神様転生した者だけど毎日が苦痛   作:八雲 紅

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腐れ夫人に出番など無い


騒動決着の第46話

 

学年別トーナメントの翌日。

あの騒動の事後処理のためか、学園が休みとなったため俺はトーナメントの報告や例の件について聞くためにラビアンローズへ来ていた。

 

 

「こんにちは」

 

「お疲れさま、鋼夜くん。異常は無かったかい?」

 

「はい、一応は大丈夫です」

 

 

社長室の扉を開ける。

中に居た輝さんに挨拶し、俺は応接用のソファへ座る。

 

今の時間は昼。

朝に会社に来て、今までメディカルチェックを受けていた俺はやっと解放されて社長室へやってきた。

 

さすがに昨日は色々あったから会社にお呼ばれされて俺も『四天』も治療らしい。

『四天』は姉御に預けた。

俺が向かった先にはカウンセラーとか居てびっくりした。

 

そしてそれも終わった。

だから残り少ない自由時間を安らかに過ごすためにこの場所へ来た。

それに昨日の件も気になるし。

 

 

「昨日は大変だったね」

 

「いやぁ、本当です。……昨日は見苦しいところを見せました。申し訳ありません」

 

「仕方ないさ、VTシステムが負の感情を流すものだとはわからなかったんだから。鋼夜くん、君が謝ることじゃない。これは対処や対策を施さなかった僕に責任がある」

 

 

俺は謝るが、輝さんは気にするなと返す。

そして上手く感情をコントロールする方法やニュータイプ機能の制御を教えてくれると約束してくれた。

 

 

そして俺は気になっていることを聞くために話題を変えた。

 

 

「輝さん。昨日のアレ、どうなりました?」

 

「音声録音してるけど聞く?」

 

「お願いします」

 

 

輝さんはデスクの鍵付きの引き出しを開けて中からボイスレコーダーを取り出す。

 

 

「早く動きましたよね」

 

「向こうも焦ってたんだよ。ドイツがあんなことをしたんだ、委員会の介入を各国も警戒するさ。フランスは特にね」

 

 

フランス。

 

そう、昨日サウナで一夏と我慢対決していた時に入ったシャルルからの通信。

あれは一向に出て来ない俺と一夏を心配してのことでもあるが、彼女は最後に「話がある」と言い残した。

 

風呂上がりに彼女に詳しい事情を聞くと、プライベートチャネルでの会話を頼まれた。

 

そして彼女から話された内容は『義母から呼び出された』ということ。

場所は近くの港の倉庫街。

しかもご丁寧に今から、一人で、来いという。

 

教えてくれた彼女に感謝し、俺は輝さんに連絡を入れた。

その後に会長や織斑先生の元へ向かい、事情を話して彼女の外出許可を取った。

 

輝さんにシャルルの事を頼み、俺と一夏は彼女の無事を祈って学園で待つ事になった。

 

 

そして今日。

輝さんから「上手くいった」ということは聞いたが詳細は知らないのでずっと気になっていたのだ。

 

 

「案の定、デュノア夫人は彼女を回収するつもりだったよ」

 

そう言うと輝さんはボイスレコーダーのスイッチを押した。

 

 

『あら、来たわね』

 

 

レコーダーから流れてきたのは女性の声。

 

「誰?」

 

「デュノア夫人」

 

「どういう状況なんです?」

 

「シャルロットさんにボイスレコーダーを持たせて一人で行ってもらった」

 

 

輝さんの説明に納得して意識をボイスレコーダーに戻す。

なんだか即席の実況みたいになってしまった。

 

 

『約束通り、一人で来ました』

 

『本当に一人で来たみたいね、えらいわ』

 

 

シャルルの声も入っている。

 

 

「実際は?」

 

「こっそり追跡して腕利き集めて突撃。見張りを無力化して、たぶん今は皆で周りを絶賛包囲中」

 

「ですよねー」

 

 

ラビアンローズの警備員やSPってISの登場で仕事を失ったり人員削減でリストラされた元軍人だったりするから肉体派が多いんだよね。

 

それにボイスレコーダー渡してる時点で何かする気満々みたいですし。

 

 

『それで、お呼び出しの用件とは何でしょうか?』

 

『白々しいわね』

 

 

シャルルが用件を聞けばデュノア夫人は一変。

猫なで声から不機嫌を隠さない荒い声に変わる。

 

