神様転生した者だけど毎日が苦痛   作:八雲 紅

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箒回、なんだけど書いてて思った
誰だコイツ、と

そしてかんちゃんがヤバい



実習乱入の第53話

翌日。

楽しかった自由時間は終わり、合宿二日目から最終日まではISの各種装備運用試験や屋外でのISの使用といった実戦的な訓練が行われる。

 

 

昨日は風呂上がりに部屋へもどろうと思ったら部屋の前にセシリア達が居たから空気を読んでその場から退散し、娯楽室でクラスのみんなと卓球やテトリスなどのレトロゲームやトランプやウノを楽しんだ。

 

 

 

 

「おはよう諸君。ようやく集まったか」

 

旅館のそばにあるIS試験用の海岸に生徒がずらりと並ぶ。

その生徒の前に立つのは織斑先生。

その後ろには山田先生や他クラスの担任の先生方が控えている。

 

「ではこれよりISの装備試験を行う!だがその前に、ラウラ・ボーデヴィッヒ!」

 

「は、はい!」

 

呼ばれたのはラウラ。

彼女は初めての旅行に興奮したのか、寝坊してしまったようだ。

 

「ISのコア・ネットワークについて説明してみろ」

 

「は、はい。ISのコアはそれぞれが相互情報交換のためのデータ通信ネットワークを持っています。これは元々、広大な宇宙空間における相互位置情報交換のために設けられたもので、現在はオープン・チャネルとプライベート・チャネルによる操縦者間による会話など、通信に使われています。それ以外にも『非限定情報共有(シェアリング)』をコア同士が各自に行うことで、様々な情報を自己進化の糧として吸収しているということが近年の研究で分かりました。これらは製作者の篠ノ之博士が自己発達の一環として無制限展開を許可したため、現在も進化の途中であり、全容は掴めていないとのことです」

 

「よく答えた。遅刻の件はこれで許してやろう」

 

そう言われてラウラはホッとした表情になる。

織斑先生の罰は厳しいからね、分かるよ。

 

 

しっかしコア・ネットワークの話はいま改めて聞くとフラグだったんだな。

 

ラウラが言っていたことを総合すると

 

コア同士はコア同士で秘密のネットワークがある

コア同士が情報を共有することで進化する、俗に言うセカンド・シフト

コアの成長の限界は束さんでも分からない

 

 

ISを競技用にしてIS同士で戦わせている理由がコレに当たる。

コアの情報共有できる距離は分からないが、経験を積むことでコアは進化する。

 

相手によって成長が左右される辺り、ぶっちゃけポケモンの努力値みたいだな。

 

 

そして、ISのコアは生きている。

独自の意識がある。

人間とはちょっと違う、異質な意識。

例えるならば生まれたての赤ん坊のようなもの、らしい。

 

輝さんからそう話は聞いていたが、俺を含めてコアの覚醒に至った人物は周りに居ないので分からない。

俺の四天ですら意識があるかどうかすら分からない。

 

「さて、それでは各班ごとに分かれて作業を開始しろ。専用機持ちは私の元へ来るように。全員、迅速に行動しろ」

 

考え込んでいると話は終わったようで、全員が返事と共に散らばっていった。

 

 

「ああ、篠ノ之、更識はこっちに来い」

 

と、ここで織斑先生が二人の名を呼んだ。

呼ばれた二人は疑問符を浮かべながらも了解した。

 

 

「更識……?あ、よく鋼夜と一緒にいた子か」

 

と、聞き覚えのない名前だからなのか。隣で一夏がボソっと呟いた。

 

「……っ!」

 

その態度が気に入らなかったのか、簪さんが一夏を睨みつけた。

 

 

「織斑先生。日本代表候補生である更識 簪さんが呼ばれたのは分かりますが、なぜ篠ノ之さんも呼ばれたのでしょう?」

 

と、ここでセシリアが織斑先生に疑問をぶつける。

そう、箒は圧倒的に場違いだ。

 

……まぁ、この後の展開を知っている俺からしたら分かるんだが。

 

 

「ちーちゃ~~~~~~~~ん!!!」

 

噂をすれば影。

海岸の横にある崖の斜面を滑り降りるメルヘン衣装の人物が。

その姿を確認した一夏と箒と織斑先生は露骨に表情を歪めた。

 

「いやっほぅ!」

 

崖を滑り降りる途中で地を蹴り空中へ飛び上がる。

どう見ても人間技ではない。

 

