仮面ライダー鎧武 Another hero   作:kue

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第十一話  苦悩

「ふあぁぁ~」

俺――――三直健太は欠伸を噛みしめながら日雇いのバイトを終わらせ、

家までの帰り道を歩いていた。

以前、舞にブチギレられた日以来、拠点に近づくことを禁じる内容のメールが光実を経由して、

俺の携帯に送られてきた。

なので昨日の深夜から今日のお昼くらいまで働いていた……そして、

未だに怒られた理由が分からない。

俺が他人を見下している……全く理解できない。

考えれば考えるほど、何故か苦しくなってくる……いったい、俺の何が悪いのか。

何故、舞達は怒って俺に接触禁止令に近いものを出したのか……考えれば、

考えるほど泥沼に入っていく。

その時、俺の近くを子連れが通り過ぎた時、女の子が俺のことを指さした。

「あ! ねえ、ママ見て!」

「こら! 見ちゃダメ!」

そう言い、母親らしき女性は女の子の手を引っ張って逃げるように去っていった。

……なんで逃げるんだ。

『そうやってあんたはいつまでも他人を見下してしか生きていけないのよ!』

その時、頭の中で以前、舞に言われた言葉が何度も反復してきて、

また苦しくなってきた。

俺は……俺が何をしたって言うんだ。

「キャー!」

撒こうとした瞬間に後ろから悲鳴が聞こえ、振り返ってみると女性の頭上に、

縦にチャックが開いており、そこから初級インベスが五体ほど出現し、

襲いかかろうとしていた。

足元に転がっていた石ころを足で掬いあげ、膝の高さまで上がったところを、

インベスめがけて足を振り抜くと小石が相手の顔面に直撃し、

女性に一番近づいていた個体の動きを一瞬だけ止め、その隙に女性二人を後ろへ下げた。

『オレンジ!』

「変身」

『ソイヤ! オレンジアームズ・花道・ON・ステージ!』

オレンジのロックシードを解錠し、ドライバーにはめ込んでブレードを降ろすと、

錠前が半分に割れ、上空に浮いていたオレンジのアームズが俺にかぶさり、

数秒で変身が完了し、右腕にオレンジ色の刀を、

左手で腰に付いていたトリガーつきの刀を引き抜き、トリガーを引いて弾丸を装填し、

一番近くにいた二体のインベスに直撃させ、余っている他の三体に突っ込んでいき、

二本の刀で切り裂き、最初の二体とは離れた場所へ吹き飛ばした。

「まずはお前たちからだ」

『オレンジスカッシュ!』

ブレードを一回降ろすとオレンジ色の刀にエネルギーが溜められていき、

二体めがけてかけていき、すれ違いざまに二体を切り裂き、

さらにもう一度ブレードを降ろし、二本の刀を投げ捨て、

残っている三体めがけて跳躍した!

「だぁぁぁ!」

残っていた三体を押しつぶすように蹴りを加えたと同時に最初の二体爆発し、

直後に三体も爆発して消滅した。

空を見上げるとチャックは勝手に消滅したのか既に影も形も残ってはいなかった。

近くにビートライダーズいたわけではない……だとしたら自然に開いた穴か……それに、

一気に五体もくるものなのか。

「あ、あのガイムの人ですよね!?」

「……」

受け答えすると面倒なので

『そうやってあんたはいつまでも他人を見下してしか生きていけないのよ!』

……なんでまた、あいつの言葉が頭に響いてくるんだ!

