バカとダ・カーポと桜色の学園生活   作:慈信

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こんばんは、慈信です。度々ご迷惑をかけます。自分の小説消失これで2度目になってしまいました。何やってるのかと思う方は多いでしょうが、まだ自分の小説を覚えていて、それを評価していてくれると申してくれるのなら、どうかまたこの小説をよろしくお願いします。


プロローグ

「はぁっ、はぁっ! くっ……!」

 

 僕、吉井明久は今ものすごいピンチに追われていた。具体的にと言うと──

 

『待ぁて吉井ぃぃぃ!』

 

『テメェ一人だけ彼女持とうなんて許されると思うんじゃねぇぞぉぉぉ!』

 

『異端者は死あるのみだぁぁぁ!』

 

 背後から徐々に迫る黒いマントに身を包んだ特異な集団、僕のクラスメイトである筈の者達ことFFF団。彼等は同じ信念を志し、一人でも裏切ろうとすればその卓越した団結力で異端者を誅戮し、この世全てのカップルを鏖殺しようという信念を持つ凶悪な集団だ。

 

 さて、何故今僕がそのFFF団に追われているかと言うと、事の始まりは朝のホームルーム前の話だ。

 

 今日もなんてことない学生生活が始まり、いつものように友人であるFクラス代表の坂本雄二、僕らFクラスで数少ない女子の一人である木下秀吉、寡黙なる性職者(ムッツリーニ)こと土屋康太。僕の有人に今朝僕が見た不思議な夢の事を話した。

 

 夢の内容は辺り一面に韶光の広がる小さな島にいる夢。そこでは本当に平和な生活があった。そして、その中で妙に可愛かったり綺麗だったりする人が大勢いたんだよね。しかもその人達と少数の男子に僕が混じって笑い合ってた夢。

 

 その内容が何処から漏洩したのか、そしてどんな風に広まっていたのか、僕は今この状況にいる。

 

「アキぃぃぃ! ウチに黙って女子と付き合うなんて許せないわよ!」

 

「明久君! 待ちなさい!」

 

「明君、不純異性交遊は感心しませんよ!」

 

「ていうか、何時の間にか姉さんまで混じってるしぃぃぃ!?」

 

 美波や姫路さんがいるのはいつもの事だからと無理やりつつも納得はできる。しかし、何故に姉さんにまで!?

 

「夕飯の材料を買っている最中、アキ君が逃げているのが見えてそれを追っている一人に事情を聞いたところ、明君が複数の女子達と恋人になっているという情報を聞いたしだいです」

 

「それ誤解だから! みんなが聞いたのは僕が今朝見た夢の話であって、現実でそんな事になってるわけが──って、どわあぁぁ!?」

 

 姉さんに必死で弁明してる最中、僕に向けてカッターナイフが飛んできた。見てみると、僕を追っている連中の中からとてつもない殺気を帯びているドリルみたいなツインテールの少女がいた。

 

「豚野郎っ! その他女性を傍らに置くだけでは飽き足らず、お姉様にまで手を出してタダで済むなんて思わないでくださいよ!」

 

「清水さん! それ誤解だから! 他の女子はともかく、美波とデートとかなんてそんな勇気のある人がいるなんてのはまずありえないから!」

 

「アキ、すぐに止まって目を閉じて歯を食いしばりなさい!」

 

「お姉様を侮辱しますか、この豚野郎!」

 

「なんか二人の怒りが更にヒートアップしてるしぃ!?」

 

 何故だろう? 普通に考えれば美波だけでなく、姫路さんや他の女子とデートなんてまずないと思うんだけど。

 

「よしっ! A班とB班は清水に続け! C班とD班は左右に別れて明久を追い込め!」

 

「雄二! 貴様は事の発端を知っているのに何故僕を追い詰める!?」

 

 何時の間にか雄二が指揮を取ってFFF団及び、女子達を誘導して迅速果敢と指示していた。

 

「明久、お前は忘れていると思うがな……俺はお前の幸せが許せないんだ!」

 

「知ってるよ! もう聞くまでもないから!」

 

「そしてもうひとつ」

 

「まだ何かあるの?」

 

「俺は……お前の不幸が心底楽しくて仕方がねえんだ!」

 

「外道! 鬼っ! 悪魔! お前は最低だ! もう友達ですらないよ!」

 

 揃いも揃って本当に最低ぞろいだ。友人であるはずのみんなはこんなだし、美波や姫路さんには関節技や殺人弁当、暴行を受ける日々だし、家でも姉さんから殺人料理に関節技に暴行にセクハラやら理不尽な毎日でもう心身共に限界が近い。

 

 なんで僕ばっかりこんな目に会うんだよ? こんな毎日なんてもう嫌だ!

