IS~衛宮の娘は遥か高き宇宙を目指す~   作:明日香

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第5話「激戦!クラス対抗戦!」

 

うーん…。

日本に来るのもひさしぶりね。

さて、総合受付を探さないとね。

でも総合受付ってどこだっけ?

まあ歩いていたら見つかるっしょ。

 

 

「総合受付…どこ…(フラフラ」

 

 

うー…。

付いたのは昼間だったのにいつのまにか外は真っ暗になっていた。

ここ受付が多すぎるでしょ!?

しかも案内板が全然見つからないから歩いて探すしかないし…。

ヤバイ…今日はご飯を食べてないから意識が…。

 

 

「そこの君」

 

「へ?あたし?」

 

「この場には君しかいないだろう?今日はもう既に受付が閉まっているぞ」

 

「え?マジで!?」

 

「マジだ」

 

 

ぬおっ!?

まさかこんな夜中にIS学園の人と会えるなんて…。

もしこの人に会わなかったら今頃学園内で力尽きていたわよ…。

よしんば辿りついてももうこの時間じゃ閉まっているわよね…。

マジで助かった…。

その後この人の後についていって宿直室にあるベッドで休ませてもらった。

たぶんこの人はあたしを襲うのではないのかと警戒しないのかって思っていそうだけど

これでもあたしは人を見る目はあるつもりだ。

この人は私を無力化出来る実力はあっても無意味に襲ったりしない人だ。

だから安心して寝られる。おやすみー。

…てなわけで朝がやってきてこの人…シンさんから朝ご飯をもらって

シンさんの案内で総合受付に案内してもらった後に登録を済ませて

シンさんの案内であたしのクラスに移動していた。…シンさんって面倒見がいいのね。

 

 

「まあ、真優のことはいいとしてやれるだけやってみるよ」

 

「やれるだけでは困りますわ!一夏さんには勝っていただきませんと!」

 

「そうだな。戦う以上は勝つという気概でいかないとな」

 

「そうですよ。貴方はこのクラスの代表なのですから」

 

「織斑くんが勝つとクラスのみんなが幸せだよ!」

 

「織斑くん、がんばってね!」

 

「フリーパスの為にも」

 

 

そしたら一組の教室から懐かしい声が聞こえた。

この声は間違えようがない。一夏の声だ。

会話を聞く限りではここに馴染み始めているし友達も出来ているみたい。

うん。いいことね。

女子高に男子1人だけってのは一種の拷問だもの。

でも一夏が相手かぁ…。

あたしも登録が終わると同時にクラス代表を押しつけられたけどこれならやる気が出るわ。

 

 

「専用機を持っているクラスは一組と四組だけだから余裕だよ!」

 

「――その情報、古いよ」

 

「ん?」

 

「二組も専用機持ちがクラス代表持ちになったの。そう簡単には優勝できないから」

 

 

…凄くバカにされたわね。

なんか腹が立ってきた。

専用機がないから余裕?

馬鹿を言っちゃいけないわ。

訓練機も腕利きのパイロットが乗れば専用機を圧倒することだってある。

あたしも専用機を受領したけれどあたしの訓練を見てくれた人には一度も勝てなかったし

一夏の剣のお師匠さんに至ってはお師匠さんが生身でも絶対に勝てない。

丁度いい機会だし楽天的な奴等に宣戦布告をしようか!

あたし、鳳鈴音が居る限り簡単には優勝できないってね!

 

 

第5話「激戦!クラス対抗戦!」

 

 

◆ Side 一夏

 

 

IS学園 一年一組教室 クラス対抗戦7日前

 

 

「――その情報、古いよ」

 

 

懐かしい声が聞こえた。

この声は忘れるはずがない。

6年前のあの時に俺を励まして中学三年になるまで同じ中学校に通った

俺のもう1人の幼馴染であり、俺の大切な仲間の声だ。

 

 

「二組も専用機持ちがクラス代表持ちになったの。そう簡単には優勝できないから」

 

 

その仲間の名前は鳳鈴音(ファン・リンイン)。俺は鈴(リン)と呼んでいる。

でも本当に驚いた。

まさか箒の言ったことがすぐに現実になるなんて…。

世の中本当にわからないものだな…。

 

 

「鈴?…お前、鈴か?」

 

「そうよ。中国代表候補生、鳳鈴音。今日は宣戦布告に来たわけ」

 

 

だから俺は自然と口を開いていた。

あの時の別れでもう二度と会えないと思っていた鈴と会えたんだ。

そして、鈴が中国の代表候補生?たった一年で代表候補生になるなんて

会っていなかった一年間にどんな訓練を生き抜いたのだろうか…?