イライラしながらサングラスをかけ、地面に置いていた袋を二つ持って、

女性の問いかけには一切反応を示さずにその場を立ち去った。

他の連中はどうするかは知らんが……俺は大人気の俳優とかじゃないんだ。

いちいち反応を示すのが面倒だ……が、少し向こうの森で色々と調べる必要があるな。

最近、召喚者のいないインベスが人を襲うという事件が増えすぎている……一回、

向こうの森に行って調べるか……連中も気になるしな。

俺はチームの拠点の近くまでバイクで向かい、そこでスマホで光実にメールを送り、

外へ出るように言うとものの数分で出てきた。

「健太さん?」

「少し、向こうの森のことを調べたい。連中のことも気になるしな」

「……あの白いアーマードライダーですか」

そう言った光実はかなり暗い表情をしていた。

奴を目にしたあの時以来、俺と会うたびに時折こいつは思いつめたような表情を浮かべて、

心ここにあらずといった状態が何度か見られた。

あのメロン野郎とこいつが一体、どんな関係なのかについては知らんし、

知る気もないが……どうもただ単に普通の関係じゃなさそうだな。

「でも、どうやって森を調べるんですか? あの白いアーマードライダーも、

本当にあの森にいるのかも分かりませんし」

「いるさ……俺は一回、向こうの森であいつと戦った。おそらく、

今回も森で派手に暴れれば来る……それには他のアーマードライダーの力もいる……そうだな。

ロックシードを大量に手に入れるチャンスとでも言えば集まるだろ」

「…………」

「光実?」

光実はどこか嫌そうな顔をして俺のことを見ていた。

「健太さん……そこが舞さんが怒った理由ですよ。ですが分かりました。

他のアーマードライダーには僕から言っておきます。

インヴィットとレイドワイルドのリーダーのアドレスも知っていますし、では」

そう言い、光実はロックビークルを解錠してバイクへと変形させると、

そのまま拠点地から離れていった。

森に行くにはロックビークルがいるがあれを所有しているのは今のところ、

俺とバロンと光実のみ……あと二つはシドにまた、準備してもらうか。

俺も錠前ディーラーがいるドルーパーズへと向かうべく、

ロックビークルを解錠しようとした瞬間、

コロコロとキャリーバッグを引きずるような音が聞こえ、

その音が聞こえてくる方向を向くと俺が今、会いに行こうとした人物がいた。

「よう、坊ちゃん」

「ちょうど良い。今からお前に会いに行こうとしたところだ」

「俺に何か用かい」

「ロックビークルをもう二つ、それぞれのアーマードライダーに配ってほしい」

そう言うとシドはほんの少しだけ、嫌そうな顔をした。

「あんまり俺も自由にできる位置じゃないんだが……出来るか分からんがやってやるよ」

「そうか……あんたも大変だな。誰かに従うってのは」

「…………」

そう言うとシドは一瞬、驚いたような表情を浮かべて俺の方をみたが、

すぐにいつもの表情に戻し、キャリーバッグを引きずりながら去っていった。

俺は舞から拠点に近づくことさえ禁止されている身なので拠点に入らず、

適当な場所で光実からのメールが来る暇を潰すことにした。

正直、なんで俺があいつの言うことに従わなきゃいけないのか分からないが……。

そんな小さなイライラを抱えつつも光実のメールを待つこと、二時間。

ポケットに入れていた携帯が震え、画面を見てみると光実からのメールで、

内容は全てのアーマードライダーが了承したことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから一時間後、ドルーパーズに全てのアーマードライダーが集まり、

それからさらに三十分ほどするとシドがやって来て、

テーブルの上にロックビークルを二つ、置いた。

「子供の我儘はこれっきりにしてくれよ。大人は色々と事情があるんでね」

「……どこが子供の我儘なんだよ」

「全部だよ。そんなすごい力をもっと欲しいだなんて……子供がよく言うことだ」

「で、俺達を集めた理由は何なの?」

俺とシドの会話に加わるようにインヴィットのリーダーが尋ねてきた。

「簡単に言えば……王座決定戦」

そう言うと僅かながらこの場にいる連中の空気が変わった。

「今のところランキングはガイムがリードしている。次点で他の連中だ。

このまま何もしなくてもガイムが一位になることは自明の理……そこでだ。

どうせならアーマードライダーの最強を決めようじゃないか。

ルールは向こうの森で手に入れたロックシードに点数をつける。

最上位のAランクは10点、Bランクは5点、Cランクが3点、Dランクは2点。

もちろん、自分がもともと所有しているロックシードは含めない」

「ちょっと待て。それならアーマードライダーが二人いるお前達が有利だろ」

「安心しろ戒斗。俺は今回のゲームには不参加だ……俺が参加すれば、

ぶっちぎりの優勝は確定だからな」

「てめえ調子に乗ってんじゃねえぞ!」

俺の一言に相当イラついたのかレイドワイルドのリーダーである初瀬が怒りのまま、

殴りかかってきたがそれを避け、相手の腕を引くと同時に首根っこを掴んで足払いをかけ、

そのまま地面に組み伏せた。

「イダダ! 離せよ!」

「お前ら全員が束になってかかってこようが敵わねえよ。今ので分かったろ」

組み伏せていた状態を解くと未だに納得がいかないのか、

イライラした表情をしながらも肩を抑えて俺から離れた。

こちとら昔から姉貴に武道習わされ続けてるし喧嘩だってやってきてんだよ。

「文句はないな。ゲーム開始は明日の10時。スタート地点はお前達が好きにしていい。

戦わずにロックシードを集めて逃げ切るもよし、全員を叩き潰してから集めるもよし。

とにかくロックシードを集めさえすればいい」

「ロックビークルをやる代わりにB以上のロックシードは全て俺が貰う。

それが嫌ならロックビークルを今すぐに返してもらうことになるが?」

シドの言ったことに数名、嫌そうな顔をしたがどのみちこのゲームが終われば、

好きな時に集めに来ればいいとでも考えたのか反論を出す奴はいなかった。

「じゃ、なにもなさそうだし、俺は帰るわ」

シドが店から出ていったのを皮切り、なにもやることがなくなった連中は店から出ていった。

「あ、光実」

「はい?」

「悪いな。クリスマスステージ間近のこの日に。今日は俺が何でも奢る」

「……じゃあ、お言葉に甘えて」

そう言い、光実は笑みを浮かべて椅子に座ると店員を呼んで俺の分も含めてなのか、

特盛サイズのパフェを二つ頼んだ。

……三千円が飛ぶのか……まぁ、良いか。

「でも、なんでお前はあの白いアーマードライダーを調べたいんだ」

運ばれてきたパフェを食べながら光実にそう聞くとまた、

何かを考えているような表情を浮かべ、パフェを口に運ぶスプーンを止めた。

……聞いちゃいけないことだったのか。

「別に答えたくなかったら良いんだ……光実」

「はい」

「恐らく、今回のゲームの最中にメロン野郎がお前たちに何らかの形で、

手を加えてくるだろう。仮にヤバいと感じたらすぐに森から抜けてくれ」

「わかってます……僕も自分の命が大事ですから」

その後、30分ほど話し合ったところで今日は解散した。


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