仮面ライダー鎧武 Another hero   作:kue

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第十八話  清算

「おっと」

少し高さのある部分から落ち、少し衝撃が全身を打ちつけたが特に問題もなく、

地面に足をつけ、バイクから降りて変身を解除した。

特にユグドラシルの連中は追撃をしてこなかったが……深く考えない方が良いか。

「お前、これからどうするんだ」

「……俺は俺のやることをやるだけだ」

そう言い、戒斗はバイクに跨ってバイクを走らせ、どこかへと消えていった。

俺はバイクを道路の脇に止めて、スタンドで倒れないようにした後に軽く、

バイクにもたれかかって、ポケットに入っているスマホを取り出して見ると、

光実から1通のメールが来ていた。

それをタップして開くとそこにはラットが入院したことと、

入院している病院の名前、そして場所が書かれていた。

……俺にはまだ、やらなければいけないことがある。

俺はそう思い、再びバイクに跨ってメールに書かれていた場所へとバイクを走らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユグドラシルの追撃からなんとか逃げ切れた僕――――光実は少し休憩しようと、

自室に繋がる扉の前で呆然と立ち尽くしていた。

扉が少しだけ開いていたからその隙間から部屋をのぞくと、

兄さんが僕のパソコンに保存している例の映像をイスに座って見ていた。

例の映像―――――ユグドラシルに潜入した時、会議室のような場所で、

裕也さんがインベスになった瞬間の映像、

そして健太さんがインベスとなった裕也さんを倒した瞬間の映像。

「光実、入れ」

っ! 気付かれてた。

僕は観念して部屋の中に入ると予想と反して、

兄さんからは怒った様子は感じられなかった。

「光実……どうやらお前は守られる存在ではなくなったらしいな」

「……兄さん?」

「お前は奴とは違って戦う資格がある……ついて来い。

この世界の真実をお前に見せてやる。

それで戦うのならそれでよし、戦わないと判断するもよし……全てはお前の判断だ」

この世界の……真実……それを知れば僕がずっと、

欲しかったものが手に入るかもしれない……それにもうあの人は戦えない……僕が。

「兄さん……知りたい。僕はこの世界の真実を」

そう言うと兄さんは何も言わず、席を立って部屋から出ていった。

僕もそれを追いかけて部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は今、ラットが入院している病室の扉の目の前にいた。

