仮面ライダー鎧武 Another hero   作:kue

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第十二話   調査・収集

「……時間だな」

「はい」

俺と光実はスタート地点に設定した場所で開始時刻となるのを待って、

10時になった瞬間に互いのバイクを解錠し、準備を整えた。

計画としては光実達がロックシードを集めている間に俺は向こうの森について詮索し、

運が良ければメロン野郎のことについても何か分かる……そんな感じだった。

もちろん森の調査ということもあるがその中には裕也の捜索ということも含めている。

「「変身」」

『ソイヤ! オレンジアームズ・花道・ON・ステージ!』

『ハイー! ブドウアームズ・龍砲・ハッハッハ!』

「それ、ワテクシも混ぜてくれないかしら?」

「……凰連」

変身が完了し、バイクに跨ろうとしたときに声が聞こえてそっちの方を向くと、

既に変身を終えている凰連が俺たちに向かってゆっくりと歩いて来ていた。

……どこで情報を得たのかは知らんが……こいつに参加してもらうのは少し面倒だな。

「光実。先に行け、こいつは俺がやる」

「わかりました」

「そうはさせなくって!」

光実がバイクを走らせ、向こうの森へと移動すると同時に凰連が、

5個のロックシードを同時に解除させ、そのうちの2体にロックシードをくらわせて、

2体をAクラスインベスのさらに上の暴走状態に進化させ、

どこで手に入れたのかロックビークルを解錠させて奴も森に行ってしまった。

一体は以前、戦ったことのある個体と同じ種類、

もう一体は巨大なコウモリのような姿をしている。

ちっ! シドか……さっさと済ませてやるよ。

『スイカ! ロックオン』

『ソイヤ! スイカアームズ・大玉・ビッグバン!』

『ジャイロモード!』

スイカのロックシードをドライバーにセットし、ブレードを一回降ろすと頭上から落ちてきた、

スイカの巨大なアームズの中へと入り、形態を変形させ、

まずは初級インベスどもを空中からの連続射撃で一掃させた。

『ヨロイモード!』

「ふん!」

一掃した後にヨロイモードへと変形させ、地上に降り立ってシカのインベスの突進を、

力づくで受け止めると空中に上がっていたコウモリのインベスが何発もの火球を俺にはなってきた。

ちょうど良い! こいつで叩き通してやる!

