バカとダ・カーポと桜色の学園生活   作:慈信

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第八十六話

 時刻は夜明け前……。

 

 まだ日も登らない時間から僕らは風見学園の屋上を陣取っていた。

 

 僕らはもう逃げる算段なんてない。故に僕らは見つかりやすいここに立っていた。

 

 ここならリオたちはすぐに見つけてくれるだろう。僕らを見つけたリオがどんな態度を取るにせよ、まずはムラサキさんの意思を彼に伝えなければいけない。

 

 決意を心に秘めて佇む仲間たちとその後ろでバタバタと旗がはためく。

 

「……って、気になったんだけど杉並君。この旗って、一体?」

 

「ふふっ、こんな日が来るかと思ってな。用意しておいたのだ」

 

 しかし、この無駄に装飾の施されたこれなら、遠くからでも一目で僕らがここにいる

 ことを知らせてくれるだろう。

 

「あなた、バカですわね?」

 

「え? いいじゃん、格好よくて」

 

「更にバカがもうひとり」

 

 渉の発言に、杏ちゃんが辛辣な言葉を投げた。

 

「そう褒めるな。一応、我々の意思を示すためには、これくらい派手な方がわかりやすくていいだろう? 集え、精鋭たち! 希望の旗印の下へ! ……てな」

 

 杉並君が得意げに旗を掲げた。

 

 まあ、確かに僕らに逃走する手段がもうないからいっそ特攻しようとアイディアを出したのは僕だし。

 

 だからこうしてわざわざ目立つものを用意してくれたのはありがたい。

 

 まあ、『杉並見参!』なんてのがなければ完璧なんだけど。

 

「ムラサキさんのお兄さん……来るかな?」

 

「来てくれなきゃ、ここに来た意味がないもんね」

 

 小恋ちゃんやななかちゃんの不安ももっともだ。もしリオが多数のてしたを連れて強硬手段に出たらこの作戦も台無しになってしまう。

 

「まあ、出てこなかったら、引きずり出すまでだ」

 

 雄二がなんとも物騒なことを言ってくれる。

 

「ま、そういうこと♪」

 

 僕たちはそのままくるべき時を待ち続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は日の出……。同時に目的の人物たちが現れた。

 

「随分、手間をかけさせてくれるな」

 

 屋上に来たリオはジェイミーさんとフローラさん、そして何人かの男たちを連れてきた。

 

「大人しく私と共に帰れ……と言ったところで、従うつもりはないのだな?」

 

「申し訳ありません、兄様。その命令には……従えません」

 

「我が妹ながら強情だな。いや、我が妹ゆえ……と言った方がいいのかな」

 

「そうですね。きっと、兄様に似たのですわ」

 

 2人の間で嵐が巻き怒ってるように見える。一食触発、ちょっとした刺激で爆発してしまいそうだ。

 

「そもそも何故なのです。何故急に帰国しろなどと──」

 

「伝えたはずだ。この地はお前には相応しくないと」

 

「それを決めるのは……見極めるのは私です。そして私は、ここは素晴らしい場所だと、そう感じておりますわ」

 

「ふん……愚かな」

 

 相変わらず、リオは見下すかのように視線をムラサキさんに向ける。

 

「お前の判断など、あてにしてないし、求めてもいない。お前は私の言葉に従っていればいいのだ」

 

「ふざけんな……」

 

 リオのふざけた物言いについ口を挟んでしまった。

 

「無関係の者が口を挟んでほしくないものだな」

 

「もう無関係なんかじゃない。ムラサキさんは……僕たちにとって、大事な仲間なんだ!お前の腐った価値観でムラサキさんの行動をアレコレ決めつけんな!」

 

「そうそう……ムラサキは俺たちの仲間だ。お前の勝手にはさせねえっての」

 

「無理やり連れてくっていうんなら、俺たちが相手だ」

 

「そうか。手荒な真似はしたくなかったのだがな──」

 

 リオの言葉に応えるように、後ろに控えていたフローラさんやジェイミーさん、そして男たちが足を踏み出す。

 

