仮面ライダー鎧武 Another hero   作:kue

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第十三話  戸惑い

僕――――光実はチームの拠点でメンバーと一緒にダンスの練習をしていた。

でも、ビートライダーズの悪評がはびこっている今の現状では前みたいに、

フリーステージでお客さんの前で踊るということは少なくなっていた。

そんなことよりも……僕は少し、舞さんに怒りというか……疑念みたいな奴を感じていた。

確かに舞さんは健太さんのことが大嫌い……でも、流石に、

接触禁止令に似たものを出す必要があったのかと。

嫌いなのは分かるけど形はどうあれ、僕達のチームは健太さんに、

救ってきてもらったわけで……裕也さんがいなくなった日以来、

バロンやブラーボなんかの驚異から救ってきてもらった。

「舞さん、ちょっと良いですか?」

「ん? どうしたの、ミッチー」

「健太さんに接触禁止令は少し、やり過ぎじゃないですか?」

「……ミッチーもそう言うの?」

僕も……ってことは他にもいるのかな。

「チャッキーやリカたちにも同じこと言われたの。

やり過ぎなんじゃないかって……でも、あいつはずっと私達を」

「ですが形はどうあれ、僕たちは救われてきました。もしも、

健太さんに救われていなかったら今頃、

一位になるどころかチームの存続さえ、危うかったですよ。

確かに健太さんは過去に僕たちに迷惑をかけた……舞さんはその過去を、

都合よく使って使いたいときだけ健太さんを使って、嫌なところが少しでもあったら、

不必要なものみたいに投げ捨てる……それはいくら嫌いた人でもやってはいけませんよ」

そう言うと舞さんは何も言えなくなり、嫌そうな顔をしながらソッポを向いた。

健太さんの追い出したあの日、舞さんは怒りのままに僕を通して、

接触禁止令なるものを健太さんに出した。

確かに舞さんに反抗できずに舞さんの目の前でメールを送った僕にも責任はある。

でも、あの人の僕たちにしでかした過去を使って都合よく使うなんてことは、

被害者の立場である僕達がしていいことなんかじゃない。

「……少し散歩行ってくる」

そう言って舞さんは荷物を持って拠点を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『パインアームズ・粉砕・デストロイ!』

「はぁ!」

イチゴアームズからパインアームズへと姿を変え、固い体表をしているインベスを殴りつけ、

怯ませた隙に襲われていた幼い少年とその母親を引っ張ってインベスから離れたところまで運び、

インベスがこっちに突っ込んできたと同時にブレードを二回降ろし、

アイアンを投げつけるとインベスにワイヤーが絡まり、動きを封じ、

腰のホルダーの刺さっていた刀を手に取り、空高く跳躍して勢いを乗せたまま、

縦にまっすぐ切り裂き、親子から離すように空中へ蹴り飛ばした直後、

爆発を起こして消滅した。

右方向を向くとコンクリートの壁に横に開いたクラックがあったが徐々に閉じかけており、

既にインベスが出て来られるような大きさではなかった。

「だいじょ」

「触らないでください!」

それを確認した俺は変身を解除し、襲われていた親子のもとへと向かい、

手を差し伸べるが母親である女性に叩かれ、子供を抱きしめてそのまま慌てて去っていった。

最近、インベスによる市民へ襲いかかるという事件が多発しており、

メディア全般はロックシードを悪用しているビートライダーズの責任だと煽っており、

それを鵜呑みにした連中に今のように嫌われているわけである。

さらに光実からの話ではアーマードライダーが主犯となっているらしい。

俺としてはバカバカしいという理由で一蹴できるが……学生の舞や光実には、

この風評被害は学生生活に甚大な被害を与えている。

それに最近、ステージを見に来る客の人数も異常なまでに減っており、

中にはステージで踊るのを妨害するような行為も最近、チラホラと目につく。

それに加えるように最近、クラックが開いているのに遭遇する機会がかなり多くなった。

「……舞」

バイクで通り過ぎようとしたとき、ふと見覚えのある服が見えたので、

バイクを止めてすぐ近くまで行ってみるとそいつはガイムの実質リーダーの舞だった。

舞は川原で顔を腕で隠すようにうずめながら座っていた。

「……全部、ロックシードがあるからいけないのよ。そうよ!

