バカとダ・カーポと桜色の学園生活   作:慈信

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第五十四話

 スキー場での生徒会合宿1日目も終盤になったこの夜。

 

 午後からスキー目いっぱい楽しんでからの夕食も中々美味しかったなぁ。

 

 しかし、ムラサキさんは慣れないスポーツをやったからか、筋肉痛でもう仕草がお年寄りっぽくなっちゃって見てるこっちがかなり心配したくなるくらいだった。

 

 そして食事が済んでからすぐにペンションの食堂を借りて合宿の目的でもあった生徒会の会議が開かれた。

 

 まあ、僕達はもうあまり関係ないので一番端の席に義之と由夢ちゃんとで座らせてもらってる。

 

「じゃ、順番にこのプリントを回して」

 

 高坂さんが議題内容の書かれたプリントを回していく。

 

「そこに書いてある通り、今回の議題は本年度の反省と来年3月の卒業パーティーにおける運営、それと非公式新聞部への対策です」

 

 そういえば、新学期になれば今度はそっちに向けてうちのクラスもまた何か出し物考えるようになるんだったな。

 

 それに、今度は僕達の学年が付属を卒業するわけだから今年の付属3年のメンバーの事を考えると今まで以上の盛り上がりと非公式新聞部によるトラブルが予想される。

 

 元々僕達の周囲のメンバーはお祭り騒ぎが好きだから杉並君が筆頭になって予想外の事態を起こすことは容易に想像できる。

 

「前回のクリパの反省点と、今後も活かすべき点をレクチャーしていきたいと思います。まず、反省点ですが……」

 

 それから音姫さんが反省点を述べていく。

 

 前のクリパで発生した事件と事故の数々。更にその原因と対抗策、当時に使用した作戦による成果や反省点などなど、数々の言葉の羅列が続いていく。

 

 いやはや、普段はのほほんとしているというか、のんびりしているからあまり考えてなかったけど、こうして見るとやはり音姫さんや高坂さんの存在感がすごい。

 

 生徒会はこの2人を中心にしているからこそあれだけ行動できるわけだ。

 

 ただ、それが同時に弱点を晒している状態にあってあの2人を抑えれば簡単に生徒会は非公式新聞部を前に敗北するだろう。

 

 音姫さんなんか、義之を餌にすれば簡単に釣られそうだし。高坂さんは……闘争心が激しいところがあるから、ちょっと罠の難易度を上げればあえてそこを通るという習性がありそうだからそれでおびき出せそうな気がする。

 

 こうなるとムラサキさんがいるとはいえ、戦力不足な感が否めないよね。

 

「んで、非公式新聞部のアジトは、今抑えているのがこの箇所と、この箇所。でも、ここを使う可能性はもう低いわね。今後はどこに奴らが新しくアジトを作るか、目を光らせておく必要があるわね」

 

「今のところ、怪しいのはこの箇所と、3階のこの部分で……」

 

 今あの2人がとんでもない予想をしていたけど、本当にあれ以上のアジトを作るつもりなのだろうか?

 

 色々あって、大半のアジトは朧げだけど覚えているからそこは簡単に抑えられるけど、僕達の知らないアジトだってまだ結構あるはず。

 

 それでもまだ作ろうとする気があるのならもう捕まえられるかどうかわかったもんじゃない。思うんだけど、杉並君はあのアジトを作る予算をどこから収入してくるのか。

 

 最近じゃムッツリーニがムッツリ商会を開いて商売していたからそれなりに資金は集まったんだろうけどさ。その前はどうしてたんだろう?

 

「……ま、そんなわけで、今後また弟君や吉井の協力が必要になるかも」

 

「「へ?」」

 

 あ、途中から聞いてなかった。でも、僕達の協力が必要になるかもっていうから、また僕達が生徒会に関わることになるかもしれない。

 

「まあ、無理強いはしないけど、杉並のことで何かわかったら情報よろしく」

 

 よく言うよ。クリパの時なんか、半ば脅迫みたいな感じだったのに。今回のだってさぁ。

 

「なぁに、吉井? 何か言いたげだけど?」

 

「いえ、なんでもありません」

 

 だから、その手をポキポキ鳴らしながら迫るのやめてくれません?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は~、やっと終わったなぁ」

 

 会議の後、僕は喉が渇いたので自販機でジュースを買って部屋へ戻っていく途中だ。

 

 朝早く出発し、着いた途端にスキー三昧。そして夜は生徒会会議と来たもんだ。文月学園じゃ考えられない冬休みだよ。

 

「さて、早く戻って風呂も済ませて寝るか」

 

 久しぶりのスキーだからちょっと疲れちゃったし。

 

「こえええぇぇぇぇぇ!」

 

「な、何だ!?」

 

 廊下に義之の悲鳴が木霊した。僕はすぐに駆け出して義之のいる部屋へと向かった。

 

 ちなみに言っておくと、僕は義之と相部屋だったりする。にしても一体なにがあったんだろうか?