「うらぁ!」

鷲掴みにしたシカを大きく振りまわして火球を叩き落とすと跳躍して、

空中に浮いているコウモリをシカで思いっきり殴りつけて地面に叩き落とし、

追撃としてハンマーのようにシカで殴りつけるとコウモリが爆発し、消滅した。

「よっと!」

『スイカスカッシュ!』

ハンマー代わりに使っていたシカを殴りつけて吹き飛ばし、

双刃刀を持ってブレードを一回降ろし、相手をスイカの牢獄に閉じ込め、動きを封じた。

「輪切り三昧だ!」

牢獄ごとシカを一度横に切り裂くとそのまま振りまわし、斜めや縦に連続で切りつけると、

牢獄が爆発し、消滅するとともにシカも消滅した。

輪切りどころかみじん切りと言った方が良かったかもな。

「ま、いいか」

スイカアームズから飛び出ると自動的にオレンジアームズに切り替わり、

置いていたバイクに跨って俺も森の中へと侵入すると運が悪いことに、

早速インベスに遭遇してしまったがそのままバイクで吹き飛ばしてその場を去った。

今、あいつらと戦っている暇はないからな……ゲームの時間内に、

この森について何か……あれは。

前方にグリドンが倒れているのが見え、慌ててバイクを止めて錠前の姿に戻し、

変身を解除して太い木の後ろに隠れると、グリドンがだれかと戦闘を開始した。

が、戦っている相手がよほど強いのか一方的なまでにボコボコにやられていた。

……バロンと戦ってもあそこまで一方的にやられることはないし、

そもそもバロンは遠距離攻撃の方法を持っていない……光実でもないから……やつか。

そう考えていると緑の衝撃波がグリドンに直撃し、変身を強制的に解除され、

気を失って倒れた城乃内を何処からともなく現れた銃を持った連中が囲うと、

メロンの指示を受けてか連中が倒れている城乃内を担いで、どこかへと運んでいく。

……予想外の収穫が手に入りそうだ。

俺は周囲にメロンが居ないことを確認し、連中の後を追うことにした。

100メートルほど歩いたところでいくつものテントが張られている場所に到着し、

そこに縦2メートルほどの長さの空間の裂け目が開いており、

そこへ連中が入っていった。

銃を持った連中が辺りを警戒しているだけでなく、

白衣を着た研究者らしい連中も忙しそうに動き回っている。

ユグドラシルコーポレーション……最初から変な会社だとは思っていたが、

どうやら本当におかしな会社らしいな……情報を仕入れたいんだが……ちょうど良い。

ふと、使われていない防護服を見つけ、それを着てテントの中に入ると、

モニターが数台と二人の研究者らしき男がいた。

「ん? お前見ない顔だな」

「まだ日が浅いもんで。よろしくお願いします」

「そうか」

どうやらこの会社の連中はお互いのコミュニケーションは満足にとっていないようだな。

テントの中に設置されている本棚には大量のロックシードが箱に入れられて並べられており、

中にはアーマードライダーが使っているようなものも置いてあった。

……Aクラスのロックシードは数が少ないと思っていたがそんなこともないのか。

ただ、パッと見る限りではスイカのロックシードはかなり数が少ない貴重なものらしい。

ふと、机の上に積み上げられているファイルが気になり、

一番上のファイルを手に取って見てみると、そこにはアーマードライダーとなった、

者たちの細かい素性と顔写真が張られていた。

俺のことも筒抜けか……呉島光実……呉島っていえば沢芽市でも富豪として、

有名なボンボンの家の名前だったはず……まさかな。

「お前、勉強熱心だな~。俺らなんかそのファイル見たこともねえぞ」

「先輩の足を引っ張るわけにはいかないんで……ところでこのファイルは」

「それは上から渡された基本的な情報が入っているファイルらしくてな。

職員は全員、読んどけっていう命令なんだけどどうせ、研究職の俺達が、

モルモットどもに遭遇するはずもないし、全部主任がしてくれるからな」

……モルモット……。

会話を成り立たせながら2冊目のファイルを取り、

中身を見ると俺の知りたかった情報が大量に書かれていた。

ヘルヘイムの森……この森の名前か。それであのチャックみたいな裂け目を、

クラック……ビートライダーズに配られた初期ドライバーは斬月……あのメロンのことか。

斬月のドライバーをもとに開発された戦極ドライバーをディーラーのシドが分配、

管理しておりその実態は……研究を円滑に進めるためのモルモット……。

ファイルには確かにそう書かれていた。

「おい、主任が別のモルモットを見つけたぞ!」

男の言葉を聞き、モニターの方を見てみるとモニターに、

バロンとブラーボの戦闘の様子が映し出されており、

二人の間にカメラ視点……つまりメロンが割り込み、二人を同時に切り裂いた。

『なんだ貴様は!?』

『この森で暴れられるのは困る』

バロンがマンゴーのハンマーをメロンめがけて横薙ぎに振るうがメロンの盾に防がれ、

トリガーつきの刀で斜めに切り裂かれただけでバロンの変身が解除され、

戒斗は気を失って倒れた。

……たったの一撃でバロンを沈めたか……こいつ、

メロンの力を完全に使いこなしている……俺と戦った時は、

全力じゃなかったというのか……じゃあ、

互角に戦えていたように見えていたのも奴が手を抜いていたから……そんなはずはない。

奴はあの時全力だった! 全力で……。

『す、素晴らしいわぁ~!』

…………。

『まるで戦場に咲いている美しい1凛の華。美しく強いその姿はまさに戦場の女神』

『うるさい。はぁ!』

『うあぁぁ!』

メロンもブラーボの発言に生理的な嫌悪を抱いたのかバロンに与えた力以上に、

全力でブラーボを2度切り裂いた。

『せ、せめてお名前だけでも……あぁ』

切り裂かれたブラーボは変身が強制的に解除され、

何故か幸せそうな顔をして気を失って倒れた。

…………丸腰だったとはいえブラーボさえもたった2回の攻撃で沈めた……。

それにしてもモルモットか……つまり俺達はユグドラシルコーポレーションの手のひらの上で、

今まで踊らされ続けていただけという訳か。

「うわぁぁぁ!」

その時、テントの外から叫び声が聞こえ、テントの外をチラッと見てみると、

大量のロックシードを嗅ぎつけてなのか大量の下級インベスが羽を生やした状態で、

外にいた連中に襲いかかっていた。

ふと、モニターの方を見ると既にまた別のモルモットである光実と交戦しているのか、

モニターに光実の姿が映し出されていたがその戦況はあまり良いものではなかった。

「しゅ、主任! 緊急事態です!」

『どうした!?』

「ロックシードを嗅ぎつけたインベスがベースキャンプを襲撃しています! 

