うちの主人公の場合はこうなりました
「待ってください、納得いきませんわ!」
バンッと机を叩いて立ち上がったのは、たった今俺と鋼夜が推薦したセシリアだ。
確かに納得いかないだろう、推薦されたのに却下されたんだ。
まったく、千冬姉も酷いことするもんだ。
「そのような選出は認められません!大体、男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ!わたくしに、セシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」
……お、おう。なんか凄い言われようだな。
しかしクラス長になるんだから、こうやって自分の意見を強く言えるってのは大事だよな。そう思おう。
「実力から行けばわたくしがクラス代表になるのは必然。まぁ、わたくしの実力を分かって推薦する頭はあったようですが、それを物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります!わたくしはこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ」
くっ……言ってくれるなこいつ。
そんなに言うならさっさと立候補すれば良いじゃねえか。なんで俺と鋼夜が馬鹿にされなきゃならないんだ。それにイギリスも島国だろ。
好き勝手言うセシリアに憤りを感じながら俺は隣の鋼夜を見た。
「…………」
鋼夜はただ前を見ていた。ボーッとしてる、ともいう。
あれ?どうしたんだろう?
山田先生が「如月くーん?」と言いながら手を振っているが鋼夜に反応は無い。
すると、千冬姉が出席簿を鋼夜目掛けて投げつけた。
ちょっ、千冬姉なにしてんだ!?
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ボールが一機。ボールが二機。ボールが三機。ボールが四機。ボールが五機。
それを三組。
フハハー。ボール一個大隊だぞー。強いぞー。カッコイイぞー。一マス空けの砲撃を喰らうがいい。反撃できないだろー。フハハー。
見ろ!ザクがゴミのようだ!
ヒャッハー!溺れてやがるぜこのザクはよぉ!
四方八方をボールで囲めばドズルのビクザムだって落とせるしジオン水泳部にはフィッシュアイを差し向けられるし、やはりギレンの野望でのボールは最強だな!
戦いは数だよ兄貴!
フハハー、ボールが一機。ボールが二機。ビグ・ラングが一機……あれ?
あ、あなたは技術中尉のマイさん!?何故ここに!?
あれ?なんでボールをその立派なクローアームで掴むんですか?なんで振りかぶるんですか?
ボールを相手のゴールにシュゥして超エキサイティンなんですか?
ボールが放り投げられるその瞬間、現実世界の俺の脳内に閃きが走る。
意識を向ければ目の前に山田先生。だがそれを理解する前に危険を知らせる自らの本能に従い頭を下げた。
瞬間、俺の頭があった場所を何かが通り抜けた。
教壇を見れば何かを投げた後のモーションの織斑先生が。
……出席簿か!
ヒュルヒュルヒュル……パシッ。
出席簿は風を切る音と共に織斑先生の手元に帰ってきた。
先生、その出席簿はマイダスメッサーとかフラッシュエッジか何かの類いですか。
「私の前で惚けるとはいい度胸だな」
「すみません現実逃避してました」
怖いので素直に頭を下げて謝っておく。
織斑先生を下手に怒らせればあの出席簿はブーメランから対艦刀に変化するに違いない。
「次は無いぞ」
「はい、すみません」
もう一度頭を下げる。
なんだが不満そうな顔をしていたが、そんなに当てたかったんですか出席簿。
「で、一夏。どこまでいったのこれ」
口を開けたままポカンとしている一夏に話し合いは何処まで進行したのか聞いてみる。
「え?あ、えっと……」
「……し」
「ん?」
「信じられませんわ!」
口ごもる一夏とは別方向から声が聞こえてきたのでそちらに振り向く。
声の主は案の定オルコットさんだった。
「わたくしの話を聞かずに……呆れましたわ。いいですか!?クラス代表は実力トップがなるべき、そしてそれはわたくしですわ!」
現実逃避して何が悪い。
それと、オルコットさんの理論だと実力あるなら後はなんでもいい、素行は悪くてもいいって解釈になるんだが。
「まぁ……」
「そりゃねぇ?」
俺と一夏は顔を見合わせる。
そもそも俺と一夏はオルコットさんを推薦した訳だし。却下されたけど。
ていうかこれ怒るなら俺らじゃなくて普通、織斑先生じゃね?
「授業中に話を聞かなかったりする方や代表候補生の意味すら知らない方など論外ですわ!」
これは言い返せないな。
これには周りのクラスメイトも苦笑いだ。
「でもセシリアの言う事も一理あるよね。負けたら他のクラスからなめられる訳だし」
「えー、せっかくだし男子がいいんじゃない?」
「織斑くんが代表の方が絵になるよ」
ふむ、今の流れで女子の意見が割れ出してきたか。
それに気分を良くしたのか、オルコットさんは怒濤の剣幕で言葉を荒げる。
「大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、わたくしにとっては耐え難い苦痛でーー」
「イギリスだって大してお国自慢ないだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ」
あー、始まった。
我慢の限界が来たのか、一夏はオルコットに言い返してしまった。
こうなってしまってはしょうがない、最終手段だ。
「なっ!?イギリスにだって美味しい食べ物はたくさんありますわ!」
「そうだね、ちゃんと料理すれば美味しいよ」
一応フォローする。
イギリスがメシマズと言われている理由は早さを求めて料理を適当に作るからだ。
しっかりと、ちゃんと作られたイギリス料理は美味しいのだ。
「あなた!わたくしの祖国を侮辱しますの!?」
「先に侮辱したのはそっちだろ!」
「そうだね、そっちが先だね」
コッピー知ってるよ。聞いてなかったけど極東の猿とか言ってたんでしょ。
「「お前(あなた)はどっちの味方なんだ(ですの)!?」」
二人からツッコまれた、なんでさ。
「まぁお二人さん落ち着きなさい。とりあえずオルコットさんに質問あるんだけど」
「あら。なんですの?」
二人の間に入って手を下げるジェスチャーをして落ち着かせ、俺はオルコットさんに向き直った。
「ISを開発したのって誰?」
「……ハァ、そんな事も知らないのですか?それはーー」
そこまで言ってオルコットさんはハッとした顔になり言葉を切った。
勘違いしてもらっちゃ困るが開発者くらい知ってるし、それどころか何回も会ったし。
「ISを開発した人が生まれた国は?ISについての技術が一番進んでる国は?IS学園がある場所は?」
質問を重ねる度にオルコットさんの顔が青くなる。
「どうしたんですか?