 

 僕は消えゆこうとしている命を守るために遁走した。

 

「せめて……夢の中だけでも幸せでいたいよ」

 

 ほとんど覚えてないけど、今朝見た夢の世界が存在してたらそこで生きたいと願ったそんな時だった。

 

 僕の目の前に、桜の花びらが一枚降ってきた。おかしい。今はもう秋の季節のはずなのに、今桜が咲いてるわけがない。

 

 僕の目の前に降ってきた不可思議な出来事に気を取られた間に辺りの空気が変わった気がした。僕は意識を戻すと途端に辺りが静かになった。

 

 いや、静かになっただけじゃない。辺りの風景が変わった。今はもう放課後の時間帯で空は赤くなり始めてたというのに見上げた空は青いまま。太陽だってまだ頂点にあった。

 

 しかも、僕が住んでた町とは雰囲気が全然違っていた。なんだか小さな町にポツンと立っていた。

 

「……あれ?」

 

 いや、静けさや町の雰囲気が変わったことよりもっと不可解な事が起こっている。

 

「制服が……ダボダボ?」

 

 そう。僕の制服が何故かサイズが合っていない。最近は姉さんがいる手前、食事も取っているのだからそれなりに成長が進んでいるはず。

 

 なのに制服の襟が肩に近いところまでいってるし、袖だって掌までいってる。まるで体が縮んでいるみたいだ。それに──

 

「これって……どう見ても桜だよね?」

 

 そうだ。凩が吹いているし、ここから僅かに見えるディスプレイは秋の時期を示している。だというのに、どこもかしこも桜が満開の状態だった。

 

「……一体何がどうなってるの?」

 

 その場でポツンと立ち尽くしながら色々考えてみるが、やはり何もわからない。

 

 このままぼーっとしていてはわからないの一点張りになりそうなので何処かここが何処なのかがわかる所へ行こう。そうだ、本屋か図書館ならどうだろうか。

 

 僕はダボダボになってしまった制服の袖と足の裾をもしものために持っていた安全ピンでとめて適当に道路をぶらぶらした。十分かそこらで小さな本屋が見えたので真っ先にその本屋へと足を踏み入れた。

 

 そこで適当な雑誌を見ていると妙な文字が目に入った。

 

「何これ? えっと、『初音島 非公式新聞部が送るミステリースポット』?」

 

 非公式新聞部って何だろうって思ったり、ミステリースポットってそんなものが雑誌に普通載るかなというツッコミも入れたいけど、最初の部分の初音島っていう名前が気になった。

 

 いくら成績が下位だからといって初音島という名前が日本の一部にあるなんてのは聞いたことはないと思う。僕が忘れているという可能性もなくはないかもしれないけど。

 

 僕は気になって他の雑誌も調べてみた。

 

 

 

 

 

 30分もしてわかったこと。それはまずこの初音島の場所なんだけど、一応日本の一部であるのは間違いないようだ。ただ僕が興味なかったから記憶にないだけというのもあるだろうが、かといって……この雑誌に載ってる情報。桜が一年中咲いている島なんていくらなんでも聞いた事がない。

 

 そんな摩訶不思議な現象がある島ならどの土地でも有名になってるはずだ。それに念のため偶然近くにあった図書館にも寄って今度は文月学園の事も調べてみたけど、初音島とは逆に文月学園の事なんて何も載っていなかった。

 

 うん。もう確定的だと思う。僕は──

 

「異世界……マジで来ちゃった」

 

 僕は青空を見上げてそれしか呟くことができなかった。

 




今夜は連続投稿します。もうしばらくお待ちください。

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