にまとった。

確かに奴の力は新世代のライダー以上だ……だが、俺もここで負けるわけにはいかないんだ!

「はぁぁぁぁ!」

たがいに同時に走り出し、オレンジの刀をぶつけあうと鍔迫り合いをしながら横ばしりし、

壁を突き破って地上へと降り立ち、相手の脇腹めがけて蹴りを入れようとするが、

それを腕で弾かれ、一度斜めに鎧を切り裂かれて火花が散るがホルダーに入っている刀を抜き、

それと同時に奴を切り裂き、蹴り飛ばした。

「はぁぁ!」

奴もギザギザの刀と腐ったオレンジの色をした刀の二本を握りしめ、

二本同時に振り下ろしてくるがそれを後ろへ飛んで避けると同時にトリガーを引いて弾丸を装填し、

五発連続で放つと三発は刀で叩き落とされたが二発が直撃し、数歩後ろへ後ずさった。

「おおぉぉぉぉ!」

「くっ!」

さらにやつへ駈け出して行き、連続で刀を振り下ろしていく。

「ちっ!」

『ロット・オレンジスカッシュ!』

「はぁ!」

『オレンジスカッシュ!』

「なに!?」

「だぁぁぁぁぁぁ!」

奴がブレードを一回おろした直後にオレンジの刀を横薙ぎに振るって黒い衝撃波を飛ばしてくるが、

それを跳躍してよけると同時にブレードを一回おろし、足にエネルギーをためた状態で、

奴へ蹴りを直撃させて大きく吹き飛ばした。

「俺は負けられないんだ……舞のためにも、そしてこの世界のためにも!」

『レモンエナジー!』

『ミックス! オレンジアームズ・花道・ON・ステージ! ジンバーレモン! ハハー!』

「さあ、とっとと決めるぞ!」

「ほざけ!」

俺は弓を握り締め、奴に向かって駆け出し、奴のオレンジの刀と弓をぶつけあった!




極アームズ……なかなかよかったす

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