扉の外から舞達の楽しそうな声が聞こえてくる。

このまま俺が入らなければそのまま楽しい時間を過ごせる……だから、

今すぐにこの場から去ろうとも思わない。

これは俺の成長云々かんぬんではなく人としてしなければいけないから。

俺は扉をノックし、病室のドアを開けるとさっきまでの楽しい会話は消えうせ、

病室の雰囲気が一気に落ちた。

「なんか用かよ」

俺は何も言わず、無言のまま膝を曲げて凸を床につけた……俗にいう土下座をした。

「すまない。ラットが入院することになったのは俺の責任だ……あのインベスは一度、

俺と戦ったんだ……でも、俺が止めを刺すのに戸惑った……全て俺の責任です。

申し訳ありませんでした」

「ちょ、ちょっといきなり何してんのよ!」

突然の俺の行動に戸惑いを隠せないのか舞が声を荒げて俺に話しかけてくるが、

俺は一切、顔を上げることなく土下座の状態を崩さなかった。

「そして、この場をお借りして謝罪させていただきます。

皆さまに多大な迷惑をおかけしたこと。誠に申し訳ありませんでした」

チームのスタートダッシュが遅れたこと、チームのメンバーを傷つけるような発言をしたこと、

見下したような発言で振りまわしたこと、そしてラットが重傷を負ったこと。

今まで俺がしでかしてきた罪を今、土下座という形で目の前にいる3人に謝罪している。

「……顔上げろよ」

ラットにそう言われ、顔を上げるとベッドからラットが俺を見下ろしていた。

「インベスのことは別にいいよ……でも、チームのことだけは絶対に許せねえ」

「それで構いません……また来ます」

そう言い、俺は病室から出て、そのまま病院から出ると、

すぐ近くにあったイスに座った。

……インベスのことは許してもらえた……と考えて良いのか……チームに関しては、

俺が一生、ラットたちに恨まれる要因だな。

まあ、全ては俺が起こした騒動の結果であって全ては俺の自業自得だ。

その時、ふとサガラから貰った物を思い出した。

ポケットからロックシードを取り出し、観察してみると、

俺が所有しているオレンジやパインなどの、

この街に流通しているロックシードとはかなり形が違っている。

恐らく、このロックシードは俺が所有している戦極ドライバーでは使用できない特別なもので、

使用するには連中が使っている新しい型のドライバーでしか使えないだろう。

俺がこのドライバーで使えれば奴らもドライバーを変える必要もないしな……そこで、

俺が使えるようになるにはこいつが必要というわけか。

ポケットから二つ目の贈り物を取り出し、レモンのロックシードを機器にはめ込むと、

ドライバーと同じようにしっかりとハマった。

……形状的にドライバーのイニシャライズした際の模様が描いてある部分に、

はめられると思うんだがまずはこのプレートを外さないとな。

プレートを外そうとしたときに隣に誰かが座り、ちらっと横目で見ると

いつものダンスの練習着にリュックサックを背負った舞が横にいた。

「あんたのお姉さん……ちょっと心配してたわよ。私の携帯に電話着たし」

「あ、あぁ。悪いな……お前にもいろいろと迷惑をかけた」

「別にお姉さんのことは良いんだけど……なんかあんた、変わった?」

……自分を客観的に見るのも限界はある……いっそのこと今の俺と昔の俺を、

比較した印象を舞に言ってもらうのもありだな。

「今の俺と昔の俺、どう違う」

「……パッと見だけど雰囲気が変わった気がする」

「そうか……そうか」

パッと見た印象で相違だけてもらえたならばほんの少し、成長できたと考えてもいいか。

だが今の俺には他にもやることが大量にできた。

「……ちょっといい?」

「どうした」

「最近ね。ロックシードを使った犯罪が増えてるらしいのよ」

ロックシードを解錠して召喚できるインベスを実体化させるには、

戦極ドライバーがないとそれは不可能なこと。

「つまり、インベスが実体化して暴れているのか」

そう聞くと舞は何も言わずに悲しそうな表情で首を縦に振った。

いくら数人の人間が名誉回復のために必死に動いていたとしても、

大部分の人間が名誉を汚すようなことをしていればほかのやつらまで、

その影響は及ぶ。

「それになんだか裏ワザみたいなものが流行ってるらしくて」

その裏技とやらでインベスを実体化させているというわけか……おそらく、

その情報をまいたのはユグドラシルの連中、もしくは偶然に成功したものを、

誰かがネットに流布したかだ。

「せっかくみんなでダンスをしようってしてるのにこれじゃ意味ないよ」

舞はよほど悔しいのか服をギュッと握りしめながら歯を食いしばった。

俺はその姿を見て、何も考えずに舞の手を取った。

「け、健太?」

「……俺がお前たちの名誉を回復する。必ずだ」

「い、いいよ。あんたはもうビートライダーズじゃ」

「やらせてくれ……俺もビートライダーズだ」

過去に俺はチームガイムの所属していたこともあるがチームの用心棒として、

戦いを重ねていく毎に俺はこのゲームにのめり込んでいたんだ。

「っっ!」

その時、非常事態を告げるけたましいサイレンの音が響き渡り、

慌てて周囲を見渡して見ると交差点を挟んだ先にある宝石店から、

大量の宝石を持ったインベスが店内から出てきてそのままどこかへと走っていく。

……ロックシードを使えばインベスを操れるしな。

俺は去っていくインベスの後を追いかけていくと舞も俺の後を追いかけてきた。

インベスの後を追って100メートルほど進んだところに廃墟となった建物があり、

その中へインベスが入っていった。

扉を蹴飛ばし、建物の中へ入るとレッドホットの連中が大量の宝石を前に、

醜悪な笑みを浮かべてロックシードを握っていた。

「何してんのよあんた達!」

「あれぇ~? ガイムの連中じゃん」

「ヤバ~イ。ブラーボさんたすけてー! ハハハハハハ!」

ヘラヘラとした表情をしながら近づいてきて、俺の近くで醜悪な笑みを浮かべて、

声を上げて笑うと両手をあげて元の場所に戻った。

「お前ら、自分がやっていること理解してんのか」

「当たり前だろ。どうせ俺たちはこの街の悪者なんだから何やっても一緒だっつうの!