ちなみに作業中の生徒は、先生ですらみんな手を止めてポカンとしている。

 

「貴女に急降下ぁ~~~~!!!」

 

「ふん」

 

言葉通り急降下してきた束さんを織斑先生は片手で顔面を掴みそのまま砂浜へ投げ飛ばした。

流れるような動作だ。

 

「ちょっとちょっと酷いよちーちゃん!今のは死ぬかと思ったよ!」

 

「自業自得だ」

 

「何も言い返せない!」

 

むくりと起き上がった束さんは全速力でこちらへ戻るなり文句を言うがバッサリ切り捨てられる。

 

「とりあえずちーちゃんが元気そうで安心した!」

 

そう織斑先生に告げると束さんはくるりと振り返り、次の獲物を見つけた。

 

「やっはろー!箒ちゃん久しぶり!おっきくなったねぇ、特におっぱい!」

 

「殴りますよ」

 

「ちょ、箒ちゃん、流石に真顔で拳を握りしめるのはシャレにならないよ!箒ちゃんは可愛いんだから笑ってよ!ほら、スマイルスマイル!」

 

「……何の用ですか、姉さん」

 

箒のその言葉に、一同がざわついた。

そう、俺は何度か会ったことがあるが周りのみんなはそうじゃない。

 

「……束、一応名乗れ」

 

「えー、めんどくさいなぁ。みなさーん天才の束さんだよ、ハロー。終わりー」

 

束さんは織斑先生に言われるまま、面倒なのを隠さずにそう言った。

 

「篠ノ之束?」

 

「えっ、本物!?」

 

「アイエエエエエエ!?」

 

「マジで!?」

 

「あー……静まれ!お前達は自分達の作業をしろ」

 

織斑先生の一喝で生徒一同は騒ぐのを辞めたが、好奇の視線は依然としてこちらに降り注ぐ。

 

「場所を移動する。山田先生、申し訳ないがここの指揮を任せる」

 

「……あっ、はい!お気を付けて」

 

織斑先生は束さんの頭をアイアンクローで掴んで引き摺りながら移動するとそう言い残す。

フリーズしていた山田先生は我に返り、そう返事をした。

 

専用機持ち一同は複雑な表情でその後に続いた。

 

 

 

 

 

「よし、ここでいいか」

 

場所は移動して別の海岸に専用機持ちは集められた。

 

「でだ、オルコット。先ほどの質問はーーーー」

 

「それは束さんが説明しよう!」

 

いつの間にか織斑先生のアイアンクローを抜け出した束さんが手を上げ注目を集める。

 

「それでは皆様、右手にあります海をご覧下さい!」

 

そう言って束さんが右のほう、海を指差す。

全員がそれに目を向けた瞬間、近くで衝撃が響いた。

 

「引っかかったな馬鹿め!本命は上だ!」

 

気付けば束さんの隣には銀色の物体が存在していた。

恐らく、空から降ってきたのだろう。

 

「どう?驚いた?驚いぶべらっ」

 

束さんが全て言い切る前に織斑先生が飛び蹴りを食らわせ吹き飛ばした。

 

「生徒に危険が及ぶ真似をするな」

 

「大丈夫だって、天才の束さんにかかればミスなんてちょっと待ってちーちゃんさすがに二発目は辞めて」

 

吹き飛んでもピンピンとした様子で復活する束さんにもう一度蹴りの姿勢を見せれば束さんは慌てて降参のポーズをとった。

 

「はーい。それじゃあ真面目に言うとー、箒ちゃんの専用機を持ってきましたー。それではご注目ー」

 

束さんの横にあった銀色の物体の表面がばたりと前に倒れ、中身が露わになった。

 

「これぞ束さんお手製、箒ちゃん専用機の『紅椿』!スペック増し増しで最先端技術を取り込んだ第四世代型のISです!」

 

物体の中から現れたのは真紅の装甲を纏った機体で、装甲のところどころに金色で椿の絵が描かれている。

椿の絵と腰に提げられた二振りの日本刀がいかにも和風である。

 

 

「え?……えぇぇぇぇぇぇ!?」

 

一連のやり取りで唖然としていた一同だったが、我に返った者は今度は束さんの突拍子もない衝撃告白により驚きの声を上げた。

 

「ね、姉さん……」

 

一番驚いていたのは箒だった。

その様子から察するに、箒は束さんに機体を頼んでいないのだろう。

 

 

「こうくんってばあんまり驚いてないねー」

 