でも格好つけている鈴はあまり似合わないな。

 

 

「…一夏。アンタさっき似合わないって思ったでしょ?」

 

「…すんません」

 

「まあ自覚があるからいいけどさ…」

 

「失礼。鈴音君。君はそろそろ二組へ移動した方がいいだろう」

 

 

…やっぱ俺って考えていることがわかりやすのか?

というか鈴も自覚はあったんだな…。

うん。鈴は格好つけるよりも自然体でいるのが一番だ。

一年ぶりの再会だからもっと話をしたかったが鈴の後ろに居たシンさんが止めに入った。

 

 

「え?なんでよ」

 

「もうそろそろSHRが始まる。それにここの担任は織斑教諭だぞ?」

 

「え゛!?そ、それじゃあ一夏!また後でね!!」

 

「お、おう…」

 

 

「席についているな?それではSHRを始める」

 

 

シンさんに言われて時計を見るとあと1分でSHRが始まる。

げ、もうそうな時間に…。

鈴も登校初日に遅刻するわけにはいかないと思ったのかそのまま隣のクラスに行った。

その直後に千冬姉が入ってきた。

シンさんに声をかけてもらわなかったらみんな揃って千冬姉の鉄槌を受けるところだったな…。

あいつ二組だったのか…。

そうなるとクラス対抗戦は鈴と当たるのか…。

 

 

◆ Side 箒

 

 

IS学園 学生食堂 昼休み…

 

 

「待っていたわよ、一夏!」

 

 

鳳鈴音という奴が一組に宣戦布告をした後、私達は普通に授業を受け、四限目を終えて

昼食を食べに学生食堂へ向かうと学生食堂の入口の前であの鳳鈴音が待っていた。

しっかり端で待っているあたり常識はわきまえているらしいな。

 

 

「あ、わるい。待たせたな」

 

「いいわよ。別にあまり待っていないから」

 

 

恐らく彼女が一夏の言っていたセカンド幼馴染なのだろう。

あの時彼女について話していた一夏が楽しそうだったのはよく覚えている。

彼女が一夏の心を救ってくれた一夏の仲間の1人なんだな…。

 

 

「積もる話もあるからまずはサッサと食券を買うわよ」

 

「おう」

 

 

…凄く息があっているな。この2人は。羨ましい限りだ。

だがここで話しているよりも食券を勝った後に話をした方がいいからな。

というわけで私達は食券を購入して比較的空いている席へ移動した。

 

 

「それにしても本当にひさしぶりね~」

 

「ああ、俺も鈴とまた会えて嬉しいさ」

 

「で、一夏の隣に座っている子が一夏の言っていた箒?」

 

「ああ。やっと会えたんだ…」

 

「ん?彼女は私のことを知っているのか?」

 

「ええ。一夏と仲良くなってから四六時中ね」

 

「………一夏」

 

「………すまん。誰でもいいから箒のことを覚えていてほしくて」

 

「気持ちはわからなくはありませんが四六時中は流石にやりすぎでしょう…」

 

 

一夏…流石に四六時中はやりすぎだ。

まあそこまで思っていてくれるのは嬉しいが…。

…あの時の私はそこまでひどかったのだな。

だが最低3年は一緒に居ることが出来る。

それまでにどう生きるのか決めなくてはいけないな…。

 

 

「でもそれだけ一夏は箒が好きだったんだね」

 

「「す、好きぃっ!!?」」

 

「わたくしも一夏さんと箒さんのように互いを愛しあえる人と巡り会いたいですわ~」

 

「「あ、愛し!?」」

 

 

ゲホッゲホッ…。

きゅ、急に何を言い出すんだこの動くフラグメーカーは!?

わわわ、私がい、一夏のことが…。

…………うん。やっぱり私は一夏が好きだ。

セシリアの言った通り私は一夏を愛している…。

でも一夏は私のことを愛してくれているのだろうか…?

