神様転生した者だけど毎日が苦痛   作:八雲 紅

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自分でも何がしたいのかよく分からなくなってきた


襲撃者退治の第25話

「なんだこれは。たまげたなぁ」

 

「四天専用の換装パック『(あかつき)』を装備した姿さ。気に入ってもらえたかな?」

 

輝さんと共に向かった先はIS専用の整備室。

そこには生まれ変わった四天が居た。

 

純白の装甲は一変し、派手な黄金色と黒の縁取りで彩られたカラーリングになっていた。

 

うん、ていうかさ、これさ……。

 

「そのまんまじゃねーか!」

 

まんまSEED DESTINYのアカツキじゃねーか!

 

「確かに名前だけ聞けばそうだね。でもこいつには鋼夜くんの要望も取り込んであるんだよ?」

 

俺の要望?

 

「なにかありましたっけ」

 

「ふふふ、四天のアンロックユニットを見てみたまえ」

 

輝さんに言われるがまま四天の肩部分を見れば、そこには通常の四天の武装である大型シールド『天岩戸』の代わりに別のパーツが搭載されていた。

 

中心部にガラスみたいなものが埋め込まれている黄金の球体にひし形の何かがひいふうみい……八つ刺さっている。それが二つ。

 

例えるならプロヴィテンスやレジェンドのドラグーンみたいなのが両肩部に搭載されていた。

 

 

「ドラグーンじゃねーか!どっちかって言うと俺はファンネル派だよ!」

 

「それは違うよ!これはリフレクタービットだよ!」

 

「よし!許す!」

 

 

……ほら、なんかリフレクタービットの方がカッコよくない?

ビーム反射するとこカッコよくない?しかも防御にも攻撃にも使えるんだよ?

 

ファンネルよりリフレクタービットの方が好きです。

 

 

即興の漫才みたいなやり取りになってしまったが輝さんが咳払いをして話を戻す。

 

「ゴホン……こいつの正式名称は対光学兵器仕様試作自立機動兵器『八咫ノ鏡(やたのかがみ)』さ。イギリスの機体と同じくイメージインターフェイスを使用している」

 

装甲の名前じゃないだけでやっぱりアカツキじゃないですかやだー。

ていうかイメージインターフェイスねぇ。

 

「サイコミュ?」

 

「サイコミュ」

 

気になって輝さんに聞いてみれば即答。

 

「ちょっと待て殺す気か」

 

サイコミュってニュータイプ専用のマジキチ装置じゃん。一般人が使うともれなく頭がイカレるか死ぬかの素敵仕様じゃないですかやだー。

俺、ニュータイプじゃないんですけど。

いや、確かに輝さんと話した時に「ファンネルって男のロマンですよね」って言った記憶あるよ?でも殺してくれって頼んでないよ?

 

 

「大丈夫だよ鋼夜くん。宇宙世紀の後半には科学の発展で一般パイロットでもサイコミュが使えるようになってたから」

 

あれ有線限定だった気がするんだけど。

 

「……まぁ、これを使う機会が来ないことを祈ります」

 

これ使ったら間違いなく色んなとこからツッコミもらうだろうからな。

特にセシリア。特にイギリス。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

やっぱりフラグだったよこん畜生!

 

 

学園に侵入してきた謎のISーーガフランと対峙しながら心で本日二度目の悪態をつく。

 

ガフランは爆発したビームライフルの影響で顔面と右腕の装甲の一部が破損している。右腕はかろうじて動くようだが恐らく掌の小型ビームは使えないだろう。

 

破損した右腕の装甲からは剥き出しになった機械類の部品しか見えず、やはり相手が無人機であることを証拠付けていた。

 

 

「とりあえず火事場のなんとか、って奴か」

 

俺は四天の周囲に展開されている『八咫ノ鏡』を見て呟く。

警告を受けた後に俺は無我夢中でISを展開し、八咫ノ鏡を発動させた模様だ。でないと俺は今ごろ黒コゲだっただろう。

 

 

「大丈夫か鋼夜!?」

 

「まったく、無茶するわね!」

 

「サーチされてるとは思わなかったけど大丈夫だ。むしろ俺はお前ら二人に大丈夫なのかと言いたい」

 

ガフランが動きを止めた隙に俺の側へ来る一夏と鈴。

二人は俺を心配してくれているようたが俺はそれに対して涼しい顔で返す。

 

「大丈夫に決まってんだろ!」

 

「あんたに心配されるほどじゃないわよ」

 

「そいつは良かった……おっと」

 