すぐに救援をお願いします!」

『すぐにそっちに行く!』

『うらぁぁ!』

メロンがその場を離れようとしたとき、黒影が奴に襲いかかり、

槍で攻撃していくが全てが盾に防がれ、弾き返された。

『あ? 見ねえアーマードライダーだな』

『退け! 貴様と戦っている暇はない!』

叫びながら黒影の攻撃を楯で弾き、さらに楯で殴りつけるとすぐさまこちらへ来るべく、

黒影を放置して走り出すが、それを遮るように黒影が再び攻撃を仕掛けてきた。

『ずいぶん逃げ腰だな! 俺が戦いってもんを教えてやるよ!』

『マツボックリ・スパーキング!』

そう言って3回連続でブレードを降ろし、槍を両手で持つと、

黒影が回転するとともに宙に上がって、

槍とともに回転しながらメロンに向かってくるが楯に阻まれ、

凄まじい音と火花が映像に映った。

『退けと言っているんだ!』

『どわぁ!』

盾を大きく横に振って、黒影を吹き飛ばして今俺がいる場所へ向かおうとするが、

それでも黒影が奴の目の間に立ちはだかった。

……今ので実力の差が分からなかったのか。

『退けと言っているんだぁ!』

しつこい黒影にブチギレたメロンが全力で楯で黒影の顔面を殴りつけて怯ませると、

先ほど以上に殺気が乗った刀で2度3度斬りつけ、最後に大きく横に振るうと、

緑色のオーラが見えるほどの強力な斬撃となり、黒影のロックシードごと、

ドライバーを真っ二つに切断した。

流石にヤバいと感じたのか気を失い、倒れた初瀬のドライバーに何度か触れるが、

既に全壊していると悟ったらしく、こちらに通信を寄越してきた。

『おい、大丈夫か!?』

が、連中は大量のインベスに恐怖し、我先に逃げようとしているので誰も、

通信が来ていることには全く気付かない。

『おい、誰か返事をしろ! 呉島だ!』

「っっ!」

呉……島……だと? まさか……メロンに変身しているやつは……光実の兄……そして、

その兄貴はユグドラシルの主任……光実はユグドラシルの御曹司……なのか。

その時、インベスによってテントが大きく切り裂かれ、

切り裂かれた場所からインベスが顔を表わした。

『ソイヤ! オレンジアームズ・花道・ON・ステージ!』

変身が完了した際の衝撃波で軽く二、三体を吹き飛ばし、テントの外に出てみると、

必死に銃を持った奴らが応戦しているが多勢に無勢でまったく意味がなかった。

その時、俺の姿を見たさっきのテントにいた奴が俺にしがみついてきた。

「た、助けてくれぇ!」

「……モルモット扱いしてせせら笑っていたくせに随分と都合が良いじゃないか」

俺はそいつを突き返し、俺に迫ってくる奴らだけ倒し始めた。

「なんでもする! だから助けてくれ!」

ほぅ……なんでもか。

「だったら現時点で貴様らが持っているロックシードの全て、

そしてテントに置かれているすべてのファイルを俺によこせば救ってやらなくもない」

「そ、それは……」

「なら俺は帰るぞ」

そう言うと死にたくはないのかテントに置いてあるロックシードをかき集め、

段ボールの箱いっぱいに入れ、さらにもう一つの箱に、

ファイルを全て入れて俺の足もとに置いた。

「契約成立だな」

『ソイヤ! イチゴアームズ・シュシュっとスパーク!』

両手にクナイを持って連続で投げていき、逃げ遅れている連中に、

襲いかかっている個体をすべて消し去るが数が多すぎる上に、

空中を飛んでいるのが非常にめんどくさい。

パインのアイアンで一気に潰すのも良いがそれだと面倒だな。

『ロックオン・一・十・百! イチゴチャージ!』

トリガーつきの刀にイチゴのロックシードをはめ込んで刀を上めがけて横に振るうと、

大量のクナイの形をしたオーラの塊が飛んでいき、一気にインベスを消していく。

それを何度かしてかなりの数を消し去るが向こうの防御網を突破した個体が何体も、

俺達の世界へと流れ込んでいった。

「だったら!」

『ソイヤ! スイカアームズ・大玉・ビッグバン!』

『ジャイロモード!』

足もとにあるファイルが入った段ボール箱を抱えてロックシードが入った段ボールから、