「よく言うぜ。最初からそういう心算だったんだろうに」

 

「言っとくけど、僕たちだってそう易々とムラサキさんを渡すつもりはないよ」

 

「…………」

 

 しばらく睨み合いが続くと、不意にリオがフッと笑った。

 

「なるほどな……」

 

 それから、リオの口から信じられない言葉が吐き出された。

 

「ひとつ、勝負(ゲーム)をしてみないか?」

 

 リオの言葉に、全員が『ゲーム?』と、言いたげな表情を浮かべながら顔を合わせる。

 

「そうだ、ゲームだ。このまま無理やりエリカを連れ帰ったところで、君たちは納得できまい?」

 

「当たり前だ」

 

 ムラサキさんの実家が何処にあるのかは知らないが、絶対に見つけ出して連れ出すつもりだ。

 

「私だって、納得できませんわ」

 

「だから君たちにチャンスをあげよう。我々に勝つチャンスをね」

 

「それで互いに納得できるんなら願ったりだが……ルールはどう決める?」

 

 ここで雄二が前に出てリオに問う。

 

 この手の交渉は試召戦争で場数を踏んできた雄二に任せた方がいいだろう。

 

「そうだな……これからしばしの猶予を与える。その間にこの学園のどこにでも、トラップを仕掛けるなり、エリカを匿うなり、好きにすればいい」

 

「準備期間を与えてくれるたぁ、随分と余裕じゃねえか」

 

 渉が気に入らないといった風に言う。

 

「これくらいでなければフェアとは言えまい?」

 

「で、いざ勝負が始まった後で、勝利条件はどうする?」

 

「日没まで我々の攻撃を退くことができ、エリカを守り通せたら君たちの勝ち……それでどうだ?」

 

「……いいだろう。その条件で呑もう」

 

「君たちが勝ったら、エリカの好きにさせよう。ここに残り、学びたいというのなら……好きなだけ滞在できるよう手配しよう。だが……君たちが負けた時は、覚悟してもらうぞ」

 

 威圧的な視線を向けてくる。その手のものに耐性のない小恋ちゃんは小さな悲鳴を漏らした。

 

「……わかった」

 

 雄二が勝負に乗った。どの道、僕らにはこれ以上逃走する手段もロクに話し合うこともできないんだ。

 

 だったら、この勝負に勝ってしのごの言わせないようにするしかない。

 

「こちらとしても、君たちには我々の力というものを知ってもらった方が、素直にエリカを渡してもらえるだろうからね」

 

「そんな簡単に行くとは思わないでよね」

 

「では、学園関係者には私から話を通しておこう。無関係な者を巻き込みたくないからね」

 

 事を進めてくれるのはありがたいけど、誰も礼なんて言わなかった。

 

「では、ゲームの開始時刻は12:00(ひとふたまるまる)──学園のチャイムが合図でよろしいですね?」

 

「オッケーだ」

 

「では……精々君たちの本気とやらを見せてもらおう」

 

 リオは余裕の笑みを崩さず、部下共々屋上を後にした。

 

「……これで、よかったの?」

 

 ムラサキさんがすまなそうに聞いてきた。

 

「どうだろう? だけど、あそこでリオがゲームのことを提案してくれなかったらどうなってたか……でも、元々無理やりにでも君を連れ戻すつもりだったんだから、渡りに船だね」

 

「そうそう。結局のところ、勝てばいいんでしょ勝てば!」

 

「お前、そう簡単にな……」

 

「妙な展開だが、少なくとも明確な勝利条件が示された分、希望はあるだろう」

 

 見通しもなくただ逃げ続けたり、こちらの意見に耳を傾けない相手をどうこう説得するよりかは確実性がある。

 

「さて、そうとなれば早速準備に取り掛かろうではないか」

 

 杉並君が不敵な笑みを浮かべる。

 

司令部(ヘッドクォーター)はここ、屋上でいいな?」

 

「そうね。出入り口はひとつだけだから護るのに向いているわ」

 