ゆっくり話をする時間は無いようだ。

ガフランが再び動き出し、残った腕からビームを撃ってきた。

一夏と鈴はビームを回避し、俺は八咫ノ鏡を操作してビームを地面や上空に反射する。

 

 

「鈴、一夏。こいつは俺が引き付ける。二人は観客席の皆を避難させてくれ。遮断壁が降りてきて閉じ込められてるんだ」

 

「まさか一人で残る気なの!?」

 

鈴は俺の提案に驚いたようで、隣の一夏もそんな感じの表情をしている。

 

「さっきまで戦ってたお前らはもうエネルギーがそんなに残ってないだろ。大丈夫、あいつの武装は俺には効かない。さっきビームを反射して西側の扉は穴を開けといたから鈴はそっちの誘導頼む。一夏は東側の観客席をこじ開けてくれ。織斑先生から許可は出てる」

 

会話の最中だというのにガフランは空気を読まずにビームを乱射してくる。

それに対して俺は八咫ノ鏡を操作して必死にビームを反射する。この操作技術には自分でも驚くくらいだ。

 

 

「あんたのそれ、一体どうなってるのよ……。分かったわ、誘導が終わったらすぐ先生を呼ぶからそれまでに落ちないで待ってなさい!」

 

「鈴。時間を稼ぐのはいいがーー別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう?」

 

「……思いっきりやりなさい!」

 

「了解した」

 

ふふふ、あのガフランは六回殺す。

 

 

「……分かったよ鋼夜。その金色ってすげーかっこいいな!後で教えてくれよ!絶対だからな!」

 

ねえ一夏。さりげなくフラグを重ねないでくれる?このセリフってかっこいいけどただでさえ死亡フラグなんだから。

 

 

 

 

八咫ノ鏡を操作し、一夏と鈴の移動を援護する。

空気読めよこのガフラン。退避中だぞ。

 

「行ったか?よし、行ったな」

 

鈴と一夏が離れたのを確認。

それと同時にガフランも標的を俺に絞ったらしく、俺に腕を向けてビームを放つ。

 

片腕の小型ビームくらいならアリーナのシールドでも防げるだろう。

尻尾のビームライフルは破壊したからシールドを破られることはもう無い。

 

「さて、やりますか」

 

俺は八咫ノ鏡を呼び戻し、新たに武器を展開する。

 

現れたのは二メートルはある大型のライフル。

暁の初期装備であるビームショットライフルの『散雷(さんらい)』だ。

通常のビーム弾とビームの散弾に切り替えられる優れものである。

 

「いくぞ!」

 

散雷を散弾に切り替え、ガフランが放ってきたビームを避けると共に俺は左に向かって動き出す。

 

ガフランは残った左手で俺を狙う。

そう、左手。

 

ガフランは既に右腕を失っている。

では失った腕の方向へ回避すればどうなるか?

答えは簡単。俺を追いかけるために身体の向きを変える。

つまりそこに僅かな隙が生まれる。

 

「くらえ!」

 

ガフランがこちらに向き直る前にスラスターを吹かせて接近し、散雷の引き金を引く。

腰だめに構えた散雷から光学兵器独特の音と閃光が放たれ、ガフランへ殺到する。

 

ガフランは攻撃のモーションを止めて回避に移るが完全な回避とはいかず、数発被弾していた。

 

よし、これを繰り返せば勝てる!

人間が操縦しているならまだしも、相手はAIだ。

これでしばらくは戦える。

 

地味?知らん。勝てば官軍だ。

 

しかし四天に比べると少し機動力が落ちている気がする。

八咫ノ鏡を搭載しているせいだろうか。

 

「固定砲台みたいな戦い方のが合ってるな」

 

相手の攻撃を跳ね返しつつこちらも高火力のビームで追撃する。

アカツキよりサイコガンダムやシャンブロの方が近い。

 

「まぁ、一部の相手にしか効かないけどな!」

 

この世界は実弾メインだ。

まともに使うならこいつ()はセシリアくらいにしか使えないな。

 

再びガフランの周りに八咫ノ鏡を配置し、牽制する。

 

「今度はビームサーベルか」

 

八咫ノ鏡に自身の射撃は効かない事を理解したのか、ガフランは掌に光の刃を出現させて八咫ノ鏡を狙って切り払う。

 

壊されてはたまらないので俺は八咫ノ鏡を一旦帰投させる。

これをチャンスとみたガフランは俺目掛けて一気に加速。腕を振り上げ掌のビームサーベルで俺を貫かんとする。

俺もセシリアと同じく、八咫ノ鏡を操作しながらの射撃は行えない。

散雷を構えるのも間に合わない。

 

