決闘者のハイスクール 作:豆肉
目を開けるとそこは真っ白な部屋でした。
ほんとうは真っ白じゃないし、ただの保健室だけど。
たしか焼き鳥野郎を倒して神器をしまったら目の前が真っ暗になったんだよな。
そんで保健室に運ばれたと 上半身裸なのは先の戦闘で服が燃えたからだろう。
よし、状況理解完了。というか今何時だ?時計を見ると今は2時。
よかった これで起きたら学校の時間でしたとかだったらいろいろまずかった。
制服のこととか。焼き鳥野郎の『女王』の爆撃を受け俺の制服はボロボロになってたはずだ。下は大丈夫だったと思うが上はほぼ全焼した。
どうしよう、制服って高いしなぁ母さんにどうやって説明しよう。グレモリー先輩とかがどうにかしてくれないかな。というか皆どこに行ったんだ。帰ったのかな薄情者どもめ。
服のこととか何とかしてくれないと困るのだが……
「うぅん……」
左横から艶めかしい声が聞こえた。
さっきまで気づかなかったけど俺の横に誰かが寝てる。
声がすこしグレモリー先輩ぽかったけど気のせいだ。
俺は何も見ていない見ていないったら見ていない。
もしかしてこれが七不思議の一つの『保健室にでる女の幽霊』じゃないだろうか。
このことを教えたらイッセーあたりは喜ぶだろう明日教えてやろう。
とりあえず服をどうにかしよう。
このまえ部室に体育で使ったジャージをおっきぱなしにしていたはずだ。
この格好で出歩くのは気が引けるが、どうせ誰もいないだろう。
隣に寝ている幽霊を起こさないようにそっとベッドからでる。
そのまま保健室をあとにした。
というかなんだ上半身裸で出歩くのってドキドキするな。
いけない方向へ目覚めてしまいそうだ。
くだらないことを考えてるうちに部室についた。まだ明かりがついてる。
扉を開けると朱乃先輩がいた。大量の本に囲まれてる。調べものだろうか?
「あらあら、夜這いですか?」
第一声がそれですか。
「違いますよ。服を取りに来たんです」
部室の隅に置いてあるはずのジャージを取りに行く。よかった、ちゃんとあった。
ジャージを着ようとすると朱乃先輩が後ろから抱きついてきた。そして俺の体をなぞる。
くすぐったいからやめてほしい。
「そのままでも私は構いませんよ?むしろ私としてはそちらのほうが……」
意味深なことを言ってくるがそんなので揺らぐ俺じゃない。
「ご冗談を。それより朱乃先輩はこんな時間までなにを?」
戦いの後で疲れているはずだ。調べものなら後日やればいいだろうし、早急に調べなければならないことなのだろうか?
「浩次君の背中の刺青について調べていたんです」
「刺青?」
刺青とはなんだ?俺はそんなもの入れた覚えはないぞ。
「これですわ」
そういうと朱乃先輩は1枚の写真を見せてくれた。
真ん中に死者蘇生のマーク、その上と左右に四角い枠があって残った場所にはよくわからない文字のようなものが書かれている。
そして枠は左の枠だけ何かの絵が描かれている他の2つは空白だ。
「なんですかこれ」
こんなのが俺の背中に刻まれてるということか。
水泳の授業とかどうしよう……
「絵のことは分かりませんが、書かれている文字はおそらくヒエラティックと言われるものです」
ヒエラティック、たしか古代エジプト使われていた文字だったか。
この前テレビでやってた。
「浩次君、これについて何か心当たりはありませんか?」
朱乃先輩が真剣な表情で聞いてきた。心当たりはある。そしてこの刺青について知ってそうな人も知っている。刺青はラーを出した影響だろう。出た理由も精霊界に行って凄い人に聞けば分かりそうな気がする。
「おそらくラーを出した影響だと思います。なんで出たのかとかはわかりませんが、その理由を知ってそうな人も知っています」
俺がそういうと先輩はほっとしたような表情をした。心配してくれていたのだろう。ふと、疑問に思ったことを先輩に聞いてみる
「なんでこんな時間まで残って調べものを?疲れてるだろうし明日でもよかったんじゃ」
そういうと朱乃先輩に悲しそうな表情した。
「私は浩次君に力を貸してもらいながら負けてしまいました。せめてこれぐらいはしないと申し訳が立ちません」
そういうことか。勝ったし気にしなくていいのに……
というわけにはいかないんだろうな。なんて言葉をかければいいだろう『気にしなくていい』か?そんな言葉で気がはれるものだろうか。
ぐだぐだ考えてると朱乃先輩が暗い雰囲気で口を開いた。
「……浩次君、私が合宿の時、言ったこと覚えていますか?」
合宿のとき言われたこと『仲間たちを頼れ』と『自分を大切に』だったか。
「えぇ、覚えてます」
「それなら、もう少し私を頼ってもらえませんか?もっと自分をいたわることはできませんか?」
今回俺に無茶をさせてしまったことを悔やんでるのか。先輩はつらそうな顔をしてるし。俺は別に気にしてないんだけど……いや、朱乃先輩の心情の問題だから俺がどうこうは関係ないのか。
めちゃくちゃ暗い空気になった。どうしよう……え、いやマジでどうしよう。
なにか何かクールな一言。この空気を一変させる逆転の一手は……
そのとき、俺に名案浮かばないっ!
