IS~衛宮の娘は遥か高き宇宙を目指す~   作:明日香

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※本作第1話のリメイク作品です。
第1話では三人称からの視点でしたが第2話以降と同じ形式であるそれぞれのキャラクターの視点から形式に変更しました。
いくつかリメイク前のセリフが抜けていたり変わっていたり真優達を襲ったテロリストの性格や口調が変化しています。
それでもよろしい方はそのまま閲覧ください。





















第1話remake「運命の始動」

 

この世界には【転生】という言葉がある。

多くの人はその言葉をまったく信じないけれど。

私はこの言葉が実際に起こる現象だと知っている。

何故なら私はその【転生】をした者の1人だからだ。

え?中二臭い?

そう言われても実際に私は【転生】した者なんだから文句は言わないでほしい。

話を戻すけど前世の私は本当に身体が弱かった。

私のお父さんは私が生まれる前に交通事故で死んで、私のお母さんも私が産まれると同時に死んだらしい。

生まれた時から天涯孤独でずっと病院暮らしで知っている景色は病室と窓から見える風景だけだった。

前世の私を診察してくれていたお医者さんも私が長く生きられるように、外の景色を見ることができる様に、

それこそ身を粉にするかのように頑張ってくれていたけど前世の私は10歳になる前にこの世を去った。

その時の私は『今度生まれてくるときは元気な身体で生まれたい』と願った。

そしたら私は慈愛に満ちた表情の女性に抱きしめられた状態でこの世界に生を受けた。

そういうわけで二度目の生を受けた私なんだけど神様が前世の私の願いを聞いてくれていたのか

私を産んでくれたお母さんとのおかげは知らないけれど私はとっても健康で頑丈な身体で生まれた。

お父さんは航空自衛隊の隊長でお母さんは私達が住んでいる街のセカンドオーナーだった。

お父さんはいつも仕事で忙しいけれどいつも私を可愛がってくれたし

お母さんもとんでもない機械音痴だったけど溢れんばかりの愛情を私に注いでくれた。

こんな平凡だけど優しい日々が続くと思っていた。

あの日が来るまでは…

【白騎士事件】

この世界を大きく歪ませる原因となった兵器としてのIS【インフィニット・ストラトス】が台頭した事件だ。

世間では2000発以上のミサイルがたった1機のISが全て撃墜したことになっていたけれど実際は少し違う。

たった1発だけ着弾している場所があった

それが私の住んでいる家だった。

あの時私は死んだと思った。

でもその時私に死は来なかった。

お母さんが身を呈して私を守ってくれたから…

 

 

『幸せになりなさい』

 

 

お母さんはそう言い残して私の目の前で息を引き取った。

そしてお父さんも【白騎士】を鹵獲しようとする世界各国の軍から【白騎士】を守って命を落とした。

あの日、お父さんとお母さんが死んだ。

だけど私は生き残った。

【白騎士】を恨んでないと言えばうそになる。

だけど誰かを恨み続けるよりもお父さんとお母さんの子供だと胸を張って生きていきたい。

1人暮らしはいろいろ大変だけど今もこうして生きている。

天国のお父さん…お母さん…私、衛宮真優は今

 

 

「さっさと死になさぁい!!」

 

「断る!!」

 

「どうしてこうなった…」

 

大親友の箒と一緒にISを盗んだテロリストに追いかけまわされています…。

 

 

第1話「運命の始動」

 

 

◆ Side 真優

 

 

イギリス IS研究所

 

 

「これがイギリスのISの研究所か~」

 

「倉持技研も凄かったけどここも凄いな」

 

 

私と箒は私達が通っている穂群原学園の中等部の修学旅行でイギリスに来ていた。

本来、修学旅行は国内になるはずなんだけれど今年も穂群原学園の名物校長である

冬木の虎こと藤村大河校長(お父さんとお母さんを亡くした私の後見人でもある)の暴走で

修学旅行の目的地がイギリスになってしまった(去年の三年生はフランスだった)。

で、今は修学旅行の目玉であるイギリスにあるISの研究所の見学に来ている。

ここってどんな広さなのかな…?