「臨海学校に来るって言ってましたし忙しいとも言ってたから予想はしてました」

 

「つまんねーのー。いいもん、あっくんに自慢してやるー」

 

話を振られたのでそう答えれば束さんはふくれっ面になった。

 

「え、鋼夜って束さんと知り合いなのか!?」

 

俺と束さんのやり取りを見ていた一夏が驚きの声を上げた。

束さんが俺をあだ名で呼んでいるから、もっと驚いただろう。

 

「ISを操縦出来ると知った数時間後に拉致られた仲」

 

「すまない。今更だが、妹として姉の不躾な行動を謝罪する」

 

「いっくん久しぶり!ますますイケメンになったね!あと、こうくんと箒ちゃんはひどい!」

 

 

フリーダムな束さんは更に一夏や箒にちょっかいをかけはじめた。

 

 

「なんというか……」

 

「イメージと違いますわね……」

 

「西条社長から聞いてはいたけど本当なんだね……」

 

「しかし目の前のアレや教官の反応を見る限り本物らしいな」

 

「…………」

 

蚊帳の外である鈴、セシリア、シャルロット、ラウラはそれぞれが思ったことを呟いた。

全員が束さんのキャラに戸惑っている様子だが、俺の隣にいる簪さんだけは違った。

彼女は無言で束さんや一夏や箒を睨みつけている。

 

 

「と、いう訳でちょっと早いけどこの紅椿は箒ちゃんにプレゼント!さあ、乗るがいいや!」

 

束さんがリモコンのようなものを取り出し、ボタンをポチっと押すと紅椿の装甲が動き、搭乗者を受け入れる待機状態へ移行する。

 

「姉さん。嬉しいのですが、私はこの機体を受け取れません」

 

「ふふふ、威勢がいいね箒ちゃん。紅椿は逃げも隠れも……って、え?」

 

「前までの私なら、間違いなくこの機体を受け取ったでしょう。ですが、今の私はこの機体を受け取れません」

 

箒の答えを聞いてピシリと、束さんの体が固まった。

束さんだけで無く、全員が驚きの表情を浮かべている。

 

「えーと、理由を聞いてもいいかな?かな?」

 

「以前、鋼夜に聞いたんです。専用機を持つことについて。話の内容は省略しますが、専用機を持つことには多大な責任や自覚がいることを教えてもらいました。その話を聞いた上で、私は今の自分が専用機を持つに相応しく無いと、鍛錬が足りないと自覚しました。それは今も変わりません」

 

箒の言葉に、全員の視線がこちらに移る。

いま思い返せば、凄い恥ずかしい事を言ったと自分でも思う。

 

 

「中々いいこと言うじゃない」

 

「ほっとけ」

 

 

鈴が茶化してきたが、俺はそう言って顔を背けた。顔が熱い。

 

 

「だから、その機体は受け取れません」

 

 

ほろり。

箒の思いと覚悟を聞いた束さんの頬に一筋の涙が流れた。

 

「感動した!束さんは感動した!箒ちゃんがそこまで考えて、成長しているなんて束さんは嬉しい!」

 

そして、またいつものハイテンションで箒へ突っ込んでいった。

 

「ちょ、姉さん、離して……」

 

「ええい、ちくしょう可愛いなぁ!今まで会えなかったぶん、溜まりに溜まった束さんの溢れんばかりの箒ちゃん愛をあげよう!さあ、遠慮はいらなあべしっ」

 

箒へじゃれつく束さんを引き剥がした織斑先生はそのままジャーマンスープレックスを決めた。

惚れ惚れするくらいの綺麗な動作だった。

 

「大丈夫か、篠ノ之」

 

「はい、なんとか……」

 

「ちーちゃん、こっちの篠ノ之は大丈夫じゃないよ~……」

 

「返事が出来るくらい元気なら大丈夫だな」

 

昔からの付き合いだからなのか、織斑先生は束さんのあしらい方が上手いし派手だ。

 

「まー、あれだね。この子は箒ちゃんにあげるね。紅椿は箒ちゃんが好きな時に乗ればいいよ、うん。束さんが箒ちゃんのために作ったのは本当だからさ」

 

束さんは再び起き上がると笑顔でそう言った。そばに織斑先生が控えているので普通にしている。

 

「でもデータが欲しいしフィッティングとかパーソナライズとか色々あるから、一回乗ってもらっていい?」

 

「……それくらいなら」

 

「よっしゃー、箒ちゃんがデレた!」

 

