決闘者のハイスクール   作:豆肉

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話がやっと進みます。
インフェルノイド強すぎませんかね、墓守じゃ勝てないんですが。


二十五話

今日はなぜか部室ではなく、旧校舎のある一室の前に召集された。

なんでもこの部屋に閉じ込めてあるリアス先輩のもう一人の『僧侶』を連れ出すらしい。

扉は厳重に閉められており封印術のようなものまでかかっている。中にいる者を封印しているようだった。ということは中にいるやつは相当危険な奴ということだろう。

一応神器を出しておくか。

 

「浩次、神器を出す必要はないわ。危険な子じゃなから」

 

そこをリアス先輩に止められる。危険じゃないというならなぜこんな厳重に閉じてあるんだ?

 

「魔王様の命令で命でここに封じられているのですよ。ちょっと特殊な事情がありまして……」

 

朱乃さんが封印を解きながら困ったように言う。魔王命令って……。しかし危険ではないと。よくあるパターンだと自分自身の力を抑えられないとかだろうか。

 

「イッセー何か知ってるか?」

「いいや、知らねぇ」

 

イッセーも何も知らないらしく首を横に振る。ゼノヴィアとアーシアちゃんも同様、何も聞かされてないらしい。

 

「まぁ、簡単に言えば能力が制御できていないんだよ」

 

祐斗は何かを知っている様子だ。能力が制御できず封印か。となるとよほどやばい能力なのだろう。それならなおさら神器をだし、もしもの時に備えたほうがいいのではないだろうか。

 

「やっぱり神器を出しといたほうがよくないか?」

「大丈夫さ。彼に僕らを傷つける意思はないだろうし、直接害を与えるような能力じゃないしね」

 

まぁ俺より確実に悠斗のほうが中にいるやつのことを知っているのだろう、おとなしくしておくか。

 

「開きましたよ」

 

そうこうしているうちに扉の封印解除が終わったようだ。

リアス先輩が扉の前に行きスパァン!と勢いよく扉を開け放つ。

 

「イヤアアアアアアアアぁああswdrftgyふじk○あdtvf;@lp。@;!”#$%&’!!!」

 

扉が開けられると同時に奇怪な悲鳴があたりに響き渡る。初めのほうはまだ分かったが中盤からよくわからない高音になっていた。

この声の高さからして、中にいる僧侶は女だろうか。

その声を無視してリアス先輩と朱乃さんが教室の中へ入っていく。俺達も一瞬顔を見合わせ先輩たちの後に続く。祐斗と子猫ちゃんは若干呆れているように見える。

 

「なな、なんですか!何事ですか!?」

 

中にいたのは金髪赤眼の女生徒。かなり小さい。小猫ちゃんと同じくらいの子だ。

突然の来訪者に驚いたのか教室の隅で縮こまっている。そこに朱乃さんとリアス部長が近づいていきやさしく声をかける。

 

「元気そうで何よりだわ」

「もう封印はとけたのですよ。一緒に外に出ましょう」

 

しかし金髪少女は涙目になりながら首を振るだけ。

様子から見るにかなり臆病な性格らしい。これは刺激しないようにしないといけないな。

 

「うぉおおおお!金髪美少女!外国人だ!!」

 

そんな俺の気も知らずこうした様子でわめくイッセー。おまえってやつは本当に……

大声に驚いたのか金髪少女はさらに縮こまってしまった。その上こっちを怖いものを見るみたいに見てるし。

 

「イッセー」

 

リアス先輩が少し強めに名前を呼ぶ。そこでやっと金髪少女の様子に気づいたようでしまったという顔をする。

 

「あと、この子はれっきとした男よ」

「え?」

 

次に先輩の口から発せられた衝撃の事実によりイッセーの目から光が消えた。

 

「冗談ですよね?」

「本当よ」

「だって女子の制服着てるじゃないんですか!女子ですよね!?」

「男よ」

「嘘だああああああああああああ!!」

 

絶叫しながら地面に崩れ落ちるイッセー。そしてそのまま地面に突っ伏したまま動かなくなってしまった。そんなにショックだったか。

いや実際、俺もかなり驚いた。見た目とか雰囲気とかからてっきり女だと思っていたがまさか男だとは。

 