少し、【解析】をしてみようかな…。

解析、開始…。

 

 

◆ Side 箒

 

 

イギリス IS研究所 真優が【解析】を始めた直後

 

 

これは凄いな…。

私は日本の倉持技研に行ったことがあるがここの施設も倉持技研と比べてもなんら見劣りしない。

国を挙げての研究施設だから仕方ないかもしれないがな…。

いや、むしろこの場合はコア以外の援助を政府から受けていない

一企業である倉持技研がこの施設とほぼ同等の施設を持っている方が異常なのかもしれないな。

そして私の相方である真優は…柱に手を当てて目を瞑っている。

…またあの癖か。

 

 

「どうした真優?またいつもの癖が出たのか?」

 

「にゅっ!?…う、うん。やっぱこういった場所はどういった場所なのか気になって」

 

 

真優は他の人間と異なる点がある。

それは普通の人間なら持ちえない特殊な力を持っている。

その彼女が持つ特殊な力の中でも真優が得意とするのは【解析】と【投影】と【強化】の3つ。

で、作られたものに対する好奇心が人一倍強い真優は何か気になる物があれば

【解析】の能力を使って対象とした物の仕組みや構造、構成物質、製作者の理念、

今までどんな体験の記憶、製作者がその物に掛けた想いを隅々まで知ろうとする癖がある。

まあ、そんな性格の為か真優は物を大切に扱っていて真優の家にある物のほとんどが

十年以上の月日が経っている物で、物の修理や整備も非常に得意だ。

だから学園内でも物の修理や整備などを任されることが非常に多い。

私自身も竹刀や木刀や防具の手入れはしているが本格的な手入れは真優に任せている。

それ以外にも外道な行為以外の依頼は断らずに引き受けている。

そんなことをずっと続けているからいつの間にか二代目冬木のブラウニーと呼ばれている。

(ちなみに初代は真優の父親らしい)

っと、まあそんな真優が【解析】を始めたということはこの施設に興味を持ったのだろう。

 

 

「ほどほどにしておけよ。こういった場所は国家機密のエリアがあってもおかしくないんだからな」

 

「むぅ、わかってるよ!箒の心配性!」

 

「はあ…。本当にわかっているのだろうな…?」

 

 

一応真優に釘を刺しておくか。

ここはイギリスの研究施設だ。一企業の倉持技研とはわけが違う。

国家機密に

真優は大切な場面で【うっかり】のミスを犯して危機に陥ることがある。

私は何度も真優の【うっかり】に巻き込まれたことがあるからわかる。

もう既に真優の【うっかり】が始まっていることにな…。

 

 

「ん?なんか一ヶ所だけ変な場所があるね」

 

「変?何かあったのか?」

 

「私、様子を見てくる!」

 

「真優!…まったく!!」

 

 

…異常な場所があった?

真優はもう既にこの施設の状態を把握しているのか?

って、真優!気になったら知るまで進み続けるのはやめろといつも言っているだろう!

まったく!仕方ないから真優を追おう。

このまま真優を放っておいたらとんでもないことをしでかしそうだからな!

 

 

10分後…

 

 

イギリス IS研究所 専用機整備エリア

 

 

「変な感じがあったのはここだね」

 

「ここは…どう見ても専用機の整備エリアじゃないか!!」

 

 

…私はあの時真優をどついてでも止めるべきだったと後悔している。

真優が異常を勘付いた場所だというここはイギリスの国家機密の塊である

国家代表から代表候補生の専用機がオーバーホールを行っている場所だ。

 

 

「うーん。なんでこんな場所に変な感じがしたんだろ?」

 

「そんなこと私が知るか。さっさと戻るぞ」

 

 

もし私達がこのエリアに無断で侵入していることがばれたら拘束程度ではすまないだろう。

…真優の奴はその危険性をまったく理解していないだろうな。

幸い、まだばれていないようだから早々にこの場所から離れ…

 

 

「でもあの人が装着しているISってイギリスの国家代表のISだよね?」

 

「は?」

 

 

…はい?

