決闘者のハイスクール   作:豆肉

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遊戯王もだいぶ変わりましたね


第二十話

小猫ちゃんと部室に向かいながら約束のことを考える。

イッセー&小猫ちゃんと特訓に付き合う約束はしたはいいものの場所やら色々な問題がある。まぁそこはリアス先輩に相談しよう。あの人なら大概のことならなんとかできるだろうし、この類のお願いなら快く聞いてくれるだろう。特訓をどうするか考えているうちに部室の前まで来た。それにしても俺を呼んでたって言っていたけどなんだろうか。厄介事じゃないといいんだが。

 

「こんち......わー」

 

部室の扉を開けると中にいた全員の視線が俺に集まる。部屋の中にはリアス先輩と朱乃さん、それとコカビエルのときにいた青髪、たしかゼノヴィアだったか。あのとき神の死を告げられて心が折れたように見えたが今はそんなに落ち込んでいる様子はない。

立ち直ったのか?いくらなんでもこの狂信者がたった数日で立ち直れるものなのだろうか。

まぁそれはおいといてだ。問題は今の部室の空気の重さだ。張り切って部活をしようと扉を開けたら部室の空気がぎすぎすしてるとか勘弁してほしい。

小猫ちゃんに「また何かやらかしたのか」みたいな目を向けられる。ひどい風評被害だ。確かに俺はいろいろやらかしてきたけど今回はなにもしてない。きっとこの空気は青髪のせいだろう。そうであってくれ。

 

「ちょうどいいとこに来たわね。浩次、こっちに来なさい」

 

なんだ今回も俺関連なわけね......くそったれ。

おとなしくリアス先輩に従って先輩の近くによる。こういう時は大人しく従っておくに限る。

 

「さて、もう一度言ってくれないかしら」

 

リアス先輩が厳しい口調でゼノヴィアに問う。察するに俺が来る前にゼノヴィアが何か言い、それが原因で先輩方はこんな不機嫌になったのだろう。そしてそれは俺に関することだと。くそったれ。

 

「本人を前にして言うのは少し恥ずかしいのだが……まぁいずれ言わなければならないことだしな」

 

ゼノヴィアは一度言葉を切り俺の方を見る。恥ずかしいとか言っときながら無表情だ。その無表情のままとんでもないことを口にした。

 

「草間浩次、君に惚れた。私に君の子を産ませて欲しい」

 

今わけのわからないことを言われた気がする。

 

「ぱーどぅん?」

「君との子が欲しい」

「え?なにきこえない」

「子供の名前はどうしようか」

「ちょっと黙って!」

 

俺に惚れた!?なぜなにナンデ!?いきなり子供とか言い出したことは置いといてなんで俺なんかに惚れた!?まるで意味がわからんぞ!

 

「難しい顔をしてどうした。悩み事なら聞くぞ」

「原因はお前だよ。青髪」

「青髪ではない。ゼノヴィアと呼んでくれ」

 

俺がこんなにも混乱してると言うのに原因の青髪はまったく動じていない。

なんともマイペースな女だ。

 

「ok,いろいろ突っ込みたいことはあるが、とりあえずなんで急に惚れたか言ってんだ?そんな素振りなかっただろう」

 

ゼノヴィアとの直接的な関わりといえば俺が喧嘩を売って決闘したくらいだ。その時点での俺に対しての評価は悪かったはずなのに今日になって惚れたとか言いやがる。いったいどこでどうなってそうなったんだ。

 

「惚れた理由か……君を意識し出した切っ掛けならば君がコカビエルに言った言葉だな」

 

コカビエルに何かかっこいいこといったけ。ろくなこと言ってなかった気がする。

 

「『神がいなくても俺は生きている』そういっただろう」

 

ニュアンスが違うような気もするが似たようなことは言った覚えがある。

 

「確かに言ったが……まさかその程度のことでか?」

「君にとっては大したことではないかもしれないが私にとっては今までにないくらい衝撃的な言葉だったんだ」

 

