「おい織斑、如月。デュノアの面倒を見てやれ。同じ男子だろう」
HRが終わる際に織斑先生は俺と一夏にそう言った。
まぁ、当然と言えば当然か。
「初めまして。僕はーー」
「ああ、いいから。とにかく移動が先だ。女子が着替え始めるから」
「?……あっ、そうだね」
一瞬考えてから返事をするデュノア。
……ノーコメントで。
「とりあえず男子は空いてるアリーナ更衣室で着替えるんだ。実習のたびに移動するから早めに慣れてくれ。行くぞ鋼夜」
「了解」
一夏は簡潔に説明するとデュノアの手を取って教室を出たので俺も後を追った。
「うわわっ」
一夏に手を取られたデュノアが顔を赤くして素っ頓狂な声を出す。
…………いや、何も言うまい。
階段を下って一階へ下りると、大量の人の気配を感じた。
「来るぞ一夏」
「分かってる!」
HRが終わったクラスから情報収集のために生徒が殺到してくるのだ。
「転校生、大発見!」
「しかも織斑君と如月君も一緒!」
すると、曲がり角から生徒の群れが現れた。
捕まれば最後。質問攻めから授業に遅刻からの織斑先生によるお仕置きトレーニングの流れになるだろう。絶対に嫌だ。
「目標の転校生を発見!」
「他クラスの支援を要請する!」
「駄目だ!」「駄目だ!」「駄目だ!」
賑やかですね!楽しそうですね!
思いっきり皮肉を込めてそう叫びたい。
「な、なんでみんな騒いでるの?」
「そりゃ男子が俺たちだけだからだろ」
「……?」
おいデュノア。なぜそこで困り顔というか疑問符を浮かべるのか。
「いや、普通に珍しいだろ。ISを操縦できる男って、今のところ俺たち三人しかいないんだろ?」
「あっ!ーーああ、うん。そうだね」
…………もういいや。この包囲網を切り抜ける事だけを考えよう。
心を無にしてひたすら走り、ついに目的地である第二アリーナ更衣室へ到着した。
織斑先生の写真(一夏提供)を取り出し、数枚をばら撒いて女子たちの注意を逸らす作戦で俺たちは包囲網を突破したのだ。
「とりあえず一安心だな。時間は……ちょっと余裕あるな」
一息ついて時計を見れば本当に少しだが時間に余裕があった。
「とりあえず自己紹介しとく。如月鋼夜だ。鋼夜でいい」
「俺は織斑一夏。一夏って呼んでくれ」
「うん。よろしく二人とも。僕のこともシャルルでいいよ」
「よろしくな、シャルル。よし、着替えるか。千冬姉の授業は遅れたらヤバいからな」
簡単に自己紹介を済ませた俺と一夏は着替えを開始する。
「わあっ!?」
途中でシャルルが変な悲鳴を上げたが無視して着替えを続行。
「どうしたシャルル?着替えないのか?遅れるぞ」
「き、着替えるよ?でも、その、あっち向いてて……ね?」
無視無視無視。
そしてあっという間に俺は着替え終わった。
「うわ、鋼夜早いな」
「下に着てるからな」
スーツって下着みたいなものだし。
実際、技術を流用して下着になってるし。
「俺もそうしようかな。これ着るときに裸になるから着づらいんだよなぁ。引っかかって」
「ひ、ひっかかって?」
「おう」
何がなんなのか分からない様子のシャルルに一夏は至って普通に返した。
そして理解したのか、シャルルの顔が赤くなる。
「……じゃ、俺は先に行くから」
このままだと俺の中で何かが爆発しそうなので自主退場した。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「遅い。さっさと並べ」
一夏とシャルルは少し遅れてきたので織斑先生に怒られた。
あとなぜかセシリアと鈴が騒いだので出席簿を喰らっていた。
「では、本日から格闘及び射撃を含む実戦訓練を開始する」
「はい!」
ちなみに今日の授業は一組と二組の合同実習だ。人数が倍のため、返事がいつもより大きく、気合いが入っている。
「…………」
だいたい何が起こるか分かるため、先生の話を聞き流してボケーっとしながら周りを見回す。
右にはISスーツ姿の女子。
左にもISスーツ姿の女子。
前もISスーツ姿の女子。
後ろもISスーツ姿の女子。
眼福である。
四天のカメラ機能でも使ってやろうか、もちろん無音。
動画撮影でも可。
…………はぁ、これじゃあただの変態じゃないか。
俺が尊敬する変態はVPのレザードだけだ。変態は変態でもレザードみたいなスタイリッシュな変態がいいです。
《警告!ISが接近中!》
ゲスな思考を巡らせていると唐突に四天からISの接近のアラートが表示された。
あー……アレか。一夏、ご愁傷様。
アラートの方を向けば緑色のISと思わしき物体がこちらに向かって落ちてきていた。
……ん?こっち?え?マジで?