国家代表くらいなら真優もそんなことを言わないだろうと思った私が

真優が指で示している方向を見るとそこにはイギリスの国家代表以外の女が

イギリスの国家代表の専用機を装着していた。

なにがおこっている?

そう考えた直後、その女と目線があった。

 

 

「見ぃたぁなぁ?」

 

「え?」

 

「は?」

 

 

イギリスの国家代表以外の者が国家代表の専用機を装着して私達の顔を見て都合が悪そうな顔をした。

つまりこいつは…ISの強奪を企てているテロリストか!?

そして目の前に居るテロリストらしき女は私達に迫ってくる。

 

 

「目撃者は消えてもらうわぁ」

 

 

そんなわけで私と真優は命がけのISを装着したテロリストと鬼ごっこをするハメになった。

…どうしてこうなった。

どうしてこうなった!どうしてこうなった!!

ええい!今日は厄日か!?厄日なのか!?

今日という今日はお前を恨むからな真優!!

 

 

◆ Side 真優

 

 

イギリス IS研究所 テロリストに見つかった直後

 

 

「お前らに恨みはないけど拘束させてもらうわよぉ」

 

 

国家代表の専用機を強奪したテロリストが口封じとして私達を殺しにきている。

今まで来た道を引き返そうとしたけどいつの間にか隔壁が閉まっていた。

…テロリストは私達を捕まえに来ている。

咄嗟にまだ隔壁が落ちていなくてISが通れない通路に逃げ込んだ。

 

 

「先生達に連絡は…」

 

「ダメ、まったく通じない!」

 

「っ!?ここも行き止まりか!」

 

「こっちが開いてる!」

 

 

けれどその程度で諦めてくれるわけがないだろう。

なんとか逃げないと!

先生達に連絡して助けを呼ぶことも考えたけど完全に連絡手段が潰されている。

【解析】をして現状を把握したいけどこんな状況じゃ【解析】をすることも出来ない。

だからまだ隔壁が降りていない通路を見つけてあのテロリストと距離を離さなきゃ…。

追いつかれたら私達は殺される!

 

 

「…外に出る!?」

 

「もしかして外に誘き出された!?」

 

 

外に出た!?

…ヤバイ!外に出たってことはあのテロリストが私達を追ってくるはず!

元来た道は…もう閉まってる!?

もしかして誘き出された!?

 

 

「見ぃつけた…」

 

「「っ!?」」

 

「篠ノ之箒、お前は篠ノ之束に対するカードになるからねぇ。身柄を拘束させてもらうわよぉ」

 

「箒!」

 

「わかった!!」

 

 

追いつかれた!?

それにあいつは箒を捕まえようとしている。

あいつらに捕まったらきっと碌でもないことになる!

こうなったら森の中に逃げるしか…!

森の中なら木が盾になるはず!

 

 

◆ Side テロリスト

 

 

???の森 真優と箒がテロリストと遭遇してから1時間後…

 

 

ズガガガッ!!

 

 

まったく…完全にノーマークになったISを奪う簡単な仕事じゃなかったのぉ?

本来ならだれにも見つからずに盗めるはずが、思いっきり人が入っているじゃない!

しかも盗んだISもただの機械の癖に反抗しちゃってさぁ。

ムカツクんだよねぇ!!

しかも追加以来であのポニーテールのガキ…篠ノ之箒は無傷で拘束しろとか

研究所内で火器の使用は厳禁だとかサッサと目撃者を殺して逃げればいいじゃない。

外に指示に従って誘き出したと思ったらこのポンコツが反抗したせいで森に逃げられるし!

森の中にあるというトラップには一向に着かないし、森の中じゃ弾がなかなか当たらないのよねぇ。

ホンットに腹が立つわぁ!!