ふざけて不場合じゃないって!あっ、そうだこれしかない!朱乃先輩の顔を手で包み込む!そして最上級のスマイル!
「悲しそうな顔をしないでください。俺は朱乃さんの笑顔が好きなんです元気がもらえます。だから笑ってください」
スマイル!名前呼び!キザなセリフ!決まった!?
いや決まってないだろこれ……
なんか言ってることわけわかんなし。というか使うタイミングおかしいって。
こういうセリフって別れ際とか犠牲になって死にそうな時に言うセリフじゃん。
絶対こんな時に使うセリフじゃないって!
「……えっと」
ほら見ろダメじゃん!朱乃先輩が珍しく動揺してるよ目が泳いでる!これ絶対どういう反応すべきか悩んでるって!
「とりあえず放してもらってもいいでしょうか?」
「ハイ」
とりあえず朱乃先輩の顔から手を放す。
どうしようこれ、。いや、ポジティブに考えよう。
悲しそうな顔されるよりかましだと。きっとマシなはずだ。多分……
必死にプラス思考に持ってこうとしていると後ろから声が聞こえた。
「ずいぶんと楽しそうね。もしかしてお邪魔だったかしら」
グレモリー先輩だ。
少し怒ってるような気がするのはきのせいだ。
「あらあら、嫉妬ですか?」
朱乃先輩がなぜか煽る。悪戯子っぽい笑みをしてるし絶対楽しんでるな……
グレモリー先輩の機嫌がさらに悪くなったような気がする。気がするだけである。
少し怒ったような声色で部長が呼んできた。
「浩次」
「ハイ」
「私、とても心配してのだけど」
ゲーム終了と同時に突然倒れたことを言っているのだろう。
「大丈夫ですよ。この通り元気です」
そういって腕を上げてみる。
これで元気だって証明になるのか微妙だが。少しは体で表現した方がいいだろう。
だがそれを聞いてグレモリー先輩の眉間にしわが寄る。さっきより機嫌が悪くなってないかこれ。
「でしょうね、朱乃に夜這いをかけるくらいだものね。隣に寝ていた私を無視して。」
oh...これは何やら雲行きが怪しくなってきましたよ。
とりあえず夜這いという誤解を解こう。
「夜這いだなんてかけ―」
「部長が傍にいたのに私を選んでくれたんですか?なら、頑張らないといけませんね」
俺の言葉を遮りながら抱き着いてくる朱乃先輩。
いったいなにを頑張るというのか。というか朱乃先輩これ以上状況を悪くするようなこと言わないでくださいって!もしかして怒ってます!?朱乃先輩が抱き着いたのを見てグレモリー先輩の顔が赤くなった。俺は悪くないです。
「浩次!」
グレモリー先輩に大声で呼ばれる。これ絶対怒ってるって!まずは弁解だ。
「サー!これは誤解であります!サー!」
「あらあら、こんなに怖がってしまって・・・大丈夫ですわ。私がついてますから」
朱乃先輩が胸を押し付けてくる。それをみてグレモリー先輩がさらに怒る。
違います。これはちょっとふざけただけなんです。出来心だから怖がってないから
これ以上やると収集がつかなくなりそうなので朱乃先輩を止めよう。
「朱乃先輩!マジでストップ!」
「『朱乃さん』と先ほどのように呼んでくださらないかしら」
数分前の自分を殴り飛ばしたくなった。なにへんなこと口走ってんだ俺。やっぱり勢いに任せるものじゃないね。
「そう、私はまだファミリーネームで呼ばれてるのに朱乃は名前呼び。しかも親しそうに『朱乃さん』ねぇ……」
やばいって。この状態はどう考えてもgoodじゃねぇ。
だがしかしだ、俺はこの状況を打破する最高の方法を知っている。
「逃げるんだよオオオオおお!!」
朱乃先輩を振りほどき部室の窓へ向かい猛ダッシュ。
ガッ! ソファーの脚に足をぶつけて転倒する。
「ウゴァアア!」
そのまま3回前転をしノックダウン。
我ながら間抜け極まりない。しょうがないだろ疲れてるんだ。
「浩次」
「浩次君」
グレモリー先輩と朱乃先輩が俺を見下ろしてくる。
あっパンツ見えた。二人とも超絶派手だ。嫌だわ最近の子はハシタナイったら。
ふざけてる場合じゃないな。いわゆるピンチってやつだ。
結局、事の収拾がついたのは30分後。
俺が伝家の宝刀『なんでもしますから』を使い二人に許してもらってなんとかなった。
というか最近、俺は悪くもないのに謝ってることが多くなってる気がする。
由々しき事態だ。
それとグレモリー先輩を『リアス先輩』朱乃先輩を『朱乃さん』と呼ぶことになった。制服は新しいのをリアス先輩からもらった。
感謝しなければ。刺青ことは明日、凄い人に聞いてみることにしよう今日は疲れた家に帰って寝よう。
朱乃先輩は楽しんでるだけです。