「ってな感じだがどうだ?」
俺――――三直健太はチームガイムの拠点地にお邪魔しており、
俺がブラーボ戦時専用の用心棒になるという話をした。
普段のインベスゲームでは俺は何も手を出さないがブラーボが手を出してきた際に限って、
「ふざけんじゃないわよ!」
拠点のガレージ内に舞の大声が響き、俺は想像していた返答と違うことに驚きを隠せず、
思わず紅茶が入っているコップを落としかけた。
「あんた何様なわけ!? 用心棒になるとか言っておきながら、
ミッチーがアーマードライダーになったらまたすぐに居なくなるし、
今の言ったことだって私たちは弱いって見下してるからそう言ったんでしょ!?」
「何を怒ってんだ」
「成功だらけのあんたには分かんないわよ! そのまま一生、
他人を見下して生きてなさいよ!」
そう言われ、腕を舞に掴まれたかと思うと無理やりガレージの外まで引っ張られていき、
外に放り出されるとガレージの扉を思いっきり閉められ、鍵をかけられた。
突然のことに呆然としていると後ろから足音が聞こえ、
振り返ってみると戸惑った様子の光実が立っていた。
「なんか……凄いことになってましたね」
「……俺には分か」
そこまで言いかけた直後、向こうの方から人の叫びが聞こえて、
二人して慌ててそこへ向かっていくと果物を箱を持ったいつもの店の店長が、
インベスに襲われていた。
「変身!」
『オレンジアームズ・花道・ON・ステージ!』
インベスが車から飛び降りたところを狙ってオレンジ色の刀を投げつけると、
綺麗に直撃し、空中でバランスを崩したインベスが頭から落ちた。
「光実。店長頼んだ」
「まかせて下さい!」
光実に店長を任せ、両手に刀を持ってインベスと対峙する。
辺りに召喚者の姿らしき人影も見えないし……まさか、
向こうの森からこっちに出てきたのか?
「どうした? 来いよ」
そう言うと同時に相手が殴りかかってきたがトリガーを引いて弾丸を装填し、
空中にいる間に弾丸をぶつけて地上に叩きつけるとそのまま追撃として、
奴を立たせてひざ蹴りを相手の腹部に入れ、ひるんだところを刀で思いっきり切り裂くと、
火花が散り、相手が空を飛んで俺から離れた。
なんだ飛べるのか……刀じゃ分が悪いな。
『ソイヤ! イチゴアームズ・シュシュっとスパーク!』
錠前をイチゴに変え、両手に持ったクナイを同時に投げつけるがうまい具合に体をずらされ、
二つのクナイは空中で爆発して消えた。
なるほどね。自分の本領は空中でこそ発揮されると。これならどうだ。
『ロックオン・一・十・百・イチゴチャージ!』
トリガーつきの刀にイチゴの錠前をセットし、大きく横に振るうと大量のクナイの形をした、
エネルギーの塊がインベスめがけて飛んでいくが翼を羽ばたかせて全て避けられ、
連続で刀をふるって放つがその全てが避けられ、そのままどこかへと飛び去ってしまった。
……飛べない以上、俺が追いかけても無駄か。
変身を解除し、店長のもとへ近づこうとしたとき視界に握りつぶされたリンゴが目に入った。
……他の果物は狙われた様子はない……リンゴでも喰う気だったのか?