箒が束さんに促されて紅椿に搭乗した。

搭乗と同時に俺の眼鏡に紅椿の展開と情報を載せたディスプレイが表示される。

 

ざっと表示されてる数値を見るだけで分かるチートステータスだった。

 

 

「最新鋭機かぁ……」

 

「ここにいるのが私達だけで良かったですわ……」

 

「国の関係者が見たら卒倒するだろうね」

 

「世界中が博士を探す訳だな」

 

目の前でのやり取りを見て再び四人が呟く。

 

 

……多分、俺しか気付いてない。

セシリアよ、実は部外者ならあと一人近くに居るんだ。

その人はなんでここにいるのか良く分からないけど。

 

 

 

ふと、隣の簪さんに意識を向けてみれば彼女は先程と変わらず箒達を睨みつけていた。

 

 

「簪さん」

 

「……分かってる。ここで織斑一夏や篠ノ之箒に文句を言うのは、恨むのは違うって」

 

俺が一声掛ければ彼女は察したようで、彼女達から視線を外した。

 

「でも、納得できない。あいつら……ズルいよ」

 

簪さんの感情を押し殺した声に、俺は何も言うことができなかった。

 

 

「誰がズルいって?」

 

不意に声をかけられ、ギョッとした簪さんが振り返れば半眼の束さんがいた。

紅椿の設定は終了したようで、箒は既にISを解除している。

 

 

「……あ」

 

「キミが誰かは知らないし何してる人か興味ないけど言わせてもらうね。有史以来、世界が平等であったことは一回も無いよ。箒ちゃんに文句があるの?自分だって頑張ってるのになんでアイツだけー、ってやつ?」

 

「ちがっ……その……」

 

「努力するのは当たり前だよ。全員やってる。でもそれを評価してくれる人がいるかいないかは別。箒ちゃんには私がいた、キミにはいなかった。ただそれだけ。まぁこの世は全て運ゲーなんーーーー」

 

「はいストップ」

 

半眼で迫る束さんに簪さんは後ずさる。

そして唐突に、束さんの体が浮き上がり第三者の声が響いた。

あ、今出てくるんですね。

 

「はなせー、あっくんと言えど許さんぞおらー、すっぞおらー」

 

「それ以上はやり過ぎだから、ね?」

 

束さんを抱え、高い高いをする人物。

高そうなスーツに身を包み、栗色の癖毛が特徴の男性。

 

その人物を知っている一夏、シャルロットは驚きの表情へ変わる。

 

 

「誰?」

 

「あの篠ノ之博士をこうもあっさりと……」

 

「まるで気配を感じなかった……」

 

 

反対に、知らない鈴、セシリア、ラウラは次なる乱入者に疑問符を浮かべる。

 

「鋼夜くん……あの人、誰?」

 

恐怖からか、俺の腕へしがみつく簪さんが束さんと楽しそうにじゃれている乱入者の事を訊いてきた。

 

俺が答えるより前に、織斑先生がその二人の元へ向かっていった。

 

 

「申し訳ありませんが、ここは関係者以外立ち入り禁止です」

 

「どうもお久しぶりです織斑先生。政府諸々からの許可証を受け取っておりますのでお渡しします。ご確認ください」

 

「……確かに本物のようですね」

 

受け取った書類の束をパラパラとめくる織斑先生がそう呟いた。

許可証持ちという事実に一部の生徒がざわつく。

 

「混乱している者もおりますので、一応自己紹介だけでもお願いします」

 

「了解しました」

 

織斑先生がそう言うと、その男性は束さんを下ろすとこちらにやって来た。

 

「はじめましての方ははじめまして。それ以外の方はお久しぶりです。ラビアンローズの社長の西条輝です。うちの鋼夜くんやシャルロットさんがお世話になっています」

 

 

一礼と共にそう名乗る。

 

そう。

さっきから感じていた気配は輝さんのものだった。

 

 

 

 

『なんですぐ出てこなかったんですか?』

 

『出るタイミングをずっと伺ってた』

 

こっそり輝さんにテレパシーで話しかければ、悲しい答えが帰ってきた。

 

 





アカン、簪が死ぬ
かんちゃんが臨海学校に来ない作品が多いのを理解した

箒はもうおっぱいのついたイケメン枠にならなきゃ生き残れない、多分

ここの束さんはクレイジーサイコ箒ちゃんです
だからキャラが崩壊してても問題はない、いいね?


次回、鋼夜の機体の新型カスタムが登場

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