 

 

「で、一夏もクラス代表なんでしょ?どうせ物珍しいから押しつけられたんじゃない?」

 

「…ああ。推薦された理由がそうだった」

 

「ですが実力はありますわよ?相性の問題があったとはいえ

 3回目の操縦でわたくしに勝ったのですから」

 

「…アルトリアには負けたけどな」

 

「え?じゃあなんで代表をやっているのよ」

 

「…私が強すぎるからと出禁を受けました」

 

「代表候補生を差し置いて出禁ってどんだけよ…」

 

「稼働初日に俺の白式がランクBの損傷を受ける位だ」

 

「…そりゃ出禁になるわ」

 

 

…わからないことを考えるのはやめておこう。

それよりも彼女もクラス代表か…。

おそらく代表候補生の専用機持ちだから選ばれたのだろう…。

なんというか、不憫だな…。

だが代表候補生で尚且つ専用機持ちならば実力は相当なものだろう。

アルトリアはなんというか…規格外だな。

二年、三年ならともかく一年のクラス代表に居ていいレベルではない…。

そこはアルトリアも理解しているのだろうな。

 

 

「そういえば真優は今日の放課後はどうするんだ?」

 

「うーん…。今日はどうしようかな?」

 

「真優はルーキーなの?」

 

「あ、わかる?」

 

「ええ。なんというか一夏見たいに未熟なのに専用機を任されるって顔をしている」

 

「うん。正解。私の知り合いがとあるISのテストパイロットをしてほしいって

 そんな依頼が私宛に届けられてさ。できるだけISの操縦に慣れようと思って」

 

 

なっ!?あの真優に専用機だと!?

真優はIS適正こそ私より高いがISの操縦経験は圧倒的に不足している。

正直専用機を与えるにしてはあまりにも実力不足だ。

まあアルトリアと違って訓練機を乗り潰す様なまねはしないが…。

 

 

「…こう言ってはなんですが真優さんの実力で専用機は早すぎるのでは?」

 

「うん。でもそのISのテストパイロットになる条件が

 ISの搭乗経験が少なくて実力も低めのルーキーなんだって」

 

「…そんな条件ではパイロットを買って出る者はいないな」

 

「ってか実力が低いのが条件に入っている時点で怪しいだろ」

 

「……………………(グスッ」

 

「……………………(ムスッ」

 

 

能力が低いルーキーを欲している時点でかなり怪しいだろう。

あまり良い条件ではない気がするが…。

一夏達も私と同じことを考えていたのか真優に指摘すると真優が涙目になった。何故だ?

そしてアルトリアも何故そんな不機嫌な顔になる?

説明してもらわないとまったくわからないぞ…。

 

 

『ホウキ』

 

『ん?アルトリア。どうした?』

 

『マユの専用機について話が…』

 

『わかった。教えてくれ』

 

 

まるで私が考えていたことを読みとったアルトリアは私に念話で会話をしてきた。

この場で念話をするということはあまり外部に聞かれたくない情報なのだろう。

なら、念話で真優の専用機事情を聞いておいた方がいいな。

私が続きを促すとアルトリアは少しずつ説明を始めてくれた。

 

 

『マユに専用機のテストパイロットをしてほしいと依頼を出したのは

 私のセイバー・リリィを開発した間桐グループからです。

 マユが『知り合いの』と言ったのはいらぬトラブルを避けるためです』

 

『間桐グループ…。なるほど、確かに一夏達には話せないな』

 

『間桐グループは現在新しく雇った技術者と最近経営難に陥っている

 フランスのデュノア社と連携して新しいISの開発を行っています』

 

『だが、なぜそれで真優が専用機のパイロットに選ばれたんだ?』

 

『今回間桐グループとデュノア社が連携して開発しているISは

 誰でも使える新たなマルチフォームスーツというテーマで開発が進められています』

 

『誰でも使える…か』

 

『ですが熟練者はともかくルーキーのデータが

圧倒的に不足しているらしいのです。だからマユに白羽の矢が立ったらしいのです』

 

 

そういうことか。

間桐グループはISに対するノウハウが圧倒的に不足している。

だから現在経営難に陥っているデュノア社と提携して新型のISを開発しているらしい。

なるほど。ラファール・リヴァイヴという名機を生み出したデュノア社のノウハウと

間桐グループが持つ最新の技術を融合させて新たなISを開発しようとしているのか。

そしてそのためにも膨大なデータが必要であり

中堅と熟練者のデータはすぐに集まったがルーキーのデータが不足している。

だから、全くのルーキーであり、未熟である真優に白羽の矢が立ったのか。

確かにこの話は一夏達に話せるような内容ではないな。

 