「バリケードにトラップ……後、何か武器がいるな」

 

「……スタンガンは常備」

 

「だから、何で霧島さんはそんな物騒なものを持ってるんだ?」

 

「……俺も持ってる」

 

「土屋もか!?」

 

「もちろん、俺たちもな」

 

「文月学園で持ってたものがまだ残ってたから」

 

「何でお前らは学生の身でそんなもんを持ってんだ……」

 

 義之が呆れた表情で見る。

 

「まあ、今は使えるものがあるに越したことはないじゃん! 他には……運動部の何処かから適当なものも拝借して、バリケードは……椅子だの机だの、使えそうなもんはいっぱいあるぜ」

 

「道具が足りなければ、地下アジトから持ってくるがいい。まあ、残ってればの話だが」

 

 まあ、ほとんどがリオにおさえられてるが、武器やその他に使えそうな道具類の全部を

 おさえられるとは思えないけどね。

 

「トラップなら任せて。本格的なものからえげつないものまで、なんでも用意してあげるから」

 

 サディスティックな笑みを浮かべる杏ちゃんがとても怖い。

 

「では、トラップの案は雪村に任せるにして──板橋、坂本、霧島は雪村のサブについてやれ。力仕事と道具の調達、トラップの配置云々は任せた」

 

「OK! 学園中から道具をかき集めてきてやるよ」

 

「精々楽しみにしてろ」

 

 雄二が嫌な笑みを浮かべている。こうなった時の雄二は本当に外道なことをする。

 

「じゃあ、残りはバリケード作りか」

 

「……俺は通信機器の設置と監視カメラの設置を」

 

「オッケー。ムッツリーニはカメラと通信機……残った僕らはバリケードで」

 

「「「ラジャー」」」

 

「じゃが、バリケードは良いとして……迎撃時はどうするつもりじゃ?」

 

 確かに、どれだけの人数を投入するのかは知らないけど、設置型のトラップだけで撃退できるものか。

 

 僕らの手持ちでも、何人も相手にできるわけじゃないし。

 

「そうだな……効率を考えれば、ツーマンセルが望ましいな」

 

「組み合わせはどうすんだ? やっぱ男女ペアか?」

 

「となると……まずムラサキは屋上に置いて、他に司令塔を置く必要があるな」

 

「ムラサキだけじゃダメか?」

 

「こいつはまだこの学園の地形を理解できてねえ。かくいう俺もまだ大して知らねえ。できればこの学園の隅から隅まで理解でき、状況を把握しながら指示を飛ばせる奴が望ましい」

 

「そんな条件を揃えてる奴となると……杉並、頼めるか?」

 

「同士桜内の頼みとあらば喜んで。では、ヘッドクォーターには僭越ながら、この俺が務めさせていただく」

 

「ムラサキと杉並はここに残るにして、後の組み合わせだが……」

 

 雄二がしばらく考えた結果、僕とななかちゃん、義之と小恋ちゃん、茜ちゃんと秀吉、杏ちゃんと渉、雄二と霧島さんという風に決まった。

 

「では、チームも決まったところで、急いで作業にかかるとしよう。作戦会議は準備を終えてからだ」

 

「よっしゃ! 一丁張り切っていきますか!」

 

 それからあちこちの教室や部室にまわり、武器やバリケードに使えそうな道具を片っ端から拝借してそれらを正面玄関や校舎の裏手、護りづらそうな1階の窓際などをバリケードで覆い、1階からの階段を防ぐ。

 

 2階以降は窓から侵入されないようちょっとした強化と、屋上へ続く階段へ近づけさせないためのバリケードを築く。

 

 更にそれぞれの出入り口付近や階段付近にはムッツリーニの監視カメラを。廊下や階段などの主な移動通路には杏ちゃん及び雄二考案のトラップを仕掛けていく。

 

 着々と準備を整え、いよいよ決戦の時がやってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間は12時ちょうど。ゲーム開始の合図を知らせる鐘の音が校舎中に鳴り響く。