だから、こうやってインベス使って効率よく金を稼いでんだよ」

「あんたたちみたいなのがこんなことしてるから他のみんなも悪者扱いされるのよ!」

舞の涙ながらの叫びも奴らの耳には入らないのか、

小さな宝石を一つ取って、俺達の近くへ投げてきた。

「あんた、俺たちと組まねえか? これ以上の金が入るぜ?」

「……お前達がやってんのは犯罪者と同じなんだぞ」

「どうでもいいんだよ! もう俺達の人生終わってんだよ! 他の連中も、

バイトクビになったり、カツアゲにあったりしてんだよ。良いよなんたたちは。

それを跳ね返せるだけの力があって」

そう言い、レッドホットのリーダーらしき男がポケットから、

マンゴーのロックシードを取り出した。

……ユグドラシルの連中はこの目の前の状況を知ってもなお、

ビートライダーズを矢面に立たせてヘルヘイムの森の研究を続ける気なのか!

「リ、リーダー。流石に上級のリミットカットはヤバいんじゃ」

「良いんだよ! こいつの持ってるドライバーさえ手に入ればシドから、

大量にロックシードがもらえるんだからよ! 行け!」

『ソイヤ! オレンジアームズ・花道・ON・ステージ!』

奴が解錠したと同時に変身を終え、クラックから出現した赤いライオンのような、

インベスを空中にいる間にトリガーを引いて弾丸をぶつけ、地面に叩き落とした。

地面に落ちたインベスを無理やり起き上がらせ、オレンジの刀で斜めに一閃し、

蹴りを入れてレッドホットの連中めがけて蹴り飛ばすと連中は慌ててその場から飛び退いた。

「何やってんだよ! さっさとやれよ!」

インベスはどうにかして起き上がろうとするがその前にトリガーを引いて銃弾を装填し、

一発直撃させて起き上がるのを阻止し、もう一度起き上がろうとすれば、

もう一度ぶつけての繰り返しを続けた。

5回ほどやったところでインベスはなかなか起き上がれないほどにまで傷ついた。

「こいつをやったら……警察だ」

『オレンジスカッシュ!』

「だあぁぁ!」

ブレードを一回降ろしてライオンのようなインベスに近づき、

回し蹴りを食らわし、地面に着地した時におれの足元にロックシードが転がってきた。

それを手に取ろうとした瞬間、ロックシードから電流のようなものが発せられ、

その直後に真っ二つに割れた。

……こんなこと今までにあったか?

