仮面ライダー鎧武 Another hero   作:kue

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第二話  使命

あの戦いから数日が経った。

俺は今、ベルトを装着した状態でSpingereというダンスチームのステージの近くにいた。

この力……何のための力なのか今は分からないがあの時の償いをすることはできるだろ。

俺は音楽が流れているスピーカに刺し込まれているプレイヤーパスを外すと音楽が止まり、

観客とチームの奴らが俺の方向を見た。

「なんだてめえ! 邪魔すんじゃねえよ」

俺はリーダーらしき男にカードを放り投げるとロックシードを取り出した。

「インベスゲームか……良いぜ! 返り討ちにしてやる!」

『オレンジアームズ・花道オン・ステージ!』

解錠したロックシードをドライバーの窪みに押し込み、再び施錠した後、

ドライバーの右側にある小刀の形をした装飾品らしきものを倒すと俺の上空に浮かんでいた、

ミカンの形をしたものが降りて、鎧を身に纏った。

直後、周囲にどよめきが発生し、目の前の奴らもビビりだしたがロックシードを解錠し、

インベスを一体呼び出した。

「や、やっちまえ!」

指示を受け、インベスが俺に飛びかかってきたところを握っている湾曲した刀身の刀を、

横に振り抜くとインベスは切り裂かれ、消滅した。

それとともにフィールドが消え去り、俺の手元に奴が持っていたロックシードが飛んできた。

「悪いが……ここからはガイムのステージだ」

変身を解除し、そう宣言するとさっきまで沈黙していた観客が一斉に歓喜の声を上げた。

その声を聞き、分が悪すぎるとようやく察知したのか連中は俺を睨みつけながら、

どこかへと消え去った。

奴らがどこかへと去ったのを見てから俺もステージから去った。

これでロックシードは三つ……これだけあればとりあえずの状況維持はできるか。

そう思いながらもとある場所へと向かうために歩き続けた。

あそこに行くのは半年ぶりか……俺に都合のいい状況であればいいんだが。

歩くこと五分、2階建ての煉瓦倉庫風の建物につくとその扉を開けると、

俺の視界に懐かしい景色が広がるとともにちょうど良い状況があった。

「け、健太さん!?」

「よ。お前だけか?」

「は、はい! あ、よかったらポップコーン食べません?」

ちょうど良い状況にいたやつ……それは光実だった。

俺が返事をする前に光実は早々と出来上がっているポップコーンを容器に入れ、

さらには紅茶まで入れて俺の目の前に出した。

……いつ、紅茶を入れたんだか……相変わらずのハイスペックぶりだな。

とりあえず光実の好意を無駄にせず、ポップコーンを食ってみた。

「どうですか!?」

「……いいんじゃないのか。少なくともそこらへんのよりかはうまい」

そう言うと光実は嬉しそうに顔をほころばせて俺の隣に座った。

いや……マジでうまいし。それに紅茶もなかなか……マジでいったいどこでこんな技術を習ったんだか。

「でも、どうしてここに?」

「あぁ、ちょっと用事があってな。あいつらは?」

「今日はお昼からなんでもうすぐ来ると思います」

そうか……できれば早く来てもらわないと俺のバイトに食い込むんだがな。

そんなことを思っているとドアが開く音が聞こえるとともに何人かの声が聞こえてきた。

「あ、ミッチーおは……」

「どうした? あいさつは最後までするもんだぞ」

舞の声が途中で止まったと同時に後ろを振り返るとこれまた鬼のような形相をした三人がいた。

まあ、あんな抜け方をすれば激怒するのも……逆に激怒しない方がおかしいよな。

「なんで、あんたがここにいんのよ!」

舞がそう叫ぶと同時に内ポケットに入れていた三つのロックシードをそれぞれ三人に投げ渡すと、

各々、驚きながら俺が投げ渡したロックシードを受け取った。

「とりあえず、それで今の状況は維持できるだろ。それは半年前に対する、

俺からの賠償金とでも思ってくれ。また、足りなくなったら言ってくれ。

俺がまた調達」

そこまで言ったところで舞が思いっきり俺に向かってロックシードを投げつけてきた。

女の子の全力だから難なく受け切れたもののその顔はあまり、

俺のしたことに対してよくは思っていないらしい表情をしていた。

「こんなんであたしたちが許すと思ってんの!? それにその上から目線の言い方やめなさいよ!」

「生憎、この喋り方しか知らないんだ……分かったよ。ここから出ていくから」

これ以上、ロックシード以上の重さを誇るものを投げられても困るので俺は、

ガイムの本拠地から出ていくと何故か一緒に光実まで出てきた。

「せっかく来てもらったのにすみません」

「いや、なんでお前が謝るんだよ。謝るのは俺だ……光実」