 

「いよいよか……」

 

 窓から外を見ると、グラウンドの隅に天幕のようなものが設営させていた。

 

 多分あそこにはリオや付き人のみんながいるんだろう。

 

『吉井よ、聞こえるか?』

 

 ムッツリーニから渡されたインカム型の通信機から杉並の声が響く。

 

「感度良好。それで、敵の動向は?」

 

『今のところ様子見のようだ。斥候と思しき分隊が2つ。いや、3つか? こちらに接近しているようだ』

 

「3隊か……随分とまぁ」

 

 こちらは2人1組の5分隊……向こうの隊がどれくらいあるのか。

 

『いや、うちひとつは気にしなくていい。体育館に向かっている』

 

 体育館か……あそこは誰も守っていないけど、誰かが行った時のためにトラップを仕掛けてる筈。

 

 ──ドオオオオォォォォン!  ギャアアアアァァァァ!!

 

 考えた傍から体育館の方で何かの破壊音と悲鳴が聞こえた。

 

『ちゃんと作動したみたいね。大丈夫、怪我はしてないと思うから』

 

 通信機から杏ちゃんの声が聞こえた。

 

 けど、本当に安全なものにしてくれたのだろうか。破壊音と一緒に悲鳴が聞こえたんだけれど。

 

「えっと……残りの2隊は?」

 

『ひとつは正面──板橋の守備範囲だな。もうひとつは裏手だ。向こうには……桜内たちの範囲だな。板橋の方には木下たちを、桜内の方には坂本たちを向かわせる』

 

「僕らは?」

 

『様子を見て漏れ出そうなところを援護しろ』

 

「了解」

 

 僕は一旦通信を切ってななかちゃんの方へ向き直る。

 

「とりあえず、5隊のうち1隊はトラップで潰れたから後4隊。義之たちの方は雄二も加わったから心配ないだろうし、僕たちは渉たちの所へ行こうか」

 

「了解しました♪」

 

 僕らは渉の方へ援護に向かった。

 

 渉たちの護る正面玄関に駆けつけると、敵がバリケードを突破しようと躍起になってる場面に出くわした。

 

「秀吉、状況は?」

 

「今のところ悪くはなさそうじゃ」

 

「なんてったって、これだけのバリケードだしな」

 

 渉が自慢げに指したバリケードはかなりの力作らしく、斥候だけでは簡単に突破できるつくりではないだろう。

 

「まあ、放っておけば時間はかかるだろうが、確実に突破されるだろうな」

 

「だからといって、こっちから出て応戦するのもあれだしね。というわけでななかちゃん」

 

「オッケー♪」

 

「ねえねえ、白河さん。そのバケツなに?」

 

「水だよ」

 

「いや、そりゃあ見ればわかるけどよ……その水を何に使うんだよ?」

 

「そりゃあ、こうやって……えい!」

 

 ななかちゃんが力いっぱいバケツを振るうと、中に入っていた大量の水が斥候にかかる。

 

 斥候は突然の水しぶきに狼狽するが、すぐにバリケード破りを続行する。だが、それもここまでだ。

 

「明久……お主、まさか……」

 

 秀吉は僕の狙いに気づいたようだ。ふふ……そういうことさ。さて──

 

「いっぺん、地獄を見てこいやぁ!」

 

 ──バリバリバリバリ!

 

『『『ギャアアアアァァァァ!!』』』

 

 僕は懐から出したスタンガンを高出力でバリケードに差すと、机の金属部分から濡れた部分へ、

 そしてずぶ濡れになった斥候へと伝導し、感電する。

 

「よし、これでしばらくは保つでしょう」

 

「お主も容赦ないのう……」

 

「いや、ていうかあれ生きてるのか?」

 

「大丈夫だよ。人間の耐電性だって割とバカにできたもんじゃないから」

 

「いや、そういう問題?」

 

 渉が呆れた目をするが、結果よければ全てよし。

 

 これでムラサキさんが初音島に残ってくれるのなら、手段を選ばないさ。

 