 

「ま、真優?どうしたんだよ。急に泣きそうな顔をして」

 

「…怪しくないもん。まっとうな会社なんだもん(プイッ」

 

「もんって…子供じゃないんだから…」

 

「ですが逆に考えればそこまで自分達の技術に自信があるのでしょうか…」

 

 

あ、真優の奴拗ねたな。

あいつが身内を侮辱され際にとる行動は簡単にわけると二つある。

ひとつは烈火の如く激昂する。

そしてもうひとつが今のように拗ねる。

今は私達が身内だったから「拗ねる」で済むが激昂し出すとなかなか止まらない。

それだけあいつは自身の友達や知り合いを大切にしている。

…本当にこんな親友が出来て私は幸せ者だな。

 

 

「…よかったらアンタの操縦訓練見てあげよっか?」

 

「え?いいの!?」

 

「ルーキーと訓練するのもいい経験になるからいいわよ」

 

 

む。鈴音が真優の訓練を見るのか?

確かに私達以外の専用機持ちに訓練を見てもらえるのは非常にありがたい。

いつも同じ相手だと自分の弱点に気が付かないからな…。

これは幸運だな。真優。

でも何故か嫌な予感が…。

 

 

「随分と楽しそうだな」

 

「あ、シン…」

 

「談笑を楽しむのもいいが次の授業に遅れないようにしろよ?」

 

「あ、昨日は部屋に泊めてくれてありがとうね」

 

「気にするな」

 

 

ピシャン…!

 

 

あ、何か空気が凍りつく音がした。

心なしかこの食堂の室温が大きく下がった気がする。

アルトリアが絶対零度の眼差しをシンと鈴音に向けている…。

周囲を見回すとあれほど人で溢れかえっていた食堂が今や私達だけになっている。

一夏とセシリアも顔を青ざめている。おそらく私の顔色も真っ青になっているな…。

 

 

「シン。これはどういうことです?事と次第によっては…」

 

「どうしたの?アルトリア」

 

「なに、昨日の夜は彼女を部屋で休ませただけだ」

 

 

バターンッ!!

 

 

「おい!山田先生が泡吹いて倒れたぞ!?」

 

「え、衛生兵!誰か衛生兵を呼んでくださいまし!!」

 

 

シンーッ!?それは地雷だぞ!!

アルトリアも目を細めて殺気を出すな!!

たまたま食堂に立ち寄った山田先生が泡吹いて倒れたぞ!!

クッ!まさかこんなところで犠牲者が出るなんて…!!

だが待つんだセシリア!千冬さん以外の教員を呼んだらミイラ取りがミイラになるぞ!!

 

 

「ほう?貴方はこのいたいけな少女を自室に連れ込んだと?」

 

「そのとおりだ」

 

「そうですか。貴方がどんな男か再確認させていただきました」

 

「ん?訓練をするのか?ならばここではなくアリーナでした方がいいだろう」

 

「いいえ、貴方はここで天誅を下します!」

 

 

まずい…。

アルトリアは激昂しているし、シンもアルトリアの言葉の意図にまったく気づいていない!

このままではこの食堂が戦場になりかねないぞ!

なんとしてでも止めなければ…。

 

 

「ねえ箒。なんでアルトリアはあんなにも怒っているの?」

 

「…………」

 

 

そして隣に居る真優も何故アルトリアが激昂しているのかわかっていない。

ええい!何故この二人はこうも鈍感なのだ!!

私でもアルトリアの気持ちがわかるんだぞ!!

何か打開策は無いのか…!?

このままでは食堂が…!!

 

 

「おい。既に昼休みが終わっているのに何をしている」

 

「「「「お、織斑先生!?」」」」

 

 

ち、千冬さん!!

時計を見ると既に五限目が始まっている。

それでも戻ってこない私達を不審に思って食堂まで来たのだろう。

後で出席簿の一撃が待っているだろうがこの状況を切り抜けられるのなら安い出費だ。

アルトリアから放たれているオーラはとてつもないがそれでも千冬さんなら…

千冬さんならばこの状況を収めてくれるはず…!