「ああああーっ!ど、どいてください~っ!」
ただの落下物なら四天の天岩戸で弾いてハイ終了、というところだがあいにくこちらに向かって落ちてきているのは取り扱い注意なものなのでそれは出来ない。
俺は即座に四天を展開し、落下物……山田先生が搭乗しているラファール・リヴァイヴを真正面から受け止めた。
「ぐあぁっ!」
背中から倒れ、何回か地面をバウンドしながら数メートル吹き飛ばされる。
全身に凄い衝撃が襲い掛かり、危うく意識が飛びそうになるがなんとか意識を保ったまま堪える事が出来た。
「うー…………はっ!?大丈夫ですか如月くん!?私なんてことを!?起きてください如月くん!」
我に返った山田先生に肩を掴まれて揺さぶられる。頭痛い。気持ち悪い。
「俺は大丈夫です……先生の方は?」
「如月くんのおかげでなんともありません。私、先生なのに……ごめんなさい」
「あのー……すみませんがどいてもらえますか?俺が立てないですし」
現在の俺と山田先生の体勢。
山田先生が俺を押し倒しているように見える図。
……逆よりはマシか。うん。
「あぁ!ごめんなさい!」
と、山田先生は慌ててISを解除して俺から離れる。
それに続いて俺もISを解除して立ち上がる。
「ヒュー」
「まやまや大胆だねぇ」
「ハラショー。こいつは力を感じる」
「やまぴーあざとい!」
「やまちゃんドジっぽい?」
「や、やめてくださいよ!私、先生ですよ!?」
山田先生が生徒にからかわれていた。
織斑先生もやれやれといった様子で額を指で押さえる始末である。
ほんと大丈夫か、山田先生。
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「ぐぐぐぐっ……!」
「ぎぎぎぎっ……!」
目の前には仲良く積み重なって戦闘不能になったブルー・ティアーズと甲龍があった。
セシリアと鈴は唸り声を上げながら互いに睨み合っている。
セシリア、鈴による即席ペア対山田先生の模擬戦が行われていたのだが、結果は山田先生の勝利だった。
二人の連携のとれてなさを突いた誘導でグレネードを使って一網打尽にするところは非常に上手いと思った。
いつものおどおどしててドジな山田先生とは違う一面だったので、失礼だが別人じゃないのかと思った。
元とはいえ代表候補生まで登り詰めた実力は伊達ではないという事か。
「さて、これで諸君にもIS学園教員の実力は理解できただろう。以後は敬意を持って接するように」
織斑先生がパンパンと手を叩いてそう告げる。
とりあえず山田先生の扱いがこれで少しは良くなるだろう。多分。
「専用機持ちは織斑、如月、オルコット、凰、デュノア、ボーデヴィッヒか。ではこれより6人グループで実習を行う。専用機持ちはグループリーダーとして班員を指導しろ。では分かれろ」
織斑先生が言い終わると同時に大量の人が一夏とシャルルに殺到した。
「……これはこれで」
「なかなかクるものがあるわね……」
「…………」
がらーん、としているのはセシリア、鈴、ボーデヴィッヒのところだ。
ボーデヴィッヒはともかく、セシリアと鈴は少し可哀想ではある。
「「「織斑くん!よろしく!」」」
「「「デュノアくん!分からないとこ教えて!」」」
大量の女子に囲まれて困った顔を見せる二人。
俺?俺の方は……
「こうやん、よろしくね~」
「よっろしくぅ~」
「よ、よろしくね、如月くん」
のほほんさんと谷本さんと夜竹さんのトリオを中心としたいつもの一組女子で構成されていた。
良かった。さすがにゼロ人はヘコむ。精神的にヤバい。
「この馬鹿者どもが……さっき言った順番で出席番号順にグループに入れ!次にもたつくようなら今日はISを背負ってグラウンド百周させるぞ!」
この現状を見かねた織斑先生の一喝で女子達はすばやく移動を開始し、二分とかからずグループは出来上がった。
「最初からそうしろ。馬鹿者どもが」
ごもっともです。
「えへへ~」
出席番号の関係で最初からこっちにいた数人が離れたが、のほほんさんは奇跡的にこっちに残っていた。
「……どうかした?」
「なんでもないよ~」