まぁとんでもないような目で見てたし衝撃的だったのは確かだろうが、だからといって惚れまでするものだろうか。ゼノヴィアが自嘲的な笑みをうかべる。

 

「君にも言われた通り、私は主に依存していた。それこそ主がいなければ生きていけないくらいにな」

 

そう、こいつの信仰は常軌を逸するほどのものだった。だからこそ俺の言葉程度でこいつの意志が変わるとはどうしても思えないのだ。

 

「だがな、君を見てわかったんだ。主にすがらなくとも強く生きていけるのだと」

 

力強く言う。その様子からして本当にそう思ったのだろう。これで立ち直った理由は分かったが惚れる理由にはいまいち納得できない。

 

「で、惚れた理由ってのは?」

「恋とはするものではなく落ちるものだろう」

 

いきなり何をロマンチックなことを言ってるのだろうか。

 

「そう険しい顔をしないでくれ。気が付いたら君のことばかり考えてたんだ。しょうがないだろう」

 

何がしょうがないのだろうか。しかしまいったな。明確な理由があれば説得、もしくは何らかの形で失望させ恋愛感情そのものを消すということもできただろうが、感情的なものだとどうしようもない。いや、何とかすることはできるだろう。だがその場合だいぶひどいことをしてしまうだろうし俺自身もやりたくない。

 

「さぁ、私の思いの弁は全て言ったぞ。今度は君の番だ」

 

真っ直ぐ俺の目を見て聞いてくる。ここまできたらきちんと答えなければ駄目だな。そもそもコイツの気持ちがどうであれ俺の意志は初めから決まっている。

 

「悪いが、お前の気持ちを受け取ることはできない」

 

部室内が静まり返る。先輩たちは複雑そうな顔をし小猫ちゃんは意外そうな顔だ。当人のゼノヴィアは悲しそうな表情の中に諦めが見てとれる。もしかしたら俺が断るのを予想していたのかもしれない。

 

「……理由を、教えてもらえないかな」

「理由か。俺はな、人の立場は変われど人の本質は変わらないと思ってる」

 

ゼノヴィアは少し不思議そうな顔をする。ほかの皆も意味がよくわからないという顔だ。

 

「お前がいくら神への信仰をやめたといっても、善悪の判断を他人に預けて神に縋って生きていた時のお前と今のお前の中身は何も変わってないと俺は思ってる」

 

それを聞きゼノヴィアの目に少しだけ怒りの感情が現れた。だがそれはすぐに消え、こんどはニンマリとした笑みをした。なんだか嫌な予感がする。

 

「……なんだよその顔は」

「つまり君はそれが私の本質だと思っている。そのため私の気持ちは受け取れないということだな?」

 

顔は嫌な笑みをしたままじりじりとゼノヴィアは俺に近づいてくる。何とも言えない恐怖のようなものが俺を襲う。気圧され後退する。そのまま部屋の壁まで追い詰められてしまった。

 

「たしかに、それは私の本質かもしれない。だがそれはほんの一部だ」

 

ゼノヴィアは両腕の間に俺を挟むようにして手を壁につき退路を塞ぐ。いわゆる壁ドンだ。

なんでだろう冷や汗が止まらない。

 

「ならば残りの私の本質が、君に悪印象を与えている一部がどうでもよく思えるくらいだった場合、君は私の気持ちを受け取ってくれる可能性がでてくるというわけだ」

 

なんでこいつはこうもポジティブなんだ。

 

「そういうことじゃない。それにお前、もしも好きな食い物の中にとんでもないゴミが混じってたらどうする?食わないだろう?そういうことだ」

「私ならそれを取り除いて食べるな」

「面倒だ」

「それを苦と思わないほどにすればいいだけの話さ」

 

普通ふられたら諦めるものじゃないのか。というかさっきまで諦めかけてただろう。

 

「さっきまでの諦めムードはどうしたよ」

「あれで諦めれる程度の恋ではないのだよ」

 