 

 

「このっ!ちょこまかと!!サッサと死になさぁい!!」

 

「危なっ!?」

 

「くっ!」

 

「逃げるんじゃないわよ!!」

 

「この状況で逃げるなと言われて逃げないバカがいるか!!」

 

「いやいやいや!!当たったら死ぬっしょ!?」

 

 

依頼のせいで篠ノ之箒は殺せない。

篠ノ之箒じゃない方は別に殺しても問題ないわよねぇ。

 

 

「いい加減死になさぁい!!」

 

「「死ねるか!!」」

 

「チィッ!!」

 

 

…逃げられたわねぇ。

しかもレーダーが完全に機能していないせいで完全に見失ったわぁ。

この森じゃ全速力で移動すればシールドエネルギーが削られるわねぇ。

…もう依頼なんかどうでもいいわぁ。

二人ともハチの巣にして身体をグシャグシャにして腸を引き裂いて

苦しませながら殺してあげるわぁ。

ISを相手にしておいてよく逃げている方だけど生身の人間がISを装着したあたしに

逃げ切れるわけがないわよぉ。

 

 

◆ Side 真優

 

 

???の森 真優と箒が森に入ってから30分後…

 

 

なんとかあのテロリストからまくことが出来た。

どうやらIS自体が今のテロリストに反抗しているせいで性能を上手く出せないみたいだね。

おかげで私と箒は助かった…。

 

 

「しかし今更だがここはいったいどこの森なんだ?

 研究所の近くにはこんなにも広い森は無かったはずだが…」

 

「そんなの私にはわかんないよ!」

 

「そ、そうだな…。すまん」

 

「あ、どこか開けた場所に出るよ!」

 

 

意気が上がっていた私はつい、箒に怒鳴ってしまった。後で謝っておこう。

でも、箒の言うとおりこの森はなんなんだろう?

私達があの研究所の近くに来たときはこんなに広い森は無かった気がするけど…。

それに森の雰囲気が入った直後と今とではまったく違う。

あ、どうやら開けた場所に出るみたい。

 

 

「これは…!」

 

「綺麗…」

 

「森の中の湖…なんというかアーサー王伝説の湖を連想するな…」

 

「確かにイギリスで森の中の湖と言うと頭に浮かぶのはそれだよね」

 

 

私と箒はテロリストに追われているにも関わらず目の前の湖に見惚れた。

こんなにも綺麗な湖は今までの人生の中で一度も見たことが無い。

なんとなくだけど日本でも有名なイギリスの伝説である【アーサー王伝説】が思い浮かんだ。

 

 

「本当にここは綺麗…さっきまでの出来事が嘘みたい…」

 

「ああ。このまま諦めてくれるといいんだが…」

 

「そうだよね…」

 

 

ドガァンッ!!!

 

 

「あうっ!!」

 

「かはっ!!」

 

 

このままあのテロリストが諦めてくれるといいんだけど流石にそれはないよね。

ちょっと名残おしいけどこおから離れなきゃ…。

そう思った瞬間、私と箒は宙に浮いて地面に叩きつけられた。

私は激痛に耐えながらも爆発がした方向を見るとそこにはISを装着したテロリストが

悪魔のような笑みを浮かべたながら私と箒にアサルトライフルを向けていた…。

 

 

「IS相手に良く逃げ回ったがここまでねぇ」

 

「うぅ…」

 

「くっ…」

 

「楽には死なせないわ。ハチの巣にしてグチャグチャにして腸を引き千切って

 痛みという痛みに味あわせながら殺してあげるわぁ」

 

「(私達…誰にも知られることなく、ここで死ぬの…?)」

 

 

いやだ…まだ死にたくない!

だって私は…私はまだ成すべきことを見つけていないのだから!!

 

◆ Side 箒

 

 

???の森 テロリストに追いつかれた直後

 

 

「楽には死なせないわ。ハチの巣にしてグチャグチャにして腸を引き千切って

 痛みという痛みに味あわせながら殺してあげるわぁ」

 

 

ISを装着したテロリストが悪魔のような笑みを浮かべながら私と真優にアサルトライフルを向けている。

身体が思うように動かない…。

ここで死ぬのか…?

姉さんや父さんと母さんにも会えずに…

一夏に私の思いを告げることが出来ないまま死ぬのか…?

イヤだ!!イヤだイヤだイヤだ!!!

なぜなら私は…私はまだ一夏と姉さんに自分の想いを何一つ伝えられていないのだから!!