「嫌ですうううううう!外にでたくありませんんんん!!」

 

そして当の本人は先輩たちの説得も聞かず出ようとしない。なぜあそこまで外に出たがらないのか。

まぁこのまま行っても平行線だろう。いったん外に出しちまえばあとはどうにでもなるだろう。ならなくてもなんとかする。神器を展開し手札を一枚伏せ1分待機っと。

 

「ひっういいいいいいい!?なななななにをする気ですか!?」

 

俺が神器を展開したのを見て怯えまくる。しまった、もうちょい見えないところでやるべきだった。

 

「別に何もしねぇよ。ただちょっと……なぁ」

「嘘だあああああ!絶対何かする気だあああああああ!!」

 

わめき散らしながらそこらに置いてあった段ボール被り防御の態勢に入る金髪少女あらため金髪君。

そんなもんで何が防げるというのか。まぁまだ時間はあるし、とりあえずコミュニケーションでもとりますか。ここで少しでも仲よくなっておけば、こいつだって外に出やすくなるだろうしな。

 

「浩次」

 

リアス先輩にあまりいじめるなといった感じの目を向けられる。別にいじめるつもりはないが、こう避けられては多少強引でもこちらから近づく以外、親密になる方法はない。外に連れ出すためだと思って見逃してほしい。

段ボールに近づきノックのように三回たたく。

 

「ひぅっ」

 

段ボールがビクリと動く。

 

「おまえ、なんで外に出たくないんだ?」

 

とりあえず今一番気になっていることを聞く。もしちゃんとした理由があるなら、それさえ解決してやれば外に出てくるだろう。

 

「だって外は落ち着かないし、太陽ありますし、危険で怖ですし……」

 

落ち着かない、危険で怖いは典型的な引きこもりの考えだが太陽があるしってなんだよ。そんなに太陽が嫌いか。吸血鬼かお前は。

 

「それに、僕は能力がうまく使えないからみんなに迷惑かけます」

 

能力が使えこなせてないってのも出てこない理由の一つか。ならそこを重点にして説得をしてみるか。

 

「外に出て特訓すれば、その能力もうまく使えるようになるかもしれんぞ?」

「無理ですうぅ。僕なんてどんなに頑張ったって……」

「俺もちゃんとサポートするから」

「できっこありません」

「やらなきゃわからんぞ」

「やらなくてもわかりきってますうううう」

「……外には楽しいこともたくさんだぞ?」

「でも危険もいっぱいです」

「……俺が守ってやる」

「いいですぅううう。一生この部屋で住んでいたんですぅうう」

「……『スキルドレイン』」

 

伏せてあるカードを発動する。

 

「いい加減にしやがれこのちびっこがあああああああああああ!!」

 

金髪が隠れ蓑にしている段ボールを無理やり引っぺがす。それと同時にまたしても絶叫がこだまする。

 

「イヤアアアアアアアアア!!返してえええええ!!」

「やかましい!うだうだ言ってないで一回外出ようぜ!?話はそれからだ!」

 

段ボールを頭上に掲げとられないようにする。金髪君はそれを取り返そうとピョンピョン跳ねるがこの身長差で届くわけがない。しばらくやっていると金髪君の目が怒りを含んだものになった。おそらく何かする気だろう。

 

「返してください!!」

 

当たりが静まり返る。しかしそれだけ、金髪君のわめく声がなくなり静かになっただけである。

 

「……あれ?」

 

本人も何が起こったのかわからず困惑している。先輩たちも本来だったら何が起こるのかわかっていたようで、何も起こらなかったことに対し狼狽えている。

まぁ種明かしと行きますか。

 

「おまえは何かをしようとしたんだろう。悪いがそれを封じさせてもらった」

「ど、どうやって」

 

この様子を見るにこいつの能力は本来そう簡単に防げるものではないのだろう。

しかしこいつの能力がどんなのであれ、俺にはありとあらゆる能力の発動を封じるすべがある。

ディスクにセットしたカードを見せると金髪君はそれを不思議そうに眺めた。

 