あぁこれはダメなパターンだ。くっそたれ。本気で突き放せばゼノヴィアが諦めてくれる可能性も出てくる。だがそれができない。ここまで真っ直ぐに言われると反論しようという気が失せる。

 

「……好きにしろ」

「ならキスをしよう」

 

なにをいってるんだ。なんか流れがおかしいぞ。

 

「は?なに言ってるんだってやめろ!顔を近づけるな!」

 

俺の静止を無視してキスをしようとゼノヴィアが顔を近づけてくる。コイツの思考回路はどうなってるんだ。

 

「さっきまで少しいい雰囲気だっただろうが!なんだよいきなり!?」

「肉体関係から生まれる恋もあると思うのだよ」

「なにいってんだ!?」

 

こいつなんでいきなり肉体関係に走ろうとしてるんだよ。わけがわからねぇ!

そこに救世主が現れた。

 

「止まりなさい」

 

静止をかけたのはリアス先輩だ。流石先輩たよりになる!だけどもう少し早く助けてくれてもよかったんですよ?

 

「そうだな。私としたことが場所をわきまえなかった。すまない」

 

意外にあっさりと引く。そもそも場所とかそういう問題じゃなくキスすること自体が問題なのだ。

 

「そういう問題じゃないのだけれど……とりあえず浩次に事情を説明したいから2人とも席に戻ってくれないかしら」

 

この状況になるきっかけを作った人が何を言ってるんだとかいう野暮な突っ込みはしない。そういば、なんでゼノヴィアがここに居るのかとかわからないままだったな。リアス先輩に従い朱乃さんと、いつの間にか座っている小猫ちゃんの向かい側のソファーに腰掛ける。そしてなぜかゼノヴィアが俺の真横に座る。めっちゃ密着してるんですけど。

 

「どうかしたか?」

 

何か問題でもあるのかとでも言いたそうな顔でゼノヴィアが質問してくる。

 

「なんで横に座ってるんだ?」

「あっちにはグレモリー部長ががすわる。ならこちらに座った方がいいだろう」

「4人は座れるはずだが」

「わざわざ詰めて座る必要もないだろ?」

 

それらしいこと言いやがって。反論ができねェ……

 

「ゼノヴィア、こっちに座りなさい」

 

リアス先輩がゼノヴィアを呼ぶ。

 

「だがそちらは狭いだろ」

「私が浩次先輩の方へ行きます」

 

意外にもゼノヴィアとのチェンジを申し出たのは小猫ちゃんだった。『しょうがないから変わってあげます』とでも言わんばかりの雰囲気だけどね。

 

「わざわざ変わる必要もないだろ。それとも変わりたい理由があるのかな」

 

意地でも変わろうとしないゼノヴィア。そこに挑発的なゼノヴィアの態度に怒ったのか小猫ちゃんが核弾頭を落とした。

 

「ここに来る前、浩次先輩に告白された身なので」

 

空気が……凍った。

ガシィッ! 左腕が強烈な力で掴まれた。めちゃくちゃ痛い。

 

「どういう、ことかな」

 

ゼノヴィアの声がまるで何かに耐え抜きながら必死に出した声のような声になっている。さらに追い打ちをかけるように先輩たちからの重圧がのしかかる。

 

「浩次、説明しなさい」

 

リアス先輩からは赤いオーラが立ち上る。小猫ちゃんにSOSのアイコンタクトを送る。小猫ちゃんもこの状況は予想できなかったらしく気まずそうに顔をそらしていた。つまりアイコンタクトは伝わらなかった。こうなったら朱乃さん頼みだ!

 

「あらあら、うふふふ」

 

あっ、これ駄目な感じだ。朱乃さんこの状況を楽しんでるわ。助けてくれないわ。

こうなったら自分でどうにかするしかない。やるべきこと自体は簡単だ。動揺せずに事情を説明すればいいだけ……さぁいくぜ!