 

 僕は曲がり角をまがって僕と義之が寝過ごす予定の部屋へとたどり着くと、

 

「あたしの胸に断りなく触るたぁ、いい度胸だああぁぁぁぁ────っ!」

 

「ぐああぁぁぁぁ!?」

 

「…………何やってるのさ? 義之」

 

 たどり着けば何故か義之が高坂さんの胸にダイブして、その高坂さんに殴り飛ばされて部屋中転がりまわっていた。

 

「お、弟君! エッチなことは駄目でしょ!」

 

「ご、誤解だああぁぁぁぁ!」

 

「えっとさ……一体、何がどうなってるの?」

 

「あ、明久さん」

 

「明久! 生霊! マジもんの心霊現象だ!」

 

「はい?」

 

 義之が随分慌てた様子で僕にいうけど、意味がさっぱり伝わらない。

 

 何かとんでもないものを見たか聞いたかしたかっていうのはわかったけど。

 

「ところで、高坂さん達はどうしたんです? それに、その大量の荷物みたいなの」

 

「ん? ああ、決まってるでしょ? 遊びに来た」

 

 そう言って高坂さんは部屋に入って僕が使用するベッドの上にお菓子を広げていった。

 

「えっと? というか、ここ男子部屋なんですけど?」

 

「堅いこと言わないの。流石に四六時中ずっと重い空気なんてないから、少しくらいは楽しみなって!」

 

 まあ、楽しむというのは大切なことなんだろうけど。

 

「ところでまゆきさん。そのダンボールは何なんですか?」

 

「お? よくぞ聞いてくれました、弟君」

 

 高坂さんがニヤケ顔で笑った。そこまで付き合い長いってわけじゃないけど、こういう顔した時って、大概面倒なことに巻き込まれる時の前兆なんだよね。

 

 一体何を始める気なのだろうか?

 

「じゃっじゃじゃーん! これよ、これっ!」

 

 高坂さんが取り出したのは、ボードゲームのようなものだった。

 

「ツイストゲーム?」

 

「ふっふっふっ、パーティーゲームの定番と言えば、これでしょ」

 

 ツイストゲームか。これはまたマニアックなものを。

 

「なんでしょうか、これは?」

 

 見たことがないのか、首を傾げていたムラサキさんに由夢ちゃんが説明する。

 

「赤や緑の色の上に手足を置いて、誰が先に体勢を崩して倒れるかっていうゲームです」

 

「どの色に手足のどの部分を置くかって指示は……これ、スピナーっていう指示盤の針が差した部分に従うってわけ」

 

 由夢ちゃんの説明に僕が補足を入れる。

 

「お前ら、よく知ってるな」

 

「あ、うちのクラスの男子が、これで女子を無理やり誘って遊んでいたのを見たので……」

 

「僕は、以前雄二達を家に連れてこれ使って遊んだりしていたから」

 

 あの時は雄二も中々しぶとかったから苦労したんだよね。

 

「由夢は、参加したのか?」

 

「しませんよ! こんなエッチな遊び……」

 

 ああ……確かに異性同士でやるにはちょっとねぇ。

 

「わー! わー!」

 

 高坂さんが慌てて由夢ちゃんの口を塞ごうとしていた。

 

「由夢ちゃん、今なんて?」

 

「いえ、だから……」

 

「なぁんでもない、なんでもない! ねっ? 妹君っ!?」

 

 高坂さんが由夢ちゃんの言葉を遮って肩を力強く掴んでいた。

 

「は、はい。そうですね」

 

「ほら~」

 

 由夢ちゃんも高坂さんの雰囲気に呑まれて思わず頷いた。

 

「えっと、これひとりで遊ぶの?」

 

「まさか。そんな味気ないものだったら持ってこないって。じゃあ、試しに弟君と音姫、エリカと吉井も」

 