「こいつは『スキルドレイン』って言ってな。まぁわかりやすく言えばあらゆる能力を発動できなくする効果がある」

「え?えっ?」

 

まだ状況が呑み込めてないみたいで疑問符を浮かべおろおろしている。

 

「相変わらず何でもできるのね……」

 

リアス先輩が呆れたようにいう。

 

「しかし、それでは浩次君の神器はなぜ発動しているのですか?」

 

朱の先輩が不思議そうに尋ねてくる。

 

「俺の神器には影響がないんですよ」

 

だいたい俺の神器までに影響があったら、こんなものただの欠陥品だ。スキルドレインを出したら自分の神器まで消えた、なんて笑い話にもならない。

 

「まぁそういうことでだ」

「うえぇっ!?」

 

まだ困惑している金髪君を拾い上げ。出口へと進む。

状況を理解したのか金髪君がまたわめきだす。

 

「嫌ですううう!放してください!外はイヤアアアアアアアアア!!」

「フハハハハハハハッ!逃げられんぞぉ~!」

 

バタバタと暴れるが所詮、ちびっこのもやしっ子。

抵抗するだけ無駄というものだ。

出口まで着くとひょいっと廊下に放り出す。そして受け身も取らず金髪君はしりを強打した。

そして部屋の入り口に立ち、金髪君を見下ろしながらできるだけ優しくほほ笑む。

 

「脱引きこもりおめでとう」

「イヤアアアアアアアア!!」

 

そしてまた絶叫が旧校舎に響き渡る。

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって部室。何とか金髪君を外に連れ出すことには成功したが一向に心を開いてくれない。

 

「なぜだ」

「……無理やりなことをしたんですから当たり前だと思いますけど」

 

小猫ちゃんから鋭い突込みが入る。

 

「とりあえず自己紹介だけでもしないか?」

「そうねそうしましょう!」

 

リアス先輩もその提案に賛成してくる。なんだか無理やり明るくしようとしている気もするが、まぁしょうがないだろうな。この状況じゃ。

 

「俺は草間浩次、2年生だ。『兵士』をやっている。一応神器もちで、だいたいのことはできるから何か困ったら言ってくれ」

「えっと……アーシア・アルジェントです。あなたと同じ『僧侶』なんですよ!傷とかできたらすぐ治してあげますから!仲良くしましょうね!」

「ゼノヴィアだ。『騎士』をやっている。力仕事が得意だから、何かあったら呼んでくれ。手伝おう」

 

俺たち新参組はできるだけ明るく自己紹介をする。段ボール箱に向かって。

 

「……おい」

 

箱がビクリと反応する。そして少しだけ床とはこの間に隙間を少しだけ作る。

 

「ギャスパー・ヴラディです。吸血鬼です。えっと時間を止める神器を持ってます」

 

それだけ言うとぱたんと隙間を閉じてしまった。

 

「いい加減にしろやあああああああ!!」

 

箱を引っ掴み思いっきり窓の外に放り投げる。

 

「僕の段ボール!」

「なんで部屋の外に来てまで引き込まってるんだ!いい加減腹をくくれ!」

「無理ですううううううう!!」

 

まったくここまで来てまだ言うか。こいつは根本からの引きこもりだ。一回、本気で根性叩き直さんことにはどうにもならないぞ……

それと問題があと一人。

 

「イッセー!いつまでショックを引きずっているつもりだ!早く立ち直れ!」

 

イッセーはギャスパーの男発覚からまだショックを引きずっている。部室に来てからもずっとぶつぶつと何か言っていて精神が狂ったんじゃないかと思うレベルだ。

 

「別に男で女でもいいだろうが!」

「ハッ!そうだ、そうだよな!男だろうが女だろうが可愛けりゃ関係ないよな!!」

 

まずい、変な扉を開けてしまったかもしれない。

 

「落ち着けイッセー。性別は大事だ。可愛くても男はダメだ」

「え?あぁそうだな……そうかな?」

 

イッセーはまた頭を抱え悩み始めてしまった。あぁもう駄目かもしれねぇなこいつ。

ギャスパーはいつの間にか部屋の隅で膝を抱えてるし。

 

