前回二話くらい先に修行回を入れると言いましたが、今回入れることにしました。速攻で終わりますけど。
~あらすじ~
本に入った悟空、ベジータ、悟天、トランクス。出るには勇者のベジータが魔王の悟空を倒さなくてはならない!
そして入ったまま出てないトランクスと悟天を心配してヤムチャも入った。プーアルは置いてきた。この話にはついていけそうにないからな。
「むう……。全く、困ったものじゃのう」
そこは勇者たちの出発した王国、ルドベキア王国の王が住まう城の一室。でも、困っているのは国王ではありません。王に仕える年老いた魔女です。
この魔女はルドベキア王国に存在する魔法全てを使うことができるので、王国中の魔法使いから尊敬されていました。
「わしも年老いた。だから後世の平和のために、わしの知る魔法を全てこの本に書いたというのに………」
そう言って銀で縁取りされた分厚い本、魔道書を見てため息をつきました。
「各地の貴族がこの本を巡って奪い合うのはのう……」
その時、なんと短剣を持った男二人が部屋に入ってきたではありませんか!
「その魔道書、頂戴する!!」
そう言って、魔女に襲いかかってきました。
どう見ても穏やかな雰囲気ではありません。しかし、
「やれやれ、困ったもんじゃのう」
魔女は落ち着き払っていました。
「ひやああああああああ!」
悲鳴をあげたのは魔女ではありません。二人の男でした。男たちは見えない何かに阻まれ、そのまま気を失ってしまいました。
「やれやれ、これで今日は三回目。電流結界に触れただけで気を失ってしまうとは、近頃の若い者は情けないのう。」
自分の力で本を狙うものを倒せるとはいえ、魔女はもううんざりでした。
「おお、そうじゃ!
「勇者の冒険」より抜粋
「魔閃光!」
そう叫んで岩を壊す。悟飯がピッコロから直々に教えてもらった技の一つだ。しかし魔閃光を放ったのは悟飯でもピッコロでもない。なんとビーデルだ。
「ビーデルさん、いい感じですね!もう魔閃光はバッチリですよ!!」
「まあね。ありがとう」
魔人ブウとの戦いで、ミスターサタン以外の地球人は全員死んだ。そのことで無力さを思い知ったビーデルは、舞空術を教えてくれた悟飯に修行をつけてもらうことにしたのだった。
「それにしても、やっぱりビーデルさんは才能ありますよ!魔閃光の他に、舞空術はもちろん太陽拳やかめはめ波もできるようになったんですから!」
「やめてよ、そんなお世辞」
嬉しそうな悟飯とは裏腹に、ビーデルは浮かない顔だ。
「そろそろ日も暮れますし、続きは明日にしましょう。明日は少し難しいけど、魔貫光殺砲か気円斬を教えますよ!」
「………ありがとう」
ビーデルはそう言って、帰るために悟飯とすれ違う。
「………後もう少しで辞めるから」
「っ?!」
小さな声でビーデルが言った言葉に、悟飯は息を呑む。何を言っているのか分からなかった。
「じゃあね、また明日!」
「ビーデルさんっ!」
悲しそうに、そしてわざと明るく言ったビーデルの別れの言葉に、悟飯は何も言うことができなかった。
舞空術で飛んで帰っていったビーデルの背中を見つめながら、悟飯はつぶやく。
「………辞めるなんて、そんな………」
悟飯にはビーデルが何をやめようとしているのかわからない。
「辞めるって……まさか修行を?!」
自分で言って気づく。
舞空術を教えていたような始めの頃は、誰よりも強くなりたいと思う人だった。事実、ビーデルは地球人ということなら、上から数えたほうが早いくらいの実力で。けど、魔人ブウの戦いや悟飯が修行を付けているうちに、分かってしまったのだ。
どうあがいても、どんなに努力しても越えられない壁があることに。
「………」
いや、悟飯も心のどこかではわかっていたことだった。
武道の強さは、修行で身につく。けどそれ以上に自らの持つ才能によって左右される。
修行していた期間と実戦経験の豊富なクリリンと、大きな潜在能力を秘めていた悟飯との差がそのことを如実に表している。
悟飯だってわかっていた。人の幸せは武道で強くなることだけではないと。
美人な奥さんをもち、子供も生まれて『最高に幸せだ』と言っているクリリンを見ればわかることだった。
ビーデルは格闘チャンピオン娘であることを差し引いても、根っからの武道家だ。悟空やベジータと同じく、強くなりたい、強い奴と戦ってみたいと願う人だ。だからこそ悟飯を『天下一武道会に出ないのならグレートサイヤマンの正体をばらす』と脅したのだ。
それは悟飯、というかビーデルを知る者ならすぐに気づくこと。
「僕は………!」
