神様転生した者だけど毎日が苦痛   作:八雲 紅

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機体説明回
セシリアはそろそろ泣いていい



整備中な第54話

 

ーー首尾はどうかしら?

 

 

ーーかなりヤベェぞ。

 

 

ーーあら、貴女にしては珍しいわね。何があったの?

 

 

ーーサブターゲットは手に入れてやったがメインターゲットが捕獲一歩手前で暴走しやがった。

 

 

ーー仕方ないわ、一時撤退ね。チーフが特殊武装を持ったIS持ちを一人送るらしいわ。しばらく身を隠した後にその子と合流して。

 

 

ーーチッ、あのメカ狂い野郎が囲んでるガキか。しょうがねぇ、やってやるよ。

 

 

ーーその意気よオータム。そうね、無事に帰ってきたら一緒に温泉でも行きましょう。

 

 

ーーへっ、任せろスコール。必ず『銀の福音』と『王蜘蛛』は持ち帰ってやる。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「なんで居るんですか輝さん」

 

「いやー、束に誘われてね」

 

「政府からの許可証を準備してる人が何を言ってるんですか」

 

「やっぱりバレるか」

 

 

無人のまま展開した四天の前で俺と輝さんは笑いあう。

 

束さんや輝さんの乱入があり少し遅れたが、俺たち専用機持ち陣は国や会社から配備された新装備のテストのために整備ルームに来ていた。

IS学園が訓練に選ぶだけあり、ここ花月荘は整備室及び海中へ続くピットなどの施設が整っていた。

 

 

「で、実際は?」

 

「アメリカとイスラエルの弱味を握りに」

 

 

相変わらずこの人は笑顔でえげつないことを言ってのける。

 

そう。

輝さんには臨海学校で起きるであろう事件は伝えている。

 

アメリカとイスラエルが共同開発してた機体が暴走する事件。

 

輝さんはそれをネタにしたいのだろう。

 

 

「ですが、俺の言った通りになるとは限りませんよ?」

 

「平和に終わるならそれでよし。そうでないなら、こいつの出番だ」

 

 

そう言って輝さんは側に置いてあったコンテナをポンと叩いた。

 

 

「鋼夜くんお待ちかね、四天の新装備だよ」

 

「いぇーい。でも、それって俺に戦えって事ですよね?」

 

 

俺がそう言うと、輝さんは露骨に顔を背けた。

おい、こっち向けよ。

 

しかしここはいつもの社長室ではない。周りには何も知らない一夏達が居るためこれ以上は喋れない。

俺はため息をつき、輝さんの説明を聞くことにした。

 

 

 

「今回持ってきたのは四天の第二の換装装備、近接特化強襲型『陽炎(かげろう)』だ」

 

 

輝さんが持っていた端末を弄ると四天のホログラムが空中に投影される。

 

「わぁ、赤い」

 

映し出された四天は通常時の白い装甲から一転し、炎を彷彿とさせる赤や橙のカラーリングに変更されていた。

 

「『天岩戸』を取り外して更にスラスターを専用のパーツにつけ変える必要があるけどこれにより高速戦闘が可能になる。機動性や運動性はそこら辺の機体とはダンチだ」

 

ホログラムの四天、改め陽炎の背部ユニットが変わっていく。

 

 

「輝さん、GNドライヴみたいなのが二つほどついてる気がするんですが」

 

「気のせいさ」

 

「スラスターのユニットやバインダーがマスターフェニックスとかV2みたいなことになってる気がするんですが」

 

「気のせいさ」

 

「嘘をつくなぁ!」

 

 

両翼のメインスラスターにOOガンダムみたいに怪しい粒子出すユニットついてるし、なんかもう後ろから見たらスラスターとバインダーでX字になってるし、しかもよく見たらGNドライヴのついてるスラスターにファングみたいな細長いユニットが突き刺さってるんですけどぉ!