何故か笑顔ののほほんさんに何事かと問いかければはぐらかされた。
班員と一通り軽いあいさつを交わし、みんなで使うISを取りに行く。
今回使用するのはラファールだ。二機しかないので急いで確保した。
今日の授業の午前中は動かすところまでやれ、とのこと。
「最初、誰がやる?」
「私に任せろ!」
「任せた」
トップバッターに谷本さんを迎えて俺は指導を行うのだった。
装着、起動、歩行と順調にこなしていく。
ーーーーが。
「おい、次の人が乗れないだろ」
「てへぺろ☆」
谷本さんは片目をつぶり、舌をちょこっと出して可愛いポーズを取る。
てへぺろ、じゃねーよ。それは箒がやるべきだろ。
じゃなくて、問題発生。
谷本さんはISを解除する時に立ったまま解除してしまったのだ。
訓練機の場合はしゃがんで解除するのが基本なのだが俺も谷本さんもド忘れしていた。
「こうやんこうやん」
と、次に乗る予定ののほほんさんが話しかけてきた。
「ああすればいいんじゃないかな?」
と、のほほんさんが指差すのは一夏の班。
一夏が白式を展開して同じクラスの岸里さんを立ったままの打鉄まで運んでいた。
やれと。アレをやれと。
いや、まあ、確かに俺が四天を展開して運ぶのが一番確実だが、いいのか、色々と。
「はやくはやく~」
「……分かった。先に謝っとく」
もたもたしていると織斑先生が飛んできそうなので俺はのほほんさんの案を採用した。
俺は四天を展開。
純白の装甲が俺を包み込んだ。
「今日はぴかーってしてないね」
「ああ、換装外した。アレ色々問題があるんだよ」
俺はISを暁から通常の四天に戻してある。
色々問題といったが、それは主にセシリアとかイギリスの事だ。
サイコミュは使い手を選ぶとはいえ、国が開発したシステムより優秀なシステムを一企業が作っちゃったっていうね。
対抗戦の後に機体に興味を持っていたセシリアから模擬戦を挑まれたが、ほぼ一方的な勝負にしてしまったという罪悪感もある。
性能に頼りっぱなしになる、というのが一番の理由ではあるのだが。
「失礼」
「んっ」
断りを入れて、俺はのほほんさんを抱きかかえる。俗に言うお姫様だっこというやつだ。
「……えへへっ」
「!?」
何を思ったのか、のほほんさんは俺の身体に手を回してきた。
女子特有のいい香りと柔らかい肢体の感触。それらが一気に俺を刺激する。しかも体勢的に彼女は上目遣いでこちらを見ている。
無心だ無心。明鏡止水だ俺。
「到着」
「はーい」
時間にして僅か数分の出来事だが、俺の理性は削られまくった。
今ならハイパーモードになれるんじゃないか、というポーカーフェイスでなんとかこの場を乗り切った。
ラファールのコックピットに着いたのでのほほんさんを丁寧にコックピットに降ろす。
「起動とか大丈夫?」
「大丈夫だよ」
「それじゃ、谷本さんと同じ感じで頼む」
「りょうか~い」
のほほんさんも順調にメニューをこなして交代する時間となった。
「ハイ、じゃあしゃがんで解除してね」
また立ったまま解除されてはたまらないので先手を打った。
のほほんさんは既定の位置にラファールを移動させると、装着したままニコッとした笑みを浮かべてこっちを見る。
「……あ、手が滑っちゃった♪」
「え」
何を思ったのか、のほほんさんはISを立ったまま解除した。
「如月くーん、これじゃあのれないなぁー?」
「私たちも乗せて?」
くるりと後ろを振り返れば順番待ちの皆様が笑顔で俺に迫ってきていた。
……なるほど、無言の圧力か。
「だが私は謝らない」
ふと、元凶の谷本と目が合うと彼女は含んだ笑みと共にそう言った。
ふざけるな。
午前中の授業はずっと女子を運ぶ羽目になった。
鋼夜は対抗戦の後に一年女子の間では株が上がった感じです
そして暁はボッシュート
セシリアと被るし装備的に下手したら国際問題だからね、仕方ないね
通常装備でセシリアをdisる雪羅装備の一夏?
言うな
もしISキャラが遊戯王をしたら
一夏→銀河フォトン
箒→六武衆
セシリア→青眼
簪→E・HERO
のほほん→マドルチェ
ここまで予想できたよハルトォォォォォォ!