 

 

◆ Side シン

 

 

?????

 

 

誰かが助けを求める声が聞こえる。

まだ成し遂げなくてはならないことがある。

なのにこのまま死ぬのは嫌だと叫ぶ。

その心の叫びは生への願いそのもの。

その願いは俺とこいつを現世へ呼び出すには十分すぎる願いだ。

 

 

『シン…』

 

『ああ。行くぞ、アルトリア』

 

『はい。行きましょう、シン』

 

 

さあ、行こう。

今度こそ力なき人々の剣となるために。

俺が世界の壁を越えてまで呼び出された使命を果たすために。

今度こそ後悔しないために…。

 

 

◆ Side 真優

 

 

???の森

 

 

私が死にたくないと強く願った瞬間、私達とテロリストとの間に眩い光の塊が降り立った。

これは…何の光…?

こんな光は今まで一度も見たことが無い。

光がおさまると光が降り立った場所には白銀の甲冑を身に纏った少女と赤い外套を纏った青年が立っていた。

 

 

「間に合いましたか」

 

「やれやれ、まさかこのような形で再びこの世界に来ることになるなんてな」

 

「「問おう」」

 

 

甲冑を纏った少女はどこか安心した声音で赤い外套を纏った青年はどこか自嘲気な声音だった。

そんな二人がテロリストに背を向けて私達に向き直って私達に問いかけてきた。

 

 

「貴女が、私のマスターか?」

 

「こんな役立たずを呼んだのは君か?」

 

 

自分達を呼び出したのが私達であるかと。

そして私はなんとなくわかった。

この2人は私達を助けるために来てくれたのだ。

なら、返すべき答えは一つだ。

 

 

「うん」

 

「ああ」

 

「私達が貴方達のマスターだよ」

 

「私達がお前達のマスターだ」

 

 

貴女達を呼んだのは私達だと私は答えた。

どうやら箒も同じことを考えていたみたい。

私の返答を聞いた青年と少女はどこか満足げな表情をしながらテロリストに向き直った。

 

 

「ああ。契約完了だ。これから俺達は君達の剣となる」

 

「これより我らの剣は貴女達とともにあり、貴女達の運命は私達とある」

 

「さて、ではマスターの命を脅かす貴様を倒させてもらうとしよう」

 

 

私はこの二人とは初めて会うはずなのに懐かしさを感じた。

まるで私が生まれる前から私のことを知っているような…

そんな感じがする。

そして、テロリストに向き直った青年は父のような…または兄のような頼もしさを感じる。

 

「マスター達の守りを任せたぞ」

 

「はい。二人とも、私につかまってください!」

 

「う、うん!(ガシッ」

 

「わ、わかった!(ガシッ」

 

「はっ!(ダンッ」

 

「へ?」

 

「は?」

 

 

甲冑の少女の指示に従って甲冑の少女の肩につかまると甲冑の少女はそのまま跳躍し、

テロリストから距離をとった。

…って、ちょっと待って!?

さっき助走もなしに6mも跳ばなかった!?

どうやら箒も混乱しているらしい。

この少女はたった三回の跳躍で私達を安全圏まで避難させた。

でも安全圏に避難できたからなのか心の余裕が出来た私は青年が居る方向を見た。

そして、あり得ない物を見た。

 

 

「どんな手品か知らないけどまとめて殺してあげるわぁ!!」

 

「遅い」

 

「ひょっ?」

 

「錯乱した状態で殺せるほど俺は甘くない」

 

「コヒュッ」

 

 

テロリストは青年に対してアサルトライフルを乱射するけれど青年は必要最低限の動きで

アサルトライフルの弾幕を全て回避しながらテロリストに接近し、

装甲で守られている胴体を握り拳で思い切り殴った。

そして、殴られたテロリストはそのまま気絶した…。

ワンパン…だと…?

確かに性能はガタ落ちしていたけれどISを装着したテロリストをワンパンで無力化しちゃったよこの人!?

というか絶対防御発動していなかったよね!?