 

 

「原因はあれか…。おい、ペンドラゴン」

 

「なんですか?私は今、この男の討伐方法を考えているのですが…(ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ」

 

「………………………………もう五限目だ。早く教室に戻れ」

 

「む。もうそんな時間でしたか…。命拾いしましたね。シン」

 

「ペンドラゴン。お前は今日の放課後に教室の掃除を命じる」

 

「…はい。わかりました」

 

 

な、なんとかなった…。

千冬さんの言葉を聞いたアルトリアがなんとか殺気を抑えてくれた。

だがこちらも酷い状態だ。

セシリアは座っていた席から立ち上がることができず、一夏も立っているのがやっと

鈴音は今にも泣きそうな顔をして私も嫌な汗がまったく止まらない…。

千冬さんも顔には出していないがかなり疲弊している…。

だけど真優とシンはまったく堪えている様子はなかった。

シンは慣れているからだろうが何故真優は平気なんだ!?

まあ、私達は授業に遅れながらも授業に参加することが出来た…。

その後、今日の授業が終わった後はアルトリアの手伝いをして

そのまま部活に言ったがシンとアルトリアのことが気になって練習に身が入らなかった…。

シン、頼むからもう少しアルトリアの想いに気付いてやってくれ…。

このままではアルトリアが哀れだ…。

 

 

◆ Side 真優

 

 

IS学園 第3アリーナ クラス対抗戦4日前…

 

 

「今日の訓練はここまでだ」

 

「「ありがとうございました」」

 

「だが真優は専用機に関して話があるから残ってくれ」

 

「ん。わかった」

 

「それじゃあ俺は先にあがっているぜ」

 

「うん。お疲れ様」

 

「おう。お疲れ」

 

 

アルトリアがシンと喧嘩してから三日が経った。

アルトリアは未だに機嫌が悪いままで今日も特訓をすることが出来なかった。

アルトリアがなんでシンに怒っているのかわからないけど出来れば仲直りしてほしい。

アルトリアもシンも仲が良いはずなんだから。

でもアルトリアはなんで怒っているんだろう…?

 

 

「君の専用機だがクラス対抗戦の当日に到着することになっている」

 

「うーん。どういった専用機かわかる?」

 

「拡張領域と動かしやすさと防御力に特化したタイプだ」

 

「拡張領域はともかく動かしやすさと防御力の特化型か…私にピッタリだね」

 

 

そんなことを考えながら私は一夏と2人でシンとの特訓を終えて一夏が帰った後、

シンから私へあてがわれる専用機について説明を受けていた。

シンの話を聞く限りだと非常に動かしやすくて安全な専用機なんだね。

でもデュノア社と共同で開発したらしいけどなんでデュノア社と共同開発したんだろ?

 

 

「間桐グループはとある研究者を雇ったから革新的な技術を得たが

 肝心の基礎技術に関するノウハウがまったくない。

 そしてデュノア社はISに関する優れたノウハウを持っているが

 イグニッションプランに除名された影響で経営難に直面している。

 だから間桐グループとデュノア社で新型のISを共同開発しているわけだ」

 

「つまりギブアンドテイクってこと?」

 

「そういうことだ」

 

 

うーん…。

たぶんシンが言っているとある科学者は篠ノ之博士で間違いないとして

やっぱりおじさんの会社はセンサーとパイロット保護機能以外の能力の

ISの生産のノウハウがまったくない。

リリィも篠ノ之博士が持ち込んだ未完成のISを流用して作られたらしいし。

そしてデュノア社は非常に優れたノウハウを持っているけどシンが言った

イグニッションプランという欧州各国がそれぞれ開発したISを発表して

その中から選ばれたISを欧州各国に配備するISの機種を決めるらしい。

で、デュノア社とデュノア社の本社があるフランスがそのプランから除名されたせいで

デュノア社が経営難に陥っているらしい。

だからお互いに不足しているものを補うために共同でISを開発しているとか。

 

 

「真優の専用機が届いた翌週にフランスの代表候補生が一組に転入される。

 “彼ら”が使う専用機は真優の専用機のプロトタイプにあたる機体だ。

 機体のことで疑問に思ったり

 自分と似たような戦術をとる相手と訓練したりしたい場合は彼らの力を頼るといい」

 

「うん、わかった。………彼ら?」

 

 

おー。

しっかりとアフターケアもされているのか。

私の専用機と同じようなISがあるんだ…。

これなら専用機の運用もしやすくなるね。

ん?さっきシンはなんて言った?