俺は名前を呼ぶと同時に先日、手に入れたAランクのロックシードを光実に手渡すと光実は、

かなり驚いた表情を浮かべて俺の方を見てきた。

噂によればAランクのロックシードは流通しているものはしているものの、

そのあまりの高額な値段に誰も手をつけられていないという。

その代わり、他のロックシードを凌駕するほどの力があるという。

「こ、これどこで」

「取り敢えず、お前が持っておいてくれ。恐らくそれが必要になる」

「……健太さん。鎧武者の噂知ってますか?」

知ってるも何もその鎧武者は俺だ……なんてことは言えない。

「最近、下位チームに勝負を挑んでは一瞬で勝利しているらしいんです。

その後にいう言葉は決まって『ここからはガイムのステージ』らしいですよ。

その鎧武者って……健太さんですよね?」

「……何故、分かった」

「一時期、ネットに出回ってたんです。今は消されちゃってますけど……その時の、

闘い方を見て一瞬で分かったんです」

俺があの姿で戦っているのはほんの一瞬だけにも拘らず、あの鎧武者が俺だと見抜くのか……本当に一体、

どこでお前のそのハイスペックぶりは教育されたんだか。

「あ、このこと誰にも言いませんよ……ただ、健太さんって結構引きずるタイプなんですね」

「あれだけのことを引き起こしておいて引きずらない奴がいるか……ま、頑張れ」

俺はそう言って光実のもとから去った。

 

 

 

 

 

 

「ただいま」

「お帰り~」

光実にAランクのロックシードを渡した日から一週間が経過した。

バイトから帰ってくると今日は夜勤明けなためか休みの姉貴が俺を出迎えてくれた。

「アルバイトお疲れ様! 確か今日で契約切れだっけ? また止められたんじゃないの~?」

「止められたよ……ちょっと今回は長めに休みをとりたいしな」

部屋に荷物を置き、リビングへと向かうと既にテーブルの上にはいくつかの料理が並べられていた。

テーブルに着くと姉貴も俺の目の前に座り、いただきますといって同時に料理に手をつけた。

……相変わらず姉貴の料理は美味い……未だに俺が姉貴を超えることができていない部分だな。

以前、料理を教えてくれと言ったのに何故かその時だけは自分で勉強しろと一喝され、

全く料理に関しては教えてくれなかった。

俺の推論にしか過ぎないんだが……もう既にいなくなった両親の味とやらを知っているのは自分だけで、

それを振る舞うことができるのも自分だけ……だから、その部分だけは誰にも譲れない。

と、そんな風に考えている。

「最近、そっちはどうなのよ」

「まあ、ボチボチかと。金はたまってるから一年間バイトしなくてもとりあえずは暮らせるさ」

「ふ~ん……ねえ、もうダンスはしないの?」

料理を口に運ぶ手前で固まってしまった。

ダンスはもうしない……正確にいえばダンスをする直前に止めたと言った方が正しい。

俺は何も言わず、黙々と料理を口へと運んでいき全てを食べつくした後、何も言わずに食器だけ、

台所へと持っていき何も言わずに自分の部屋に入った。

「……ダンスねえ」

俺はそう呟くとベッドに横たわった。

…………ダンスに意識を集中させたためにあんなことになったのに……なんで、

姉貴は俺に言ったんだか……。

「健太~。光実って子から電話~」

「は~い……何か用か?」

電話を姉貴から受け取り、耳に当てると受話器の向こう側から大勢の人間がいる時のざわつき、

そして舞の声なんかも若干聞こえてきた。

『実はこれからバロンとインベスゲームをするんです』

「それがどうした。俺には関係ないだろ」

『……見ていてほしいんです。健太さんも裕也さんも居なくなったガイムを』

「……場所教えろ」

光実からバロンとインベスゲームを行う場所を聞き、姉貴には散歩してくると偽り、

俺は若干、早足でその場所へと向かうがその場所へと近づいていくたびに、

大勢の学生やら女性達が走りながら俺を通り過ぎていく。

まるで何か怖いものでも見たかのような表情を皆していた。

その数はインベスゲームが行われている場所にたどり着いた時には比較できない状態だった。

人込みをかき分けながらその場所へと向かうと頭にトサカのような物が生え、

青い体色をしたインベスが近くにいる人間達を次々と投げ飛ばしていく。

ふと、視線を地面に向けた時に俺が光実に渡したはずのAランクのロックシードが見えた。

……バロンがいるということはまた、何かしらの妨害を受けてロックシードが手元から離れて、

コントロールから離れたインベスが暴れ回っているということか……この為なのか?

俺はポケットに入れていたドライバーとオレンジのロックシードを取り出し、ジッと見つめた。

お前が俺に力を使わせたのはこの時のためか……俺に護れというのか!