「大丈夫か店長」
「あ、あぁ、しっかしなんで襲われたんだ」
「さあな。不安なら俺も付いていくが」
「あぁ、頼む」
俺と光実はお互いにロックビークルを解錠してバイクへと変形させて、
店長が運転する車の前と後ろについていつもの店まで、
店長が襲われないように注意しながら向かった。
約十分ほど走ったがさっきのインベスが襲ってくる気配もなく、
無事に店の前にたどり着いた。
「ありがとな、お前ら。礼に今日は俺が奢ってやるよ」
一瞬、断ろうかとも思ったが店長がそうそう奢ってくれることもないので、
御言葉に甘えて店長に奢ってもらうことにした。
店内のイスに座り、数分待つと結構豪華目にフルーツが盛り合わされたパフェが運ばれてきた。
「やっぱり美味しいですね……健太さん。さっきのインベスどこから来たんでしょ」
「誰かに召喚されたわけでもなさそうだが……自然に開いたチャックから、
こっちの世界に来たんじゃないのか?」
「そんなことあるんですか?」
「あぁ、俺もつい先日見た」
それに最近、ニュースなんかで人が高い所から急に落ちてきたり、
フルーツを取り扱っているスーパーなんかが襲われて、
けが人が出ているっていうのを見たことがある。
「つまり、最近の事件はインベスが……おそらく食料はあの森にしかないから、
食料になるものを探していたんでしょうか」
「たぶんな」
「……このままインベスを放っておくわけにもいきませんし、
僕たちで何とかしませんか?」
「別に俺は構わんが……お前は良いのか?」
ダンスのステージのこともあるが俺が言ったことには普段の学校のことも含めており、
こいつだって宿題やら復習やら予習やらを……まあ、放っておけないのもまた事実。
「構いません……それで作戦なんですが」
光実からインベスを捕獲し、倒す作戦をパフェを食べながら聞いた。
恐らく、インベスが食料としているのは向こうの森の果実であり、こっちの世界に来てから、
まったく食べていない。それで腹をすかして周囲のものを破壊しながら果実を探しているので、
向こうの森へビークルの能力で飛んでいき、何らかの方法で果実を採取、
それを餌にインベスをおびき寄せて俺達で倒す……要約すればこんな感じだった。
「そうだな……行くか」
パフェも食べ終わり、休憩も済んだところで俺達は店を出ていったん、
人気のない場所へと向かい、そこで変身を済ませてバイクに跨り、
走らせると一定のスピードに到達したところで花びらが大量に舞い、
目の前にチャックが開き、そこから森へと侵入した。
「で? どうやって果実を採取するんだ? 俺達が触れれば、
果実はロックシードになるぞ」
「はい……ですから健太さんと一緒に来たんです」
そう言い、光実は変身を解除してドライバーを外したかと思えば素手で果実をもぎ取り、
ジッパーつきの袋に入れてチャックをした。
……なるほど。素手で果実をもぎ取れば凄まじいほどの食べたいという欲求があふれ出すが、
もう一人がそいつが食べようとするのを阻止するという訳か……。
変身したままの俺が袋越しに果実に触れるが果実はロックシードには変化しなかった。
俺達は互いに頷き、再び向こうの世界へと戻るとインベスをおびき寄せる準備に入った。
準備といってもワイヤーで高い所から果実をぶら下げるだけなんだがな。
「ところでなんで、舞さんはあんなに怒っていたんですか?」
「……舞曰く、俺は他人を見下して生きているんだと」
準備が終わり、隠れてインベスを待っている時に光実にさっきのことを聞かれて、
そのままあったことを話すと光実は苦笑いした。
「舞さん、相当ストレスたまってたんですね……でも、
舞さんの言っていることは間違ってないと思いますよ」
「お前も俺が見下していると?」
そう言うと光実は首を縦に振って肯定した。
「健太さんって頭が良いからなんでもできちゃう人なんですよ……でも、
それゆえに一度も失敗を経験したことがない。その状態で成長して、
自然と周りの人間を見下してしまってる……僕はそう思います。
僕以外の初対面の人間に聞いても似たようなことを言うと思います」
…………。
「あ、きました」
そう言われ、俺は考えていたことを振り払い、目の前に集中すると、
確かにインベスが上空から飛んできて建物の屋上に止まり、
そこから周囲を確認し、安全かと思ったのか果実に手を伸ばした。
「「変身!」」
『ソイヤ! オレンジアームズ・花道・ON・ステージ!』
『ハイー! ブドウアームズ・龍砲・ハッハッハ!』
その瞬間、俺達は同時に変身し、果実を食しているインベスに襲いかかった。
突然の襲撃者に驚き名荒も殴りかかってくるインベスの拳を避けると同時に、
相手の顔面を殴りつけ、怯んだすきにオレンジの刀で斜めに切り裂くと火花が散って、
インベスが空へと羽ばたこうとするが俺の後ろから紫いろの光弾が何発も飛んできて、
インベスに直撃して地面に落とした。
「よっと! 健太さん!」
『オレンジスカッシュ!』
光実がインベスの背後に回って羽交い絞めにした瞬間にブレードを一回降ろし、
オレンジの刀にエネルギーをため、インベスを切り裂こうとした瞬間に相手の口から、
火球が何発も放たれてきた。
「うぉ!」
「わっ!」
とりあえず刀で全ての火球を叩き落とすがその隙にインベスが光実を振り切って、
上空に上がり、そのままどこかへと逃げてしまった。
「また逃げたか」
「大丈夫ですよ。インベスの背中に僕の携帯を張りつけましたから」
「……ほんとお前は裏方仕事がうまいな。とりあえず追いかけるか」
一度、変身を解除して光実の携帯をGPSで探すと画面に反応が示され、
今いる場所からそう遠くない場所で反応が消えた。
「確かこのへんに地下貯水場みたいなとこなかったか」
「そうですね……行きましょう!」
俺と光実はロックビークルを解錠し、バイクへと変化させ、
反応が消えた場所へと向かった。
「ここか」
インベスの反応が消えた場所に向かうとそこは何かの施設が地下にあるらしく、
地下へとつながる扉を開けて中に入り、階段を下りていくと、
太いパイプなどが何本も地下を通っていた。
地下なので携帯の電波も入らない……ん?