私の聞き間違いじゃなければ聞き捨てならない単語が混じっていた気が…。

 

 

「クラス対抗戦の翌週にここへ転入されるフランスの代表候補生は双子の“兄妹”だ」

 

「え?もしかして新しい男性操縦者が見つかったの!?」

 

 

ちょっと待った!

双子の兄妹!?

いや、双子はともかく兄妹!?

ということはお兄さんの方もISに乗れるの!?

…また騒がしくなりそう。

 

 

『こんの…わからずやぁッ!!!!!』

 

「む?あそこにいるのは一夏君と…あの時の子か」

 

「どうしたんだろ?なんか嫌悪な空気を出しているけど…」

 

「なにやら揉めているようだが…」

 

 

うーん…。

この前のセシリア達といい、アルトリアとシンといい、一夏と鈴音といい

なんで最近私の身の周りではこんなにもトラブルが続発するのかな…。

平穏な学園生活プリーズ…。

 

 

◆ Side 鈴音

 

 

IS学園 第4アリーナ第1ピット クラス対抗戦4日前…

 

 

一夏と真優の特訓がどういうものなのか気になって見に来たけれどなによあれ…。

生身の人間がISを圧倒するなんて考えられない!

…いいや、あれは身体能力とかで圧倒したんじゃない。

たぶんあの人がISを身に纏った一夏と真優を圧倒していたのは戦術

兵器であるISの特性を完全に把握しきり、ISに対して最も効率のいい戦い方で

一夏と真優を翻弄しているんだわ。

現に一夏と真優はあの人に近付けてすらいない。

もっとも敵に回したくないタイプだわ。

一夏と真優も筋は悪くないし、連携もいいんだけど…

 

 

『真優!もう一度連携を仕掛けるぞ!!』

 

『わかった!』

 

 

ズガガガガガガッ!!!!

 

 

『ほう?』

 

『うおおおおおおおおおおおおお!!!!』

 

『アサルトライフルで足止めをした後アタッカーが攻撃を仕掛ける。

 連携の基礎は大分上達したようだな。だが…(スッ…』

 

 

ヒュンッ…

 

 

『な、なんだ!!?』

 

 

ズバッ!…カッ!!

 

 

『うおっ!?』

 

『まぶしいっ!?』

 

『ハイパーセンサーの精度と武器の特性をもっと知っておくべきだったな』

 

 

ドガァッ!!

 

 

『ぐはっ…』

 

『きゃっ!?』

 

 

ガンッ!!

 

 

『これで…終わりだ』

 

 

ドガァァァァァァンッ!!!

 

 

『『ウボアーッ!!?』』

 

 

相手が悪すぎたわね…。

ISには牽制程度にしかならない生身の人間には十分すぎる威力を持っている

そして連射が出来るから足を止めるのならこれ以上とない武器ね。

一夏もアタッカーとして真優の援護をしっかりと活用して相手に近づいた。

これが並みの国家代表が相手なら勝てる可能性が高い。

だけど相手はそんな次元の者じゃなかった。

ハイパーセンサーは非常に精度が良いだけに強烈な光を受けると確実に目を潰される。

そのために手動でハイパーセンサーのオンオフを切り替えられるけど

そんなことを戦場で出来るのはトップレベルの国家代表だけだ。

 

 

『くそっ…』

 

『きゅぅ~…』

 

『二人とも腕を上げたな』

 

 

…これ、あたしの立場やばくない?

真優はわからないけど一夏はISに乗ってからまだ一ヶ月も経っていない。

だけどあの動きは下手な代表候補生なんかじゃ真似できない。

まあ、元のスペックが高いのは一夏のお師匠さんのおかげなんだろうけど…。

今の私が一夏に挑んだら初見はともかく二回目以降は勝てる自信がないわ。

不幸中の幸いは一夏の得物が一夏の間合いにまったく合っていないというところね。

 

 

『今日の訓練はここまでだ』

 

『『ありがとうございました』』

 

『だが真優は専用機に関して話があるから残ってくれ』

 

『ん。わかった』

 

『それじゃあ俺は先にあがっているぜ』

 

『うん。お疲れ様』

 

『おう。お疲れ』

 

