すぐネタに走ります
いつの間にかお気に入りが1000を越えていた
皆さん、ありがとうございます
「ーーーーで、あるからして、ISの基本的な運用はーーーー」
二時間目の授業が始まり、副担任の山田真耶先生が前で教科書を読んでいる。
緑色の髪にやや大きめの黒縁眼鏡。
第一印象としては彼女は教師というよりは同級生に見える。
それくらい背が低いし童顔なのだ。
しかし彼女の一番の特徴はなんといってもその見かけから繰り出されている途轍もない大きさの胸部装甲である。でかい。マジで。
きっと時代が違えば立派な胸部装甲を持つ重巡洋艦として登場したに違いない。
さて、山田先生による二時間目の授業が始まったのはいいんだが。
「………」
さっきから隣の席の一夏がチラチラこっちを見てくる。
机の上の教科書を手に取りパラパラとめくってこっちをチラ見。それの繰り返し。
そして俺はそれを無視。
前世の知識で、何故一夏がこんな行動をとっているのかは知っているが正直助けられない。
「織斑くん、何か分からないところがありますか?」
一夏の行動をたまたま目にした山田先生は一夏に訊いていた。
「あ、えっと……」
「分からないところがあったらなんでも訊いて下さいね。なにせ私は先生ですから」
先生の部分をやたら強調し、胸を張る山田先生。
先生、何人かの女子が胸に手を当てて自信喪失したような顔で俯いています。今すぐその姿勢をやめて下さい。
一夏は教科書に一度視線を落とす。
そして何かを決心した表情をすると教科書を閉じて山田先生に向き直った。
あ、これはやらかしますね。
「先生!」
「はい、織斑くん!」
「ほとんど全部わかりません!」
「え……。ぜ、全部、ですか……?」
そして奴は開き直りとも見えるような毅然とした態度で正直に言い放った。
山田先生?今ので笑顔が引きつったよ。見るからに困ってるよ。
「え、えっと……織斑くん以外で、今の段階で分からないっていう人はどれくらい居ますか?」
挙手を促す山田先生だが、手を上げる生徒などいない。
当然俺も。
「如月くんは大丈夫ですか?」
ここで俺に白羽の矢が立つ。
まぁ、男子の片割れの一夏があんな状態なんだ。俺にも聞いてくるだろうとは思っていた。
「ええ、大丈夫です」
「そ、そうですか。分からないところが出てきたら訊いて下さいね」
俺がそう答えると山田先生はホッとした表情に戻り、反対に一夏は仲間が居ない事に困惑している。
今の授業は最初という事もあって、ISの基本的な用語や決まり等の簡単なおさらいや補足、解説である。
ぶっちゃけ参考書の最初の方のページの復習である。
加えて山田先生の教え方に不備は無い。むしろ分かりやすい。
なので、今のこの時点で授業が全く分からない方がおかしいのだ。
「織斑、入学前に渡された参考書は読んだか?」
教室の隅で授業の様子を観察していた織斑先生が一夏に問いかけた。
織斑先生の言う参考書。「必読」とデカデカと書かれた、電話帳ほどの厚さがある本。入学前に新入生全員に配られる。
俺はもちろん読んでいる。
そして一夏の出した答えは……。
「古い電話帳と間違えて捨てました」
瞬間、織斑先生の手から出席簿が投擲されそれは一夏の頭にクリティカルヒット。
スパァン!と、人体のどこから発生しているか分からない音を上げた一夏は頭を抑えて悶える。
いやぁ、ほんと清々しいくらいフォロー出来ない理由だよな。
「必読と書いてあっただろうが馬鹿者」
投擲した出席簿を回収しながら織斑先生は一夏に言った。
おっしゃる通りです。
ていうか無くしたんなら学校に言おうよ。それなら少なくともこんな公開処刑(一部に物理を含む)を受けなくて良かったのに。
「あとで再発行してやるから一週間以内に覚えろ。いいな」
「い、いや、一週間であの分厚さはちょっと……」
「やれと言っている」
「……はい。やります」
反論しようとした一夏だが織斑先生の圧倒的目力で封殺される。
「ISはその機動性、攻撃力、制圧力と過去の兵器を遥かに凌ぐ。そういった『兵器』を深く知らずに扱えば必ず事故が起こる。そうしないための基礎知識と訓練だ。理解が出来なくても覚えろ。そして守れ。規則とはそういうものだ」
織斑先生は一夏だけでなく教室の生徒全員に向けて言った。
正論だ。ハサミだって使い方を知らなければ凶器になる。
ていうか俺と一夏がISを動かした事自体が既に事故だよね。
不備はあっちにしか無いけどね。俺は悪くねぇ!