 

「いやですね、これは―」

「浩次ぃ!小猫ちゃんに告白したってのは本当か!?」

 

バァンッ!と勢いよく扉が開きが乱入してきたのは俺の友人。ついでに余計なことを言ってくれた。

 

「少しいいかしら」

「えっ?は、はい!」

 

リアス先輩の威圧にさっきまでの勢いが見る影もなく消沈する。

 

「それは誰から聞いたの?」

「き、桐生っていううちのクラスメイトなんですけど」

 

桐生あのクソアマ!!やりやがった!やりやがった!!

なんでさっきの今で情報を流してるんだよ!ふざけるなぁ!!

どうするんだよこれマジ。あぁもういいや。逃げよう。

立ち上がろうとしたところを腕を引かれ無理やり座らせられる。

 

「行かせると思うか?」

 

そうだったゼノヴィアに腕を握られてるんだった……

いや、ここまでくると逆に冷静になる。落ち着けよ俺。別にすぐに殺されるというわけでもないんだ。ゆっくり落ち着いて説明しよう。そうすればわかってくれる。

 

「それは桐生が流したデマですよ。小猫ちゃんだって冗談で言っただけですしね。落ち着いてくださいよ」

「本当なの?小猫」

「はい。すいません。少し冗談が過ぎました」

 

それを聞きリアス先輩とゼノヴィアの重圧が解かれる。

 

「それならそうと早く言ってくれ」

 

やっと腕を放してくれた。それでもさっきからズキズキといたむ。馬鹿力め。

 

「貴方は出ていってもらえないかしら」

「あ、はい」

 

リアス先輩に言われすごすごと退出する友人。なんというか哀れだ。

 

「ふぅ……そういえばイッセーはどこにいるのかしら?説明をするならイッセーも一緒の方が都合がいいのだけど」

 

今更かよとかいう突っ込みはしない。それはおいといて確かにイッセーはどこに行ったんだ?俺より先に部室にいてもおかしくないはずなんだが。

どこほっつき歩いてるんだか。そうだアーシアちゃんもいない。

まさか二人でどこかで逢引でもしてるんじゃないだろうな……って佑斗もいないじゃん!

今日に限ってなんでこんなに出席率が低いんだ。

なんか2年で集まりとかあったけか……もしかして俺はぶられた?

 

「まぁいいわ。イッセーには後で説明しましょう」

 

これでやっとゼノヴィアがここに居る理由が明かされる。

 

「まず、結果からいうとゼノヴィアは私の眷属となったわ」

「はぁ!?」

 

あの狂信者が悪魔になっただと……そんなアホな。

 

「事実だよ。教会から追い出されたところをグレモリー部長に拾ってもらったんだ」

 

先輩の言葉をゼノヴィアが肯定する。

 

「なんで追い出されたんだ?」

 

ゼノヴィアは聖剣使いだったはずだ。ならばみすみす手放すようなことをするだろうか。

 

「神の不在を知ったからだよ。もしも私を通じてそれが広まったら教会が崩壊しかねないからね」

 

確かにその通りだが情報を隠ぺいするならばもっと確実な方法があったはずだ。

 

「よく殺されなかったな」

 

俺の言葉を聞きゼノヴィアの表情が曇る。

 

「そうなってもおかしくはなかったんだけどね。天使様の慈悲でなんとか生かしてもらえたよ」

 

天使の慈悲か。一応はそういうものもあるんだな。

 

「まぁいいや。これからは仲間なんだろ。よろしくたのむ」

 

こいつはこないだまで対立してたし、教会にいたころの印象もあって完全には信頼できないが、ここはリアス先輩の人を見る目を信じよう。

 

「あぁ、こちらこそよろしく頼む」

 

ゼノヴィアと握手を交わす。ここでおわればいいものをゼノヴィアがよけいなことを言い出した。

 

「もし性欲がたまったら私に行ってくれ。いつでも相手になる」

「黙れ」

 

いきなりだが距離を置きたくなった。

 

 




第4巻の紛失 探さないと

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