「え~? 僕もですか? ていうか、そんなにいたらとんでもないことに……」

 

「まあ、いいからいいから」

 

 これまたすごいニヤケ顔で無理やりおっぱじめようとしていた。

 

「やらなきゃ白河さんに今日のエリカとの練習のこと一部始終話すわよ?」

 

「うわっ! 卑怯だ!」

 

 なんて汚い真似をするんだ。

 

 そして僕達は高坂さんに言われるがままじゃんけんで順番を決め、最初に音姫さん。そして義之、僕、ムラサキさんの順になった。

 

「この針をルーレットみたいに回せばいいの?」

 

「そゆこと」

 

「よっ」

 

 音姫さんが指示盤の針を回し、差したのは……『右手を赤』か。

 

 部屋の真ん中に広げたシートには丸く赤、緑、黄色、青と4色が一列に並んで塗られている。

 

 そして、今の指示で音姫さんは右手をこのシートにある赤のどれかに置くのだ。

 

「じゃあ、こっちの赤で」

 

 音姫さんはしゃがんで赤い丸に右手を添えた。次いで義之が指示盤を回して、『左足を緑』を出した。

 

「次は、僕だね」

 

 僕は『右足を黄色』だった。更にムラサキさんの出番で、『左手を青』だった。

 

 後は高坂さんが各自に代わって指示盤を回すことになった。

 

「ほいほい、次音姫。右足を青に」

 

「え? ちょっと、腰捻らないと届かないんだけど?」

 

「うしし、頑張れ~」

 

 音姫さんが苦戦する光景を高坂さんは楽しそうに見ていた。

 

「お、弟君、ちょっとどいて?」

 

「そ、それができないんだな~」

 

「ええ?」

 

「目の前にいる障害。もとい、人をうまく避けながら指示された色に置くんだよ」

 

「え~? よ、よっ!」

 

 どうにか音姫さんは足を伸ばして青に触れる。でも、おかげで……音姫さんの白い足が裾から……。

 

「兄さ~ん?」

 

「仕方ないだろ! 目の前なんだぞ!?」

 

「あ、あんまり見ちゃだめなんだよ、弟君」

 

「無理です!」

 

「お、弟く~ん」

 

「はいは~い。次に、弟君は……右手を黄色!」

 

 義之は指示された通りに右手を黄色に向けて伸ばしていく。

 

「や、やだ、ちょっと弟君っ! 迫りすぎ!」

 

「しょうがないだろ。こうしないと届かないんだって」

 

 どうにか義之も黄色に触れることに成功する。

 

「はいは~い。今度は吉井……左手を緑に~」

 

「それって、ムラサキさんを通らなきゃいけないんですけど!?」

 

「うしし、頑張れ~」

 

「吉井……触れたらタダでは済みませんわ」

 

「そんな無茶な~」

 

 それからしばらくして……。

 

「こ、この体勢、無理があるよ~」

 

「あ、明久……もうちょい、膝……上げられないか?」

 

「ご、ごめん……これ以上は足が離れそうだから……」

 

「お、お尻が……着いちゃいます……あっ」

 

 でんっ! と、音を立ててムラサキさんが倒れ込んだ。

 

「あうっ!」

 

「はい終了~! エリカの負け~!」

 

「見てみると、意外と面白いんですね」

 

 ムラサキさんの転倒により、第一ゲームは終了になった。同時にみんなその場に倒れこむ。

 

「はあ、はあ……中々、ハードな遊びね。そ、それに、なんかちょっとエッチ……」

 

「ですから、そういうゲームなんですよ、これは」

 

「そんでもってこれ、実は審判する人が一番楽しむためのシステムだったり」

 

「いや~、本当すごかったよみんな。よくわかんないけど、曼荼羅って感じだった」

 

「む~、まゆきずる~い」

 

「まあまあ。これからが本番ってことで」

 

 言うと高坂さんはあらかじめ用意していたのか、くじ引きの棒を差し出した。

 

「先っぽに赤い印がついた棒を引いた人が審判ね」

 

「ごくり」

 

「絶対審判ですわ」

 

「むむ~」

 

「でもって、負けた人は、このミニサイコロを振って、出た面のことを暴露すること」

 

 それから色んな命令が書かれていたサイコロを出した。

 

「は、恥ずかしかった話?」

 

「何だ? この恋愛ごっこで告白って」

 