『オオォォォォォォォォォォォ!』

「っっ!」

その直後、ライオンのインベスが咆哮を上げて立ち上がったかと思えば、

背中から小さな翼、両手には鋭い爪を生えて先ほどよりも筋肉が以上に膨れ上がった。

「うぉ!」

「きゃぁ!」

インベスは翼を羽ばたかせて、俺に体当たりをかました後に、

壁を突き破って外へと飛んで行った。

「舞、お前は帰ってろ。俺はあいつを潰す」

「う、うん」

俺は先に舞を帰らせ、バイクを使って空を飛んでいるインベスを追いかけると、

インベスは少し離れたところにある海辺の人が集まっているオープンカフェに降りると、

近くにいる人々を襲い始めた。

俺はすぐさまバイクを降り、インベスを蹴り飛ばして人々から突き放した。

「かなり様が変わったな……その姿が本来の姿なのか?」

インベスが咆哮を上げ、俺に向かって走ってくるが引き金を引いて弾丸をぶつけるも、

一切、止まることなくそのまま突き進んできて俺にタックルをかました。

「ぐっ! なんだこの力!?」

足で踏ん張り、なんとかインベスの突進を受け止めるも両手の爪で連続で切られ、

腹部を蹴られて、数歩後ずさった。

すぐさま体勢を立て直して奴に近づき、オレンジの刀で切り裂くが、

火花が散っただけで奴は何とも思っておらず、

手に生えた鋭い爪で俺を切り裂き、蹴りを入れてきた。

「だったら!」

『ソイヤ! パインアームズ・粉砕・デストロイ!』

「うらぁ!」

パインへとアームズを変えて、アイアンを思いっきり奴めがけて振り下ろし、

直撃したところまでは良かったがよほど相手の筋肉の方が硬度が上だったのか、

そのまま俺のところに帰って来て、俺に直撃した。

「っ! どらぁ!」

再び、オレンジへと戻し、俺に向かって突撃してくるインベスの攻撃を、

姿勢を低くして避けながらすれ違いざまに刀で切り裂くと一瞬だけ怯んだが、

また、俺に突っ込んできてタックルで姿勢を崩された直後、

隙だらけの腹部を爪で一閃された。

が、俺が後ろへ後ずさったせいか腹部ではなく、

爪の攻撃がドライバーに直撃し、プレートが外れた。

っっ! ちょうど良い!

すぐさま奴から離れてサガラから貰った機器をプレートがあった場所に、

はめ込むとうまい具合にはまり込んだ。

『レモンエナジー』

レモンのロックシードを解錠し、新たに追加した機器にはめ込んで、

ドライバーにはめ込むとオレンジのロックシードのロックも同時に外れた。

『ミックス! オレンジアームズ・花道・ON・ステージ! ジンバーレモン・ハハー!』

二つをロックし、ブレードを降ろすとオレンジと、

レモンのロックシードが同時に展開されるとともに、

オレンジの鎧がアームズへと戻り、その時に突進してきていたインベスを吹き飛ばし、

上へと射出されると上空で待機していたレモンのアームズと、

俺から離れたオレンジのアームズが合体し、

新たなアームズが俺の覆いかぶさって展開されると、

まるで陣羽織のような鎧が俺を包み込んだ。

そして手には新世代ライダーと同じ赤色の弓が握られていた。

「……これが新たな力か……はぁ!」

インベスの特攻を姿勢を低くして避けながらもすれ違いざまに弓で切り裂くと、

さっきは一瞬ひるんだだけのライオンインベスが一度、切り裂かれただけで、

体勢を大きく崩して地面に倒れ込んだ。

「はっ!」

インベスから下級が数発放たれてきたがそれらをすべて弓で叩き落とし、

インベスめがけて矢を数発放つとすべて直撃し、地面に倒れ伏した。

さらに追撃で倒れているインベスに弓を何度か叩きつけ、無理やり起こして、

下から上へ弓を振り抜いてインベスを切り裂くとそのままの勢いを利用して、

インベスは空中へと上がった。

「トドメだ」

『ロックオン』

『オレンジスカッシュ!』

レモンのロックシードを機器から外し、弓の窪みにはめ込んで、

ブレードを一回降ろすとインベスへの通路を描くように、

何枚もの輪切りにされたオレンジとレモンが交互に並んで出現した。

「はぁ!」

『レモンエナジー』

そのまま元を引き絞り、引き絞った元を離すと矢が放たれて、

輪切り状のエネルギーの板を通過していき、

そのままインベスへと直撃した瞬間、大爆発を上げて消滅した。

「…………」

俺はあまりの高威力に驚きのあまり、呆然として立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕―――――呉島光実は兄さんに連れられてヘルヘイムのかなり奥にある、

この世界の真実という場所にいた。

それを見てようやく僕は理解した……ユグドラシルがなぜ、情報を開示しないのかを。

今、目の前の情報を開示すれば街は一気に大パニックになる。

「光実。どうする……戦うか、戦わないのか」

「……兄さん……僕は戦う」

そう言い、兄さんの手を取って立ち上がった。

「ユグドラシルへようこそ、光実」




何か来週のガイムがめちゃめちゃ面白そうなのは俺だけ?

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