ラビアンローズ本社の最上階にある社長室。
その場所は、俺の心が安らぐ数少ない場所だ。
俺の休日はだいたいここから始まる。
「女の子って、消耗品じゃないと思うんですよ」
「いつにも増して唐突だね」
俺の呟きに反応する輝さん。いつもありがとうございます、少し付き合って下さい。
「敵役の女の子って居るじゃないですか。敵女ってやつ。そういうのが殺されたりする度に思うんですよ、勿体無いって」
「まぁ、人の好みはそれぞれだよね」
「殺すくらいなら俺にくれよ、って最近本気で思ってるんですよ。女の子は殺すものじゃなくて愛でるものですよね?まぁ、そういうので興奮しちゃう自分もいるわけですが」
「鋼夜くん、君は疲れているんだ」
本気で心配している表情の輝さん。
まだ大丈夫ですよ。まだ。
「二次元とリアルの区別くらい付きますよ。脇役好きだから結構損してるなぁ、ってだけです」
ここは元々、二次元の世界だけどな。
「鋼夜くん。学校はそんなに酷いのかい?その、例の彼が」
さすがニュータイプ。輝さんは即座に俺の悩みの種を当てて見せた。
「もうね……限界ですよ」
愚痴を聞いてくれるらしいのでお言葉に甘えさせてもらうことにする。
盛大にため息をついて輝さんに語る。
「一夏と行動する度に、睨んでくる奴等は何なんでしょうね」
「……うん?」
俺の言葉に疑問符を浮かべる輝さん。
そうだよね、そうなるよね。
「例えば一夏が「放課後の訓練は鋼夜とやる」って言うじゃないですか。そしたら本来の一夏のコーチ達に……誰とは言いませんが……睨まれるんですよ」
今は別行動しているからいいものの、最初の頃は酷かった。
お昼に誘われただけで睨んでくるとか、どうしろと。
ていうか、誘った相手が女子なら分かる。でも俺よ?男よ?なんで睨まれるの?しかも誘うのは一夏の方からだよ?
確かに、君の理想と違う結果になったかもしれないけどなんで睨む必要があるの?プレッシャー出すの?
男と男が、友達が一緒に行動しちゃいけないの?
箒を見習えよ。箒は嫉妬するどころか一夏が他の女子と付き合わずに済んだ、って考えれるんだぜ。
て言うか、そう考えるのが普通じゃないのか。
俺と仲が噂されるくらい一夏がホモっぽいのも原因だけどさ。
「あといつも言ってますけど、あいつは鈍感です」
「それは聞いたよ。胸を押し付けられても何も反応しない、告白されれば真っ先に買い物と答え、自分が注目されているのはただ自分が珍しいからと思い、世話を焼いてくれる女子にいつもどうして俺なんかに?と疑問を抱いている……だっけ?」
輝さんの言葉に頷く。
あいつと過ごして嫌になるほど分かった事だ。
まぁ、大半はアニメでの先入観のイメージが入っているがこのままいけばそれと変わらない結果になるだろう。
「アニメ見てて、暴力系ヒロインとか最悪だな、主人公は鈍感だけどさすがに不憫だなって思ってたけど最近だとあいつは殴られてもしょうがないと思えてしまうんですよね。いや、むしろ殴られろ」
「そもそも好きな相手に手を上げること自体がおかしい気もするけどね」
「自分も悪いところがあるとはいえ、殴ってくる相手を好きになるわけないですよね。常識的に考えて」
暗黙の了解?起承転結?話のお約束?知るか。
ラブコメ騒動は俺の見えないところで好きにしてくれ。ツッコミはするけどな。
「正直俺としては、ヒロイン全員あげるからフラグ建てても回収する気もない脇役やモブを俺に残して下さい。って感じです」
ヒロインですらフラグ回収しないのにその他にフラグ建てるのはおかしいよな?おかしいよなぁ?
