皆さんありがとうございます
嬉しくてつい職場でハンドスプリングしました
硬い地面でハンドスプリングしてはいけない(戒め)
それでは本編どうぞ
「鋼夜、一緒に飯行こうぜ」
昼休み。
授業が終わるなり隣の一夏は真っ先に俺の席へ向かって来るなりそう言ってきた。
先の授業でも訳が分からない、といった顔だったが必死にノートを取っていた一夏。
たぶん気分転換したいのだろう。あと、この針のむしろのような視線から逃げたいというのもあるだろう。
「いや、俺はいい」
しかし俺は一夏の誘いを断った。
「え、なんでだよ」
当然、一夏は聞き返してくる。
俺も一夏と同じ状況。思っている事は一緒だと思って誘ってくれたんだろう。
「箒と行ったらどうだ?久しぶりに会ったらしいし、二人でゆっくり話したらいいよ」
俺は空気の読める男だ。
さっきからチラチラこっちを見ている箒の視線にだって気付いている。
「鋼夜も箒と知り合いなんだろ?ならいいだろ。別にいいよ気を使わなくて」
しかし流石と言うかなんというか。こっちの意図にまったく気づかないのである、こいつ。
ていうか恋愛云々は抜きにしても普通に頷けよ、そういう対応するから気を使うんだよ。
くっ……これが鈍感主人公か。なかなかの強敵だ。
「気なんて使ってねーよ。飯行く機会なんて幾らでもあるさ。俺は他のクラスメイトの子と行くよ、一年間は一緒だし少しは交流しとかないとな」
一気にまくし立てつつ俺は席を立ち、一夏が何かを言う前に教室を出て行った。
ああいう手合いは断ってもしつこく誘って来るだろうから、こうやって強制終了させた方がいい。
箒、場所は整えたぞ。あとはお前次第だ頑張れ。
(さて、教室を出たのはいいんだが……)
廊下には見渡す限り人がたくさん居た。埋め尽くされていると行ってもいい。
やっべ、どうしよ。一回教室帰るか?いや、あんな事言ったのに教室に帰るのは流石に格好悪いしまた一夏に絡まれる。
それと勢いで教室出たせいで一緒に行くクラスメイトも誘うの忘れてたよ。しかも俺知ってるクラスメイトってのほほんさんとオルコットくらいしか居ないんだけど。
頼みの綱ののほほんさんも恐らく教室。しかし前述の理由があるため教室にはもう入れない。
仕方ないので俺は一人で学食に向かう事にした。
まぁ、これから一人で食べる事もあるかもしれない。そのために今から慣れとこう、って事で納得した。
しかし学食に向かおうにも人の群れで行き先は塞がれている。
と、思えばささっと人が移動してモーゼの海割りみたいに廊下の真ん中に道が出来た。
学食に向かうにはこの両サイドが女子で埋め尽くされているこの道を歩くしかない。これなんて拷問?
しかし道を開けてくれたのならば通るしかあるまい。
意を決してその道を通る。
「あれが噂の男子?」
「二人居たよね、どっち?」
「カッコイイ方が千冬様の弟よ」
「じゃあこの子は二人目ね」
「普通ね」
両サイドから聞こえてくる自身への評価に、早くも心が折れそうになった。
ちくしょう、世の中顔かよ。
そんなこんなで学食に着いた。
既に俺の心はボロボロである。
原作の一夏はよく耐えれたよな、本当。そこだけは尊敬する。
しかし学食に着いても好奇の視線は変わらず送られてくる。
早いとこ慣れないとなぁ、と思いつつ券売機へ移動しラーメンセットを購入。
今はラーメンが食べたい気分なのだ。
「おばちゃん、食券頼む」
「はいよ」
そして食券をカウンターへ持っていく。恰幅のいいおばちゃんが笑顔で食券を引き取り、厨房へ戻っていった。
ラーメンセットが届くまでカウンターで待機。
「…………」
「…………」
「…………」
気まずい、超気まずい。
あの、みんな、俺は気にしないで昼を食べてくれ。
あと俺の後ろに並んでいる人。そんなに俺を見ないでくれ。
は、はやくラーメンセットを!