「浩次」

「なん……」

 

リアス先輩に呼ばれ何事かと思ったが、見知らぬ気配がこちらに向かってきていた。

いや、知っている。この気配は―

 

「よぉ、なんだ。随分としけたところで集まってるんだな」

「アザゼル……」

 

扉を開け現れたのは、堕天使総督のアザゼル。イッセーに接触し、俺に喧嘩を吹っ掛けたくそったれだ。

空気を読み取り各人、臨戦態勢に入る。呆けていたイッセーでさえ神器を発動し構える。ギャスパーは相変わらず震えているだけだが。

 

「何の用かしら」

 

リアス先輩が前に出て要件を問う。

 

「落ち着けよ。今日は戦いに来たわけじゃない。だいたいここの集まってる下級悪魔くんたちが束になったって俺には勝てないことぐらいわかるだろ?」

 

手を挙げ敵意がないことを示す。しかし信用はできない。こいつは六芒星の呪縛を一瞬で破り、俺の後ろをとったことがある。少なくともそれができるほどのスピードと力を持ち合わせている。油断させといて隙を突くなんてことはたやすいだろう。

ふとアザゼルと目が合った。

 

「そういや、規格外がいたっけな。なぁ草間浩次」

 

アザゼルの顔にいやらしい笑みが浮かぶ。

 

「名前を覚えててくれて。速攻で忘れてくれると助かるな」

「そりゃ無理だ。お前ほどの神器使い、そうそう忘れれるもんじゃねぇよ」

 

リアス先輩が手に魔力をためアザゼルに向ける。

 

「浩次に手を出すことは許さないわよ」

「そんなちゃちなもんじゃ、俺には傷ひとつつかないぜ?」

 

きつく睨み付けるリアス先輩を鼻で笑う。ふと呆れたように溜息をつく。

 

「たっくよぉ。しょうがねぇ友好の証としていいことを教えてやる」

 

そういうと隅っこで固まってるギャスパーに指をさす。即座にアザゼルとギャスパーの間に朱乃さんがはいりこむ。

 

「何もしねぇって言ってるだろうが。はぁ……そこの吸血鬼。そいつの神器を鍛えたいならここの生徒会にいる『黒い龍脈』を持ってるやつに手伝ってもらえ」

「……誰だそれは」

 

またしてもアザゼルが溜息をつく。そんなこともわからんのかと言いたげだ。というか知ってるわけないだろ。なんだ黒い龍脈(アブソリュートライン)って、知るかそんな神器。

 

「とにかく、そいつの『ライン』をそこの吸血鬼につなげて余分な力を吸わせろ。そうすれば暴走の可能性も減るだろうよ」

 

それでも警戒を解かない俺たちに嫌気がさしたのかアザゼルは扉のほうへと回れ右をする。

 

「わかった、帰ればいいんだろ!ビビりどもめ」

 

いじけたようにポケットに手を突っ込み出ていこうとする。しかしこのまま返すわけにはいかない。聞かなければならないことがあるのだ。

 

「待て」

「あぁ?」

 

不機嫌そうにこちらを向く。

 

「なぜイッセーや俺に接触した。あの時、事前の挨拶だの言ってたがそれだけじゃないだろ?」

 

事前の挨拶ってだけなら俺ではなくリアス先輩にすればいいし、俺の使役する神に興味があるといった風なことも言っていたが、それならばイッセーに接触する意味がない。

 

「強力な神器を持ってるやつらがどんな奴か興味があったんだよ」

「なぜだ?」

「あぁ面戸くせぇ!趣味だ!趣味!」

 

それだけ言って早々に部屋から出て行ってしまった。アザゼルの姿が消えると同時に気配も消えていた。




《スキルドレイン》
(永続罠)
1000ライフポイントを払って発動できる。
このカードがフィールド上に存在する限り、フィールド上の全ての効果モンスターの効果は無効化される。
『今作内では自身の神器以外の能力をすべて無効化する。ただし例外としてカードゆえに千年アイテムには干渉できないため千年アイテムの能力は妨害されない』

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