「さて、こちら正面玄関の雪村。斥候は撃退したわ」

 

『了解だ。月島、そっちはどうだ?』

 

『こちら月島です。こっちも坂本君たちの応援でなんとかなったよ』

 

『なるほど。緒戦はこちらの勝ちというわけだな』

 

 杏ちゃんがインカムで通信すると、別の方でも斥候の撃退に成功したとの報せが入った。

 

「なら、僕らは持ち場に戻って再度トラップ及び装備のチェックだ」

 

「ラジャー♪」

 

 僕とななかちゃん、秀吉と茜ちゃんは最初の待機場所に戻ってゲームを続行する。

 

 勝負はまだこれからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──で、今度はこいつを使って……だからななかちゃんは僕が合図をしたら──」

 

「うん。そっちも任せて♪」

 

「よし」

 

 ゲーム開始からそれなりに時間も経っていき、窓から外を眺めてみる。

 

 正面玄関ではバリケードを突破しようと男たちが奮闘しているようだが、やはりそう簡単に突破できるものではないようだ。

 

 そこから少し離れて校舎裏の方では進入路を探す斥候の姿が見える。雄二たちが撃退した場所からはもう無理だと踏んだからか、別の場所を探しているようだが、奴がそう簡単に雑魚を入れるとは思えないので大丈夫だろう。

 

 緒戦は大金星と思っていいだろうけど、まだ日は高いから油断できない。

 

 そう思ってると、インカムから通信が入る。

 

『うわ、こいつら結構マジだぞ』

 

「渉、どうしたの!?」

 

『正面のバリケード……もう長くは保ちそうにないわ』

 

『はうぅ……こっちもまずいよぉ。人が多すぎる~』

 

「小恋!」

 

『こちら秀吉! 1階で閉じたシャッターが破られかけておる!』

 

『くそ! こっちも手が足りねえ! このままじゃ、あと数分で突破されるぞ!』

 

「秀吉、雄二……杉並君! どうすれば!?」

 

『ふむ……どちらも同じレベルでやばいな』

 

『ああっ、だめっ、は、入ってきちゃうよぉっ。いやぁぁぁぁん!』

 

『……茜、エロい声を出さないで。渉が過剰反応して使い物にならなくなるから』

 

 なんだか、インカムの向こうで渉が鼻血出して天国へ行きかけてる姿が目に浮かぶ。

 

『だってぇ、あ、だめ、入られちゃうぅ!』

 

 ……あの、流石にこれは僕でも……。

 

「明久君……変な想像してないよね?」

 

「いえ! 全く! これっぽっちも!」

 

 正気を保たないと、僕まで地獄を見る羽目になりそうだ。

 

『……花咲、いい加減にしろ。板橋が戦闘不能に陥ってしまう』

 

「『ムッツリーニが反応しないだとぉ!?』」

 

 ムッツリーニが反応しないことに僕と雄二は驚きの声をあげる。

 

 一体どうしたことだろうか。ムッツリ商会を閉店したとは言ってたが、まさか

 この手のことにすら反応しなくなったというのか!?

 

「って、今はそんな話をしてる場合じゃない! 杉並君、僕らはどうすればいい!?」

 

『とりあえず、2階に迎え。お前たちは桜内たちの援護だ!』

 

「了解!」

 

『ああ、ダメぇ! 入られちゃった~!』

 

『悪い! 敵の侵入を許した!』

 

 いざ援護に行こうとしたところでインカムから小恋ちゃんと義之からの悪い報告が届いてしまった。

 

『まずいな。板橋、雪村、木下に花咲。すぐに2階に撤退だ。このままでは挟み撃ちにあうぞ』

 

『了解。2階に向かうわ』

 

『こちらも承知した』

 

『吉井たちも聞こえたな? 桜内たちの援護は中止。雪村たちと合流し、階段の死守に当たれ』

 

「了解!』

 

 杉並君の指示を受け、僕らはすぐに階段に向かった。

 

 どうやら、ステージ2の会幕、といったところか……。


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