「はい、ラーメンセットお待ち」
この言葉を待っていた。
学食のおばちゃんが女神に見えた。
「ありがとう、おばちゃん」
おばちゃんに笑顔で礼を言ってラーメンセットを受け取ると、俺は席を探した。
瞬間、学食の空気が変わる。
これは教室で体感した「私に話しかけてオーラ」に似ている事から恐らく「私の席に座ってオーラ」と予想する。
すげぇぜ、学食に居るほとんどの人が笑顔で俺を見ているぜ。
しかしいくら誘われようと見ず知らずの人の席にいきなり乗り込むスキルなど俺には無い。
俺は無難に一人用のカウンター席を目指した。
「隣、失礼します」
「あ……どうぞ」
ちょうど良くカウンター席の一番端っこ、壁側の席が空いていたのでラーメンがこぼれない速度で早歩きし席を確保。
その際に隣の水色の髪で眼鏡をかけた女子に一声掛けて席に座った。
俺が頼んだラーメンセットの内容は豚骨ラーメンにチャーハンと餃子というお決まりのセットである。
「いただきます」
そして俺は昼食を食べる。
ラーメンうめぇ。チャーハンうめぇ。餃子うめぇ。
さすがIS学園だ。設備だけでなくご飯も美味い。うまうま。
しかしさっきから隣の水色の髪の眼鏡っ子がやけにチラチラ見てくるな。
まぁ両サイドから見られるよりはマシだけど。壁さんありがとう。
水色の髪ねぇ……そういえばこの学校の生徒って髪の色凄いよなぁ。
普通のギャルゲーとかってだいたいモブの髪色って黒か茶なのにIS学園はカラフルなんだよなぁ。クラスメイトに紫とかオレンジとか赤居たし。
この学食にいる生徒だってそうだ。カラフル過ぎる。
変わった髪色はヒロインの特権っていう常識を見事に覆したな。そのうちピンクとか出てくるんじゃね?探したら居そう。
あと箒とかオルコットの制服を見たら分かるけどこの学校って制服を改造してもいいらしいな。
改造制服に自由な髪色……超次元高校生麻雀かな?夏のインターハイに出るのかな?
あ、麻雀したい(唐突)
現実逃避?知ってる。
だって、こうでもしないとあらゆる方向から飛んでくる視線に耐えられない。
ラーメンを食べ終えて教室へ戻る時にも俺の心は折れかけた、とだけは言っておく。
「う、うおぉ……」
「お疲れ」
放課後。机の上でぐったりうなだれている一夏を尻目に帰りの支度をする。
「い、意味が分からん……。なんでこんなにややこしいんだ……?」
ISについての勉強はとにかく専門用語の羅列だ。
事前学習をしていない一夏からしてみれば正に訳が分からないよ状態。
そしてこの有様(机の上で撃沈している)なのである。
「それには同意だな。辞書くらい作って欲しい」
でもまぁ、確かに辞書の一つもないのはどうかと思う。
日本語にだって辞書はあるんだぜ。
「あ、織斑くんと如月くん。まだ教室に居たんですね。よかったです」
「はい?」
「あ、山田先生」
呼ばれてそちらを見れば書類を片手に持った山田先生が教室に入ってくる。
「えっとですね、お二人の寮の部屋が決まりました」
そういって部屋番号の書かれた紙と部屋のキーを渡す山田先生。
ここIS学園は全寮制。生徒は全員が寮で生活することが義務づけられている。理由は生徒の保護のため。
世界は常に優秀なIS操縦者を求めている。学生の頃からあれこれされないように、という事だ。
「俺の部屋、決まってないんじゃなかったですか?前に聞いた話だと、一週間は自宅から通学してもらうって話でしたけど」
「そうなんですけど、事情が事情なので一時的な処置として部屋割りを無理矢理変更したらしいです。……織斑くん、そのあたりのことって政府から聞いてます?」
一夏と山田先生が話し始めた。
ちなみに俺は最初から寮を申請している。自宅から通う?ラビアンローズ本社からでも余裕で一時間はかかる。通えなくは無いが面倒くさい。
……さて、凄い嫌な予感がするなぁ。
どうやら一夏の話が終わったみたいだ。俺は嫌な予感を振り切るために質問する。