 

っと、どうやら訓練も終わったみたいね。

真優はまだ自分に配備される専用機の説明があるみたいだけど

まあ、今日の目的は一夏からあの子のことをどう思っているのか聞くことよ。

それに専用機の話は機密扱いだから聞かない方がいいだろうし…。

 

 

「一夏。お疲れ様」

 

「お、鈴か。見ていたのか?」

 

「ええ。ちょっと真優の訓練が気になっていたから。はい、スポーツドリンク」

 

「サンキュー」

 

 

一夏がシャワーを浴び終わった後を見計らってあたしはピットに入った。

もちろん人肌位に温めたスポーツドリンクも持っている。

一夏がスポーツドリンクを飲む時はいつも人肌位に温めてから飲んでいる。

その方が身体にいいらしい。あたしにはわかんないけど…。

そのスポーツドリンクを一夏に渡した後、あたしは本題を切りだす。

 

 

「ねぇ。一夏はあの箒って子が好きなんでしょ?」

 

「…ああ。この想いは絶対に変わっていない」

 

「そう。で、告白したの?」

 

「……………………………」

 

「してないのね?」

 

「……………………………ああ」

 

 

うん。どうやら一夏はあの箒って子が好きなのは変わっていないけど告白していないのね。

こいつはとんでもない鈍感だけど自分の想いに気が付かない程の鈍感じゃない。

だから一夏の想いが変わっていないことは嬉しかったけど告白していないのがむかつく。

サッサと告白しろっての。

 

 

「箒が俺のことが好きだとは限らないし…」

 

「…ハァ」

 

「それに俺には箒に愛される資格がない…」

 

 

ブチッ

 

 

今こいつはなんて言った?

自分には誰かを愛される資格がない?

ふざけるんじゃないわよ!!

少なくともあの子は一夏の事が好きだと思っている。

千冬さんも一夏を弟として愛しているし一夏のお師匠さんも愛弟子として受け入れている。

真優って子もシンって人もアルトリアって子もセシリアって子も一夏を大切に思っている。

なのにこのバカは自分が愛される資格がないと言いやがった。

 

 

「こんの…わからずやぁッ!!!!!」

 

 

ドガァッ!!!

 

 

気が付いたらあたしは一夏を全力で殴りとばしていた。

だけどさっきの言葉を撤回する気はない。

六年前に箒って子を引き留められなかった。

更にその三年後にあったモンドグロッソで攫われたせいで千冬さんは決勝戦を棄権させた。

そんな要因があるせいで今も一夏は自分が愛される資格はないと思っている。

だけどだからといってあの子の想いに背を向け続けるのは許せない。

決めた。一夏にあの子の想いを気付かせる。

それが今のあたしに出来ることだから。

 

 

◆ Side 一夏

 

 

IS学園 第1アリーナ バトルフィールド クラス対抗戦当日…

 

 

俺が鈴に思いっきり殴られてから4日が経ち、クラス対抗戦の当日になっていた。

殴られた後も俺は何度か鈴に会ったけれど『あたしに会うより訓練でもしてろ』と言われ

俺なりにIS操縦の特訓をしていた。

千冬姉からも色々と教わり、この日に向けて体調を整えたからコンディションは良い。

箒とアルトリアに見送られてバトルフィールドの中央に辿り着くとISを身に纏った鈴がいた。

 

 

「来たわね、一夏。あの時あたしに殴られた理由はわかったかしら?」

 

「…すまん。まだわかっていない」

 

「…そう。でもあたしが言ったんじゃ意味がないからね。精々答えに辿り着きなさい」

 

 

なんで俺が殴られたのか、か…

俺が鈴の機嫌を損ねるようなことを言ったのは確かだけどその言葉がわからない。

俺は事実を言っただけだ。

俺はあの時箒を引き留めることが出来なかっただけじゃない。

俺は唯一の家族である千冬姉の名誉にも泥を塗ったんだ。

そんな俺が誰かに愛される資格なんてない…。

師匠やシンさんは俺のことを認めてくれたけど俺は俺自身を認めることなんて出来ない。

 

 

「…さあ、いくわよ」

 

「…来い!!」

 

 

ブーッ!!!

 

 

試合開始のブザーが鳴る。

俺と鈴のクラス対抗戦が遂に始まった。

 

 

ガキィンッ!!