ぶっちゃけ一夏のせいで、まぁ例の事件で一年の中では改善されたけど上級生は未だに俺と一夏を比べてるからね。もちろん一夏マンセーの方向で。
「野暮だとは思うけど……教えないの?」
困惑した表情でそう質問する輝さん。甘い、甘いです。
「一夏はですね、下手をしたらアイツ化する可能性があるんですよ」
「アイツ?」
「嫌いな主人公第一位のアイツです」
「あぁ……」
俺の答えに輝さんは納得する。
そう、事あるごとに死ねと言われるアイツである。
「もし一夏が、自分がモテる奴だと自覚したらどうなります?……これ、例のアイツと同じパターンなんですよ、アイツも最初は鈍感で両想いに気付いてなかったんですから」
一夏もアイツも、基本は優しい奴だからね。似てるからこそ怖い。
しかもIS学園って女子校だからね、もし一夏がクズ化したらスクイズ以上に悲惨な事になるだろう。
割とマジで。
あれは唯一と言っていい幸せなルートがスピンオフだしなぁ。
スピンオフ……クロスゲイズ……あっ(察し)
……一夏ってマジでホモなんじゃないのか?
ていうかホモの方が幸せだな。うん。
「…………」
さすがの輝さんも言葉を失っている。
さて、このままだと流れが良くないので話を変えよう。
「というわけで輝さん。プルシリーズ下さい。十五人くらい」
「何がという訳なの!?グレミーもびっくりだよ!」
「そういえば特殊な細胞を使えば親がいなくても子供が出来るらしいですよ」
「何言ってるんだ鋼夜くん!?」
「大丈夫ですよ、全員幸せにしますから」
「そういう問題じゃないよ!」
「無敵のラビアンローズの科学力でなんとかして下さいよォ~~」
「ごめん、本当ごめん」
と、少しふざけたら輝さんにマジの謝罪をされた。
嫌だなぁ、冗談なのに。冗談。
「分かりました。じゃあ艦娘でいいですよ」
「それ全然妥協してないよね。むしろハードル上げてきたよね」
「俺は謙虚だ、駆逐艦娘9人でいい」
「おいィ!?」
「俺って量産型ハーレムとか好きですから」
中学生の妄想を絵にしたような、広告バナーのエロ漫画とか好きだし。
高嶺の花より隣の花畑。
いま自分で作った言葉だが、なかなかいいな。しっくり来る。
例えるならヒロイン一人より周りのモブ五人。って感じだな。
届かないから、苦労するから高嶺の花なんだ。
だったら苦労せずに、同じ苦労をするのでも花畑で満足だろ。
花畑だって綺麗なんだから。
輝さんのツッコミは珍しいのでもう少しボケようかと思ったらまたマジ謝りされたのでこちらも謝ってボケるのを辞めた。
途中から本心だった?割と本気だった?
ははは、そんなことあるわけないじゃないか。
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「落ち着いた?」
「はい」
言いたいことを言ってスッキリした俺は輝さんと向かい合って座っている。
「それは何より」
冷蔵庫からアイスコーヒーを取り出しグラスに注ぐ。
よく見ればまたラビアンローズがコラボする製品らしい。
しかし一等がまたボール人形か。
人気あるんだな、ボール。
「鋼夜くん、例の件は大丈夫かい?」
輝さんが真面目な表情でそう聞いてきた。
例の件、というのはデュノア社関連の事だ。