 

『知っているのよ?貴女があの若造の元へ逃げたことくらい』

 

 

若造って輝さんのことだろうか。

 

「知っているのになんで呼び出したんだろうなー」

 

「普通に考えれば、彼女の情報提供から今までのあんな短時間でデュノア社に対抗する準備が整うとは思わないからね」

 

それを聞いて納得した。

それについては俺達が特別過ぎるだけである。

シャルルが学園に来る前から準備してるとは普通思わないよね。

 

 

『貴女の行動は我がデュノア社の存続に繋がっているのよ。貴女が下手をすれば罪の無い社員までもが貴女のせいで被害を被るのよ?あまり私を困らせないで頂戴』

 

 

「お前が言うな」

 

「お前が言うな」

 

俺と輝さんのツッコミがリンクする。

会社の金を勝手に使っているお前が言うな。

会社の経営を傾けているお前が言うな。

 

 

その後、シャルルを脅すような会話が繰り広げられる。

夫人は会社や社員を盾に取り、ラビアンローズとの協力を取り消し一夏と俺のデータを持って会社に戻ってくることを命令する。

 

しかしシャルルも中々に強かで、夫人がボロを出さないかと言葉の一つ一つに食いついている。

シャルルにボイスレコーダーを持たせたのはこのためか。

 

 

『いちいちうるさいわね。強引にでも連れて帰らせてもらうわよ』

 

『……っ!』

 

シャルルの息を飲む声が聞こえた。

 

 

「どういう状況?」

 

「夫人の護衛が数人居たんだ。そいつらが銃を構えたんじゃないかな」

 

 

輝さんに状況を聞き、納得。

なるほど、と思いボイスレコーダーに耳を傾ける。

 

 

『一つ言っておくけどISは使わない方がいいわよ?許可された場所以外でのISの使用は禁止されている。……男だと発表されたあなたが女とバレたらどうなるかしらね?まぁ貴女も道連れになるから無駄ね』

 

 

「これで本当にシャルルが道連れにする気だったらどうしたんだろうか」

 

「こういう状況は強気に出なきゃいけないからね。見栄張るしかないさ」

 

 

緊迫した状況なのは分かるが、ツッコミが抑えられない。

 

 

『まぁ、それは厄介だから外しちゃいましょうか。やりなさい』

 

剥離剤(リムーバー)……!』

 

 

シャルルが言ったリムーバーというものはISを使用者から強制的に装着解除させるもので、結構えげつないものだったりする。

一度使われるとISに耐性が付いてしまうため一回しか使えないが。

 

 

『……最後に、教えてください』

 

『なに?』

 

『私、聞いたんです……お義母様が父の財産だけでなく会社のお金にまで手を出していると……会社の経営難は、貴女のせいだと。本当なんですか?』

 

『だとしたら、どうなの?』

 

 

あ、認めた。

言質とったね。

 

 

『やっぱり……!』

 

『貴女が知ったところで何も出来ないでしょう?使えないながらも、充分利用させてもらったわ』

 

 

シャルルちゃん大ピーンチ!

 

 

『ぐぇっ!』

 

『ぐはっ!』

 

『げふっ!』

 

唐突に男の野太い声が響き、何かぎ倒れる音がする。

そして数人の人間の足音が近付いてくる。

 

 

『どうもこんばんは、お昼はどうも』

 

『貴様は、西条輝!』

 

 

シャルルのピンチに駆けつけたのは我らが輝さん!

輝さんに助けてもらえるとか、負ける気がしない。

 

 

「キャー輝さーん」

 

「なんか恥ずかしいな……」

 

 

いよいよクライマックスか。

ボイスレコーダーから焦った夫人の声が聞こえてくる。

 

 

『何の用だ!』

 

『彼女は我々の大事な客人なんだ。手荒な事をされては困る』

 

『私に歯向かってタダで済むと思っているのか!?』

 

夫人はさっきまでの余裕のある雰囲気や言動から一転して小物みたいなことを言い出す。

 

『この会話は録音させてもらっています。貴女が何を喚こうが無駄なことです』

 

『なん……だと……。……しかしそこの小娘が性別を偽りスパイとして学園へ潜入したのは事実!お前も道連れだよ!』

 

「本当に小物ですね」

 

思ったことを呟くと隣の輝さんも苦笑する。

それくらい、なんというか、小物っぽい。

 