ビートライダーズがロックシードさえ、全部捨てたらこの街の人も、

ビートライダーズは何もしてないって分かるはず」

いきなり何かを思いついたらしく、急に立ち上がって大声で叫び始めた。

……こいつ、俺が後ろにいること気付かないほど、考えていたのか。

だが、ビートライダーズが市民の敵として認知されている理由は恐らくだが、

インベスを利用して町を破壊したり、人々を襲わせたりしていると誤解されているからだろう。

その誤解の種であるロックシードさえ手元から破棄すれば、また元に戻る……か。

「無駄だろうな」

「っ! け、健太」

後ろからそう言うと肩をビクつかせてこちらの方を振り返った。

「例えチームガイムがロックシードをすべて破棄しようと他の連中に言っても、

ほとんどの奴らが破棄しないだろう。

仮に俺たちだけが破棄しても他の奴らが破棄しない限り、

ガイムも他の連中と同じこの街の敵だと認識されるだろうさ。

それに全員に言ったとしてもそう簡単に、

はい。分かりましたっていうような連中ばかりだと言いきれるか?」

そう尋ねると舞は何も言わなくなって俯いた。

少なくともダンスをしたいと理由からビートライダーズになった奴はごく少数派だ。

ほとんどの連中はダンスなど二の次で一番の目的はただ単にロックシードを使っての、

インベスゲームをしたいだけの連中だ。

そんな連中が素直にロックシードを捨てるということに同意するはずもない。

「……仮に……仮によ。もしも私がミッチーに、

ベルトとロックシードを捨ててって言ったらミッチーは捨ててくれる?」

「…………」

どう答えればいいんだか……光実は恐らくだがこいつのことが好きだろうし、

好きな奴を護ることのできる力が手に入ればそいつはその力をなかなか捨てることはできない。

そいつを護るって言う快感を覚えたからな……まあ、あいつの性格を考えれば、

もしかしたら舞の言うとおりに捨てるかもな。

「キャー!」

悲鳴が聞こえ、その方向を見ると上級インベス、下級インベスがそれぞれ三体、

クラックから飛び出し、通行人に襲いかかっていた。

すぐさまドライバーを腰に装着し、ロックシードを解錠し、

走りながらドライバーにセットした。

「変身!」

『ソイヤ! オレンジアームズ・花道・ON・ステージ!』

『オレンジスカッシュ!』

「退け!」

ブレードを降ろすと同時に跳躍し、空中で変身を完了させて落下する勢いを利用して、

オレンジの刀を思いっきり振り下ろすとそのまま下級インベスを真っ二つに切断した。

『オレンジオーレ!』

さらに連続で二回ブレードを降ろし、ホルダーに入っている刀を手に取ると、

刀身にオレンジ色のエネルギーがたまり、その刀で残っていた二体の下級インベスを切り裂き、

消滅させ、襲われていた奴をインベスから離した。

「くっ!」

上空を飛翔しているコウモリが他のインベスからの連続火球が地面にあたり、

目の前が見えなくなったかと思えば、連続して何かに切り裂かれたかのような衝撃が走り、

さらに突進を喰らって軽く吹き飛んだ。

「調子に乗るな!」

オレンジの刀とトリガーつきの刀をドッキングさせ、薙刀に変え、

前方から突っ込んでくる上級インベス二体の攻撃を同時に受け止めるが背後から、

何かで切り裂かれたような衝撃が伝わり、後ろを振り返るがその隙に、

前にいた2体のインベスの攻撃をまともに受けて、数歩後ずさった。

『あんたは自分が一番、強いと思いこんでるのよ!』

戦いのさなかにも拘らず、以前、舞に言われたことが頭の中に響いた。

……思いこんでなどいない!

薙刀で振り下ろされてくる二体の腕を弾くと同時に素早く、

薙刀を横に振り抜き、二体を切り刻んだ。

『オレンジスカッシュ!』

「消えろ!」

ブレードを一回降ろし、オレンジ色の刀にエネルギーを溜め、

二体の上級インベスの攻撃を避けつつ、すれ違いざまに切ると爆発し、

消滅するが上空から何発もの火球が俺に向かって落ちてくるが、

それら全てを薙刀で弾き、奴めがけて跳躍した。

『オレンジスカッシュ!』

「だぁぁぁ!」

エネルギーがたまった足で回し蹴りを奴に与えると地面に落ちていき、

爆発して消滅した。

「……」

周囲にクラックが開いてないことを確認してから変身を解除すると、

前方から舞が俺に近づいてきた。

「今のあんたを見て分かった……私が何を言ってもミッチーも、

そしてあんたも他の連中もロックシードを捨ててくれない……そうだよね。

皆インベスゲームしか目にないんだし、本気でダンスをしてる方がおかしいよね」

「…………だったら」

“やめたらどうだ”……そう言おうとしたのだが何故か、その後の言葉が続かなかった。

ついこの前の俺ならいとも簡単に言えた言葉が今の俺にとっては何故か、

言うことのできない言葉となっていた。

なんでだ……なんでこの後の言葉が言えない。

「だったら何? 前にあんたが言ってたみたいにダンス止めて勉強しろって?

……それも良いかもしれない。もう……この街じゃ」

「違う。だったら本気で踊りたいと思っている奴を集めて別のチームを作ればいい話だ。

ロックシードも使わない、ランキング争いにも関心を示さないチームを」

そう言った瞬間、俺も目の前の舞も驚いてしまった。

俺自身もこんなことを言うとは思わなかったし、舞も俺がダンスを勧めるようなことを、

言うとも思っていなかったんだろう。

「……お前が本気で踊りたいって言うなら新しいチームを作らなくても、

ガイムが変わればいい。ガイムを中心にして徐々に周りを変えていけばいいんじゃないのか」

「……そうだよね。何あたし弱気になってんだろ……ガイムがまず変わって、

その後に周りを変えていけばいいんだよね……健太。この前の接触禁止令は言いすぎた。

私はただ単にあんたの過去を使って都合が良いようにあんたを使ってただけだった……ごめん」

そう言って舞は笑みを浮かべると早速そのことをみんなに伝えに行くのか、

小走りで去っていった。

……俺は……俺はどうしたいんだ。


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