ていうか規則規則言いますが、それだとアラスカ条約さんが既に息をしていないんですが。
ISの軍事利用はダメ、ってどこかにあったはずなのにISを管理してるのは大体が国軍なんですがそれは。ドイツとアメリカとかモロだし。
自国の防衛のため?なら仕方ないねー(棒)
あぁ、帰りてぇ。
「貴様等、『自分は望んでここにいるわけではない』と思っているな?」
探るような視線を感じ、前を見る。
「等」と言った辺り、どうやら織斑先生は俺と一夏に向けて言っているようだ。
とりあえずその質問については思っていないです。帰りたいとは思ったけども。……あ、これがダメだった?
……んで、質問の意味については当たり前だろ。誰がこんな危険地帯に進んて来たがるんだよ。
前世の知識無しにしてもハニトラが居るってだけで来たくないし。
状況がもうちょっと良かったら自ら望んで突貫したかもしれないけどね。
今なら織斑先生とロンパバトルしても勝てる気がする。
今の私は汚いドラえもんすら凌駕する存在だ!
まぁ、出席簿が飛来して来そうだから言わないけどね。
「望む望まざるに関わらず、人は集団の中で生きなくてはならない。それすら放棄するなら、まず人であることを辞めることだな」
よーし、誰か某中立国(笑)が作った革命の一号機を持ってこい!いくらでも人間辞めてやるぞ!
……そろそろ、ふざけないでまともに考えよう。
つまり織斑先生は現実を見ろと言っているのだ。
そうは言いますが、あまりにもツッコミ所が多いと納得いかないのが人間の性だと思う。
……まぁ、言葉が辛辣だけど言ってる事は至極まっとうなのよね。
再び現実に意識を向けると、何故か山田先生がこけていた。
「うー、いたたた……」
(大丈夫なのか?この先生)
おそらく、クラス中の思いが一致した瞬間だと思う。
「鋼夜ー、助けてくれー」
「敢えて言わせてもらおう。自業自得であると」
二時間目の授業が終わるなり一夏は俺の元へ泣きついてきた。
が、俺はバッサリと切り捨てる。
「なんで鋼夜は分かるんだよ……」
「一夏と違って俺は参考書を捨てなかったからな」
そう言って机の隅に置いていた参考書を持って一夏に見せる。
一夏はこれを一週間で覚えないといけないのを思い出したのか、うなだれた。
「無くしたんなら学園に言えば良かったのに。そしたら再発行してもらえたはずだぞ」
「……返す言葉もございません」
どよーん、という言葉が浮かびそうなくらい落ち込む一夏。
まぁ、自業自得なのでしょうがない。救いは無いね。
すると、ツカツカと誰かがこちらに歩み寄る音がする。
……むっ、これは女の声!
……女子しか居ないから当然だけど。
「ちょっと、よろしくて?」
「へ?」
「き……なんだ?」
ついノリで「来たなプレッシャー!」と言いそうになったが寸でのところで言い直す。
話しかけてきたのは少しロールのかかった鮮やかな金髪と透き通ったブルーの瞳を持つ女子。
ただ立っているだけでも彼女の雰囲気から高貴な気品を感じる。
このクラスで、しかも今の時期で金髪は現時点では一人しか居ない。
「まあ!なんですの、そのお返事。わたくしに話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるんではないかしら?」
俺たちの返答が気に入らなかったのか、目の前の女子はわざとらしく声を上げた。
「悪いな。俺、君が誰か知らないし」
「自己紹介も途中で終わったしな」
ここは一夏に便乗する。
いや、まぁ、メタ的な事を言えば俺は知っているのだがここで下手に言う必要はない。
それに一夏の発言は最もである。だって自己紹介は一夏の次に乱入した俺の番で終わったし。
あいうえお順にやってたんなら一夏以降、つまり、「おり」以降は紹介していないことになる。
しかし目の前の女子には俺達の答えは気に入らなかったらしい。
「わたくしを知らない?このセシリア・オルコットを?イギリスの代表候補生にして、入試主席のこの私を!?」
目の前の女子ーーオルコットと呼ぼうーーは、信じられないといった顔だ。