「誰でもいいから、恋愛ごっこをして好きです、とか何とか言うの」

 

「ええ? でも、圧倒的に女子の方が多いのですけど?」

 

「そういうのも、アリよ。アリ。うしし」

 

「僕、この人生で恥ずかしかった場面は言いたくない」

 

 心当たりがありすぎるもん。

 

「はいはい、じゃあ引いて~」

 

 もう、みんな必死だな~。まあ、さっきのでこのゲームの大変さが身にしみただろうし。

 

 それから全員一斉にくじを引いた。

 

「あ。私が審判ですね」

 

「あ、私もですわ」

 

「うそっ!?」

 

「ああ、またこの上に身体を乗せるのね~」

 

「マジかよ……」

 

「絶対に負けたくない」

 

「じゃあ、じゃんけんしてくださいね~。誰が先に指示盤を回すのかな?」

 

「由夢の奴、2回も特等席だからって……」

 

 それから、第二次ツイストゲームが開かれるのだった。

 

 

 

 

「ああぁん、やっぱり無理があるよう、この体勢~!」

 

「つーか、まゆき先輩と明久、めっちゃ余裕じゃね? さっきから」

 

「これでも毎日柔軟やってるからねっ! 身体の柔らかさには自身があるのよ!」

 

「僕は、まあFクラスとのやり取りで──」

 

「OK、わかった。もう言わなくていい。この状態でもうイチイチツッコみたくない」

 

「うわ~、絶景だ~」

 

「見ると意外と気持ちの良いものですね」

 

「か、感心してないでお前ら! さっさと次の指示を!」

 

「も、もう駄目~!」

 

 でんっ!

 

「きゃんっ!」

 

 音姫さんが倒れ込んだために、第二次ツイストゲームは幕を閉じた。

 

「やったー! 勝ったー!」

 

「お、音姉が負けた~」

 

「ふえ~ん!」

 

「終了~! はい、じゃあお姉ちゃん、サイコロ振ってくださいね」

 

「由夢ちゃん、楽しそうね」

 

「審判は楽しいですから♪」

 

「はう~」

 

 それから音姫さんはサイコロを転がし、壁に当たって止まった。

 

「えっと、何々?」

 

「恥ずかしかった話……」

 

「つまりは……」

 

「略して~」

 

「「「「「ハズバナ~!」」」」」

 

「ええぇぇぇぇ~~~~!?」

 

 人のこと言えないけど、みんなノリがよさそうで。

 

「さあさあ、音姫!」

 

「朝倉先輩の恥ずかしい話……ごくん」

 

「どんなことがあったんですか?」

 

「いやあ、楽しみだ~」

 

 僕もちょっと気になる。

 

「あうぅ~……え、えっと……通学路にマキタさんっておうちがあるの、知ってる?」

 

「ああ、知ってます。すごい大きな犬がいるところですよね?」

 

「「それで!?」」

 

 高坂さんとムラサキさんが積極的だ。

 

「い、いつもあの犬の頭を撫でていくんだけど、その日は朝から忙しくて、撫でられなかったのね。そしたら……」

 

「追っかけられたと?」

 

「うん。それでびっくりしちゃって……無我夢中で走ってたら、電柱に思いっきりぶつかっちゃったの」

 

「うわ、それは痛そう……」

 

「アハハハハ! マ、マジでっ!?」

 

「なるほどっ! だからあの日、何故かおでこが赤く腫れれたわけだっ!?」

 

 確かにそれはかなり恥ずかしいことだ。

 

「そう。しかも、ぶつかったとこを、幼稚園のバスを待ってる子供達に見られてぇ……すごい笑われたぁ~!」

 

「…………ぶっ!」

 

「明久君っ!」

 

「ご、ごめんなさい……でも……」

 

 マズイ! その光景、想像しやすすぎて……笑いがっ!