無駄に再現されたガフランのスラスターの音がスローに聞こえる。

 

 

だが、これでいい。

 

 

 

「引っかかったな、バーカ」

 

 

両肩部のアンロックユニット。

八咫ノ鏡が突き刺さっている球体から拡散ビームが放たれる。

 

 

拡散ビーム砲『百雷(ひゃくらい)

 

ただの八咫ノ鏡の充電器じゃないんだよこいつは。

 

暁は百雷と散雷から放たれるビームの散弾を八咫ノ鏡で反射することでオールレンジ攻撃を可能とさせた機体だ。

別に相手がビーム兵器を使わなくても充分戦える機体さ。

 

……八咫ノ鏡さえ満足に使いこなせればね。

 

 

 

 

至近距離からのビームによるカウンターは見事にガフランに命中。

腕を振り上げた姿勢のガフランは脚部から頭部まで満遍なくビームを喰らう。

カメラアイから緑色の光が消え、機体の各所各所からスパークを発生させながらガフランはぐらりと倒れて地に落ちた。

 

爆発すると思い、スラスターを急発進させて高速バックする。

距離をとってしばらく時間が経つが爆発する気配は無かった。

 

 

「……やったか?念のためコアを回収しとくか」

 

無人機とはいえISはIS。コアが存在する筈だ。

それさえなんとかしてしまえば、どうということはない。

 

ガフランは頭部がコクピットだったっけ。

ならコアも頭部にありそうだな。

 

俺は物言わぬ鉄クズとなったガフランに近づく。

ハイパーセンサーによるスキャンで改めて人が乗っていないことを確認すると共にコアの場所をサーチ。

やっぱり頭部にあった。

 

俺はガフランのヘルメットみたいな頭部へ手を伸ばす。

 

と、ここでハイパーセンサーから警告のアラーム音が響いた。

 

《敵ISの再起動を確認!ロックされています!》

 

ガフランのカメラアイに微弱な緑色の光が灯り、目が合う。

その光は「ざまーみろ」と俺に向けて言ったように感じた。

 

ガフランの胴体部から光がほとばしる。

あぁ、確かこいつも拡散ビーム使えたっけ。

 

俺はガフランの側に膝をついている態勢だ。避けられない。八咫ノ鏡も間に合わない。

 

 

 

ふと視界の端に助けに来たであろう、一夏と鈴とラファールを纏った山田先生をはじめとする先生方が見えた。

 

最初から先生方に任せておけばよかったのかなぁ。

 

 

『鋼夜ぁ!』

『鋼夜!』

『こ、鋼夜さん!』

『如月!』

『如月くん!』

 

一夏、鈴、セシリア、織斑先生、山田先生。

色んな人から通信が入ってくる。

 

ごめん一夏。暁の説明、できそうにないや。

 

 

そして俺の視界と意識は真っ白になった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

っていう夢を見た。

目を覚ませば知らない天井だった。

 

 

「いやいや、夢じゃないでしょ」

 

身を起こし、辺りを確認する。

 

「保健室か……」

 

何処かの部屋のベッドに俺は寝かされていたらしいが仕切りで覆われている。

仕切りを少しずらして覗いた部屋の窓から見える景色がIS学園のものだったので、そう結論付けた。

日は傾き、部屋は綺麗な夕焼け空の色に照らされている。

 

「き、気が付きましたか如月くん!」

 

豪快にカーテンの仕切りを開いて現れたのは山田先生だった。

 

「心配したんですよ私!如月くんに何かあったら、一生目覚めなかったらどうしよう!って心配したんですよ!」

 

「お、おう」

 

「あっ……すみません、大声出しちゃって」

 

ひとしきり喋った後に山田先生はシュン、と落ち込む。

それだけ心配しているということは、それだけ生徒の事を思っているいい先生だと分かる。

 

「いえ、先生は悪く無いです。あれは勝手な事した俺が悪いんです」

 

あれは本当に自分の自業自得だ。

コアの回収まで俺がする必要は無かった。

 

「それより、あの後どうなったんですか?」

 

山田先生の性格から考えると恐らくこのあと謝ってばかりになりそうなので話題を変える。

 

「謎のISは如月くんに攻撃した後に完全に沈黙して身柄はIS学園が拘束しています。織斑くんと凰さんはいま織斑先生に事情聴取を受けています」

 