「へぇ、セシリアっていうのか。俺は織斑一夏。よろしく」
「えぇ、よろしくお願いしま……って違いますわ!」
一夏はオルコットに自分の名を教える。
ああ、オルコットを自己紹介に来た奴だと思ってるのね。あながち間違いではないが。
しかし素晴らしいノリツッコミだ。
どうやら大阪の文化はイギリスでも通じるらしい。
「如月鋼夜だ。オルコットさん、これからよろしく」
「貴方も乗らなくていいですわ!」
挨拶は大事だよ。本当。
ぜーはー、ぜーはーと肩で息をするオルコットさん。
よし、この隙に逃げよう。
「じゃ、俺ちょいと野暮用あるから」
「え、ちょ、ま」
驚く一夏を尻目に素早く席を立ちその場を離れる。さらば一夏。
「やあ箒さん」
「……如月か」
一夏をスケープゴートにし、向かった先は箒さんの席。その表情から察するに今は不機嫌だな。
「なんなのだあの女は……」
間違いなくオルコットの事である。
箒さんはチラチラこっち見てたし。
「イギリスから来た人だってさ。それより半年ぶりだね」
「ああ、久しぶりだな」
少し微笑んでみせる箒さん。
その仕草に俺も自然と頬が緩む。
「愛しの一夏に会えた気分はどう?」
「ひゅっ!?」
恋バナの先制攻撃だべ!
「な、な、な……」
みるみると顔を赤くする箒さん。変わって無いなぁ。
「しっかり援護するから、頑張れよ」
そんな箒さんに笑顔でサムズアップを送る。いま最高にいい笑顔だと思う。
この学園からの逃げ道は無いみたいだしな。だったらここは腹くくって当初の目的である「モッピー脱却計画」のシメである一夏と箒の関係を良くすることに力を注ぐっきゃない。俺の平和な学園ライフのためにも。
「…………」
箒さんは何も言わずに俯いた。
あれ?ツッコミ待ちなんですが。
「お前は……いいのか」
「え、何が」
「あの……その……だな、中学の時の、噂が……」
途切れ途切れに言葉を紡ぐ箒さん。
……ああ、勘違いの噂か。そんなに言いにくい事か?
「ああ、別に箒さんにも一夏に対しても気にしてないけど?そもそもNTRする趣味とか無いし」
「えぬてぃーあーる?」
「あ、知らなくていいよ。まぁつまり俺は恋する女の子の味方という訳さ」
「……そんなにわかりやすかったか?」
「うん。とっても」
正直に答えると箒は顔の前で手を組み顔を隠す。
どこのネルフの司令官だお前は。
「ま、頑張ってね箒さん」
「待ってくれ」
自分の席に戻ろうとしたら箒さんに呼び止められた。
「改めてよろしく頼む。それと、これからは呼び捨てでいい」
「分かった。俺も呼び捨てで構わない」
そして箒と軽く握手を交わし、俺は自分の席へ戻……オルコットさんまだ居るよ。
「……!あ、あなた!」
「はい?」
「あなたも入試で教官を倒したのですか!?」
戻ってきた途端に物凄い剣幕のオルコットさんに迫られた。
IS学園の入試には、実際にISに乗って教師と模擬戦を行なうという内容の物がある。
オルコットさんが言っているのはそれだ。
「倒しては無いな、条件はクリアしたが」
まぁ、条件満たさなくても学園には入れるのだが一応ということで受けた入試だったが、その時の俺はラビアンローズで基礎は学んでいたので結構動けた。
条件が試験官のISのシールドエネルギーを50%にする……だったかな?
なんとか達成したよ。その時にはこっちのシールドエネルギーは五分の一切ってたけどね。
俺の返答に微妙な顔をすると彼女はまた一夏に食ってかかろうとするがそこで次の授業を知らせるチャイムが鳴る。
「っ……!また後で来ますわ!逃げないことね!よくって!?」
「「よくないです」」
俺と一夏の答えが完全一致した時だった。
チャイムが鳴り、捨て台詞のようなものを言いながらオルコットさんは席に戻っていった。
箒は鋼夜をフッた事に(一応)なりますし一夏は箒の想い人
鋼夜はこの二人に思う事は無いのか、と
まぁ、これが箒の言いたかった事ですね
相変わらず恋愛事にウブで口下手でしたが彼女は律儀なイメージがあるからこういうのとか謝りそう
そしてセシリア登場
テンプレな流れになりそうだったからカットしたけど構いませんね!