 

「ギャハハハハ! は、腹いてぇ~!」

 

「だ、駄目ですわ! お腹がっ!」

 

「ひ~っ!」

 

「ひどい~、みんな笑いすぎ~っ!」

 

 それから僕を含め、みんなが面白がってツイストゲームが更に盛り上がっていき、第三次ツイストゲームが始まった。

 

 ちなみに今回の審判者は義之と音姫さんだった。

 

「ほれ、次の奴、左足を青だ」

 

「よ、よっと!」

 

 義之の指示に従って僕は左足を青に伸ばす。

 

「ひゃっ! あ、明久さん! 何処触ってるんですか!?」

 

「ご、ごめん由夢ちゃん! わざとじゃないんだ!」

 

「へ~……こうして見ると結構面白いんだ~」

 

 音姫さんは今までの仕返しのつもりか、結構活き活きとしていた。

 

「くっ……ちょ、流石に、無理かもぉぉぉぉ!」

 

「おぉ!? 無敗のまゆき先輩、ついにダウンかっ!?」

 

「まゆきが倒れたら、どんな命令が来るんだろ?」

 

「ぐ、なんの! 根性──っ!」

 

「も、持ち直したぁ!?」

 

「高坂さん、すごいです! でも、出来れば早く着いちゃって欲しいかなって?」

 

「よ、吉井こそ……さっさと倒れたら?」

 

「そうはいきませんよ! なんとしても生き残るんだ!」

 

 絶対に恥ずかしい話は避けたいところだ。

 

「そんなこと言って……あ、エリカ。服はだけてるわよ?」

 

「へぁ!?」

 

「何っ!? って、あぁ!」

 

 ズデンッ!

 

 別の方向へ気を取られたせいで集中力が途切れ、一気に力が抜けて倒れ込んでしまった。

 

「終了っ! 明久の負けだ~!」

 

「高坂さん、ズルいですよ!」

 

「ふっふ~。勝負の世界は常に残酷なものよ」

 

 ドヤ顔で言われた。ちょっと腹が立つ。

 

「はいはい、明久君。ルールに従って、サイコロ振ってね♪」

 

 音姫さんも、今は思いっきり楽しんでるし。え~い、ままよ!

 

「でりゃっ!」

 

 僕はやけくそで思いっきりサイコロを振った。出た目は?

 

「あっ」

 

「出たっ!」

 

「な、何?」

 

「「「「恋愛ごっこで告白──っ!」」」」

 

「ちょ────っ!? それマズイでしょ!? 僕、既に彼女いるんですけど!?」

 

「そんなの関係ないわよ。一応これ罰ゲームなわけだし」

 

「さあさあ、吉井!」

 

「まあ、ここは無難にお姉ちゃんに告白じゃないですか?」

 

 確かに由夢ちゃんの言う通り、音姫さんか由夢ちゃんの方が告白する側としては楽に済みそうだ。

 

 ぐ……色々罪悪感こみ上げる罰ゲームだけど、やらなきゃ今度はどんな罰がのしかかるかわからない。

 

「で、では……すみません、音姫さん」

 

「は、はい!?」

 

 呼ばれた音姫さんは背筋を伸ばしてベッドの上に正座をした。僕も音姫さんの正面に立って、

 

「お、音姫さん。その……好きです。是非、お付き合いください!」

 

「「「ひゃああぁぁぁぁ!?」」」

 

 告白して部屋中に女子の歓声が響いた。

 

「よくやったな、明久。面白いものを見せてもらった」

 

「まったく……自分は審判で罰ゲームないからって──ひぃ!?」

 

「お。どうした?」

 

「な、なんか……また寒気が」

 

 部屋の中で、暖房が効いてる筈なのに、何故かすごい悪寒が。一体何なんだ?

 

 それからまたツイストゲームを続行し、後は僕のハズバナ罰ゲームが多かったけど。なんで、こういう時って、僕標的になりやすいのかな?

 

 

 

 

 

 

 

「むむむむ~~」

 

「おい、あれなんとかしてくれ! ていうか、いい加減盗聴はやめようぜ?」

 

「何か……もう鬼に見えちゃうよ~」

 

「ふふふ……明久、後で大変なことになるわね」

 

「や~ん、修羅場? 修羅場なの?」

 

「まったく、お主らは。しかし明久も、罰ゲームだから仕方ないとはいえ、大変じゃの~」

 

「……そろそろ抑えるのにも限界が近い」

 

「落ち着くのじゃ。こんなところでスタンガンは色々問題が多すぎるのじゃ」

 

「だったらこいつの所持物も全部没収してくれ! ていうか、何であの黒魔術の本がまだあるんだよ!?」

 

「前に人格入れ替わりが成功したから。今度はもっと高度なものに挑戦する」

 

「お前がやると本当になりそうで怖えんだよ!」

 

「ふっふっふ。そろそろ行動に移すべきか。明日が楽しみだな、ハッハッハ!」

 


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