 

 

「…そうか、わざと装甲で守られている個所を攻撃して絶対防御を発動させなかったんだ」

 

「えっと、確かに今の絶対防御は装甲で守られていない部位を守るシステムになっているけど…」

 

「ああ。つまり、胴体の装甲を殴った衝撃で搭乗者に直接ダメージを与えたんだ」

 

 

どうやら箒はなんでISがワンパンで負けた理由がわかったらしく私に説明してくれた。

現在、競技用に使われているISは装甲で守られていない部位を攻撃された時にのみ発動する。

そうしないと絶対防御のせいですぐにシールドエネルギーが無くなって負けてしまうからだ。

あのISもその例に当てはまったのだろう。

それに絶対防御は「絶対」と付いているけど完全にダメージを防げるわけじゃない。

特に装甲越しに操縦者へ直接ダメージを与える衝撃は競技用ISにとっての天敵だ。

昔はISではなく搭乗者に直接ダメージを与える兵装も開発されていたくらいだ。

つまりあの青年は絶対防御の穴を見抜いてもっとも最適な攻撃方法を瞬時に選んだということになる。

…どちらにしても普通の人間が出来るようなものじゃない。

まあ、今はそんなことはどうでもいっか。

 

 

「さて、邪魔者を片付けたわけだが、マスター達はどうやってここに来た?」

 

「えっと…」

 

「実は私達も何故このような場所に辿り着いたのかわからないのだ…」

 

「ただ言えるのはその人から逃げていたらこの森に辿り着いたとしか…」

 

「ふむ…この森は限られた者しか辿りつけん。すまないがマスターたちの名前を確認したい」

 

 

待機状態になったISを没収し、テロリストを鎖で縛って(どこから出した!?)無力化した青年が

「どうやってこの森に来たのか?」と私達に訪ねてきた。

正直、そんなことを聞かれても私達はなんでこの森に居るのかわからない。

私と箒の返答を聞いた青年はしばらく考えた後、私達の名前を尋ねてきた。

 

 

「私は篠ノ之箒という。こっちが…」

 

「衛宮真優だよ」

 

 

まあ、命を助けてくれたのだから自分の名前を隠す必要はない。

だから私と箒は自分のフルネームを二人に教えたのだけど甲冑の少女の様子がおかしい。

なんというか死んだ人を見たような…そんな感じだ。

 

 

「エミヤ…あの、失礼ですがマユのご両親の名は?」

 

「衛宮士郎と衛宮凛だけどどうかしたの?」

 

「そうですか…そうだったのですね…シロウ、リン…」

 

 

甲冑の少女はなぜか私の両親の名前を尋ねてきた。

まあ、隠すようなものじゃないから素直に答えたけど私の両親の名前を聞いた甲冑の少女は

嬉しそうな表情をした。

…間違いない。この二人はお父さんとお母さんのことを知っている。

 

 

「マユのご両親は今何を?」

 

「………」

 

「マユ?」

 

「すまない。真優のご両親は九年前に二人とも他界しているんだ」

 

「………申し訳ありません。マユ、不謹慎でした」

 

「…いいよ。2人ともお母さんは私を救ってくれたしお父さんも誰かを守りきったんだから」

 

「そうですか…2人とも立派に生き抜いたのですね…。ありがとうございます。マユ」

 

 

甲冑の少女は更に私のお父さんとお母さんはどうしているか尋ねてきた。

でも、私のお父さんとお母さんは九年前に起こった白騎士事件で命を落とした。

彼女は自身が地雷を踏んだことに気が付いて私に謝った後、私にお礼を言った。

私のお父さんとお母さんの最後を聞いた彼女は安心した表情をしていた。

…でも、お父さんとお母さんの死を知って泣き出しそうだった気がしたのは気のせいじゃないと思う。

 

 

「さて、君達が名乗って俺達が名乗らないわけにはいかないな。

 俺の名前はシン、シン・アスカ。今は故あってこの世界の守護者をしている」

 

「私の名前はセイバー…」

 

 

ゴンッ!!