 

 

「やるわね!こっちも甲龍【シェンロン】のサポートがあるのに腕が痺れたわ」

 

「そういう鈴もそんなバカでかい青龍刀を軽々と振り回すなんてどんな訓練を受けたんだよ」

 

「まあ、今のあんた程じゃないけど血反吐を吐く位にはね」

 

「そう、かよっ!!!」

 

 

ガキィンッ!!!

 

 

強い!!

俺が全力で振り下ろした雪片二型を軽々と防がれた。

それだけじゃない。あいつは俺の動きを見切っている。

このまま接近戦を続けていても雪片二型が折れる未来しか見えない。

ならば一度距離をとるしかない。

だが唐突に嫌な予感がして右に避けた瞬間、見えない【何か】が俺のすぐ横を通り過ぎた。

 

 

「へぇ。よく避けられたわね」

 

「嫌な予感がしたからだよ。あの時以来危険察知の技術も上げてきたからな」

 

「じゃあ先に言っておくけどこの武器は殆ど無制限に撃てるわ。弾切れに期待しないことね」

 

「そいつはどうも!!」

 

 

鈴の自信から見るに見えない砲弾は弾と発射角度の制限が全くないのだろう。

このままでは遠距離の武装がない白式ではジリ貧になって潰されるのがオチだ。

おそらくわざと隙を作って俺の攻撃を誘ってくるだろう。

鈴はそういう奴だ。

なら…乗ってやろうじゃないか

俺はそんな未来を望んでいるし鈴もそんなつもりは更々ないだろう。

 

 

「ホラホラ!避けてばっかじゃあたしに勝てないわよ!!」

 

 

ん?

目に見えない砲撃は発射までの感覚にラグがある?

それも実弾で連射するよりも連射の感覚が長い。

それに弾速も実弾やレーザーよりも遥かに遅い。

どんなに優れたものでも必ず弱点がある。

だから俺はその弱点を突く!!

 

 

ゴォッ!!!

 

 

「んなぁっ!!?」

 

「叩き斬る!!!」

 

 

ズバァッ!!!

 

 

「やっば!!」

 

 

鈴が使っている目に見えない砲撃の弱点は弾速の遅さと…

威力を上げれば連射が利かないこと!!

さっきの横薙ぎで鈴のISのアンロック・ユニットを破壊した。

あの見えない砲撃は両肩のアンロック・ユニットから放たれていた。

だったらそれを破壊すればいい。

これであの見えない砲撃は使えないだろ!!

 

 

「やるわね…。まさかこんなにも早く龍砲の弱点を暴くなんて」

 

「特訓を続けているわけじゃないからな!」

 

「そうね…。こっからは完全な白兵戦よ。覚悟はできているわよね?」

 

「もちろんだ。さあ、勝負はここから…」

 

 

鈴の遠距離攻撃の手段を潰し、接近戦で勝負を決めようとし、俺が雪片二型を構えて

鈴に突っ込もうとした時…

とてつもなく嫌な予感がして急ブレーキをかけた。

そして…

 

 

ズガァンッ!!!

 

 

「うおっ!?」

 

「きゃっ!?」

 

 

アリーナのバリアを光の柱が貫通し、俺と鈴の間に降り注いだ。

それも一本じゃない、全部で八本だ。

それも一発でも受ければ即、ISの展開が解除される程の…。

俺と鈴がそんな砲撃を行った奴の正体を見た。

 

 

「な、なによ。あれ…」

 

「でかい…」

 

『………………』

 

 

それは、鋼鉄の異形。

人の形では無い、別の生き物をかたどったバケモノ。

本来この世界存在しないはずの異物。

あれは、この世界にあってはならないものだ。

いつの間にか逃げ道を塞がれている。

その鋼鉄の異形のバケモノが俺達を見ている。

…戦わなくてはいけない。そうしなければ、俺達が生きる明日はない。

この日、俺は平和な世界を破壊し、俺達の世界を侵食する者と遭遇した。

 

 

 




どうも、明日香です。
今回はクラス対抗戦と謎の襲撃者の出現までの話になりました。
本作はISのとあるキャラクターの設定が大きく変わります。
そして、次回は主人公のISが登場します。

感想をお待ちしています。




※設定に関するコメントは本作の核心に迫る内容ばかりですので出来る限りお控えくださいますようよろしくお願いします。

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