 

暁の二の舞になるから、あれほど技術力は控えて下さいとお願いしたのに……。

 

 

「いま鋼夜くんが言ったのは、近接支援自立機動兵器『天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)』。ビーム撃てるしサーベルも出せるファングって言ったら分かる?」

 

「いや、まぁ、分かりますけども……」

 

 

ホログラムの中の陽炎は『天叢雲剣』を展開し、仮想敵を倒していく。

思いっきりオールレンジ兵器である。しかも陽炎がビュンビュン飛び回っていながら天叢雲剣を操っている。

 

またセシリアが涙目になるじゃないか。

 

 

「次いくよ」

 

輝さんがそう言って端末を弄るとホログラムの中の陽炎が一振りの長刀を展開した。

 

「特殊近接武装『不知火(しらぬい)』だ」

 

「もうツッコミませんよ」

 

スサノオより真っ先にあっちを思い出した俺に落ち度はない。

 

 

ホログラムの陽炎は『不知火』を構え、居合の型を披露する。

 

「まぁ、鋼夜くんの予想通りだと思うけどこいつは刀身に粒子を纏わせることで一時的に光学兵器とすることもできる。あとビームが撃てる」

 

ホログラムの陽炎が『不知火』を振り下ろすとその軌道からビームが放たれた。

見ようによっては斬撃が飛んだように見える。

 

「そしてこの背部のスラスターとバインダーは最大稼働時に光の翼『天乃羽々切(あまのはばきり)』が展開可能となる」

 

ホログラムの陽炎の背部スラスターが変形すると光で形成された翼が現れ仮想敵をどんどん真っ二つにしていく。

 

 

「……輝さん」

 

「どうだい鋼夜くん、凄いだろう?」

 

輝さんが笑顔でそう訊いてくるが、俺はため息をつくしかなかった。

 

「いや、凄いのは分かるんですよ。でもこれって……紅椿の劣化版じゃないですか?」

 

俺がそう言ってしまえば、輝さんの笑顔が固まった。

 

実はここに来る前に束さんが紅椿の性能を喋っていたのだが、見事に陽炎と被っていた。

高速移動にビーム撃てる刀に支援兵器にトドメは最大稼働時のエネルギーブレード。

 

完全に下位互換に見られても仕方がない。

 

「言わないでくれ……僕だって途中で気付いていたさ……」

 

「ごめんなさい」

 

「頑張ったんだよ……ナノマシンと粒子を結びつかせて不知火に纏わせたりスラスターや装甲のナノマシンと反応させて全身が真っ赤になる最大稼働を実現レベルまで持ってきて光の翼くらいなら制御できるようにナノマシン精製装置のツインドライヴも調整してツインドライヴ使用とスラスター改修して最悪だった燃費を大幅改善したのに……」

 

「本当、ごめんなさい」

 

「ああ、それと視界が高感度センサーに切り替わるから気をつけてね……」

 

 

思っていたより輝さんが頑張っていたのに驚いたと共に申し訳なくなり、俺は本心から謝罪した。

しかしさりげなくトランザムを再現させようとしている辺り輝さんらしい。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

なんやかんやあったが俺と輝さんは四天の改修作業を終えた。

そして輝さんはデュノア社から送られてきた装備を渡すためにシャルロットの元へ行った。

 

 

「鋼夜くん」

 

「あ、簪さん」

 

 

陽炎を眺めていると簪さんがやってきた。

簪さんは俺に声をかけたあと、ふと視界に入ったであろう陽炎をまじまじと見つめる。

 

 

「凄いだろ?ちょっとパーツ弄ったらこれなんだから」

 

「確かに凄いよ……ものの数分で機体のカラーリングの変更に装備の換装にOS変更の処理まで施されてる。まったく別の機体だね」

 

「詳しいことは企業秘密だから言えないけどね」

 

簪さんに言われて改めて思う。

やっぱり輝さんって化け物だわ。

 

「その機体のテスト、良かったら付き合うよ。……私、数合わせみたいだし」

 

俺、一夏、セシリア、鈴、シャルロット、ラウラ、そして箒と簪さん。

確かに偶数の八人だ。二人ペアが四組作れる。

 

 

……そうやって卑下することは無いと思うけどなぁ。ぶっちゃけ簪さんってこの八人の中でも一、二を争える実力があると思うんだが。

 

 

 

「それより……あの人がラビアンローズのトップの西条輝って本当?」

 

そう言って簪さんは話題を変え、シャルロットと話し合っている輝さんの方を見た。

 

あまり話して欲しくない内容なのだろう。俺は深く追求するのを辞めた。

 

 

「本当だよ。未だに現場に立つのが好きな、ちょっと変わった人だけどね」

 

ちょっとどころかかなりの変人だが、と内心で思いながらそう答えれば簪さんは納得した表情になる。

 

 

「あの人は技術者の世界ではかなり有名な人だから、ちょっと気になるの」

 

「話してみる?」

 

「えっ」

 