そしてトドメ。
まぁ、つまり、自分の発言には気をつけろよ、お前イギリス代表候補生だろ。それがイギリスの言葉になるんだぞ。と、言いたかっただけである。
ちょっと意地悪く言ったのは……まぁ、俺も内心イラついてたから。
わなわなと全身を震わせながらオルコットさんは俺をキッと睨みつける。
が、俺はそれを受け流して一夏の方を向く。
「ま、あれだ。喧嘩は良くない。挑発には乗らないように。言っちまえば俺達は男代表なんだから」
「お、おう。なんかすまん」
「……ですわ」
一夏にも注意をして席に戻ろうとするとまた後ろから声が聞こえてきた。
えー、まさか。
バァン!
「決闘ですわ!」
再び机を叩いてオルコットはそう宣言した。
……俺の言った事分かってんの?
それ「戦争をしましょう」って言ってるようなもんだぞ?
ツンドラさんですか?口の中ホッチキスですか?あれ地味に痛いだろうから辞めて欲しい。
「……あ、貴方達にISでの模擬戦を申し込みますわ!」
あ、言い直した。顔がちょっと赤くなってる。
そういえばこれってクラスの代表決めるんだったな。熱くなってて忘れてた。
「おう、いいぜ。四の五の言うよりわかりやすい」
答えたのは一夏。
俺は方向転換して今オルコットさんと向き合った。
「言っておきますけど、わざと負けたりしたらわたくしの小間使いーーいえ、奴隷にしますわよ」
「侮るなよ。真剣勝負で手を抜くほど腐っちゃいない」
ほう。オルコットさんは今、奴隷と申したか。
「じゃあ、もし俺や一夏が勝ったらオルコットさん奴隷になるの?」
「えっ……」
「え?」
なにその反応怖い。
「……ま、まぁ何にせよちょうどいいですわ。イギリス代表候補生のこのわたくし、セシリア・オルコットの実力を示すまたとない機会ですわね!」
はぐらかしたよこの人。
自分が奴隷になるリスクも背負わずに真剣勝負とか、ふざけてるんですかねぇ?人生賭けたんだからそっちも人生賭けろよ、ってジョジョでバービーだかボービーが言ってた。
「ハンデはどのくらいつける?」
「あら、さっそくお願いかしら?」
「いや、俺がどのくらいハンデつけたらいいのかなーと」
と、一夏が言った瞬間クラスからドッと爆笑が巻き起こった。
「織斑くん、それ本気で言ってるの?」
「男が女より強かったのって、大昔の話だよ?」
「織斑くんや如月くんは確かにISを使えるかもしれないけど、それは言い過ぎだよ」
みんな本気で笑っている。
ISは戦車や戦闘機や戦艦などの既存の兵器を軽く凌駕する。
男と女が戦争しようものなら男は三日と持たないと言われている。
あれ、なんでだろう。輝さんが居る限り負けない気がするんだけど。
あの人平気でMSとか作りそうだし最終的に黒歴史∀とか使って全てを終わらせてきそうなんだけど。
「…………」
一夏はしまった、と言いたげな顔をしている。
「じゃあ一夏、俺と組もうぜ」
そこに俺からの救いの一手。
俺の言葉に一夏は驚き、オルコットさんは「あら」と口に手を当てて笑う。
「オルコットさんには喧嘩を売られたから買うが、俺はお前と戦う理由が無いからな」
「鋼夜……」
「良かったではありませんか、これで少しはまともな勝負になりそうですわ」
一夏は何か言いたそうにしていたが俺はそれを無視し、嘲笑を浮かべるオルコットさんに向けて言い放った。
「いやいや、むしろ感謝するのはそっちだろ?二対一なら負けても言い訳出来るしさ」
挑戦的な笑みもプラスで追加。
俺の言葉を聞いたオルコットさんは再び怒りに顔を歪めるがそれは呆れへと変わり嘲笑に戻った。
「せいぜい頑張ってくださいな」
「さて、話はまとまったな。それでは勝負は一週間後の月曜日。放課後の第三アリーナで行う。織斑、オルコット、如月はそれぞれ用意をしておくように。それでは授業を始める」
ぱんっと手を打って織斑先生が話を締める。
ていうか見てないで何か言って欲しかったなぁ、オルコットさんとかオルコットさんとかオルコットさんについて。
セシリアが怒ってもしょうがない感じにしてみた
ボールを崇めれば出席簿も避けられるよ!
マイダスメッサー、フラッシュエッジ
ガンダムSEEDに登場する武装でビームの刃のブーメラン
SストライクやSインパルスなどのMSが持ってる
似たような武器がいくつかある