 

 

なんとも言えない沈黙が続いたけれど赤い外套を纏った青年が自己紹介をしてくれた。

どうやら私達に気を使ってくれたらしい。

それで、彼の名前はシン・アスカっていうのか…。

少なくとも歴史の授業で聞いたことがないかな。

それに世界の守護者というのもなんなのかわからない。

文字どおりの意味なのかまた別の意味があるのか…。

ただ、常人からかけ離れた身体能力の高さを持っているのは確かだろう。

甲冑の少女はセイバーと名乗ったんだけどどう考えても偽名だよね?

あ、セイバー(仮)がシンに頭をどつかれた。

凄く痛そうな音がしたよ…。

 

 

「痛いじゃないですかシン…」

 

「聖杯戦争でもないのに自身の名を隠そうとするな」

 

「むむむ…」

 

「何が『むむむ』だ。まあ、本名を聞いたら聞いたで2人が驚くだろうがな」

 

 

セイバー(仮)が涙目でシンに抗議しているけどシンは聞く耳持たずで、逆に名前を隠そうとする

セイバー(仮)を咎めた。

それと【聖杯戦争】ってなに?

歴史での聖杯戦争は知っているつもりだけどそれとは違うような気がする。

でも、これ以上聞いてはいけない気がするからこれ以上は聞かないでおこう。

 

 

「私の名前はアルトリア・ペンドラゴンと申します」

 

「ペンドラゴン?もしかしてアーサー王だったり?」

 

 

アルトリアか…。良い名前だね。

…ペンドラゴン?

も、もしかして…アルトリアのもう一つの名前って…

あのアーサー王伝説で有名なアーサー・ペンドラゴン?

 

 

「はい、貴女達が知っているアーサー王は私です」

 

「「え?えええええええええええええええ!!!?」」

 

「…こうなる反応が目に見えていたのでセイバーと名乗ろうとしたのですが?シン」

 

「どうせ遅かれ早かれ知ることになるんだ。だったら早い方がいい」

 

 

私と箒は驚きのあまり叫んでしまった。

なんでそんな超が付くほど有名人が私達の前に現れたのだから…。

アルトリアは私達のリアクションを予想していたからなのか白い目でシンを見たけど

シンはどうせ知られるのだったら早く知られた方がいいと言ってあしらったけど。

 

 

「さて、これからマスター達はどうするんだ?

 恐らくむこうでは君達が突然居なくなってパニックになっているだろうな」

 

「あ!みんなのところに戻らなきゃ!!」

 

「い、急ぐぞ真優!!」

 

 

ありえない出来ごとの連続のせいで忘れかけていたけど

私達は他のクラスのみんなとはぐれているんだった!

早くもどんないとヤバイ!

と、とにかく早く戻らないと!

その後、どういうわけかすんなりとみんなと合流出来たけどこっぴどく怒られた。

まあ、テロが起こった直後にいないとわかったんだからそりゃ怒るよね…。

この後、色々と事情があってイギリスに1ヶ月半も滞在することになったけど

その時に新しい友達ができたからいいよね!

 

 

◆ Side アルトリア

 

 

日本 IS学園 イギリスでの事件から数ヶ月後…

 

 

私とシンが現世へ呼ばれてから数ヶ月が経ちました。

…正直、私は守護者の座に感謝しています。

私が死亡した後、二度と会えないと思っていたシンとの再会ができ、

シロウとリンの子であるマユとその親友であるホウキと出会うことができたのですから…。

ですが、この世界の情勢はあまり良いとは言えません…。

IS…。

現代の兵器を全て過去のものにした最強の兵器。

これだけならまだ良かったのですがある欠点が致命的でした。

この兵器を扱うには女性であることが第一条件とされている。

その欠点のせいで世界のバランスが完全に崩れ去ってしまい、女性という立場を良いことに

暴虐の限りを尽くす者達が増えてきています。

私とシンが再び現世に召喚されることになった理由ではありませんが注意した方が良さそうですね。

 

 

「あれから色々あったね~」

 