「なぁ一夏。部屋番号いくつ?」
「え、一緒だろ?1025だけど」
手元の紙を見る。1030号と書かれている。何回見ても数字は1030と書かれている。
フフッ、終わった。
俺は一夏に紙を見せた。一夏の表情が驚きに染まる。
「な、なんで鋼夜と一緒じゃないんですか!?」
「そうだそうだ!」
紙を見た一夏が山田先生に詰め寄る。そして便乗して俺も。
一夏と一緒じゃない=同室は女子。
ハニトラ待ったなし。
「す、すみません!政府特命の一時的な処置で、あの、すみません!」
顔を赤くし、見るからに慌て謝る山田先生。なんだかこちらが申し訳ないと思えてくる。
俺も一夏も直ぐにハッとし、山田先生から離れて謝罪する。
「はぁ……あのー、話は分かったんで今日はもう帰っていいですか?」
「俺も帰っていいですか?」
たぶん一生戻って来ないけど。
「如月くんは寮申請して荷物運ばれてましたよね!?」
チッ。
思わず舌打ちしそうになるが脳内だけにしてこらえる。先生の前で舌打ちはいけないよね。
「それと、織斑くんの荷物ならーー」
「私が手配しておいてやった。ありがたく思え」
もう一方の教室の入り口から織斑先生が現れた。
「ど、どうもありがとうございます……」
「まあ、生活必需品だけだがな。着替えと、携帯電話の充電器が、あればいいだろう」
わぁ、本当に生活必需品だけだなぁ。一夏が落ち込んでいるのが目に見えて分かる。
大丈夫だ一夏、携帯一つあればしばらくは持つから。
「では時間を見て部屋に行ってくださいね。夕食は六時から七時、寮の一年生用食堂で取ってください。各部屋にはシャワーがありますけど大浴場もあります。でも、織斑くん達は今のところ使えません」
「え、なんでですか?」
一夏が聞き返す。アホだろこいつ。
「男子は俺たちしか居ないんだ、当然だろ」
「あ、そうだった」
うんうん頷く一夏。少し考えれば分かるだろ。
「おっ、織斑くんっ、女子とお風呂に入りたいんですか!?だっ、ダメですよ!」
この先生も大概だなぁ。
「い、いや、入りたくないです」
「ええっ?女の子に興味が無いんですか!?それはそれで問題のような……」
どうしてこんな結論になってしまうのか。織斑先生なんてため息ついてるぞ。
ちなみに俺は犯罪にさえならないなら入ってみたい。健全な男の子だもん、しょうがないね。
「織斑くん、男にしか興味ないのかしら……?」
「それはそれで……いいわね」
「もしかして如月くんも?」
「中学時代の交友関係を洗って!すぐにね!明後日までには裏付けとって!」
聞こえない。腐女子の会話なんて俺には聞こえない。
「まさか部屋が違うなんてなぁ……」
「まったくだ……」
教室での出来事のあと、俺と一夏は一緒に寮へと向かっている。
だが、その足取りはどちらも重い。
「違うってことはつまり……」
「ルームメイトは女子だろうな」
俺の答えにハァ、とため息をつく一夏。
「俺たちを一緒にすりゃいいだけじゃねぇか……」
「本当にな」
一夏の呟きに大きく頷く。
俺は自宅が離れているため寮生活は絶対だった。俺はちゃんと寮申請したのに何故一夏と一緒じゃないのか。おかし過ぎる。時間はあっただろ。
ここは一夏みたいに家が近い女子を自宅通学にさせろと思う。
何故に男女が一緒にならねばならんのか。フリなのか、フリなのか?
まぁそんなのは学生の身分故に生殺し以外の何物でもない。
しかもこれ、もしルームメイトがハニトラだったらヤバいじゃねえか。マジで。
何が保護(笑)だよ、ラビアンローズから通った方がまだ安全だわ。
「あぁ、鬱だ」
誰に言う訳でもなく、ボソっと呟く。
久しぶりとなるその呟きと共に、俺と一夏は寮へ入っていった。
ご都合主義だろうが暗黙の了解だろうがツッコむうちの主人公
ていうか一話に一回は帰りたがる主人公
中途半端なところで切って申し訳ないと思っている
だが私は謝らない
ボール改修型(という名ばかりのただのボール)あげるから許して下さい