『オレンジ!』

腰にドライバーを装着し、ロックシードを解錠すると周囲に錠前の音声と、

ドライバーからホラ貝で奏でられる待機音が流れ、それに気づいたチームガイムの連中や、

バロンの連中の視線が俺に向けられる。

「変身」

『オレンジアームズ・花道・ON・ステージ!』

オレンジの浮遊物が落下し、俺の頭に覆いかぶさるとガチャガチャと機械音が鳴り響き、

一瞬、景色が暗くなったかと思えばすぐに明るくなり普段とあまり変わらない視界が広がり、

目の前にインベスが見えた。

インベスが俺の姿を見て、遠吠えを上げて突っ込んでくる。

「はぁ!」

インベスの突進を姿勢を低くして避けつつ、湾曲した刀で思いっきり切り裂くと火花を散らせながら、

相手は俺の後ろへと飛んでいく。

左側の腰の付け根についている長めの刀を手にとり、

刀身と持ち手のつながっている部分付近にあるトリガーを引き、

相手が起き上がった瞬間に二発撃ち込み、ひるんだところをダッシュで距離を縮め、

二本の刀を交差させるように上から下へと振り上げ、インベスを切り上げた。

『ギャッ!』

「あ?」

突然、インベスが俺から逃げていったかと思えば落ちていたロックシードを拾うとそれを、

額が裂けて出来た穴に放り込むとインベスの身体から炎が放たれたと同時に奴の身体が変わっていき、

人と同じサイズだったのが一気に伸長して人二人分のサイズにまででかくなった。

「おいおいおい。ロックシードは進化の石じゃねえんだぞ」

『ゴギャァァ!』

でかくなったインベスは俺に向かってその大きくなった拳をぶつけてくるがそれを、

スレスレで避けつつ、通り過ぎていく腕に刃を充てると勝手に火花が散り、切り裂いた。

でも、流石に勢いには勝てずに刀が手から離れてしまった。

……これが人間と怪物の差か。

「うあぁぁぁぁぁ!」

突然、叫びが聞こえたかと思えばインベスの背後からバロンのリーダーが、

俺の手から離れた刀を持ってインベスにダッシュで近づき、背中を切り裂いた。

「ぐぁ!」

が、勝てるはずもなくインベスが大きな足でコンクリの地面を踏み抜いた風圧で、

俺の近くにまで吹き飛んできた。

『ソイヤ! オレンジ・スパーキング!』

「ちょっと倒れてろ!」

インベスが向かってきたところをオレンジの浮遊物を頭にかぶせた状態に戻し、

思いっきり頭突きをかますと軽く吹き飛んであまりの痛みに頭を押さえてのたうち回りだした。

さて、こいつをどうやって……ん?

何かが足に当たった感覚がして下を向いてみるとパインの装飾が施された黄色のロックシードが

俺の足もとに転がっていた。

「健太さん! それ使ってください!」

「ちっ!」

光実がそう言うと何故か俺の後ろにいたバロンのリーダーが嫌そうに舌打ちをした。

……何があったかは知らんが……喜んで使わせてもらおう。

『パイン! ロックオン』

ドライバーのオレンジのロックシードを取り外し、

パインを解錠してドライバーに装着すると最初の待機音とともに頭上に円状にチャックが開き、

そこからパインの形をした浮遊物が落ちてきた。

『ソイヤ! パインアームズ・粉砕・デストロイ!』

気に留めずにブレードを降ろすとそんな音声が聞こえ、浮遊物が落ちてきて一瞬、

暗くなった後に俺の手元に持ち手からワイヤーで繋がれたパイン型の鉄球がつながった、

フレイル型の武装が現れた。

二度、三度振り回してみるがそんなに重くはなく、動きながら使えそうだった。

「さあ、ここからが本番だ!」

起き上がった相手にパイン型の鉄球を右からぶつけ、

さらに自分も回転してもう一度ぶつけると派手な音とともに相手が皆がいる方へと飛んでしまった。

……あ、ヤバい。調子に乗り過ぎた!

急いで飛んでいった方向へと向かうとインベスがいまにも丸腰の奴らに攻撃を仕掛けようとしていた。

「させるか!」

『ソイヤ! パインスカッシュ!』

「はぁ!」

上空へ飛びあがり、ブレードを一回降ろしてパイン型の鉄球を相手に向かって蹴り飛ばすと、

鉄球が巨大になり、相手の顔にスポッとハマった。

「終わりだ!」

そのまま相手にめがけて急降下していくと右足から黄色いオーラのようなものが放出され始め、

考えるよりも前に相手に蹴りをぶちこむと貫通し、インベスは腹に大きな穴を開けた状態で、

背中から倒れ込んで、爆発四散した。

「ふ~タッ!」

ホッと一安心しようとした直後、さっきのパイン型の鉄球が俺の頭を直撃した。

そのまま一緒にインベスと消えてろよ。

「健太さん」

声が聞こえたと同時に変身を解除して後ろを振り返ると微妙な状況ができていた。

光実は俺に礼を言いたそうな雰囲気なんだが……舞の雰囲気はご立腹のようだ。

「…………あ、ありがとう」

……まさか、一番に舞から礼を言われるとはな。

 




結局、連載にしちゃいました。よろしくお願いします

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