「ええ、それは大丈夫です。彼女は俺達のデータをまだ取ってすらいませんでした。あの二人の部屋は隅々まで確認して監視系統は排除しましたし、彼女の専用機のラファールも点検して怪しい機器は取り除きました。抜かりはありませんよ」
「安心したよ。彼女が既にデータを渡していたらアウトだったからね」
懸念の一つが解消された輝さんはホッと一息ついてコーヒーの入ったグラスを傾ける。
「明日には学園側に事情を話す予定です」
「ああ、よろしく頼むよ」
あの後、シャルルはラビアンローズの誘いに乗ることを俺に話した。
一夏も彼女の意思を聞いたようで、俺に謝ってきた。
答えを聞いた俺はすぐさま二人の部屋へ向かい、監視カメラ等の機器の捜査を始めた。
部屋に怪しいものは見つからなかった。
次に俺はシャルルの専用機のラファールを調べた。
すると案の定、通常の備品とは違う装置を発見したので解析。
結果はクロ。装置には記録データが保存されており、ISの用途とは違う目的のものだと判断した。
そして明日には学園の織斑先生や生徒会にシャルルについての話を通す予定だ。
一夏が最後までいい顔をしなかったがシャルルと俺の説得によって渋々だが了承した。
一夏が織斑先生に、俺が生徒会に、という感じだ。
生徒会と知り合いなのは俺しか居ないし。
「しかし、どうやってデュノア社を落とすんですか?まぁ、相手は脅せば落ちるレベルですけど」
「それについてはまず、デュノア社の経営不振について説明しないといけないね」
そう言うと輝さんは自分のデスクの鍵付きの引き出しを開けて中から書類がいくつか入っているクリアファイルを取り出した。
「経営不振の理由ですか。デュノア社は第三世代の開発が進まないからフランスからの支援を減らされて、しかもイグニッションプラン……欧州のIS連合みたいなのからも外されてしまうから、ですよね?」
「ああ、その通りさ」
シャルルから聞いた話を答えると輝さんは頷く。
「でも満点ではない。最大の疑問は、なぜデュノア社がそこまで追い込まれたのか、だ」
輝さんはクリアファイルをパラパラとめくってとあるページの紙を取り出す。
「デュノア社のラファールは世界のシェア率でも上位を誇る。第三世代の開発が進んでいる国でもその安定性から運用されているところが多い。ISに限った話じゃないけど新型というのは忌避されやすい傾向がある。ベテランが未だにラファールを選ぶのも珍しくはない。実際、私だってラファールの性能は評価している。……さて、そんな安定感溢れるデュノア社が目に見える範囲で経営不振に陥った理由がここにある」
そう言うと輝さんは手に持っている書類を渡してくれた。
聞けば聞くほど疑問が増える。
疑問の答えが記されている書類を輝さんから受け取る。
「……これ、誰です?」
書類の画像に写っているのは豪華な格好をした金髪のオバサンだ。
「デュノア夫人だよ」
それを聞いて理解する。シャルルの義母ね、なるほど。
そして書類を読み進めていくうちにだんだんと事態の推移を理解していく。
「デュノア夫妻の夫婦仲はあまり良くなかったみたいだけど、数年前から一気に変わったみたいだ。夫人の金使いは荒くなり、会社の経営にも幅を利かせてきた」
「数年前……恐らくシャルルの存在が関係していますね」
夫が浮気するくらいだからお互いの夫婦仲は良くなかったんだな。
シャルルの存在が発覚してそれにキレた夫人が好き勝手やりだした、ってとこか?