「ええ。マユがホウキと一緒に担任の方に怒られたり

 強奪されかけていたイギリスの専用機を奪還したことによって2人揃って表彰されたり

 セシリアと出会ったり

 私がマユとホウキと同じ学校に編入されたり

 ホウキの急な転校が決まってシンがホウキの護衛としてついて行ったり

 私達がIS学園の入学試験に合格したりと本当に色々ありましたね。」

 

「…正直なんで私と箒が表彰されたのかわからないけどね」

 

 

…表彰云々は裏の情報を世間にばれさせないための隠れ蓑にするためで

私とシンとホウキの姉君であるタバネが政府の高官たちと取引をした結果ですがね。

まあ、それ以外にもいろいろとありましたが…。

私がマユ達の通う学び舎に編入されたり、なぜか受肉していたランサーと再会したり、

ホウキの急な転校が決まって護衛としてシンが付き添ったり(正直ホウキが羨ましいです)、

私達が新たに生活を送ることになるIS学園の試験の時はマユが

リンから受け継がれた【うっかり】のせいで筆記用具を忘れてピンチになったり、

とこの数ヶ月の間、本当に色々な出来事がありました。

 

 

「まあ、箒とシンとは何処に居ても念話でいつでも話せたから寂しくはないけどね。」

 

 

離れ離れになっても緊急時に連絡が可能になるようにと私達全員に念話のラインを繋げておいたおかげで

いつでもどこでもホウキ達と念話が出来たのでマユが寂しくなかったのが幸いでした。

 

 

「箒もIS学園に入学することには驚いたけど」

 

「私は校長になっていたタイガから推薦を受けて…」

 

「まあ、アルトリアは全部の成績がトップだから」

 

「はあ…タイガには困ったものです」

 

「あはは…。シンも政府から箒の護衛として雇われてIS学園の用務員という立場で

 IS学園に入るらしいし」

 

「その連絡が入った時は私も驚きました…」

 

「私も試験に合格してここに来たわけだからね!」

 

「これはもう偶然じゃなくて運命ってレベルだよね」

 

「そうですね」

 

 

私はこの二十年で校長になっていたタイガの推薦でIS学園の試験を合格し、

マユも普段の努力の成果で無事に試験を合格しました。

そして、つい先日にホウキから自分はIS学園に入学する事になったということと

シンがこの国のエージェントとして雇われ、ホウキの護衛としてIS学園の用務員として

IS学園に赴任したということを伝えられた時はどこか運命じみたものを感じました。

ん?あそこに居るのは…シンとホウキですね。

 

 

「あそこに居るのって箒とシンじゃない?」

 

「そのようです。あ、ホウキは私達に手を振っていますね」

 

「おーい!箒―!」

 

「真優!ひさしぶりだな!」

 

 

ホウキも私とマユの存在に気が付いたのか私達に手を振っていますね。

マユもシンとホウキに手を振りながら駆け寄って行きました。

念話で話こそしていましたけど数ヶ月の再会のためか非常に喜んでいるようです。

お互いに手を合わせながら再会を喜んでいますね。

 

 

「ひさしぶりですね。シン」

 

「ああ、ひさしぶりだな。アルトリア」

 

 

私もシンと再会できて嬉しいですがここは学び舎、流石にわきまえましょう。

また彼らと共に日々を送れる。

ですが、この日々を壊そうとする者が必ず現れるでしょう。

だから、この日々が壊されないように私も使命を全うしましょう。

それが今の私とシンの願いなのですから…。

 

 

◆ Side 真優

 

 

日本 IS学園 箒と再会した直後…

 

 

「おーい!箒―!」

 

「真優!ひさしぶりだな!」

 

 

今日この日、私は親友の箒と再会できた。

アルトリアと出会ってから色々な出来事があったけれどこうして箒と再会できた。

それが本当に嬉しい。

私は箒の許まで駆け寄るとお互い手を組んで再会を喜んだ。

平穏な日々はいつか崩れ去ってしまう。

でもこの日々が少しでも長く持ちますように!

それが、衛宮真優の願いだから…。

 

 




どうも明日香です。
今回は第7話の投稿の前に第1話のリメイクを投稿させていただきました。
このような文でも楽しんでいただけたら幸いです。
ではではノシ

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