 

『ああ、貴女は知らないようですが彼女の存在を学園は認知しております。なんでも社長直々に彼女のことを学園に頼んだらしいですね。……彼女をスパイと思っていたのは本人を除けば貴女達くらいのものですよ』

 

『えっ……』

 

『おのれ、あの男!余計な事を!』

 

 

困惑している様子のシャルルと激昂する夫人。

 

「既に学園が彼女の正体を知っていたのはこういうことですか」

 

「そう。どんな理由があっての行動なのかは分からないがね」

 

 

と、ここで録音が終わった。

なので俺は気になったことを早速聞いてみる。

 

 

「この後、どうなったんです?」

 

「お前だけでもぉぉぉ!って言いながら夫人が銃を取り出そうとしたから銃を取り出す前に接近して気絶させたくらいかな」

 

「なんでそこまで録音してないんですか」

 

おもしろそうな場面なのに。

 

 

「輝さん、シャルルは?」

 

「こちらが用意した部屋で休んでいるよ。今はそっとしてあげよう」

 

 

シャルルは昨日帰って来なかったから心配したが、無事ならなによりだ。

決心していたとはいえ自分の義母と対立し、傷付くことを言われたのだ。

しばらくは一人にさせた方が正解かもしれない。

 

 

「デュノア社や夫人はどうなりました?」

 

「夫人は警察に引き渡したし、デュノア社については後日に社長と話し合う形になったよ」

 

「じゃあ、デュノア社については……」

 

「解決かな?鋼夜くん、お疲れ様」

 

「よっしゃァァァァ!」

 

 

俺はガッツポーズをすると共に叫ぶ。やっと終わったぞ!

 

 

「まぁ、事後処理や難しいことはこっちに任せて鋼夜くんは休んでいなよ。……って言いたいところなんだけどね」

 

途中で輝さんは言葉を濁し、バツの悪そうな顔をする。

まだ、何かあるのか……。

 

「VTシステムの騒動を治めたのが鋼夜くん、って情報が漏れたらしくてね……今、各国から問い合わせが殺到しているんだ」

 

「問い合わせ?」

 

俺の疑問に輝さんはひとつ頷いて答える。

 

「如月鋼夜を是非我が国に紹介しろ!とか、契約するから如月鋼夜を寄越せ!とか、そんなのばかりだよ」

 

ため息と共に輝さんは答えた。

 

「凄い手のひら返しを見た気がする」

 

いや、本当。マジで。

お前ら今まで俺に見向きもしなかっただろ。

 

「しまいには、日本には男が二人居るんだから片方寄越せ!とか言い出す国もあるんだよ」

 

なんだそれ。

 

「俺も一夏も日本国籍ですから所属は日本でしょう。それに一夏はともかく、ラビアンローズ所属の俺は本社が日本にあるんですから日本所属は確定のハズですよ」

 

そもそも学園在籍中に声を掛けるのはアウトじゃないのか。

まぁ俺本人じゃなくて会社だからギリギリセーフなのかもしれないが。

 

 

「それで納得してくれたらいいんだけどね……」

 

輝さんはやれやれといった表情と仕草で再びため息をついた。

 

 

「まぁ、学園に居る間は大丈夫だから。でも諸外国の留学生や代表候補生に気を付けてね。ハニートラップまがいのことを命令された子がいるかもしれないから」

 

「……はい」

 

「そんな顔をしないでくれよ、鋼夜くん……」

 

「いえ、大丈夫ですから……」

 

 

いま、どんな顔をしているのだろうか。

輝さんが真面目に心配してくれている辺り、酷い顔をしているに違いない。

 

 

「あぁ……鬱だ」

 

明日の学校、行きたくないなぁ……。

 




鋼夜「あったよ!夫人を倒す方法が!」
輝「でかした!」

デュノア社乗っ取りはしばらく後になります


最近マキシブースト始めました
ピッカピカの新兵です

練習してるのに他のプレイヤーが入ったら強制的に対戦になるのは止めてくれ
ノーベルガンダムに乗った初心者が少将とか訳分からん称号持った廃人に勝てるわけないだろ……
アーケード慣れてないからあのスティックとボタンは苦手なんだよ……よりによってPS3とかのコントローラーじゃないから、ちくしょう!

バンシィ・ノルンに乗った新兵のこうやんを見かけたらボコボコにしてどうぞ

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