俺がそう訊いてみれば、簪さんは驚いた様子を見せた。

 

「輝さんも簪さんとは話してみたいって言ってたし、呼んでくるよ」

 

「あっ、ちょっと」

 

俺は簪さんの返事を聞かずに輝さんの方へ向かう。

ちょうどシャルロットへの会話が終わったみたいなのでちょうど良かった。

 

簡単に事情を説明すれば輝さんは快く了承してくれた。

 

 

「更識簪さんだね?初めまして、西条輝です。いつも鋼夜くんがお世話になってます」

 

「あっ、いえ、その」

 

「慌てなくても大丈夫だよ」

 

 

あたふたしている簪さんの姿を見て輝さんはくすりと笑う。

簪さんの方は恥ずかしさのあまり顔が真っ赤になっていた。

 

 

「鋼夜くんへの指導を引き受けてくれたって聞いてるよ。結構心配だったんだよ、彼が学園でやっていけるかどうか。君のような、聡明で実力のある人の指導を受けているなら安心だ」

 

「そ、そんな私は……むしろ私の方が鋼夜くんに助けてもらっています」

 

輝さんの賞賛に簪さんは顔を赤く染めていた。

こうやって褒められることに慣れていないのだろう。

 

しかし俺に対しては何気に酷いですね輝さん。

 

 

「お礼って訳じゃないけど、これから鋼夜くんを好きにこき使ってくれていいから」

 

「は、はい!」

 

「輝さんは俺を売らないで下さい。簪さんはいい返事をしないで下さい」

 

俺のツッコミに輝さんが笑い、つられて俺が笑い、簪さんもくすりと笑う。

 

その後は簪さんが輝さんにいろいろと専門的なことを質問していた。

輝さんはそれに笑顔で応えている。

 

 

 

 

「鋼夜さん……」

 

「セシリアか」

 

そのやり取りを一歩引いたところで眺めていると声をかけられた。

振り向けば少し落ち込んだ様子のセシリアが居た。

 

「篠ノ之博士がまさかあのような人だとは思いませんでしたわ……」

 

「理解した」

 

その一言で察した。

恐らくセシリアは束さんに話しかけて撃沈したのだろう。

どうでもいい人間にはキツく当たるんだよね、あの人。

俺だって初対面の時は人間扱いされていたのかすら怪しかったし。

 

当の束さん本人は未だに箒に付きまとっている。

あ、織斑先生にアイアンクローされて引きずられていった。強制退場。

 

「失礼しました、少し落ち込んでいましたわ。確か鋼夜さんの装備は高速戦闘仕様と聞きました。わたくしの機体も高速仕様になりますのでテストの際にはご一緒しようかと」

 

と、ここでセシリアが調子を取り戻し目的を話した。

 

「いいよ。むしろこっちからよろしくお願いしたい」

 

「決まりですわね」

 

俺はセシリアの誘いに乗った。

俺は高速仕様の機体の訓練及び搭乗時間が足りない。

だからセシリアの誘いはありがたい。

しかし、装備は見せたく無いな……。

 

 

「これが鋼夜さんの機体ですか?」

 

と、思った瞬間にセシリアが陽炎を見つけた。

 

「前にも思いましたけど、もはや別の機体ですわね。……あれはイメージインターフェイス仕様の装備ですか?はぁ……」

 

「そこはラビアンローズの技術力が凄い、ということで」

 

「そう思っておきますわ」

 

セシリアはため息をつくと「また後で」と言い残して去って行った。

 

 

ごめんね、確かセシリアの機体ってビットをスラスター化させて機動力上げてるんだよね?

陽炎は素でオールレンジ兵器使えちゃうのよね……。

 

内心で俺はセシリアに謝った。

 

 

 

 

「たっ、た、大変です!お、おお、織斑先生!」

 

声がしたのでそちらを向けばいつも以上に慌てた様子の山田先生が。

いきなり乱入してきた山田先生を見て、俺はため息をつくと共にいつもの言葉を呟くのだった。

 

 

「あぁ、鬱だ」

 

 





?「やっと会えた!」
?「ご指導ご鞭撻」
?「よろしゅうな!」


おや?亡国機業のようすが……?

劣化版紅椿に気付いたのはつい最近です(半ギレ)
トランザムはできるけどできません(全ギレ)

かんちゃんは自信が無いだけで覚醒したら強いって一番言われてるから


様々な伏線を放り投げて次回、ツッコミだらけの福音編はっじまっるよー


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