「健太さん、あれ」
光実に呼ばれ、そこへ向かうと行き止まりの壁に縦に大きなチャックが開いており、
そこから向こうの森の植物と主わしき物達が繁殖していた。
……いくらなんでも繁殖力が高すぎるだろ。
この入口が年単位で開いているはずもないので恐らく開いたのは今週以内と見て、
間違いないだろうがたった一週間で植物が花を咲かせるくらいにまで成長するのか?
「あのインベスが出てきた穴が閉じ、この世界で迷っていたんだ」
「そうだなっ!」
「わっ!」
後ろから何かが飛んでくる雰囲気を感じ、光実を押し飛ばし、俺もその場から飛び退くと、
先ほど戦闘を行ったコウモリのような姿をしたインベスが飛び込んできた。
「くっ! 変身!」
『ソイヤ! オレンジアームズ・花道・ON・ステージ!』
相手の横殴りに振るってくる腕をバック宙で避けながらブレードを降ろし、
俺が地面に着地すると同時に変身が完了し、それと同時に光実も変身を完了させた。
刀のトリガーを引き、引き金を奴めがけて引くが飛翔し、弾丸を避けた。
「いちいち飛ぶな!」
オレンジ色の刀を相手めがけて投げつけるとそれも避けられるが、
うまい具合に壁に当たって跳ね返り、インベスも予想外の場所から飛んできたのか、
そのまま避けることもできずに刀が翼を切り裂き、地面へと落とした。
体勢をすぐに立て直し、コウモリのインベスが口から五発ほどの火球を、
俺たちめがけて放ってくるがそれらはすべて、
後ろの光実が連続で放たった紫色の光弾で落とされた。
「光実、行くぞ」
「はい!」
『オレンジスカッシュ!』
『ブドウスカッシュ!』
二人同時にブレードを降ろし、オレンジ色の刀にエネルギーをためて、
奴をすれ違いざまに切り裂いた直後に光実が放った紫色のドラゴンのような形をした光弾の塊が、
インベスに直撃し、大爆発を起こして消え去った。
変身を解除し、森の植物が繁殖していた行き止まりの場所へ行くと、
さっきよりも植物が生い茂っている範囲が広がっていた。
「あり得ないですよ。たった数分で広がるなんて」
「……仮にこの植物がこの街全体を覆ったとするなら」
「一匹でも穴からインベスが出てきたらこの街になっている果実を食べて、
この前みたいに巨大化して暴れまわる……出てくるのは一匹とは限りませんし」
例えるならば日本タンポポを喰らい尽くす勢いで繁殖し続けている西洋タンポポ、
琵琶湖に放たれた外来種の生物が元々いた生物を食い荒らし、生態系を崩壊させたように、
最悪の場合、この街は森の果実という外来種によって滅亡する……。
「誰かきます」
光実にそう言われ、物陰に隠れると俺達が来た道を通って、
ユグドラシルコーポレーションのロゴマークが描かれている防護服に身を包み、
手に火炎放射機を持った男たちが次々と繁殖しだしている森の植物を燃やしていく。
「これ以上、植物が繁殖しないように、
水際で食い止めているといった感じですね……証拠隠滅とも取れますが」
証拠隠滅ならわざわざ、社名を見せびらかすようにロゴマークなんか入れない……。
その時、急に防護服に身を包んだ男たちが頭を下げ出し、通路を開けるようにそばによると、
開いた道から以前、俺に襲いかかってきたメロン野郎が歩いてきた。
「長居は無用だな。光実……おい」
「い、いえ。行きましょう」
光実はメロン野郎を驚いた表情を浮かべて見ていたが俺の声を聞き、
いつもの表情に戻り、地上へとつながる道へと向かった。
今日は二話更新です。