スイカのロックシードを取り出し、解錠してドライバーにはめ込み、

ブレードを一度降ろすと俺の背後にスイカアームズが落ちてきて、

それに箱を持ったまま乗り込んで浮遊しながら残っている個体を、

ジャイロモードの指先から放つ弾丸の一斉射撃で消し去り、

流れ込んでいった連中を追いかけてチャックを通るとどこかの施設らしく、

広いホールだった。

「主任! インベスは上です!」

……俺はメロンじゃないんだがまあ良いか。

指示通りに上空へ上がるとゲートが開き、そのまま外に出るとそこは、

ユグドラシルタワーの真上だった。

なんでチャックがユグドラシルタワー内部につながっているのか気になるが今は後だ!

「消えろ!」

ジャイロモードの出力を最大限に放出して高速で回転しながら、

周囲を一斉に射撃し、周りにいたインベスを次々と葬っていくが、

残った連中が一気に俺にしがみついてきた。

『大玉モード!』

『ヨロイモード!』

空中で一瞬だけ大玉モードへと変化させて、インベスがしがみついていた部分を消し、

インベスを離すと一瞬でヨロイモードへと形態移行し、

双刃刀を振りまわして一気に十体を切り裂いた。

「残り五体か」

そう言った直後、突然ユグドラシルタワーからレーザー砲のようなものでてきて、

宙にいるインベスをタワーに撃ち落とした。

驚きながらもタワーを滑りながら残っているインベスどもを連続で、

切り裂くと連続した爆発が俺の背後で起きた。

「……終了」

『素晴らしい戦闘センスだね』

突然声が響いたかと思えば、俺の目の前に白衣を着て、

銀のメッシュが入った男性のホログラムが現れた。

「……」

『スイカアームズをそこまで扱いこなせるのは貴虎と君ぐらいだろう。

それにしても研究員を脅してロックシードと我々の情報を盗むなんて酷いな~』

「お前達があそこに置いてある方が悪い」

『これは失敬。次回からは襲撃ということにも気をつけよう……そんなことよりも君。

随分と他人を見下しているんだね~』

……こいつもか。なんでどいつもこいつも皆口をそろえてそう言うんだ!

『普通、あんな状況になれば反抗はすれど脅しなんかしない……いや、出来ないはずだ。

なんせあれほどの大量のインベスが襲って来ていたからね。

それができたということは君はあの研究員を最初から見下しているから、

あんな状況でも脅しをかけることができた……一つ君に言っておこう。

井の中の蛙、大海を知らず……いつまでも他人を見下していると、

いつか見下していた他人に絶望させられるよ』

その言葉を最後に男性のホログラムは消え去った。

もうここにいる意味は何もないので俺はジャイロモードへと形態移行させ、

ユグドラシルタワーから去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『今日は楽しんでいこう!』

夜、予定していた時間から三十分ほど遅れて舞の一声からクリスマスステージが開催された様子が、

サガラの海賊チャンネルを通じて生中継されていた。

あのあと、俺が残していた大量のロックシードが入った段ボール箱は、

遅れてやってきた光実によってすべて回収され、

圧倒的大差をつけてチームガイムが一位の座を手に入れた。

まあ、シドとの契約により、回収したB以上のすべてのロックシードは奴の手に渡り、

恐らくユグドラシルに再び戻っただろう。

だが今回のゲームのおかげで予想以上に情報を仕入れることができた。

まあ、研究員に手渡されているようなファイルなので機密クラスの情報はないが、

それでも向こうの基本的な情報は知りえた。

俺達が言っていたチャックのことをクラックと言い、向こうの森の名前をヘルヘイムの森、

そして俺達をモルモットとして行われている実験のこと。

だが一つ気になる点があった。

ヘルヘイムの森の果実に関する部分だけに不自然に大量の空白が入っていた。

……何もなければいいが……。


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