ビーデルは悟飯の言うとおり才能がある。
けれどもそれはあくまでも地球人という枠組み内での話。そう考えるとビーデルはどんなに努力しても強くなれないことは明白だった。
「………はは」
そんな事実に、悟飯は自傷気味に笑う。
「弱くなりたいよ。……せめてビーデルさんと競い合うくらいには」
そんな、
そして、悟空とベジータ、悟天とトランクスのような関係を羨ましいとも思ってしまう。
「僕がもっと弱ければビーデルさんはあんな顔をしなかったのに………」
そこまで考えてから、悟飯はその考えを追い出すように頭を振る。
「いけないよね、そんな風に思っちゃあ。僕のおかげで地球は救われたんだから」
セルとの対決を思いだし、自分に言い聞かせるように言う。
「………分かっているんだ」
未来から来たトランクスの住む世界では、悟飯は人造人間よりも弱かったから死んだのだ。
「分かっているけど!」
納得できなかった。大して強さを求めていない悟飯が強く、強さを求めて修行するビーデルが弱いという事実に。同時に、悟飯は自分がビーデルと出会わない方が武道家としては幸せではないのかとも思ってしまった。
ビーデルの、さり際の悲しそうな顔を思い出してまたつぶやく。
「僕の好きになったビーデルさんはあんなじゃないのに……」
悟飯は、思わず自分の言った言葉に赤面する。
「だ、誰にも聞かれてないよね……?」
人影はない。聞かれなかったようだ。
「シャプナーやイレーザに聞かれてたら、茶化されただろうな……」
悟飯はクラスメイトと自分の言った言葉を思い出す。恥ずかしくなり、自分でも顔が赤くなるのがわかる。
「と、とりあえず僕も家に帰ろう。西の都に買い物に行った父さんと悟天もそろそろ帰ってきてるとこだと思うし」
そんなことを思いながら、悟飯は帰路についた。
一方ビーデルは、
「早く修行、辞めないと」
空を飛びながら、そんなことを思っていた。
「強くなりたかったなあ………」
そう言って、唇をきつく噛む。涙が溢れないように。
「なんで悟飯くんたちはあんなに………」
強いのだろう。そんな言葉を言えないほど、理不尽なまでの実力差があった。
そう、悟飯が自分の強さに悩んでいるのと同じように、ビーデルもまた悩んでいたのだ。
「さっさと修行辞めないと悟飯くんの修行の邪魔になるのに………」
レベルの違う者同士では修行にならない。ビーデルも伊達に格闘チャンピオンの娘をやっていない。だからそんなことは重々承知の上だった。
「いっそ悟飯くんと出会わなければ………ううん、そんなのただの逆恨みよね」
ビーデルは思う。今までになかった『気』の力。それはビーデルも含め武道家にとってはなくてはならない力。それと同時に、嫌でも自分と相手との実力もわかってしまう残酷な力だ。
きっと近い将来、ビーデルはいずれサタンに代わる格闘チャンピオンになっていただろう。いや、『格闘技』というスポーツの第一線で活躍している今でもその可能性は十分にある。しかし悟飯の強さを見た今では、ビーデルはたとえそうなったとしてもチャンピオンなど名乗れなかった。
「舞空術とか魔貫光殺砲とか、教えてもらって良かったと思うし!」
そんな風にわざと明るく言う。
「………でも」
ビーデルは自分でもわかっていた。どんなに努力しても、その強さには限界があることに。決して悟飯たちサイヤ人と肩を並べることは不可能だということに!
「誰よりも強く、なりたかったなあ………」
ビーデルは、自分でも知らないうちに涙を流していた。
言えないよ。この悟飯に口が裂けても戦ってくれなんて言えないよ!というかなんで武道家を敵に回すような発言をしているのでしょうか。ちょっと話を聞いてみましょう!
悟飯「あの、これはですね・・・」
未来悟飯「ちょっといいかな?」
悟飯「あ、あなたは!」
未来「俺のいた世界では人造人間にたくさんの人たちが殺されたんだ。仲間だけじゃない、他の人たちも大勢ね。俺はそんな人造人間たちを倒すために十歳にもなっていない頃から十年以上も修行したんだ。それなのに弱くなりたいとはいったいどういうことかな?」
悟飯「そ、それはその・・・」
未来「言い訳すな!!」
悟飯「う、わあああああああああああああああああああああああああ!!!」
・・・え~、今未来悟飯がブウ編後の悟飯を一方的にボコボコにするというわけのわからないことが起きています。もうどこからどんな文句が来ても何も反論ができません。
と、いうわけで今回は修行回でした。(ベジータが修行するとはいってない)
※あとがきと本編は一切関係ありません