俺の質問に山田先生は真剣な表情で答えてくれた。

そして思い出したように「如月くんも同じく事情聴取を受けることになると思うのでお願いしますね。……今からじゃないですよ!?今日は安静にしていてください!」とも言った。

 

「病院行かなくて大丈夫なんですか?」

 

いくら絶対防御があるといっても至近距離でビームの直撃を受けたのだ。

いくら最先端の学園の保健室だとはいえ、病院に行かなくて大丈夫なのか俺。

 

「如月くんのISの防御(・・)が間に合ったおかげで大事には至ってません。……ヒヤヒヤしたんですよ、あの時!」

 

防御?防御ってなんぞや?八咫ノ鏡は間に合わなかった筈だが。

 

「えーと、あの時は頭が真っ白でよく覚えてないんですけど何が起きたんですか?」

 

「こう、オーラというか……バリアー?みたいなのを如月くんのISが展開してそれでビームを防いでいたんですよ。でも如月くんは倒れちゃって……本当に心配したんですからね」

 

「……ありがとうございます。それと、すみませんでした」

 

 

山田先生にお礼と謝罪の言葉を述べ、保健室から出られるか聞いてみたら寮の前まで付いてきてくれたので再びお礼を言って解散した。

 

……なんだか山田先生にはお世話になりっぱなしな気がする。

山田先生マジ女神。

 

 

そして部屋に戻った俺にのほほんさんのぬいぐるみ投げが炸裂したのは別の話だ。

 

 

近いうちにラビアンローズに寄ろう。

輝さんとは色々話さなければならない。

色々と、ね。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「…………」

 

クラス対抗戦に謎の侵入者が登場した事により授業は全て中止し、生徒は自室で待機することになった。

 

 

クラス対抗戦にあまり乗り気でなかった四組代表の更識簪は自室にいた。

 

ルームメイトにバレないよう布団を頭まで被り、その空間で携帯電話に接続した空中投影ディスプレイでアニメを見ていた。

 

『超必殺!ライトジャスティス!』

 

『ぐわぁー!』

 

画面の中では完全無欠のヒーロー達が悪の組織を相手に戦っている。

 

「ヒーロー……かぁ」

 

そう呟いて思い出すのは今日のクラス対抗戦での出来事。

試合に出るからには真面目にやろうと、そしてなにより織斑一夏が戦うと聞いて彼女は偵察がてらにあの試合を観戦していた。

西側の観客席で。

 

 

謎のISが現れ、アリーナ中がパニックになった時に現れてみんなを助けた彼。

そして黄金のISを駆って謎のIS……敵に向かっていく姿。

 

あの時の如月鋼夜は更識簪の中ではまさしくヒーローだった。

 

 

「そういえば……断っちゃったなぁ……」

 

彼はISの事を教えて欲しいと頭を下げてきた。

でも私にはやるべき事があったから、申し訳ないと思いながら断ってしまった。

 

「……でも……息抜きも、必要だよね?」

 

言い訳するように呟く。

思えば、誰かに頼られることなんてあまり無かった気がする。

みんな私より……。

 

自分の脳裏に姉の姿が浮かぶ。

 

「っ……あの人は関係ない」

 

深く考える前に、アニメに集中しようと意識を戻す。

 

『ガッチャ!今日も世界の平和を守ったぜ!』

 

「あ……」

 

アニメは終わっていた。

 

彼……如月鋼夜についてはまた出会った時に聞いてみよう。

もう一回最初から見ようと簪はディスプレイを操作するのだった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「この映像で全部?」

 

「はい。侵入者を迎撃した三人の戦闘の映像はそれで全部になります」

 

「……へぇー。織斑先生の弟くんに隠れがちだけどこの子やるわね」

 

「如月鋼夜、ですか」

 

「そそ。相性もあるとはいえ一人で侵入者を撃退したのよ。おねーさん気になっちゃうわ。ちょっと早いけど会いに行ってみようかしら」

 

「会長。会うのは自由ですが、仕事を終わらせてからにして下さい」

 

「……はい。……あーあ、アリーナの修理費とか委員への書類とか嫌になっちゃうわ」

 

 

 




ほーらフラグだよー(棒)

アカツキかと思った?残念サイコガンダムでした!

初見殺しは基本
ナマエ・ゴッチャヤネンさんマジリスペクト
キュベレイに全俺が興奮した

機体説明は次回

とりあえず一巻のメインの範囲は終了
二巻は皆大好きなヒロインが出るから……壊れるなぁ

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