女尊男卑の世界だから手を出すに出せないんだろう。
「夫人が会社の金を勝手に横領した証拠もある。それにデュノア社はうちに何度も過剰な干渉をしてきたからね、その辺りの証拠もバッチリだよ」
「証拠がよく集まりましたね」
「フェニックスが一晩でやってくれました」
鳳凰院さん、ご苦労様です。
今度、ラーメンを奢ろう。
内心で頼れる兄貴分に感謝しつつ、話を進める。
「つまり、デュノア社が経営不振になった理由は……」
「だいたい夫人のせいだね。だからフランス政府も援助を減らしたんだろう」
「そして追い詰められたデュノア社は苦肉の策としてシャルルを男に仕立て上げて学園に送り込んだ、と」
「それ以外の理由もあるだろうけどね、大体合ってるよ」
導き出された結論を聞いて納得する。
しかしそれでよくフランス政府はシャルルを通したな。
輝さんが言ってる通り、まだ何かあるんだろう。
「確か、近々IS学園でトーナメントがあったよね?その時にデュノア社に仕掛けるよ」
カレンダーを見ながら輝さんはそう言う。結構早いですね。
「そんなに上手くいきますか?」
「相手はこの話に乗るさ、絶対にね」
俺の疑問に輝さんは笑顔で答える。
輝さんがそう言うなら成功するんだろう。
その後はトーナメントまでにシャルルをラビアンローズに連れて来て打ち合わせをするという旨を話し合った。
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「楽しい話をするよ!鋼夜くん、これを見てくれ!」
やたらテンションを上げた輝さんがタブレットを取り出し、操作する。
そして見せられたのは……。
「ISの設計図ですか?」
「草案だけどね」
部分展開型のISらしく、全身にダークグレーのカラーリングが施されている。
丸い頭部にはゴーグルが装備され、ウサ耳のようなセンサーが左右から伸びている。
手足は丸みを帯びており、左腕には三本の突起が見られる。
背部にある四枚のウイングスラスターは正面から見るとX状に見える。
これって……。
「ゲシュペンストじゃねーか!」
それはまさに、よくスパロボとかに出てくるオリジナル機体のゲシュペンストだった。
「ラビアンローズが考案した第三世代型の量産機の『
やっぱりネタが分かって貰えて嬉しいんだろうか。
自信満々といった顔で答える輝さん。
「もう作ってるんですか?」
「いや。まずは鋼夜くんの四天の換装を全部作ってそのデータからこいつを作る予定だからまだまだだよ」
ふーむ。まだ作ってないのか。
結構好きな機体なんだよねこいつ。完成したなら是非とも乗ってみたい。
「そういえば、四天の新しい換装パックはまだですか?」
もうそろそろ新しいパックが届いてもいいはず。
前回の暁が(性能が良過ぎて)封印という残念な結果になったため、新しいパックに期待が高まる。
「ごめん、まだなんだ。トーナメントで使いたいんだろうけど、間に合わないなぁ」
「なんと!?」
トーナメントに間に合わないとな。
仕事が早いラビアンローズにしては珍しいな。
「その代わり、今回はかなり力を入れて製作してるからね。なんとフェニックスもプロデュースしてくれた特別製さ。臨海学校までには完成するから期待して待っているといい」
なにやってんだ鳳凰院。
「力を入れるのはいいんですけど暁みたいな事は御免ですよ」
「…………善処するよ」
おい、なんだその間は!?
やめてよね!?輝さんが本気でかかったら世界の技術者が逃げ出すレベルなんだからね!?
「ちなみにパックっていくら作る予定で?」
「あと三つかな、はい」
俺の質問を受け、タブレットを操作する輝さん。
渡されたタブレットの画面を確認する。
「近接特化強襲型『
画面に表示されているデータを見て呟く。
電子工作って……軍事利用だとかなんとかでうるさくなりそう。
「まぁ、大丈夫だよ。多分」
多分って……乗るの俺なんだけど。
嫌よ?軍法会議とか。
「それより鋼夜くん。一緒に幽鬼の武装を考えようよ」
話を誤魔化すかのように輝さんは笑顔でそう提案してきた。
「いいですとも!武装はロマン全開でいきましょう!とりあえずパンチとキックは基本として後付けでいいんでパイルバンカーをですね……いや、いっそソウルゲインの武装を逆輸入するのも……」
このあと滅茶苦茶ヒーローごっこした。
シャル問題はかなりやっつけアンド自己解釈
不明な部分は追い追い話します
そろそろ鋼夜が壊れそう、どうしよう
前回の感想で多数の紳士が居てたまげたなぁ……
自分はシンビーと一日中イチャイチャしたいですハイ
一夏と誠は似ている、間違いない
関係ないけどスクイズは世界が悪いと思う
世界が出しゃばらなければ誠と言葉様は幸せなキスをして終了してた
世界が何もしなければ誠が調子に乗ることも無かったんだよなぁ……
ちなみに刹那派です、妻です